WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第9話.01)

第9話・天野 茜(アマノ アカネ)と鬼塚 緒美(オニヅカ オミ)

**** 9-01 ****


 火力運用試験の実施日から数えて四日目の、2072年7月6日、水曜日。既に放課後となり、兵器開発部の部室には、維月を加えた部員一同が集まっていた。
 夏期休暇まで残す所、あと十日となっており、教職員は何かと忙しい様子で、講師扱いである立花先生も学校側の資料製作の手伝いだとか何やらで、この日は、たまたま部室には不在だった。
 先の火力運用試験で HDG-A01 の能力検証には一区切りが着いたとは言え、ブリジットが装着(ドライブ)する予定のB型の納入に備えて、A型で確認しておきたい事項は、まだまだ存在していた。徒(ただ)、A型で空中機動のデータが増える度(たび)に、アップデートの名目でB型の納期がずるずると先送りになっている状況には、緒美と、テスト・ドライバーであるブリジットの二人が特に、もどかしい思いを抱えてはいたのである。
 当初、夏休み期間中、七月末だったB型の納入予定は、八月中になり、八月末になり、遂には、九月中と言う事で、現時点では夏休み明け迄(まで)に完成しない予定に変わっていた。
 そんな状況で、この日に予定されている試験項目は、空中の HDG-A01 と陸上の LMF との、データ・リンクの検証である。水平方向及び、垂直方向それぞれに就いて、どれ位(くらい)離れても LMF、つまり Ruby とのデータ・リンクが維持出来るのか。勿論、設定されたスペックが存在するので、それが実現出来ているのかどうかの検証である。
 茜とブリジットは既にインナー・スーツに着替え、試験内容の最終確認をしていた、正(まさ)にその時だった。
 時刻は、16時49分。突然、女子生徒の声で予め録音されていた放送が、校内に鳴り響く。

「これは訓練ではありません。エイリアン・ドローンに関する避難指示が発令されました。全校生徒は自警部の誘導に従って、速やかに地下シェルターへ避難してください。これは訓練ではありません。繰り返します…」

 同じ内容の放送が六回、繰り返されて、放送は終わった。
 部室内に居た一同は顔を見合わせ、そして立ち上がるが、クラウディアのみは席に座った儘(まま)、慌てて自分のモバイル PC を開くと、何やら操作を始めたのである。

「今…訓練じゃないって言ってた、よね?」

 最初に声を発したのは瑠菜だった。すると、今度は男性職員の声で、追加のアナウンスが聞こえて来る。

「部活動で校内に残っている生徒は、各自、近くの校舎の地下へ、速やかに、移動して下さい。各部活の責任者は、人数の確認をして自警部の担当者に申告してください。それから、寮に居る生徒は寮の地下通路に集合の後、自警部担当者の指示に従って下さい。これは訓練ではありません。各自、速やかに、落ち着いて行動して下さい。繰り返します…」

