WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第6話.12)

第6話・クラウディア・カルテッリエリ

**** 6-12 ****


 それから一週間後、予定通り前期中間試験は実施された。
 試験前の一週間と試験期間中の一週間は何方(どちら)も、茜とクラウディアが接触する機会は無く、茜がクラウディアを寮で見掛ける事は有っても、クラウディアの側が茜を無視する状況が、依然として継続していた。
 避難訓練の後、あの昼食の時に少しでも会話が有った事が幻だったかの様に思えて、茜には少し物寂しく思えるのであったが、然(さ)りとて、クラウディアと接触が無い事が特段の不都合を引き起こす訳(わけ)でないのも、又、一つの事実ではあった。

 前期中間試験が終わると、翌日から部活動が再開された。
 試験終了から二日の後、2072年6月16日木曜日。兵器開発部には本社試作工場から、HDG-A01 用の武装である、「荷電粒子ビーム・ランチャー」と「ビーム・エッジ・ソード」が各三セット及び、「ディフェンス・フィールド・シールド」が四セット、それぞれが搬入された。
 そして同時に、陸上防衛軍演習場での HDG-A01 の武装と、LMF との火力運用に関する能力試験の日取りが、7月2日土曜日にと、正式に決定した事が天野重工本社より兵器開発部に伝えられた。
 これらの事に因り、茜とブリジットは武装のフィッティング・テストや、取り扱いの慣熟、試験項目とその手順の確認等(など)、運用試験当日迄(まで)に熟(こな)さなければならない作業に忙殺される事になったのである。
 そんな訳(わけ)で茜とブリジットの二人は、部活動が再開されて以降も、担当する作業の違うクラウディアとは、相変わらず接点を持つ事が無い儘(まま)日々が過ぎていった。

 そして、2072年6月24日金曜日。前期中間試験が終わって十日目の、その日の放課後。茜とブリジットが何時(いつ)も通り、部室へとやって来る。部室の中には立花先生と先輩達が既に揃っており、クラウディアのみがまだ来ていない様子だった。
 部室に入ってきた茜とブリジットを見た、先輩達の雰囲気が何時(いつ)もと違う様な気がして、誰とは無しに茜が尋ねる。

「あの、何か有りました?」

 茜の問い掛けに答えたのは、恵である。

「天野さん、発表されてる中間試験の成績順位、見た?」

 その問い返しを聞いて、茜は何と無くその場の雰囲気の理由を理解し、隣に立つブリジットと顔を見合わせるのだった。ブリジットは肩を竦(すく)める仕草で、苦笑いの表情をして見せた。

「いいえ、そもそも興味がありませんので。」

ボードレールさんも?」

 次いで、声を掛けてきたのは樹里だった。ブリジットは笑って、答える。

「あはは、わたしには、そもそも関係が有りませんので~。」

 その時、第三格納庫の外階段を、勢い良く駆け上る足音が聞こえて来た。その足音の主は、部室のドアを開けて言う。

「イツキ、来てます? あ、アマノ アカネ。」

 入って来たのは、クラウディアだった。茜は振り向き、クラウディアに抗議する。

「もう、いい加減、フルネームで呼ぶの、止めてくれない?クラウディアさん。」

「そう言うあなたは、どうしてわたしの事、ファースト・ネームで呼ぶの?そこの赤毛以外は、大体、ファミリー・ネームで呼んでるのに。」

「あ~、それに就いては申し訳(わけ)無いけど、あなたの名字は発音し辛(づら)いから。」

「あぁ、そう。そんな事より、イツキ!イツキは…来てない様ね。」

 クラウディアは茜とブリジットの脇を擦り抜け、樹里の席へと向かった。

「維月ちゃんなら、今日は来てないけど、一緒のクラスなんでしょ?カルテッリエリさん。」

 樹里がクラウディアに問い返す。

「最後の授業が終わったら直ぐに、姿を暗ましたんです、あのヤロー。」

「こらこら、女の子が『あのヤロー』なんて言っちゃダメよ~。」

 笑い乍(なが)ら、恵がクラウディアの言葉遣いを窘(たしな)めると、直美が余計な補足を加えるのだった。

「そうそう、それに『ヤロー』ってのは、対象が男の場合に使うんだよ。」

「解ってます。そんな細かい事はこの際、いいんです。」

「まぁ、落ち着きなさいって。ほっといても、嫌でも寮には帰って来るんだから、維月ちゃんも。」

 樹里は、そう声を掛けて、クラウディアの肩をポンと叩いた。
 一方で、部室の奥から立花先生と共に様子を見ていた緒美が、茜とブリジットに声を掛ける。

「天野さんとボードレールさんの二人は、まだ状況が良く分からないって顔ね。」

 それに、ブリジットが問い返す。

「と言う事は、先輩方は状況が分かっている、と。」

「そうね~これを見たら、一発で状況が理解出来ると思うわ~。」

 そう言って樹里が、彼女の背後に有ったデスクトップ PC のモニターを、茜とブリジットの方へと向ける。茜とブリジットは、そのモニターへと近寄り、画面を覗き込んだ。そこには、その日の放課後になって学校から発表された、一年生の前期中間試験結果、成績上位三十名の名前が表示されていた。

 

- to be continued …-

 

※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。
※誤字脱字等の修正の他に、作品の記述や表現を予告無く書き換える事がありますので、予めご了承下さい。