WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第9話.05)

第9話・天野 茜(アマノ アカネ)と鬼塚 緒美(オニヅカ オミ)

**** 9-05 ****


 その時、佳奈が歓声を上げるかの様に、言った。

「部長、動きましたよ!」

 間を置かずに、クラウディアも声を上げる。

「こちらも迎撃コマンド、確認しました。ランチャーのステータス、モニター出来るか、やってみます。」

 クラウディアは嬉々として、愛機のキーボードを叩いている。
 緒美が、佳奈の操作しているコントローラーを覗(のぞ)き込むと、そこには北向きだったランチャーが反時計回りに旋回している様子が映し出されていた。
 直美と瑠菜も、緒美の後ろからコントローラーのディスプレイを覗(のぞ)き込む。

「あれ、無人で動いてるの?」

 直美が、緒美の背後から尋ねる。ディスプレイの中で、ミサイル・ランチャーは回転を止め、仰角を微調整している。

「ええ、どこかの基地から遠隔操作されている筈(はず)。」

 そう、緒美が答えた瞬間、ディスプレイに映っているランチャーから、最初のミサイルが発射された。それを見て、佳奈が「わぁっ」と声を上げるが、間も無く、次々と、全てのミサイルがランチャーから発射されるのだった。

「カルテッリエリさん、ミサイルの状況、追える?」

「やってみます。」

「多分、ミサイルは一分足らずで目標に到達する筈(はず)だけど。」

 緒美とクラウディアが、そんな遣り取りをしている一方、佳奈は球形観測機でミサイルを追跡しようと、飛翔方向へカメラを向ける操作を試みるが、直ぐにそれは徒労と終わった。

「あぁ~あっと言う間に見え無くなっちゃった。」

 結局、そこに居た一同の視線は、クラウディアへと向けられ、彼女からの情報を待つのだった。
 そして三十秒ほど沈黙が続いた後、クラウディアが口を開く。

「エイリアン・ドローンのレーダー反応、二機が消えたみたいですね。」

 クラウディアはモバイルPC を数回操作して、別の情報に画面を切り替え、補足する。

「防衛軍は…二機撃墜と判定した様です。」

「何だよ、確率通りかよ!」

「統計って偉大ね。」

 直美が漏らした素直な感想に、恵がコメントを加える。そして緒美は冷静に、一言、返すのだった。

「偶然よ。」

 そこで、防衛軍の動向を探っていたクラウディアが報告する。

「確認しました、こちらに向かって来ているのは、あと四機。時間にして、約五分の位置。防衛軍の戦闘機部隊に、先に西向きへ分かれた一隊と併せて、対処するように命令が出てますね。四国上空を通過していた敵の本隊らしき四十五機は、高度三万メートル程度を保った儘(まま)、東向きに進行中。防衛軍は敵の目標は名古屋だと想定して、対抗策を準備中みたいです。」

「此方(こちら)側を戦闘機部隊が対処って、今からだと到着する迄(まで)、三十分は掛かるわね。」

 その緒美の発言を聞いて、今迄(まで)黙って様子を見ていた茜が、南側大扉へと向かって歩き出す。

「天野さん。」

 緒美に声を掛けられ、一度、茜は立ち止まり、緒美の方へ顔を向ける。

「行きます。何か、指示が有ればお願いします、部長。」

「分かった。気を付けてね、無理はしないで。」

「はい。」

 茜は再び、歩き出す。すると、LMF のホバー・ユニットが唸りを上げ、コックピットからブリジットの大きな声が聞こえて来る。

「わたしも、LMF 出しまーす。」

 LMF のホバー・ユニットから床面に打ち付けられた空気が四方に流れ、それが一同の髪や制服のスカートを揺らす。LMF がゆっくりと前進を始めると、瑠菜と直美が駆け出し、先回りして LMF が通れる様に大扉を押し開けるのだった。

「天野さん、ボードレールさん。」

 緒美は、ヘッド・セットのマイクを口元に引き上げ、出て行こうとする二人に呼び掛けた。

「あなた達は軍人じゃないんだから、命を懸ける必要は無いのよ。怖いと思ったり、危険だと思ったら、直ぐに逃げなさい。だれも、責めたりしないから。いいわね。」

「大丈夫ですよ、多分。 ブリジットは、無理してわたしに付き合わなくてもいいのよ。」

「冗談、茜に付き合う為だったら、わたしはどんな無理だってするの。」

 緒美のヘッド・セットには、二人の笑い声が聞こえていた。

「いいわ。それじゃ、天野さん。外に出たら、あなたは山頂のレーダー上空で待機して。そこからエイリアン・ドローンに、最初の一撃を加えます。」

「分かりました。」

 茜はスラスター・ユニットを軽く噴かし、勢いを付けて大扉から外へ出ると、上空へとジャンプした。

「それから、ボードレールさん。あなたは格納庫を出たら真っ直ぐ、滑走路の南側へ移動して西向きに停止。LMF のプラズマ砲は威力が強過ぎるから、間違っても町の方へ向かって撃たないように。必ず、山の上空へ向かって撃ってね。第一撃は、天野さんと同じタイミングで。」

