第1話・天野 茜(アマノ アカネ)
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「それで今、一つ、困ってる事が有るのよ…HDG に、このディフェンス・フィールドのジェネレータを、どう配置すればいいのか。成(な)る可(べ)く大きな面積を持たせたいんだけど、あなただったらどうする?」
「盾にして、持たせたらどうですか?」
「その装備は、既に設計が進んでるわ。ジェネレータを HDG 自体に組み込んで、手持ちのシールドとで、フィールドを二重にしたいのよね。」
「だったら…何か、描く物、有りませんか?紙とペン…あ、それでいいです。」
鬼塚部長がメンテナンス・リグの前方に置かれていた作業机の上に、コピー済み用紙の裏紙とボールペンを取り出して、置いた。茜は、その机に駆け寄り、ボールペン取ってスケッチを始める。
「ジェネレータの形状は、フラットな板状でないとダメですか?」
「いいえ、形状に特に制約は無いわね。面積を、出来るだけ広くしたい、それだけ。」
「なら…先ず、腰のリング部分にですね…こう、スカート状のアーマーを。面積を広くするなら、拡がったロング・スカートみたいにして…。脚の可動範囲を確保する為に、縦に…六つ…八つ位(くらい)に分割して…それも三段位(ぐらい)にヒンジで曲がる様にすれば。」
「…うん…。」
「上半身は、肩の上を通るフレームを利用して、胸の前…腹部に…これも二分割して、ヒンジを付けた方が良いかも、ですね…あと、このフレームから…こう、肩の部分を囲む様にジェネレータを配置すれば…どうでしょう?」
鬼塚部長は茜の描いたスケッチを手に取ると、突然、奥側の二階へ上がる階段へ向かって駆け出した。
「天野さん、ちょっと来て。」
そう、茜に声を掛けて、階段を駆け上っていく。茜は何が起きたのか、良く解らなかったが、兎に角、鬼塚部長を追って行ったのだった。
鬼塚部長は二階廊下を通って部室に入る前に、CAD 室のドアを開け、中に向かって声を掛けた。
「みんな、ちょっと部室の方へ集まってちょうだい!」
そう言うと、返事も聞かずに部室の方へ向かった。
茜が階段を上り終えた頃、鬼塚部長を追って三人の二年生が CAD 室から出て来た。茜は、その三人に続いて部室へと入って行った。
「ちょっと、みんな。これ、見てちょうだい。」
鬼塚部長は中央の長机に、先程、茜が描いたスケッチを置いた。鬼塚部長の勢いに何事かと思いつつ、一同がそれぞれに、そのスケッチを覗き込む。
「何事かと思えば…何よ、これ?」
「う~ん…良く解らないわねぇ…。」
三年生組の二人、新島副部長と恵の反応は、薄い様子だった。しかし、二年生組三人の反応は違っていた。
まず、茶色い髪が目立つ、瑠菜 ルーカス。
「…ちょっ、部長!これ…。」
続いて、後ろ髪を一つに結んでいる、古寺 佳奈。
「え~どれどれ…あぁ~成る程ね…。」
最後に、二つ結びのお下げ髪の、城ノ内 樹里。
「あぁ~はいはい…この発想は無かったね~。」
鬼塚部長は得意気(げ)に言った。
「どう?これで、行けそうだと思わない?」
「ちょっと、どうしちゃったのよ、鬼塚?」
新島副部長は、今一つ、状況が飲み込めていない。それには構わず、瑠菜は興奮気味にスケッチを手に取り、言った。
「これ、部長が?」
「いいえ、この、天野さんのアイデア。」
鬼塚部長は、後ろに立っていた茜の手を取り、自分の傍(そば)に引き寄せると肩を抱いた。
「あ、機械工学科一年、天野 茜です…。」
「紹介しておくわ。こっちから、機械工学科二年の瑠菜さん、同じく古寺さん、で、情報処理科の城ノ内さんね。それから二年生のみんなに伝えておくけど、HDG のテスト・ドライバーは、この天野さんにやって貰う事になったから。」
「あ~、そっちも決まったんですか。よろしくね~天野さん。」
樹里はにこやかに、茜に向かって手を振って見せた。
「それで、そのスケッチがどうしたって言うのよ?鬼塚。」
新島副部長は、まだ二年生達の反応の意味が、解(げ)せないでいたのだった。
- to be continued …-
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