STORY of HDG(第2話.03)
STORY of HDG(第2話.03)
第2話・鬼塚 緒美(オニヅカ オミ)と新島 直美(ニイジマ ナオミ)
**** 2-03 ****
そして、翌日の放課後。
何時(いつ)もの様に、緒美と恵が教室を出ようとしていた時、不意に直美が二人に声を掛けた。
「ちょっといい?」
緒美は黙って振り向いたが、恵は意外な言葉を発した。
「新島さんも、一緒に行く?」
恵に先回りされて言われた言葉に、少なからず面食らっていた直美は、少し言葉に詰まっていた。そして直美は、緒美の表情を窺(うかが)っていたが、緒美は驚くでも無く、何時(いつ)もの冷静な彼女だった。
「…いいの?鬼塚さん。」
「森村ちゃんが、いいって言うなら。 別に、悪い事してる訳(わけ)じゃないし。」
そう言って、緒美は歩き出した。恵もニコニコ顔で、その後に続いて行く。直美は慌てて、自席へと鞄を取りに戻り、緒美達の後を駆け足で追った。
校舎を出た二人と一人は、校庭の横を抜けて南側へ、飛行機部が主に使っている滑走路の方へと進んで行く。
「どこへ行くの?」
「兵器開発部の部室よ。第三格納庫の二階。」
少しぶっきら棒に、緒美が答えた。
「森村、兵器開発部って?」
「知らないよね~。先月の部活説明会にも出て無かったもんね。」
「今の所、大した活動はしてない幽霊部活よ。わたしには、ぴったりの部活でしょ?」
緒美はそう言って、クスクスと笑った。そんな風に笑う緒美を見たのは、多分、直美は初めてだった。
「新島さんは、部活はいいの?」
緒美が、直美に問い掛ける。
「わたしは、部活には入ってないから。」
「そうだったの。てっきり、何か運動部に入ってるんだと思ってたわ。」
「スポーツやってる様に見える?」
「うん、どう見ても体育会系。」
そんな緒美と直美の遣り取りを聞いていた恵が、「あははは」と声を出して笑った。
間も無く、彼女達は第三格納庫に到着すると、東側の外階段を登り、二階部分のドアの前に立った。緒美が制服のポケットからカードーキーを取り出し、キーパネルに翳(かざ)す。すると、電子音が「ピピピ」と鳴り、ドアがロックされる。
「あれ?開いてた。」
緒美がもう一度カードキーを翳(かざ)すと「ピッ」と電子音が鳴り、ドアが解錠された。
「昨日、閉め忘れたのかしら?緒美ちゃん。」
ドアの右隣にある換気窓を見れば、室内に灯りが点いている事が模様硝子の窓越しに解ったのだが、三人共その事に、最初は気が付かなかったのだ。
「いいえ、先生が来てるのよ、多分。先に。」
緒美がドアを開け、三人が中に入ると、緒美の予想通り、顧問の立花先生が、そこに居たのだった。
「あら、部員が増えたの?鬼塚さん。」
入室してきた三人を認めると、立花先生は PC 作業の手を止めて、緒美に問い掛けた。
「いえ、強いて言えば野次馬です。」
「ひどいなぁ、緒美ちゃん。せめて部外者って言って。」
「大差ないよ、森村。…取り敢えず、クラスメイトですが。」
「こっちの森村ちゃんには、ここ一週間ぐらいレポートの手伝いをして貰ってたんですが…こっちの新島さんは、女子寮で森村ちゃんと同室で、今日が初参加って言うか、見学ですね。」
緒美が簡単に、二人を立花先生に紹介する。
「…で、顧問の立花先生。」
振り向いて、緒美の後ろに立っている二人に、立花先生を紹介するのだった。
「今年から、出向で特許法関連担当の講師になった立花よ。よろしくね。」
「出向ってことは、本社の方(かた)ですか…。」
と、納得した様な恵と、その隣に立つ直美の制服を見て、立花先生が声を掛ける。
「あぁ、後ろの二人も『特課』なのね。未来の同僚、後輩だわね。わたしは本社、企画部よ~よろしくね。」
「…で、先生。今日のご用件は?」
緒美の問い掛けに、ニッコリ笑って立花先生は言う。
「まぁ、立ち話も何だから、取り敢えず座ってちょうだい。」
緒美は、部室中央にある長机の、立花先生と向かい合う席に着いた。
「お茶でも淹(い)れましょうか。お湯、お湯~…」
恵は湯沸かしポットを確かめに、部室の奥へと向かう。
「わたしは、帰った方がいい?」
直美は緒美に尋ねた。
「いいわ。わたしが…と言うより、森村ちゃんが何をやってたか、それを確かめに来たんでしょう? だったら、一緒に聞いてて貰えたら、説明の手間が省けるから。」
「そう。じゃぁ…」
直美は入り口側、端の席に着いた。
- to be continued …-
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