 男性職員のアナウンスは三度、繰り返されて終わった。それを待って、緒美が口を開く。

「聞こえたわね、みんな。避難しましょう。」

「一番近い校舎って言ったら、グラウンドの向こうの第一校舎よね。結構、距離、有るよね。」

 恵がそう言うと、それに、直美が意見を出す。

「地下道なら、体育館の下にも有るわ。ここからなら、そっちの方が近い。」

「あの、取り敢えず、着替えた方が良いでしょうか?わたしたち。」

 HDG のインナー・スーツを着た茜が、緒美に問い掛ける。

「あぁ~そうね。急いでね。」

「はい。じゃ、ブリジット、急いで着替えて来ましょう。」

「そうね。」

 茜とブリジットは更衣室として利用している、南側の空き部屋へ向かおうと、部室の奥に向かって左手の出口へと歩き出す。

「お手伝いしましょうか?茜ン。」

「あ、大丈夫です、佳奈さん。ブリジットも居て、独りじゃないので。

 佳奈に呼び止められた茜は、振り向いて左手を振り、その申し出を断った。すると、今度はクラウディアが茜達を呼び止める。

「ちょっと、待ちなさい、アカネ。ボードレールも。」

 クラウディアの視線は、モバイル PC のディスプレイに向けられた儘(まま)で、キーボードに置かれた手は、時折、キーを打ったり、タッチ・パッドを撫でたりしている。

「何よ?」

 ブリジットは不審気(ふしんげ)に、声を返した。クラウディアはそれには応えず、顔を上げると緒美に話し掛ける。

「部長さん、ちょっと大変な事になってますよ。」

「どうしたの?カルテッリエリさん。」

「エイリアン・ドローンの割と大きな集団が、九州…西の方から東向きに。今、四国の上辺りを飛んでるみたいです。それで、その一部が今、こっちに向かって接近中。」

 そこ迄(まで)聞いた維月がハッとして、声を荒らげる。

「クラウディア!あなた、まさか、またハッキングしてるんじゃないでしょうね?」

 維月は慌てて、クラウディアの背後に回り込み、モバイル PC のディスプレイを覗(のぞ)き込むのだった。それに対して、クラウディアは平然と答える。

「日本の防衛省と防衛軍。報道機関の発表より、こっちの方が正確…。」

「何言ってんの、直ぐにログアウトしなさい!」

 維月は後ろからクラウディアの両肩を掴(つか)み、前後に揺らし乍(なが)ら言うのだった。

「大丈夫よ、別に、指揮系統に介入したりしてないし、ただ覗(のぞ)いてるだけなんだから~。」

「違法アクセスするだけで犯罪なの!何度言ったら解るの、あなたは。」

 緒美は落ち着いた口調で、クラウディアに語り掛ける。

「カルテッリエリさん、だったら、尚更、早く避難しないといけないでしょ?」

「本当に、いいんですか? 部長さんなら、あいつらがこっちに向かってるなら、目標がどこか、見当が付くでしょう?」

「そうね。多分、ここの山の上、防衛軍のレーダーでしょうね。」

「今迄(まで)ずっと北からだったのが、今回は西から侵入して来てます。それで、九州の西側では、それなりの被害が出たみたいですが、本隊の目標が大阪か京都か名古屋かで、防衛軍の対応が混乱してるみたいです。こっちに向かってる一隊への対応は、現状で後回しにされてるみたいですけど、そうすると、最悪、どんな結果になると思いますか?」

「こっちに来るの、あと何分位(ぐらい)か解る?カルテッリエリさん。」

 緒美は両腕を胸の下で組み、クラウディアに問い掛けた。クラウディアはモバイル PC を数回操作して、顔を上げ、答える。

「あと、十五分から二十分、位(ぐらい)でしょうか。」

「だと、航空防衛軍の方でも、対応が間に合わないかもね。陸上の方だともっと無理。ここのレーダーは潰されるでしょうね。」

「問題なのは、その後です。」

「目標を潰したら、その儘(まま)飛んで行って呉れればいいけど。今迄(まで)の記録からすると、目標の近場に有る建造物や街が、次の襲撃対象になる確率が高いわね。」

 そこ迄(まで)黙って聞いていた直美が、口を挟む。

「ちょっと、一番近い建造物って、この学校じゃない。」

「そうなるわね。その確率が一番高いわ。」

 相変わらず、緒美は落ち着いて言葉を返すのだった。それに、クラウディアが言葉を続ける。

「多分、防衛軍の戦闘機がここに到着する頃には、エイリアン・ドローンの襲撃対象はこの学校に移ってるでしょう。」

 その続きは、緒美が語った。

「当然、防衛軍は街の方へはエイリアン・ドローンを進めたくはないでしょうから、ここで食い止めようと攻撃をするわね。空対空ミサイルで、空中で処理出来れば、校内に残骸が落下する程度で済むでしょうけど、地上に向けて機銃掃射したり、空対地ミサイルを使ったりしたら、学校にも相当の被害が出るでしょうね。」

「学校、壊されちゃうんですか?」

 佳奈が、心細げに声を上げる。

「防衛軍が何も対処しなかったら、エイリアン・ドローンが壊すんだから、どっちにしても学校に被害は出るのよ、古寺さん。」

「取り敢えず、シェルターに居れば安全なんでしょ?」

 今度は瑠菜が、緒美に問い掛ける。が、それに答えたのはクラウディアだった。

「必ずしも、そうとは言えないですよね。ここの地下シェルター、対爆構造では無いですよね?」

「対爆構造…って?」

 そう聞き返したのは、ブリジットである。それには、緒美が答えるのだった。

「爆撃を受けても耐えられる構造って事。機銃掃射程度なら大丈夫だと思うけど、多分、空対地ミサイルがシェルターの真上に直撃したら、崩れるかもね。ここのシェルターは、エイリアン・ドローンから身を隠して、建造物の倒壊から避難する為の施設だから。」

 緒美の説明を受けて、今度は瑠菜が声を上げた。

「それじゃ、シェルターに避難しても危険なんじゃ…。」

「瑠菜さん。シェルターにミサイルが直撃する確率なんて、相当に低いわ。冷静に考えて。」

 その緒美の説得に、クラウディアは反論するのだった。

「でも、部長さん。実際にそうなった事例は、過去に何件も記録が有りますよね。」

 そこ迄(まで)、黙って成り行きを見ていた恵が、幾分か強い口調でクラウディアに問い掛ける。

「それで、カルテッリエリさん? そんな風(ふう)に、みんなの不安を煽って、あなたは何が言いたいのかしら?」

 一呼吸を置いて、クラウディアは答えた。

 

- to be continued …-

 

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