WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第7話.15)

第7話・瑠菜 ルーカス(ルナ ルーカス)と古寺 佳奈(コデラ カナ)

**** 7-15 ****


「まぁ、お金の事は単純に時間給って訳(わけ)でも無いから。作業内容次第でって事で、その都度判断でいいんじゃない? 井上さんも余り堅苦(かたくる)しく考えないで。会社の方は最終的な責任を全部、あなた達に押し付けたりはしないから。」

「はい…では、取り敢えず、そう言う事で、いいです。すいません、なんだか我が儘(まま)言ってるみたいで。」

 維月は緒美と立花先生へ向かって、軽く頭を下げる。

「いいのよ。ソフト絡みは、わたし達には専門外だから、上級生だけどフォローしてあげられそうにないし。」

 緒美が恐縮気味にそう言うと、立花先生が言葉を繋げる。

「それに関しては、本社のスタッフが必要なフォローが出来る様に話は通して置くから。取り敢えず、中間試験期間が明けたら、一ヶ月ほど本社の開発から人が来る予定だから、先(ま)ずはその人達からレクチャーを受けて貰う事になるかしらね。あぁ、それ迄(まで)に、必要な機材の手配とかも、しておかないといけないわね…。」

「ともあれ、協力して呉れる人が見つかって良かったわ。今日は日曜日なのに、来て貰ってありがとう、城ノ内さん、井上さん。今日の所は、これで終わりって事で。又、詳しい事は試験期間が終わってからにしましょう。明日からは部活も休止期間になるし。」

 と、緒美がここで切り上げようとすると、樹里が言葉を返した。

「あの、佳奈ちゃん達は今日、何時頃迄(まで)の予定ですか?」

「あぁ~、試験期間前だし、四時頃には切り上げる積もりだけど?」

 樹里の問い掛けに答えたのは、恵である。

「わたしはこの後、特に用事も無いので。佳奈ちゃん達を待ってる間、その…仕様書とか、差し支え無かったら見せて頂けないかな、と。」

「あぁ、それなら、わたしも。瑠菜さんから話には聞いていて、ちょっと興味有ったんです。」

 維月も樹里に同調して、そう申し出るのだった。それを聞いて、緒美が視線を立花先生へと向けると、立花先生は静かに頷(うなず)いた。
 緒美は黙って席を立つと、仕様書を保管してある書庫の前へと移動し、しゃがんで下の段から二冊の仕様書ファイルを取り出した。二冊の内一方は、立花先生が使用している、付箋等が貼り付けられた物である。

「どうぞ。このファイルは持ち出し禁止だから、ここで読んでね。」

 長机の上に二冊のファイルを並べ、緒美は樹里と維月の方へと押し出す。

「成る程、これですか。」

「確かに、瑠菜さんの言ってた通り、凄いボリューム。」

 樹里と維月は、口々に感想を漏らすのだった。

「それは全体の仕様書だから、制御関連の記述は少ないと思うけど。」

「いえ、制御する対処がどう言う物か分かってないと、どう制御したらいいのか、分からないじゃないですか。だから、一通り理解はしておかないと。」

 そう言い乍(なが)ら、早速、樹里は仕様書の頁(ページ)を捲(めく)り出す。それは、維月も同様だった。

「開発の方(ほう)に、ソフトの設計仕様書が有る筈(はず)だから、今度、そっちも送って貰えるよう、手配しておくわ。」

「それはそれで、お願いします、先生。」

 立花先生の提案に、樹里は仕様書の記述を目で追い乍(なが)ら答えた。その時、ふと、維月が顔を上げ、立花先生に問い掛けた。

「そう言えば、さっき、試験明けたら一ヶ月程って仰(おっしゃ)ってましたけど…そうすると、日程は夏休みに食い込む予定ですか?」

 その問いには、元の席に戻り、座り直した緒美が答える。

「あぁ、うん。七月一杯は、今度搬入される LMF のテストになると思うの。八月の最終週にもテストの予定が入ってるから、休めるのは八月中の三週だけになっちゃうけど、あなた達は帰省の予定とか、大丈夫かしら?」

 今度は樹里も仕様書から顔を上げ、言った。

「帰省の予定は、まだ決めてなかったんですけど。寧(むし)ろ、夏休み中、寮に残ってても大丈夫なんですか?」

 その質問には、恵がさらりと答える。

「寮の方には、予定を出しておけば大丈夫よ。毎年、部活の都合とか、何だかんだで半数位(ぐらい)の人が、寮に残ってるみたいだし。去年は、わたし達もお盆の前後二週間ほど帰省しただけで、あとは毎日部活やってたものね。」

