WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第8話.10)

第8話・城ノ内 樹里(ジョウノウチ ジュリ)

**** 8-10 ****


 LMF の方へ目をやると、ブリジットが乗り込んでいるコックピット・ブロック部が地面に向かって降ろされていく。同時に、コックピット・ブロック下面の地面からは、土煙が舞い上がり始める。コックピット・ブロックの、ホバー・ユニットが稼働しているのだ。ブリジットが解放されていたキャノピーを閉鎖すると、巻き上がる土煙が更に増加し、ホバー・ユニットの出力が増している事が外からも窺(うかが)えた。
 間も無く、コックピット・ブロックが LMF との接続から解放されると、一瞬、コックピット・ブロックが沈み込むが、地面に接する事は無く、ゆっくりと前進を始めるのだった。

「アイロンの分離、終了。そちらへ戻りま~す。」

 天幕下、モニター・スピーカーからブリジットの報告が聞こえると、続いて Ruby の合成音が響いた。

「HDG とのドッキング・シークエンスを開始します。自律行動を開始して宜しいでしょうか?緒美。」

「自律行動承認。続けて、Ruby。」

 緒美は直様(すぐさま)、許可を出した。
 ブリジットが操縦するコックピット・ブロックが天幕の方へ向かう途上、茜の前を通過する頃、Ruby は LMF のホバー・ユニットを起動させ、機体の向きを HDG の方へと向けるのだった。LMF の周囲にも土煙が舞い上がり、その機体もゆっくりと HDG の方へ向かって動き出す。
 LMF が茜の背後まで近づいて来ると、HDG の側はドッキング時にスラスター・ユニットが LMF と干渉しない様に、地面とスラスター・ユニットとが平行となる初期状態の位置へと、ユニット本体を振り上げる。HDG に接続した儘(まま)でスラスター・ユニットが初期状態に戻ると、重心が後方へ移動してしまって HDG が直立を維持出来なくなるので、茜は背中を丸める様にして前傾姿勢になり、LMF とのドッキングを待つ。
 そして、LMF のドッキング・アームが HDG の接続ボルトを捕らえ、接続と固定が完了すると、ドッキング・アームが引き上げられて、HDG が LMF の中央前面にセットされる。この状態で HDG が上半身を動かすと、背部のスラスター・ユニットとドッキングした LMF 上部構造とが干渉する為、HDG は腰から上の動作範囲が制限される。その制限を解除する為、HDG は背部のスラスター・ユニットを、その運転を停止した後に、 LMF 胴体の前面中央に内蔵されたクレーン・アームへと引き渡し、HDG から取り外されたスラスター・ユニットは、上半分が露出した状態ではあるが、LMF 本体側に格納される。

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「HDG とのドッキング・シークエンス、終了しました。」

 天幕下、Ruby の合成音声が響く。

「オーケー。天野さん、LMF とドッキングしたモードで標的選択射撃試験を始めるけど、準備は良いかしら?」

「いいですけど、部長。LMF のプラズマ砲も使っちゃうと、標的に穴が空くだけでは済まないかも、ですよ?」

 茜の返事を聞いて、緒美は視線を安藤の方へと向ける。安藤は微笑んで頷(うなず)いて見せた。緒美は、茜に伝える。

「構わないわ。出来れば、三分以内に赤いターゲット板、全部、吹き飛ばしても良いわよ。そうなったら、その時点で試験終了だけど。」

「あはは、頑張ってみます。」

 茜は、LMF を低速で前進させ、フィールドの中央付近で停止させた。そして HDG のマニピュレータに因って保持している荷電粒子ビーム・ランチャーを、前方に向けて構える。

