WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第8話.03)

第8話・城ノ内 樹里(ジョウノウチ ジュリ)

**** 8-03 ****


 一方、トランスポーターに積載されている LMF の方へと向かった樹里は、持参していた愛用のモバイル PC を LMF のコンソールへと接続しようとしていた。因(ちな)みに、樹里の愛機は、立花先生が普段使用している物より、一回り小さいタイプのモバイル PC である。
 LMF には既に電源車からのケーブルが接続されており、電気の供給が可能な状態となっていた。
 機体後方、メイン・エンジン下部のスペースから機首方向を眺(なが)めると、LMF の機体中心部には直立する様に円筒状の構造が有り、砲塔部はその上部に装備されている。操作用コンソールは、その円筒構造下部後方側に設けられている、分厚いメンテナンス用ハッチの中に用意されていた。
 直美達は外部電源ケーブルの接続確認を終えて、メンテナンス・ハッチの前で樹里の作業を眺(なが)めている。
 樹里はトランスポーター荷台の床面に置かれたモバイル PC の前にしゃがみ込んで、モバイル PC の起動状態を確認し終えると、モニター用通信ケーブルをモバイル PC と LMF のコンソールの双方に接続し、LMF の外部電源受電ブレーカーのトグルスイッチに手を掛けた。

「じゃ、LMF に外部電源、投入しま~す。」

「はい、やってちょうだい。」

 樹里の宣言に、そこに居た四名の内、最も後列から直美が答えた。
 樹里が受電ブレーカーの、少し硬いスイッチを押し上げると、スイッチ傍(そば)の受電パイロットランプが白く点灯した。続いて、LMF の制御系、つまり Ruby の起動スイッチを押すと、起動状態を表示する LED が先(ま)ず緑色に点灯し、暫(しばら)くして赤色の点滅に変わる。樹里は膝先のモバイル PC に視線を移し、Ruby との通信アプリケーションの状態モニター画面を開いて、起動情報がスクロールして行くのを確認した。

「はい、Ruby がスリープ状態から再起動中です。システムの自己チェックに五分くらい掛かりますけど~今の所、異常は無さそうですね。」

「オッケー、じゃぁ、もう暫(しばら)く Ruby 待ちね。」

 腰を屈(かが)め、瑠菜を間に挟んで樹里の背後から PC のモニターを覗(のぞ)き込んでいた直美は、少し身を引いて、そう言った。メイン・エンジン下のスペースは、人が立った儘(まま)では入る事が出来ない高さなので、頭をぶつけない様にと、直美は右手を頭上に挙げて、頭上の機体下面を右手で触れている。

「所でさ、樹里。カルテッリエリと佳奈、あの二人を組ませちゃって、平気?」

 樹里の背後から様子を見ていた瑠菜が、中腰の姿勢の儘(まま)、樹里に話し掛けた。

「大丈夫、大丈夫。カルテッリエリさんの方がナーバスになってた位(ぐらい)だから。佳奈ちゃんは、そんな事、気にしないし、安藤さんも一緒なんだし、ね。」

「そうかな~?天野の時みたいに、変に突っ掛かってたりしてなきゃいいけど…。」

 心配気(げ)な瑠菜の左肩を叩いて、左隣に居た恵が言う。

「平気よ。あれでも、カルテッリエリさんは相手を選んでやってるもの。天野さんは、あの手の挑発には乗らないから、最近じゃ、相手にしてるのは専(もっぱ)らボードレールさんの方だしね~。古寺さんも、あの手の挑発には『我関せず』のマイペースな人だし、そう言う相手に、無駄に突っ掛かっては行かないわよ。」

「…なら、いいんですけど。」

「あはは、森村が言うんだから、間違い無い。」

「何、部長みたいな事言ってるんですか、新島先輩。」

 そう言って、樹里は笑うのだった。

「さて、それじゃ、わたしは HDG の方、リグに電源が繋がったか見て来ます。」

「あ、わたしも行く。森村、こっちはお願いね。」

「は~い。」

 瑠菜と直美は LMF が積載された荷台後部に降ろされた、跳ね上げ式のスロープを伝って地上に降りると、HDG がメンテナンス・リグごと積み込まれたトランスポーター一号車へと向かった。二人と入れ替わる様に緒美が、LMF が積載されている二号車の荷台へと上がって来る。
 真っ先に緒美に気が付いた恵が、振り向いて声を掛けた。

「あ、部長。ご苦労様~、早かったね。」

「まぁ、顔見せだけ、だったから。飯田部長はまだ、彼方(あちら)のお相手してるけど、こっちは試験の準備が有るからって、先生と一緒に、早々に退散して来たの。」

「飯田部長が言ってた、先方の反応って、どうだったの?」

「あはは、何だか説明し辛(づら)い、複雑な表情だったわね。大人のあんな表情見たのは、初めてかも。」

 真顔での緒美の説明を聞いて、くすくすと笑う恵と樹里だった。

「で、こっちの状況はどう?城ノ内さん。」

「今、Ruby の起動自己チェック中です。もうそろそろ、終わる筈(はず)です。」

 それから間もなく、樹里の PC モニター上でチェック画面のスクロールが止まり、数秒の後、LMF のメンテナンス・コンソール部のスピーカーから Ruby の合成音が聞こえた。

「おはようございます。天野重工製 GPAI-012(ゼロ・トゥエルブ)プロトタイプ、Ruby です。只今、コンソール限定モードで、スリープ・モードから復帰しました。コンソールに接続しているのは樹里ですか?」

「そうよ、おはよう Ruby。部長と恵先輩も一緒に居るよ。」

「そうですか。学校の格納庫と違って、外部センサーからの情報が無いので、周囲の状況が何も分かりません。現在時刻を内蔵時計(インターナル・クロック)で確認しました。予定通りなら、現在位置は試験場ですね。」

 樹里の背後から身を屈(かが)めて、緒美が Ruby に指示を出す。

「うん、そう。それで、LMF をトランスポーターから降ろしたいの、直(ただ)ちにフル・モードに移行して LMF を起動してちょうだい。」

「トランスポーターから降りるのは、ブリジットの操縦で行いますか?」

 Ruby の質問に対し、緒美は少し考えてから、答えた。

「トランスポーターから降りる時に、転倒でもしたら危険かもね。いいわ、あなたの自律制御でやりましょうか。荷台からホバーで降りるのは不安定になりそうだから、中間モードで歩いて降りてちょうだい。」

「分かりました。コンソール限定モードからフル・モードへ移行、LMF の制御を開始します。LMF 制御電源確保の為、APU をスタートします。LMF 機体周辺で作業中の方は、退避して下さい。」

 緒美の指示を受け、即座に Ruby は指示を実行に移す。樹里はモニター・アプリの終了操作を行ってから、コンソールから通信ケーブルを引き抜き、Ruby に言った。

「じゃぁ、わたし達はここから離れるね。LMF の制御が確立したら、何時(いつ)ものチャンネルに接続して。そっちで、あなたの状態をモニターしてるから。」

「ハイ。所で、樹里。今日、麻里はここに来ていますか?」

 立ち去ろうとする間際、Ruby がそう樹里に問い掛けるのだった。

「残念だけど、今日は来られないそうよ。代わりに、安藤さんが来てるの。モニターと接続が確立したら、お話し出来るよ。」

「分かりました。LMF の起動作業を続行します。」

 樹里と恵、そして緒美の三人は、LMF のメンテナンス・ハッチを閉じてロックを確認し、トランスポーター荷台後部のスロープを降りると、モニタリング用コンソールが設置されている天野重工の天幕へと向かった。

 

- to be continued …-

 

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