WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第5話.03)

第5話・ブリジット・ボードレール

**** 5-03 ****


 五月の連休中から、既に十数回のテスト運用を繰り返していたので、HDG への接続については幾分慣れた感覚を覚えていた茜だったが、各部に デフェンス・フィールド・ジェネレータが取り付けられた現在の姿には、違和感を感じずにはいられなかった。とは言え、手順には何ら変わりは無い。茜は、HDG-A01 へ自身のインナー・スーツを接続してロックし、ヘッド・ギアは傍(そば)に控えていた佳奈が装着してくれた。
 今迄(まで)と違うのは、ここからである。

「天野さん、じゃ、スラスター・ユニットを起動して。」

 緒美がヘッド・セットを介して、指示を出して来る。

「はい。スラスター・ユニット、起動シークエンス開始。一番始動モーター、スタート。」

 スラスター・ユニットは、HDG-A01 の背部に取り付けられた、二枚の板状の推進機関である。片側のケースの内部に小口径のジェット・エンジンが二基装備されており、前部のインテークから吸引した空気を燃焼ガスと共に後部の二次元ノズルから噴射して推力を得る。因みに、ジェット・エンジンの燃料は、この時代では一般的な燃料となっている、水素である。
 スラスター・ユニットは推進機関であると同時に、HDG が稼働する為に必要な電源でもあり、これが稼働している間はバッテリーに頼らず HDG は稼働が可能となる。
 メンテナンス・リグに接続されている状態では、HDG はメンテナンス・リグを介して地上から電力を得ている。その状態でスラスター・ユニットを起動し、必要な発電量を得てから地上電源を切り離すと言う手順は、LMF と同様だ。

「スラスター・ユニット、起動完了。スロットル・ポジションはアイドルで、電圧は規定値へ。メンテナンス・リグ、切り離しオーケーです。」

 茜は胸元から顔の前面に立ち上がっているディスプレイを確認し、ステータスを読み上げる。茜の背部上方、床面とに対して、ほぼ平行状態にセットされたスラスター・ユニットからは、小型ジェット・エンジンの稼働する甲高い回転音が、それ程大きな音ではないが聞こえていた。

「じゃ、リフトを降ろして、切り離すわね。」

 瑠菜がそう声を掛けて、メンテナンス・リグのコンソールを操作する。間を置かず、宙に浮いていた HDG-A01 は床面に降ろされ、接続ボルトが解放された。
 すると、床面と平行になっていた二枚のスラスター・ユニットは、バランスを取る為、九十度回転して茜の身体と平行に向きを変えた。同時に、腰部後方の接続ボルト支柱に装備されているスタビライザも、バランスを取る為に角度を変えるのだった。このスタビライザにバッテリーが取り付けられている。
 茜は、胸元へディスプレイを格納してヘッド・ギアのスクリーンを降ろし、三歩ほど歩いてメンテナンス・リグから離れると、立ち止まった。その位置で、腰を捻ったり、腕を軽く上げ下げしたりして、フル装備状態の HDG 装着感を確かめた。

「何か違和感は有る?」

 緒美が問い掛けて来るので、少し考えてから茜は答えた。

「いえ。特には…無いですね。大丈夫みたいです。」

「スラスター・ユニットが接続されてるけど、バランスは取り辛くない?」

「それも大丈夫です。でも、後ろに仰(の)け反(ぞ)ると、転んじゃいそうになります…ね。」

 茜は敢えて、背筋を反らして、バランスの限界を確かめてみた。

「茜ちゃん、マニピュレータが作動するかどうか、ちょっと試してみてくれないかな。」

 リクエストの為に大きな声を出したのは、実松課長だ。

「はい。」

 茜は両肘を九十度位(ぐらい)に曲げ、両手を顔の前程の高さ迄(まで)上げた。その位置で、両腕に装備されたマニピュレータの、展開命令を思考制御で入力してみる。
 すると、腕ブロックの外側が前方にスライドすると同時に、格納部先端が開いてマニピュレータが迫り出し、指が展開する。マニピュレータの指は茜の指と連動し、茜の指の動きをトレースする。茜は両手を握ったり、開いたりして、マニピュレータの動きを確認し、一度、左右のマニピュレータを収納した。。

「大丈夫ですね。ちゃんと動作、連動してます。」

 茜は実松課長へ向かって、サムアップをして右手を突き出し、もう一度、右手のマニピュレータを展開する。当然、右手のマニピュレータも茜の右手に連動して、サムアップをしている。

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 実松課長はニヤリと笑って、茜にサムアップを返すのだった。

「じゃぁ茜君、今度はフェイス・シールドを試してみてくれないかな。」

 実松課長の隣に立っていた畑中が、手を振りながら茜にリクエストを送った。

「は~い。やってみます。」

 右手のマニピュレータを格納し、同様に思考制御で茜はフェイス・シールドの操作を入力した。額の部分に上げられていたシールド・ブロックが、先(ま)ず鼻の位置まで下がり、そこから口の部分を保護するシールドが更に下りて来る。第一段のシールド・ブロックに因り直接の視界は遮(さえぎら)られるが、内部に有るゴーグル式スクリーンに外界が表示される事で視界は確保されている。

「天野さん、じゃぁ、そのまま歩いてみて。」

 緒美の指示が、ヘッド・ギアのレシーバーから聞こえて来た。

 

- to be continued …-

 

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