WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第8話.11)

第8話・城ノ内 樹里(ジョウノウチ ジュリ)

**** 8-11 ****


「あ、畑中さん。…はい、トランスポーターを…はい、そうですね。…はい、あ、ちょっと待って下さいね。 緒美ちゃん、LMF の積み込みはどうやる、って畑中さんが。」

「はい、降ろす時と同じで、Ruby の自律制御でやってしまうのが簡単で良いかな、と。」

「だよね。もしもし、畑中…はい、緒美ちゃんは Ruby の自律制御でって…はい、繋留は後で良いかと…ええ、では、お願いします。」

 ポケットに携帯端末を仕舞い乍(なが)ら、安藤は緒美に言った。

「直ぐに、トランスポーターを動かして呉れるって。」

「畑中先輩、今、どこに居るんですか?」

 そう安藤に聞いたのは、緒美の後列の長机に、後ろに回した手を付いて寄り掛かっていた恵である。

「あぁ、西側の一番奥から順番に、標的の解体作業中だって。」

「一番、遠いじゃないですか。」

 安藤の答えを聞いて、呆(あき)れた様に声を上げたのは直美だった。

「そこから歩いてこっち迄(まで)って、結構大変よね。トラックで来ると、その間、撤収の積み込み作業が止まっちゃうし。」

 恵は左後方に居る直美の方を向いて、撤収作業の停滞に対する懸念を口にする。そして、今度は緒美の方へ向き直り提案する。

「ブリジットを迎えに行かせたら?鬼塚。」

「そうね。」

 直美の提案をあっさりと受け入れる緒美を見て、安藤が口を挟(はさ)む。

「ちょっと、コックピット・ブロックは一人乗りでしょ?大丈夫かしら。」

 それを聞いて、直美は一笑いして、言った。

「エンジン・ポッドの上に座れますよ、シートは有りませんけど。飛ばさなきゃ、ちゃんと掴まってれば落ちたりしないでしょ。男の人なんだし。」

「えぇ~大丈夫かな。」

「では、そう言う事で…。」

 直美の意見を聞いても不安気(げ)な安藤だったが、その様子を緒美は意に介さず、ヘッド・セットを通じてブリジットに指示を出すのだった。

「…あ、ボードレールさん。ごめんなさい、一つお願いごと。西側の標的の奥の方に、畑中先輩を迎えに行って来て呉れないかな。」

「良いですけど、お客さん用のシートは有りませんよ。」

 モニター・スピーカーから聞こえて来たブリジットの返事を聞いて、失笑したのは直美だった。ブリジットの返事は短かったが、その語感から直美と同じ様な事を考えているのが伝わって来たのだ。

「まぁ、それは我慢して貰いましょう。こっちに来る時は先輩が落ちない様に、ゆっくり目で走ってあげてね。」

「解りました。行ってきます。」

 モニターからブリジットの声が聞こえて間も無く、天幕の後方側から割といい勢いで『アイロン』が飛び出して行くのを、その場で一同は見送るのだった。
 少し唖然としていた安藤だったが、気を取り直す様にポケットから携帯端末をもう一度取り出し、言った。

「取り敢えず、畑中さんには迎えが行くって、伝えておくわね。」

「はい。願いします。」

 緒美はそう返事をすると、安藤に微笑むのだった。
 安藤が畑中と連絡を取っている間に、立花先生が緒美や樹里の後列の長机を後側を通って安藤の右手側へと回り、通話の終わった彼女に話し掛ける。

「それで、設計三課の代表として、今日の試験は如何(いかが)でした?安藤さん。」

「そうですね…。」

 安藤は通話の終わった携帯端末を作業着のポケットへ押し込み乍(なが)ら、答える。

「トラブルの二つや三つ、起きる物と思っていましたので、何事も無く全試験項目が、こう、すんなりと終わったのには、少し拍子抜けした、と言いますか。勿論、今日のデータを解析もする前から、軽々しく結論は言えませんけど、まぁ、見たまんまの感想としては、制御系の完成度は可成り高いのではないかな、と言うのが、正直な所感ですね。とても、二ヶ月前に電源系で初歩的なトラブルを起こしていた物とは、思えませんよね。」

「あはは、あの後、かなりバグ潰し、やりましたからね~。」

 安藤の所感を受けて、樹里はコンソールを操作し乍(なが)ら、笑ってそう言った。

「うん、勿論それは知ってるんだけど。このレベルの複雑な制御系が、二ヶ月足らずで一気に完成度が上がるなんて、そうそう有る事じゃないのよ。 まぁ兎も角、結論は今回のデータ解析後と言う事になりますけど、立花先生。」

 安藤は樹里に一言返した後、立花先生へ結論に就いて念押しをする。

「データの解析には一ヶ月位(くらい)?」

「う~ん、HDG と LMF の制御系、特に火器管制辺りのは、データが整ってそうだから二週間位(くらい)で終わりそうな気がしますけど。Ruby の評価に関しては二、三ヶ月掛かっちゃうかも知れません。あぁ、でも、Ruby の開発に関してはこっち側のテーマだから、学校の皆さんには関係無い話でしたね。」

「そうね。うん、了解したわ。ありがとう、安藤さん。」

「いいえ。」

 安藤の返事を聞いて立花先生は、その場を離れようとしたが、直ぐに足を止め、振り向いて緒美に声を掛けた。

「ちょっと、飯田部長の所へ行って来るから、こっちはお願いね緒美ちゃん。」

「はい。あ、私もご一緒した方が?」

「う~ん、いや、いいわ。こっちの終了作業の方を、お願い。」

「わかりました。」

 颯爽(さっそう)と防衛軍の天幕へと向かって歩いて行く立花先生の背中を見送って、安藤がポツリと言った。

「立花先生も、色々と調整役、大変よねぇ…。」

 それに答えたのは、直ぐ傍(そば)にいた樹里だった。

「あはは、そうですね~それはそうと、会社の方(かた)達からも、何だかすっかり『立花先生』で定着しちゃいましたね。」

「あら、そう言えばそうね。」

 そんな樹里と安藤の遣り取りに、恵が参加する。

「そう言えば、畑中先輩も前は『立花さん』だったのに、何時(いつ)の間にか『立花先生』って呼ぶ様になってるよね。」

「あれ?そうだったかしら…」

 と、緒美が宙を見詰めて記憶を辿(たど)っている所に、畑中を乗せたブリジットの『アイロン』が、天幕の前に到着した。
 畑中は『アイロン』から飛び降りると、天幕下の安藤に向かって言うのだった。

「立花先生、向こうの天幕の方へ歩いて行ったけど、何か有ったの?」

 その発言を聞いて、安藤と樹里、緒美と恵、そして直美が揃(そろ)って爆笑するのだったが、勿論、その理由は畑中には解らないのであった。


- to be continued …-

 

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