「分かりました~。」

 ブリジットが操縦する LMF は、格納庫から外へ出るとその儘(まま)直進し、緒美の指示通り、滑走路を横切ると南側の舗装されたエリアで機体の向きを変えて停止する。
 天神ヶ﨑高校は南側から北に向かって登る、山腹の斜面に平地を造成して建設されているが、滑走路は当然、山の斜面から一番離れた南側に造られている。滑走路の基礎は、山腹の斜面を切り崩した土砂による盛土で整地されているが、斜面に建てられた支柱の上に建造された平面構造物の上に敷設されている部分が、滑走路面積の凡(およ)そ半分を占めている。
 現在、その平面構造物の上に、LMF は位置しているのだった。LMF はプラズマ砲ターレット上のメイン・センサーを旋回させ、目標を捜索している。

Ruby、光学センサーで目標を捕捉出来る?」

 ブリジットはコックピット・ブロックのキャノピーを閉鎖して、砲撃に備える。キャノピーの内側はスクリーンになっており、外部の様子が映し出されている。

「最大望遠で西南西方向を捜索中です。」

 コックピット内にスクリーンには、メイン・カメラの画像を正面の山間(やまあい)から空の間辺り迄(まで)、上下に右から左へと映し出して、接近して来ている筈(はず)のエイリアン・ドローンを捜している。そこに、緒美の声が聞こえて来る。

「現在、接近中のエイリアン・ドローンは減速しつつ、高度は400メートルから降下中だそうよ。わたし達の場所からだと、高さ的には、ほぼ正面になる筈(はず)。距離的にはあと、約三分の位置。」

「部長、向こうは撃って来ないんですよね?」

 思わず、ブリジットが問い掛ける。

「トライアングルは飛び道具を持ってないから、安心して。それから、彼方(あちら)側は初めて見る兵器に対しては警戒をしないから、初手に就いてはこっちが断然有利。出来れば、最初の一撃で、四機全部、撃破したい所ね。」

 そんな緒美の希望に対して、茜が所感を伝える。

「HDG で別々の目標を、二連射で狙撃するのは、ちょっと厳しいですよ。」

「分かってる。先(ま)ずは、最初の一撃で確実に一機、仕留めてちょうだい。」

 茜のヘッド・ギア、レシーバーには緒美の返事に続いて、Ruby の合成音声が聞こえた。

「目標を捕捉。照準をロックします。」

 その時点で、まだ目標を発見出来ていなかった茜が、Ruby に声を掛ける。

Ruby、データ・リンクで目標の情報をちょうだい。」

「茜、データ・リンクは既に確立済みです。」

 即座に返ってきた Ruby の言葉を聞いて、そう言えば、今日の試験項目が HDG と LMF とのデータ・リンクの検証だった事を、茜は思い出した。
 茜は胸元に装備されているスクリーンを立ち上げて、表示を戦術情報画面に切り替え、Ruby からのデータ・リンクに因る目標の位置情報を確かめる。表示では、エイリアン・ドローンは『へ』の字を上下逆さにした形の編隊で、高度360メートルを西南西方向から接近して来ている。先頭の一機と、画面上で左手後方の一機を LMF がロックオン状態なのが、戦術情報画面の表示で読み取れた。
 茜が画面上で先頭の機体に対して右手後方の機体を指定すると、ヘッド・ギアの射撃照準モードになっているスクリーンに、標的の位置が表示されるのだった。
 茜は右腰部のジョイントから CPBL を外して、両手で正面に構えて銃口を目標の方向へと向ける。すると、標的の表示がロックオン状態のシンボルへと変わり、以降、照準の微調整は HDG のアーム・ユニットが補正を行っている事を示すのだった。
 同時に、ヘッド・ギア両サイドに取り付けられた光学センサー・ユニットが目標の画像を望遠モードで撮影し、標的シンボルに重ね合わせて表示するのだった。そこには、小さく、少々不鮮明乍(なが)らも『トライアングル』の名前の通り、三角形のシルエットが映し出されていた。
 茜がエイリアン・ドローンと対峙(たいじ)するのは、勿論、初めてだったが、スクリーンに映ったそれは、以前、ネット等で見掛けた画像の通りだったので、恐怖とか緊張とか、何か特別な感慨をもたらす事は無かった。
 それは、LMF のコックピット内で、同じ様にスクリーンに映ったエイリアン・ドローンを見詰める、ブリジットも同じだったのである。

 

- to be continued …-

 

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