 それ対して、維月が思わず突っ込みを入れる。

「夏休み、潰れるのが前提なんですか?」

「そこは御相談、って事よ。夏休みをフルに休みたいって向きなら、本社の応援とか相応の手当を考えないといけないから、遠慮しないで言ってね。別に、夏止み中の活動を無理強(むりじ)いする気は無いから、ご実家とも相談しておいて。中間試験が終わったら、成(な)る可(べ)く早く予定を出して貰えると、助かるわ。」

 半分、冗談で言った事に、立花先生から極めて真面目に回答をされ、恐縮する維月だった。
 その雰囲気を察した樹里が、フォローを入れる。

「先生、今のは維月さんの冗談ですから。」

「あら、そう? でも、先輩も学校も会社も、休み無しで働け!とは言わないし、そうならない様に監督や調整するのがわたしの役目だから。休暇返上でも時間外作業でも、必要で有るならやって貰って構わないけど、それが過ぎる様なら止めるわよ、覚えておいてね。」

 立花先生は優し気(げ)な笑顔で、そう言い、結んだ。


 以上が、兵器開発部に瑠菜と佳奈が参加し、それに樹里と維月が合流する事になった顛末である。
 この後、前期中間試験が終わり二週間程が経って、LMF が天神ヶ﨑高校へ搬入され、それに Ruby が搭載される事となる。その作業に先駆けて、本社開発部から Ruby と LMF それぞれのソフト担当者が派遣され、LMF のオペレーションや Ruby の搭載作業等に就いて、樹里と維月に対してレクチャーが行われた。
 当初は自信無さ気(げ)な発言をしていた樹里だったが、維月も含めて二人共、オペレーションに限れば実務には支障のない能力を認められ、必要に応じて本社からフォローを受けられる条件で、一年生であり乍(なが)ら樹里が天神ヶ﨑高校兵器開発部側のソフト担当責任者に確定する。維月に就いては当初の希望通り、樹里のアシスタントと言う事で、正式な入部は見送られたのだった。


 一方、直美から CAD の講習を受けていた瑠菜と佳奈であるが。CAD の操作に関しては直美の指導により、ほぼ習得したものの、製図に就いては授業よりも先行して学んでいる事もあり、急激な上達は難しい状況となった。教えている直美自身も学生であり、経験豊富と言う訳(わけ)でもなかったので、指導には難渋する場面も多分に見られる様になったのである。
 加えて、夏休み中には緒美と直美の二人が『自家用航空操縦士免許』を取得する為、飛行機部の対象者と共に三週間の合宿講習に出掛ける事が決まっており、留守を預かる恵一人では二人の CAD 製図を指導するのは難しい、と言う局面が訪れたのだった。と言うのも、恵は緒美や直美に比べて、CAD 製図が余り得意ではなかったのである。
 因(ちな)みに、何故『自家用航空機操縦士』の資格が必要となるのか、に就いてなのだが。HDG の飛行能力付与は当初から存在した計画なのだが、その能力試験の実施にはチェイス機に因る飛行状況の確認や、事故が起きた際の迅速な対応が不可欠だと、本社側が指摘した事に『自家用航空機操縦士』資格取得の案件は端を発する。飛行試験の都度、『飛行機部』に協力を求める、と言う方法も考えられたのだが、機材は『飛行機部』から借用するにしても、操縦は『兵器開発部』自前でも出来る様になっておいた方がいいだろうと言う事になり、夏休みの時点で免許取得の条件として法令に定められた「十七歳」に達している、緒美と直美が操縦要員として選ばれた、と言うのが、事の大まかな経緯である。
 その様な事情で上級生二人が不在となる上、折から本社開発部へと提出される図面に不備が散見されていた事も有り、それを見兼ねた実松課長と、現役時代から実松課長とは昵懇(じっこん)であった前園先生が、瑠菜と佳奈に対する二週間に渡る CAD 製図特訓の講師を買って出る事になる。


 こうして『兵器開発部』の人員が補強された事に因り、緒美のアイデアや仕様書の内容が次々と図面化されて、本社へ届けられる様になったのである。それに呼応する様な本社技術陣の努力と労力を得て、HDG の開発と試作機製作は進展を続け、年が明けて二月の末、遂に HDG-A01 試作機が天神ヶ﨑高校へと搬入される運びとなるのだった。
 しかし、試作機が搬入されて以降、緒美達は HDG-A01 のテスト・ドライバー担当者の人選と、ディフェンス・フィールド・ジェネレーターのデザインに就いて頭を悩ませ続ける事になる訳(わけ)なのだが、そのれら課題の解決には、茜が入学して来る四月を待たねばならなかったのは、既に語られた通りである。

 

- 第7話・了 -

 

※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。
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