WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第3話.10)

第3話・Ruby(ルビィ)・1

**** 3-10 ****


 格納庫の中では、LMF の起動準備が進行している。

「APU ジェネレータ電圧正常、外部電源を切り離します。」

 Ruby の合成音がそう告げると、建屋から LMF へ接続されていた電源ケーブルのプラグが切り離され、「ゴトリ」と大きな音を立ててプラグが床面に落下した。そこへ、LMF が通過出来る様にと大扉を開け増してから駆け込んで来た瑠菜が、ケーブルを回収して壁際へと引っ張って行く。

「LMF 制御システムの起動チェックを開始します。」

 Ruby は淡々と、LMF 起動シークエンスを続行する。

「システムチェック完了。第一メイン・エンジン起動します。危険ですので、左舷インテーク前に立たないでください。」

 左側のエンジンが回り出し、その作動音が段々と甲高くなっていく。 一見、勝手に起動手順を実行している様に見えるが、Ruby は LMF に装備されたメイン・カメラや周囲監視センサーを総動員して、周辺の安全を確認し乍(なが)ら起動操作を実行している。

「第一メイン・エンジン、スロットル・ポジションは、アイドル。回転数及び、排気温度正常。電圧は正規値で安定。APU の運転を停止します。引き続き、第二メイン・エンジンを起動します。危険ですので、右舷インテーク前に立たないでください。」

 右側のエンジンも回り出すと同様に、甲高い作動音が格納庫内に響き始める。

「第二メイン・エンジン、スロットル・ポジションは、アイドル。回転数及び、排気温度正常。コックピット・ブッロクを、切り離し位置へ降下させます。」

 瑠菜と佳奈、直美がコックピット・ブロックの下にドリーをセットして待機している。そこへ、ゆっくりと LMF のコックピット・ブロック、通称『アイロン』が降りて来る。下ろされて来る『アイロン』に合わせ、瑠菜と佳奈はドリーの位置を微調整していた。
 このコックピット・ブロックが『アイロン』と呼ばれているのは、機首部のメイン・ホバー・ユニットの広がったスカート形状が『アイロン』を連想させるからである。実は、この『アイロン』、LMF から切り離されても、独立して行動する能力を有している。このメンバーの中では唯一、直美が LMF と『アイロン』の操縦を経験していたのだが、『アイロン』を起動して自力で移動させると、装備している小型ジェット・エンジンの停止に手間が掛かる事や、LMF に再接続する位置に移動する為に『アイロン』を再起動させなければならない事、再接続の為の位置合わせに色々と手間が掛かる等の理由が有って、ここでは敢えて『アイロン』を起動させず、ドリーへ直接積載しているのだった。

「コックピット・ブロック降下、確認。接続ボルト開放します。」

 『アイロン』がドリーの上に載せられると、LMF との接続部のロックが開放された。

「アイロン、移動しまーす。」

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 瑠菜の声に合わせて、佳奈と直美もドリーを引っ張って LMF の前から『アイロン』を移動させて行く。LMF の左右ホバー・ユニットの間に下ろされた『アイロン』は、一旦 LMF の前方へ引き出されると、右舷方向へと三人に因って引いて行かれた。

「進路クリア確認。ミッション、HDG-A01 の回収。HDG-A01 とのデータ・リンクを確立しました。ルートを策定、承認を待ちます。」

 Ruby は策定した行動ルートを、樹里が就いているコンソールに転送して許可を求めた。緒美は、樹里の元へ行き、モニターに表示されたルート・マップを確認する。

「ルート承認。LMF 自律行動開始。」

 緒美はヘッド・セットのマイクに向かって、LMF の行動開始を指示する音声コマンドを発した。茜の HDG-A01 と、Ruby の LMF とは共通の周波数で交信出来る様にセットしてある。従って、緒美の Ruby に対する指示も、茜には聞こえていたし、Ruby の緒美へ対する返事も茜には聞こえていた。Ruby の話す合成音は、端末のスピーカーから聞こえるのと同じ内容が、交信チャンネルにも載せられている。

「LMF01 自律行動開始します。」

 Ruby が返事をすると、左右のメイン・ホバー・ユニットが唸(うな)りを上げた。そのスカート部と床面の隙間から漏れ出た大量の気流が、床面に沿って周囲へと拡散し、格納庫内壁に跳ね返され巻き上がる。LMF の周囲にいた一同は、その気流で乱れる髪や制服のスカートを押さえつつ、LMF の行動を見守っていた。

「微速前進。」

 その合成音は、LMF のエンジン音と格納庫内に巻き上がる気流の音に掻き消され、ヘッド・セットをしている緒美の他には、良く聞こえなかったのだが、その巨体がゆっくりと前進を始めたのは、誰の目にも明らかだった。
 LMF は機体の向きを微調整しながら、ゆっくりではあるが滑る様に、格納庫から駐機場へと出て行った。

 

- to be continued …-

 

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