WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第4話.15)

第4話・立花 智子(タチバナ トモコ)

**** 4-15 ****


「本来なら、鬼塚君が正社員になるのを待つのが筋だが。レポートを見る限りでは立花君の言う通り、期待出来るセンスの持ち主の様だし、報告に依れば素行も悪くはない。彼女にチャンスを与えてみるのも、悪くはない判断ではないかな? どうだろう、片山君」

突如、天野会長から話を振られた片山社長は、右隣に座っている事業統括部の飯田部長に尋ねる。

「技術データベース、制限を掛けて、天神ヶ崎高校の回線からアクセスを許可する事は、技術的には難しいのかな?」

「…そうですね。社外からのアクセスですので、暗号化はしないと。まぁ、やりようは有ると思いますが。」

 片山社長も飯田部長も、割とあっさり、技術データベースを開示する方向で検討している様子なのが、智子には違和感を覚えさせた。本来なら、もっと強硬に反対されるべき要求の筈だったのだ。

「あの…、鬼塚さんのレポートに基づいて開発を行うのは、既定路線だったんでしょうか?」

 智子の問いかけを聞いて、飯田部長は突然、笑い出した。そして、こう言ったのである。

「あぁ~いや、鋭いね、立花君。そう、お察しの通り、午前中の打ち合わせで、方向性はそうしよう、と言う事でね。徒(ただ)、仕様設計の作業は当然、本社(こちら)で引き取ろうかと思っていたんだが、そこ迄(まで)、生徒にやらせたいと言われるのは予想外だったよ。」

 次いで、片山社長が説明する。

「まぁ、此方(こちら)の都合も有るし、立花君と鬼塚君とで、出来る所迄(まで)やってみて貰うのも、本社の側にも得る物が有るだろう。学校の側で許可して頂ければ、本社側は可能な限り協力しよう。と、言う事で構いませんか?会長。」

「あぁ、学校側としては、部活動の時間の範囲でやってくれるなら、構わないよ。」

 天野会長は二つ返事で、許可してしまったのだが、智子には片山社長の発言に、一つだけ引っ掛かる言葉が有った。

「社長、本社の都合、と言うのは、どの様な?」

「あぁ、そうだな…立花君には、話しても構いませんか?会長。」

 片山社長は、天野会長に許可を求めた。それに、天野会長は静かに頷いて答えたのだった。

「では、説明は、わたしが…。」

 その様子を見て、話し始めたのは飯田部長である。

「…実は、現在、日米政府共同でエイリアンに対する、反攻作戦が計画されている。これは社外秘と言うよりは、国家機密に類する事項なので、まだ全てを話す訳(わけ)にはいかないが、これから話す事は他言無用だ。いいな。」

 智子は息を呑んで、頷いた。

「そもそもは二年ほど前に、外務省経由で米国政府から作戦への参加を求められたのが始まりなんだが、米国国防省が立案した作戦に、日本も技術的、資金的に協力して欲しい、という要請が有ったそうだ。まぁ、その要請の内容が酷い物だったらしくてね。」

「酷い…と、言いますと?」

 智子の質問に答えたのは、影山部長である。

「うっかり承諾すると、日本は資金と技術だけ吸い取られ兼ねない内容だったんだよ。昔から伝統的に、外務省は米政府の言いなりだからねぇ。」

「作戦の内容を明かす訳(わけ)にはいかないが、作戦を遂行する為には新しいデバイスの開発が不可欠でね。それで、内閣が米政府と折衝して、新デバイスの開発を日米共同ではなく、両国が独自に開発して共同で作戦に使用する、と言う内容で合意させたんだ。」

「共同で開発した方が、リスクが低いのでは?」

 智子の問いに、飯田部長が説明を続ける。

「向こうは、資金と技術を吸い取る気、満々だぞ。だから、新デバイス開発が失敗するリスクを下げる為に、両国が独自に開発を行った方が良い、と主張した訳(わけ)だ。どちらかが開発に失敗しても、一方が成功していれば作戦が実行出来るからね。もしも共同開発して、それが上手くいかなかったら、作戦の実行自体が不可能になる、と、まぁ、建前だがね。」

「成る程…。」

「作戦の実行は五年後に設定されているが、それ迄(まで)に必要なデバイスを開発して、試験を行わなければならないのだが。実は、そのデバイスに必要な要素技術の多くが、今回、キミが提出したレポートの内容と重なっているんだよ。」

 ここ迄(まで)、飯田部長の説明を聞いて、智子は漸(ようや)く今日の会議の内容に合点(がてん)がいったのである。

「本社の都合とは、そう言う事ですか…。」

 飯田部長に次いで、影山部長が話し出す。

「正直、アメリカ政府が何処まで、その反攻作戦に本気なのか、内閣も信用してはいないんだ。日本側が提案した、両国での独自開発路線をあっさりと了承したのも、何か裏が有っての事かも知れん。 双方の手の内を明かさない様に、完成の目途が立つ迄(まで)、情報交換は最小限にしようと言う取り決めになっているから、此方(こちら)の技術が彼方(あちら)に渡らない代わりに、彼方(あちら)が本気で開発をしているかは蓋を開ける迄(まで)分からない。ひょっとしたら、金の掛かる開発作業を、日本側のみに押しつける魂胆かも知れない。」

 そして、天野会長が言う。

「まぁ、ともあれ。この儘(まま)の状況が続けば、何れ、世界の経済が破綻するだけだ。その前に、何かしらの反攻作戦を実行して、状況を変えないといけない。内閣は最悪の場合、日本単独ででも作戦を実行できる様、防衛産業各社に声を掛けている。勿論、我が社も参加するが、まだ状況的にも技術的にも不確定要素が多いので、作戦に就いては当面の間、公(おおやけ)には出来ない。 仮にアメリカ側が公表を了承したとしても、だが、公表する事に因って、他国から妨害や干渉を受けるのは避けたい、と言うのが政府の考えだ。 何れにせよ、我々は必要な準備だけは進めておく必要が有るし、何事であれ開発には時間が掛かるのが現実だ。あのレポートのシステムが開発出来るなら、それは反攻作戦に使用するデバイスの開発に、大いに助けになるだろう。期待してるよ、立花君。」

 天野会長の話を聞いている内に、自分が想定したよりも大きな話に巻き込まれていた事に気が付き、智子は目眩(めまい)がする様な感覚に襲われていた。そして、その事態に緒美を自分が引き込んでしまって良いのだろうか、と考え始めていたのだった。
 大きな仕事に関わる事は、智子に取っては勿論、望む所であったのだが、それと、その仕事に事情を知らない未成年者を引き込んでしまう事は、別の話である。

 

- to be continued …-

 

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