WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第4話.08)

第4話・立花 智子(タチバナ トモコ)

**** 4-08 ****


 2070年5月14日水曜日。小峰課長からの連絡が有って、約一週間が経過した。だが、緒美のレポートに就いて、上司からの反応は、その後、何も返って来なかった。
 智子は小峰課長へと状況伺(うかが)いのメッセージを送ったが、その返事は「レポートは上げてあるから、もう少し待て」との事だった。何とか、部長へ直訴する方策は無い物かと考えてはみたが、課長を通しての正式ルートの他に、有望な裏技を智子は思い付きそうになかった。
 そんな折、智子の居室のドアを、ノックする音が響く。

「あ、はい。どうぞ。」

「失礼するよ。どうだい、何か困ってる事は無いかな?立花君。」

 ドアを開け、顔を覗(のぞ)かせたのは、智子の世話役に任命されていた講師の前園氏だった。

「あぁ、前園先生。いえ、学校の事では、特に困り事は無いんですけど。」

「学校以外の事では、何か、有るのかね?」

「はぁ、まぁ、会社との交渉事でちょっと…あ、どうぞお入りください。コーヒー位(くらい)お出ししますから。インスタントですけど。」

 智子は居室の奥、窓際のデスクの椅子から立ち上がり、ポットが置かれたテーブルの方へ移動する。

「そうかい?じゃぁ、ちょっと御馳走になろうかな。」

 「ははは」と笑い乍(なが)ら、前園氏は壁際に有った椅子を部屋の中央テーブルへ移動させ、座った。コーヒーの入ったカップを手に、智子は前園氏の向かい側の席へと着いた。そして、カップの内、一つを前園氏の方へ差し出す。

「砂糖とミルクは、入ってませんけど。」

「あぁ、構わんよ。ありがとう、いただきます。」

 前園氏は先(ま)ず一口、カップに口を付けた。

「夏迄(まで)、講義の予定が無いから退屈だろう。」

「最初はそうでしたけど、ここ暫(しばら)く『兵器開発部』の活動を調べたり、部室の整理をしたり、割と忙しかったんですよ。」

「おぉ、部活の方の…うん、それなら良かった。で、何か収穫は有ったかな?」

「昔の活動の資料とか見付けたので、何となく、どんな事をしていたのか見当は付く様になりました。あ、それから新入部員が一人、一年生が入部したので、その子と一緒に、ちょっとした研究レポートを作ってたんですよ。」

「研究?どんなテーマかな?」

「対エイリアン・ドローン用のパワード・スーツです。」

「ほう、それは興味深いな。差し障りが無ければ、拝見したいな。」

「あぁ…それは、ちょっと。」

 智子は身を引いて、少し躊躇(ちゅうちょ)した。

「何か、不味(まず)い事でも?」

「実は…そのレポート、本社の方へ提案している最中なので、場合に依っては社外秘扱いになるかも、なんです。」

「あぁ、さっき言われてた、会社との交渉事ってのは、その関係かな?」

「はい、そんな所です。」

「ふむ。予算の交渉か、何かかな?」

「いえいえ、それ以前の問題ですよ。直属の上司を通して部長に、レポートに目を通して貰おうと思ったんですが、忙しいらしくて、どうにも…。」

「成る程ね…キミは企画部だったね、立花君。今の部長は誰かね?」

「影山部長です…けど。」

 部長の名前を聞いた前園氏は、突然、身を乗り出す様にして智子に聞き返した。

「影山? 影山 三郎かい?」

「あぁ、はい。影山部長をご存じなんですか?前園先生。」

「あぁ~良く知っとるよ。彼の結婚式の時、仲人をしたのがわたしだ。ははは、そうか、影山君が部長になったか。」

 前園氏は椅子の背凭(せもた)れに寄り掛かると、カップに残っていたコーヒーを飲み干した。

「影山君はわたしが企画部三課の課長をしてた時は直属の部下でね、わたしが部長で退職する時は彼が三課の課長だったな。」

「えぇっ、前園先生、企画部部長だったんですか? それは存じ上げませんでした…。」

「いいよ、いいよ。キミが入社する前に、わたしは定年退職してたんだ。知らなくて当然だよ。」

 智子は席を立って、窓際のデスクの方へ行くと、プリント・アウトしてあった緒美のレポートをフォルダから抜き出し、再び前園氏の向かいの席に戻った。そして、クリップで綴じられた一束のレポートを、前園氏の前へとテーブル上を滑らす様に押し出し、言った。

「前園先生が元企画部部長でしたら、秘密云云(うんぬん)の取り扱いで心配する必要も無いでしょう。このレポートの感想を、是非、聞かせて頂きたいです。」

「そうか…じゃぁ、遠慮無く拝見させて貰おう。」

 レポートを受け取った前園氏は、静かに、ゆっくりとページを捲(めく)り乍(なが)らレポートを読み始めた。前園氏は、ほぼ同じペースで、レポートのページを捲(めく)っていたが、時折、数ページ前に戻ったりしつつ、十数分で最後のページ迄(まで)、無言で読み進めたのだった。

 

- to be continued …-

 

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