WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

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STORY of HDG(第6話.01)

第6話・クラウディア・カルテッリエリ

**** 6-01 ****


 物語は二ヶ月程、時間軸を遡(さかのぼ)る。その日は天神ヶ崎高校にて、茜達、第二十三期生の入学式が行われた、2072年4月4日月曜日である。
 朝から天気も良く、学校の敷地の内外に植えられた桜の木々も咲き揃(そろ)い、入学式には相応(ふさわ)しい様相だった。
 式自体は滞りなく終了し、茜とブリジットは式に参列していた、それぞれの親達と分かれて、教室へと向かっていた。因(ちな)みに、新入生の保護者一行は、入学式の後は学校職員の案内で、校内の施設や寮等(など)を見学する事になっている。特に、『特別課程』の生徒は全員が、親元を離れての寮生活となるので、学校側も保護者への説明には気を遣っているのである。
 天神ヶ崎高校を受験したのは、茜の通っていた中学からではブリジットの他にも数人がいたのだが、合格したのは茜とブリジットの二人だけだった。特にブリジットに就いては「奇跡だ」と、からかいとも賞賛ともとつかない声が聞かれていたのだが、ブリジットの努力を知っている茜に取って、それは驚く様な結果ではなかった。ブリジットと一緒の学校へ進学出来る事を、茜は、徒(ただ)、単純に喜んでいたし、それは、ブリジットも同じだった。そんな訳(わけ)で、天神ヶ崎高校には、茜とブリジットの知り合いは一人もいない、そんなスタートの筈(はず)だったのである。

「アマノ アカネ!」

 入学式が行われた体育館から、校舎へと向かう歩道の途中で、突然、背後から名前を呼ばれて、茜とブリジットは立ち止まり、振り向いた。「自分達を知っている人等(など)いない筈(はず)なのに」と、不審に思っていた二人は、茜を呼び止めたらしい、その少女の姿を見て少し戸惑った。
 それは、ブリジットの様な欧米系の少女だったのだが、小学生位(くらい)に幼く見えるその容姿は、ブリジットとは逆の方向で目立っていた。身長は120センチメートル位(くらい)だろうか、エメラルド・グリーンの瞳に、綺麗な金髪を左右に結んでおり、所謂(いわゆる)「金髪ツインテの外国人幼女」という風貌(ふうぼう)である。

<イラスト>

 茜達は三日前には入寮して寮生活を始めていたので、その少女の姿は、昨日の内に女子寮で見見掛けており、その時はブリジットと「わぁ、ちっちゃい子がいる!飛び級とか、かなぁ」とか話していたのだが、直接、話し掛ける事はしなかったのだった。
 そして今、その少女が腕組みをして、睨(にら)む様な目付きで、茜の顔を見詰めていた。

「わたしに、何か、ご用かしら?」

 茜は両手を膝に当て、少し腰を屈(かが)める様にして、言葉を句切る様に話し掛けた。茜は、相手に日本語が通じないかも知れない、と思ったのだ。

「バカにしないで!日本語位(ぐらい)、話せるわよ。」

 それは流暢(りゅうちょう)だったが、明らかにイライラしているのが茜にも伝わって来る、そんな言い方だった。

「ちょっと、何よ、その言い方。失礼じゃない!」

 その少女に、ブリジットが意見すると、少女は英語で言い返して来る。

「Please don't butt in, beanpole!(口出しするな、ノッポ!)」

「何で、わたしには英語なのよ!」

「親切心で、あなたの母国語にしてあげた迄(まで)よ。それとも、あなたの母国語はイタリー?スパニッシュ?」

「パパはフランス人で、ママはアメリカ人だけど、今は帰化して日本国籍だから、わたしの母国語は日本語なの!」

「じゃぁ、今度はフレンチで、言ってあげましょうか?」

「結構よ、さっきので何言われたかは、分かってるから。この、チビ!」

「ちょっと、ブリジット…。」

 その少女とブリジットが睨み合っているのを、ブリジットの腕を引っ張って茜は仲裁に入る。

「わたしに用が有るんでしょ? で、あなたは誰かしら。どうして、わたしの事を知ってるの?」

「どうしてって、さっきのセレモニーに居たら、あなたの事はみんな知ってる筈(はず)でしょ。あなたが新入生代表で、スピーチしてたんだから。」

 ほぼ定型の『新入生代表挨拶』の事を『スピーチ』だと言われると、何かニュアンスが違う気がするのだが、「取り敢えず、ここではそんな細かい事を議論するのは止めておこう」と、そう思った茜だった。
 そして、その少女は、ビシッとアカネを指差して、言い放つ。

「これは、宣戦布告よ!アマノ アカネ。次の試験では絶対にあなたに勝ってみせるからっ!」

 それを聞いた茜は、只、呆気(あっけ)に取られている。

「…何?言ってるのか、解らないわ…。」

 言葉は理解出来るのに、その意味する所が解らない、と言う事が、時として有る物である。茜は困惑した表情を、ブリジットの方へと向けるが、ブリジットは肩を竦(すく)めて見せるのみだった。
 そんな、向かい合う三人の様子に気付いた他の生徒達は、歩道を教室へと向かっていた足を止め、遠巻きに眺めている。その少女は、そんな雰囲気等(など)には構わず、続ける。

「分からない女ね!あんたなんか…」

 その時、遠巻きに眺めていた生徒達を掻き分ける様に飛び出して来た、一人の背の高い女子生徒が、啖呵(たんか)を切っているその少女の後頭部を、平手で勢い良く張った。

「Autsch!(痛(いった)い!) 何するのよ、イツキ!」

 その少女は振り向いて、その背の高い女子生徒に向かって声を上げた。

 

- to be continued …-

 

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