「では、スタート。」

 緒美の指示で、ターゲットの制御が開始される。最初に起き上がったのは、南側列の西側から二番目の赤いターゲット板だった。
 茜は LMF を加速させて、その標的との距離を詰める。先程と同じように、100メートル程迄(まで)に接近して手持ちの荷電粒子ビーム・ランチャーで一撃を加えた。その直後、今度は西側列南側から三番目の赤いターゲットが起き上がった。
 茜は LMF の進路をそちらへと変え、アプローチを掛ける。その最中(さなか)、東側列に赤と青の、二つのターゲットが起き上がった。先程の、HDG 単独での時には対処出来なかったパターンだったが、今回は背後の標的に就いては Ruby が感知し、自動で標的の選別と照準を行うのだった。勿論、射撃のタイミングには、茜の指示が待たれる。
 LMF は西向きに走行し乍(なが)ら上部ターレットを旋回させ、背後の標的にプラズマ砲の狙いを定めた。そうこうする内、茜の前面側、西側の標的が荷電粒子ビーム・ランチャーの射撃圏内へと近づき、先(ま)ずは此方(こちら)に荷電粒子ビームを撃ち込む。そして、直様(すぐさま) LMF の向き反転させて進路を東側へと向けるが、その間もターレットは旋回を行い、プラズマ砲は東側の標的への指向を維持している。
 その時点で、ターゲット迄(まで)の距離はまだ400メートル程ど有ったが、LMF のプラズマ砲は HDG の荷電粒子ビーム・ランチャーよりも射程が長いので、茜は接近するのを待たずにプラズマ砲で砲撃を加えた。轟音と共に閃光が走ると、東側の赤いターゲット板の一枚は上半分が吹き飛ばされたのだった。
 その後は同じ様に、手持ちの荷電粒子ビーム・ランチャーと LMF のプラズマ砲に因る異標的同時射撃を織り交ぜつつ、LMF がフィールド内を縦横無尽に移動し乍(なが)ら、起き上がる赤いターゲット板を次々と撃破していったのだった。
 残念乍(なが)ら、三分間で全ての赤いターゲットを吹き飛ばすのには至らなかったのだが、それでも半数を超える赤いターゲット板がプラズマ砲の餌食となっていた。そして、今回は撃ち漏らした標的は皆無であった。

「はい、これで、予定の全試験項目終了。お疲れ様、天野さん。こっちに戻ってちょうだい。」

 緒美はヘッド・セットを通じて、茜に呼び掛けた。

「はい、戻ります。 あ、Ruby。ランチャーを返すわ、格納してね。」

「ハイ、荷電粒子ビーム・ランチャーを受け取ります。」

 LMF はフィールドの奥の方で機体の向きを天幕の方へ向け終えると、旋回していたプラズマ砲のターレットを初期位置へと戻し、ウェポン・ベイを開いて空の武装供給アームを茜の肩越しに前方へと展開した。茜は右マニュピレータで保持していた荷電粒子ビーム・ランチャーを左マニピュレータに持ち替え、左肩前方で待つ武装供給アームへと荷電粒子ビーム・ランチャーを渡す。

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 荷電粒子ビーム・ランチャーを受け取った武装供給アームは、茜の後方へと回転し、荷電粒子ビーム・ランチャーは LMF の機体内部へと格納された。そして、茜はゆっくりと LMF を前進させたのだった。

「よーし、標的の撤収作業、始めるぞー。」

 緒美達の隣の天幕下で試験の状況推移を見ていた天野重工の作業員達は、三台のトラックの荷台に分乗して、茜の操る LMF とは入れ違いに、フィールドの方へと出て行く。

「今日のデータ、コピーを持って帰られます?」

 樹里はコンソールのチェックをし乍(なが)ら、安藤に問い掛けた。

「あ~どうしよう。いや、後で良いから、纏(まと)めてネットで本社の方へ送っておいて。アドレスは何時(いつ)もの、わたし宛ので。解析が済んだら、又、結果はお知らせするわね。」

「分かりました。では、後で送っておきますね。」

 天野重工の天幕の前、8メートル程離れて、LMF が左側面を見せて停止する。LMF が接近するのにつれて、ホバー・ユニットから吹き出した気流が天幕の下にも流れ込んでいたが、LMF が停止するのに合わせて、それも収まるのだった。

「天野さん、LMF から HDG を切り離して、あなたは一号車へ装備を降ろしてね。お疲れ様。」

「は~い。」

 茜は左手を軽く挙げ、緒美に了解の合図を送る。それを見てから緒美は振り向き、後列で直美と談笑していたブリジットに声を掛ける。

「天野さんが、HDG を切り離したら、コックピット・ブロックを LMF に再接続してね、ボードレールさん。」

「あ、はい。じゃ、準備します。」

 ブリジットは傍らの机上に置いてあったヘッド・ギアを取り上げると、天幕の後方側に駐機してあった『アイロン』へと向かった。

「それじゃ、わたしは HDG のメンテナンス・リグを立ち上げておきますか。」

 そう言って席を立つ直美を、安藤が呼び止めるのだった。

「あぁ、ちょっと待ってて、直美ちゃん。一号車を前に回して貰(もら)うから。」

 安藤は作業着のポケットから携帯端末を取り出すと、畑中を呼び出す。

 

- to be continued …-

 

※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。
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