WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第7話.06)

第7話・瑠菜 ルーカス(ルナ ルーカス)と古寺 佳奈(コデラ カナ)

**** 7-06 ****


「その話なら、大体同じでいいと思う。」

「そう?なら、良かった。」

 瑠菜の返事を聞いて、維月は胸を撫で下ろす心境で微笑むのだった。それに対し、瑠菜が語り出す。

「大体、わたしって中途半端なのよね。お母さんに似て、背は低いし、顔も何方(どちら)かと言うと日本人に近いでしょ。髪の毛と瞳と、肌の色だけ、お父さんに似ちゃったのよね。」

 今度は樹里が、真面目な口調で言葉を返す。

「あら、色白なのは羨(うらや)ましいじゃない?髪の色だって、黒髪は重い感じがするから、明るい色に染めたい人は多いだろうし。まぁ、学生の内は校則で禁止されてるから、みんな出来ないけど。」

 すると、維月がそれに続く。

「瞳の色も、コンタクトで変えたりする人も居るものね。そう言う人達からすれば、瑠菜さんは中途半端って言うより、寧(むし)ろ、理想的なんじゃない?」

「残念乍(なが)ら、そう言う人達とは趣味が合いそうもないなぁ。わたしからすれば、みんなみたいな黒髪や黒い瞳が羨(うらや)ましいもの。」

 瑠菜が返した、その言葉を聞いて、佳奈がポツリと言った。

「結局、無物強請(ないものねだり)なのよね~。」

 くすりと樹里が笑うと、瑠菜と維月は互いの顔を見合わせ、次いで、それぞれが佳奈の方へと顔を向けた。
 その反応には、佳奈の方が驚いたのだった。

「何?わたし、何か変な事、言った?」

「あ、いえ。寧(むし)ろ、物凄く的確。」

 驚いて目を丸くしている佳奈に、そう維月が答えると、瑠菜が続いた。

「佳奈さんにしては、突っ込みが的確過ぎて、ちょっと驚いた。」

「あぁ~何よ~ひどいなぁ。」

「だから、佳奈ちゃんは頭が悪い訳(わけ)じゃないって言ったでしょ?」

 相変わらずのニコニコ顔で、樹里は瑠菜にそう言って、又、微笑むのだった。

「そうね、今、実感した。早い内に認識を改める事が出来て良かった。」

「わたしは、佳奈ちゃんの同室の人が、話の通じない人だったらどうしようって心配だったんだけど。瑠菜さんで良かった、安心した。」

「うふふ、そうだね~樹里リン。」

 そう言って、樹里と佳奈の二人はクスクスと笑うのだった。そこで、維月も安心した様に言う。

「取り敢えず、わたしも、早々に上手くやって行けそうな人達と出会えて、良かった。」

「それは、わたしも同感。学科は違うけど、よろしくね、井上さん。城ノ内さんも。」

 瑠菜が微笑んでそう言うと、透(す)かさず、維月が言葉を返す。

「あ、どうせだったら、名前の方で呼んで貰えると嬉しいな。特に、瑠菜さんとは、同じ、月関係の名前だから。」

「月関係?」

 不可解な維月の言動に、瑠菜は直様(すぐさま)問い返した。

「瑠菜さんのお父さんは英語圏の人だから、『Luna』は月の女神の事でしょう?ローマ神話だっけ。」

「あぁ、わたしが生まれたのが、満月の夜だったらしいの。その夜の月が綺麗だったから、それにちなんで『ルナ』にしたんだって。漢字では『瑠璃色』の『瑠』に『菜の花』の『菜』なんだけど、この字を当てたのはお母さん。」

「じゃ、瑠菜さんの名前、アルファベットで書く場合は『R』じゃなくて『L』なのね?」

 話の成り行きを聞いていた、樹里が口を挟む。

「うん、そうそう。言われてみれば、確かに、わたしの名前は月関係だけど、井上さんは?」

「わたしの『イツキ』って、『維新』の『維』に、『三日月』の『月』って書くのよ。ね、月関係でしょ。」

 その回答に、先に反応したのは樹里である。

「あぁ、『イツキ』って、そう書くのね。わたしはてっきり、わたしの『樹里』の『樹(じゅ)』一文字で『イツキ』だと思ってた。」

「あぁ~実は、わたしが男だったら、そうなってたらしいのよね。うちは五人姉妹で、わたしが一番下なんだけど。両親は流石に五人目は男の子だと思って、男子の名前しか考えてなかったらしいのよね。残念乍(なが)ら結局、五人目も女子だった訳(わけ)だけど、幸い『イツキ』は男女どっちでも行ける名前だからって、その儘(まま)わたしの名前になったの。徒(ただ)、『樹木(じゅもく)』の『樹(じゅ)』一文字の『イツキ』だと、流石に男っぽいから、『維』と『月』を当てた方に変えたんだって。あと、うちの姉妹には、名前が尻取りになるって、謎ルールが有ってね…。」

「尻取り?」

 樹里が、不審気(げ)に聞き返した。

「長女は、両親の名前から一文字ずつ取って『麻里』なんだけど、その下が『里奈』『奈未』『未維』と続いて、わたしが『維月』になる訳(わけ)。」

 そこで瑠菜が机の引き出しを開け、メモ紙とペンを取り出すと、維月に渡して言うのだった。

「ごめん、ちょっと書いてみて貰える?」

「あぁ、いいよ。」

 紙とペンを受け取った維月は、両親の名前『麻敏』と『里子』を並べて書き、以降に姉妹の名前を列挙する。そして、その紙を瑠菜へと、差し出した。

「書くと、こんな感じ。」

 受け取った紙片を、佳奈と樹里も立ち上がって、瑠菜の横から覗(のぞ)き込むのだった。そして、瑠菜が先(ま)ず、声を上げる。

「あぁ、凄い。漢字でも尻取りになってるんだ。」

「ホントだ~。」

 無邪気に感嘆の声を上げる佳奈の隣で、樹里は維月に問い掛けるのだった。

「『イツキ』ってフラットな発音だと思ってたけど、この字だと、『イ』にアクセント?が来るのかしら。」

「あぁ、家族からは、『イ』が強いイントネーションで呼ばれるよね。え~と、動物の『狸(タヌキ)』と、同じイントネーション。」

「タ(・)ヌキ…イ(・)ツキ…ふぅん、次から気を付けるね。」

「いいよ、そこまで気を遣わなくても。呼びやすい様に、呼んでくれたら。」

 そんな、樹里と維月の遣り取りを横目で見つつ、瑠菜が声を上げる。

「取り敢えず分かった、維月さんに、それから、樹里さん、ね。」

「さん、何て付けなくてもいいよ、わたしは。」

 と、維月は瑠菜に提案するのだが、それには瑠菜が遠慮を示すのだった。

「そう言われても。…まぁ、慣れたら考える。」


 こうして、瑠菜は佳奈と樹里、そして維月と出会ったのだった。
 この後、四人は夕食の時間迄(まで)「おしゃべり」を続け、その儘(まま)夕食も共にしたのである。入学式は明後日の予定で、翌日は休日扱いだった事もあり、四人は街へと不足分の日用品を買い足しに出掛けたりもした。
 四人の天神ヶ崎高校での寮生活は、こんな具合に大きなトラブルも無く、スタートしたのである。

 

- to be continued …-

 

※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。
※誤字脱字等の修正の他に、作品の記述や表現を予告無く書き換える事がありますので、予めご了承下さい。