WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第5話.06)

第5話・ブリジット・ボードレール

**** 5-06 ****


「天野さん、その位置をキープして、高度だけ上下出来る?先(ま)ずは、ゆっくりね。」

 ヘッド・ギアのレシーバーから緒美の指示が聞こえるので、茜はリクエスト通りの動作をイメージしてみる。すると、スラスター・ユニットは出力を変化させ、HDG の高度は茜のイメージに合わせて上下するのだった。

「こんな感じですかね、部長。」

 茜はその場で上下動を三度繰り返し、再び高度一メートルをキープした。

「いいわ。じゃ、今度はゆっくりと前進、後退、左右移動、順にやってみましょう。」

「はい。やってみます。」

 ホバリングでの低速前進後退、左右移動は、何方(どちら)も高度をキープした儘(まま)で問題なく実行された。茜は取り敢えず、ホバリングを終了して地面へと降りた。

「低速でのホバリングは、特に問題は無さそうです。樹里さん、其方(そちら)のモニタで何か異常は?」

「大丈夫よ。此方(こちら)でも、今の所は特に問題なし。」

 その時、立花先生が緒美の肩を指先でトントンと叩く。緒美が顔を向けると、立花先生が告げる。

「緒美ちゃん。今日は朝から天気が悪かったから、飛行機部のフライトは予定が無いそうだから、滑走路の使用許可は取っておいたわ。」

「そうですか、ありがとうございます。 天野さん、滑走路の使用許可は先生が取ってくれてるって。高速ホバー試験迄(まで)、やってみましょう。その儘(まま)、誘導路から滑走路へ低速ホバーで移動して。」

「分かりました~。」

 茜は緒美達に向かって手を振ると、先程とは違って、殆(ほとん)ど高度を取らずにスラスター・ユニットでの低速浮上走行で誘導路へと向かう。

「何だか、スラスター・ユニットを今日初めて装備した様には見えんなぁ…。」

 様子を見ていた実松課長が、ポツリと感想を漏らすのだった。

「天野さんはセンスがいいですから。それに、システムの仕様を、ほぼ完璧に把握してくれてます。最高のテスト・ドライバーですよ。」

 ヘッド・セットのマイク部分を左手の指先で塞(ふさ)ぎ、緒美は実松課長へ解説をする。すると、ヘッド・セットに、茜の声が帰ってきた。

「部長、何か仰(おっしゃ)いました?良く聞こえなかったんですけど…。」

「大丈夫よ、あなたが恥ずかしくなる様な事を言っただけだから、気にしないで。」

「えぇ~気になりますよ。何の話をしてたんですか?樹里さんは聞いてましたか?」

「生憎と、わたしも聞いてないわ。部長は実松課長とお話ししてたみたいだけど?」

「悪口は言ってないから、気にしないの、二人共。ほら、テストに集中してね。」

 そう言って、緒美は笑うのだった。


 そんな遣り取りをしつつ、茜は滑走路の東端に到着し、低速ホバーを停止して待機している。

「準備完了、待機中です。」

 緒美のヘッド・セットに、茜からの報告が聞こえる。

「じゃぁ、天野さん。加速し乍(なが)らスラローム走行、滑走路の西端でUターンして戻って来るって感じで、やってみましょう。」

「はい。では、行きます。」

 最初はゆっくりと進み出した茜だったが、膝を軽く曲げて腰を少し落とし、直ぐに加速を強める。ある程度スピードが乗って来ると、滑走路の幅一杯に右へ左へとジグザグに進んで行く。重心の移動と、スラスター・ユニットの協調が上手く一致しているのが、茜にも、離れた所から監視している緒美達にも良く分かった。
 そして、滑走路の西端の手前で、茜の装備する HDG は突然、クルリと向きを変えた、かと思うと、進路は変わらず HDG はスピンし乍(なが)ら、ほぼ真っ直ぐ滑走路西端へと突き進んでいく。茜は元より、その様子を監視していた一同が声を上げる間も無く、滑走路からオーバーランした HDG は、芝生地のオーバーラン・エリアを突っ切り、敷地の境界に立つフェンスを弾き飛ばして、木立の中へと姿を消した。

「うっわ、凄い勢いで突っ込んじゃったけど、大丈夫かな…。」

 誰に言うでも無く、最初に声を上げたのは畑中だった。

「フェンスにぶつかった時、ディフェンス・フィールドのエフェクト光が見えましたから、多分、大丈夫だと…天野さん、聞こえる?怪我は無い?」

 緒美は畑中に答えつつ、ヘッド・セットのマイクを口元に引き寄せ、茜に呼び掛けた。

「…あ、はい。大丈夫です。フェンスにぶつかる前、咄嗟にディフェンス・フィールドをオンにしたので、どこもぶつけてません。徒、フェンス、吹っ飛ばしちゃったのと、木の枝を数十本折っちゃいましたけど…。」

「どうしたの?制御異常?」

「いえ、スピードが上がって来ると、呼吸がし難くって。あと、虫が顔にぶつかってきたのにビックリして、Uターンをやり損ねました。」

 立ち並ぶフェンスが途切れた所で、茜の装着する赤い HDG が動く姿が見えた事で、一同は漸(ようや)く安堵したのだった。茜は、外れたフェンスを拾い上げ、元の位置に戻そうとしている様子だった。

 

- to be continued …-

 

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