WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第9話.07)

第9話・天野 茜(アマノ アカネ)と鬼塚 緒美(オニヅカ オミ)

**** 9-07 ****


「それが…こっちは、見つかりませんね。移動してるんでしょうか?」

「もう少し、撮影範囲を広げてみようか。」

 瑠菜と共にディスプレイを見詰めている直美が、提案する。

「分かった、捜索を続けて。」

 緒美は屈(かが)めていた腰を伸ばし、ヘッド・セットのマイクを口元へ引き上げて、茜に話し掛ける。

「天野さん、南側のトライアングルの位置はデータ・リンクで、そちらでも解るわね?」

「はい。Ruby が捕捉してますから。」

「じゃあ、そこから狙える?」

「もうちょっと、近付けば。でも、木が邪魔で直撃が出来るか、分かりません。」

「当てなくてもいいわ。火事にならない様に、出力を落として、トライアングルの周囲に二、三発撃ち込んでみましょうか。それで、トライアングルが飛び上がったら、そこを LMF で狙撃出来るでしょう。出来そう?ボードレールさん。」

「出来ると思います。ねぇ、Ruby。」

「ハイ。照準は、お任せください。」

「北側のトライアングルは引き続き捜索してるから、先(ま)ずは南側のを、先に片付けておきましょう。」

 茜は、緒美の指示を聞いて、銃口を下げていた CPBL を再び正面に構え直す。

「では、100メートル程、前に出ます。」

 レーダー施設の上空でホバリングを続けていた茜だったが、重心を少し前に倒して、西へ向かって暫(しば)し移動すると、再び空中に静止する。そして、CPBL銃口をトライアングルが潜んで居る、木々が繁茂(はんも)する斜面へと向ける。

「荷電粒子ビーム出力は、10パーセントに設定します…ブリジット、そっちの準備はいい?」

「いいよー、何時(いつ)でも。」

 茜はブリジットの返事を聞いて、CPBL のトリガーに、マニピュレータの指を掛けた。

「じゃ、行くよ…発射!」

 乾いた破裂音と共に青白い閃光が三度、木立に向かって走ると、着弾点の木の枝が揺れ、木の葉が散り、土煙が立ち上がる。が、トライアングルに命中したかどうかは解らない。
 その時、LMF のコックピットでは、Ruby がブリジットに注意を促(うなが)していた。

「トライアングルが動きますよ、ブリジット。」

「オーケー。」

 正面のスクリーンに画像処理されて映し出されているトライアングルが、一度、身を屈(かが)める様に機体を沈めると、四本の足を素早く伸ばし、直上へジャンプした。しかし、LMF のプラズマ砲はその軸線を、トライアングルから外す事は無い。
 スクリーンの表示は自動的に、何度か切り替えられたが、ターゲットのロックオン状態を表すシンボルは変わらない。ブリジットは落ち着いて、右側コントロール・グリップのトリガーを引く。
 トライアングルは木々の上へと、その姿を現した瞬間、青白い閃光にその機体の中心部を吹き飛ばされ、残った機体後部と頭部が、飛び立った元の場所へと落下したのだった。

「…あと、一機。」

 その様子を、佳奈の操作するコントローラーのディスプレイで確認していた緒美は、呟(つぶや)く。それとほぼ同時に、直美が瑠菜に話し掛けるのだった。

「もう、北側の斜面には居ないんじゃない?移動してるのよ。カメラの向きをレーダーの方に向けて。動いてるなら、熱分布画像(サーモグラフィ)よりも、普通のカメラ映像の方が解り易いわ、木の揺れで解る筈(はず)。」

「切り替えます。」

 瑠菜は直美の意見に従って、球形観測機のコントローラーを操作する。ディスプレイには、山頂付近の木立が映し出され、画面は北側斜面から山頂方向へと向かって流れていく。その時、画像に異変を感じた直美が、声を上げた。

「画面、右上!揺れてる、木。」

 瑠菜は、慌ててその部分を画面の中央へと持って来る様に操作した。画角を調整する為に、ズーム率を減らした瞬間、画面に茜の HDG が映り込んだのに気が付いて、直美が再び声を上げる。

「鬼塚!もう一機の現在位置、天野の真下辺りかも。」

 瑠菜が操作するコントローラーのディスプレイには、HDG の下方付近の木立が不規則に揺れているのが、映像から見て取れた。
 それを確認した緒美が、慌てて茜に注意を促(うなが)す。

「天野さん!あなたの下にトライアングルが居るかも。注意して!」

 そう言い終わるよりも早く、トライアングルは茜を目掛けて、飛び上がっていた。

「えっ!?」

 右腕の鎌状のブレードを振り翳(かざ)して上昇して来るトライアングルの姿が、視線を下へ向けた茜の目に飛び込んで来た。
 茜は咄嗟(とっさ)に、右側のマニピュレータで握っていた CPBL を、機関部上部のブリッジ状になっているキャリング・ハンドル部分を左側マニピュレータで掴んで引き取り、空いた右マニピュレータで BES の柄(つか)を握ると、スリング・ジョイントから外して振り上げた。
 間も無く、下から掬(すく)い上げる様なトライアングルの斬撃が HDG の足元に達するが、それはディフェンス・フィールドに因る防御エフェクトの、青白い光の壁に弾かれる。

「オーバー・ドライブ!」

 茜の発した音声コマンドに因って、BES の刀身が前後に二つに割れると、その間から放出された荷電粒子が、物理刀身の凡(およ)そ二倍の刃(やいば)を形成する。
 一方、第一撃を弾かれたトライアングルは、体勢を立て直すべく、その儘(まま)通過しようと上昇を続ける。が、その左腕の付け根付近に、振り下ろした BES の荷電粒子の刀身を食い込ませると、茜はその儘(まま)、自身の身体全体が前転する勢いで右腕を振り抜いて、トライアングルを袈裟切(けさぎ)りにしたのだった。

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 二つに分断されたトライアングルは、動きを止め、その儘(まま)落下して行った。

「ふぅ、危ないなぁ…。」

 茜は落下して行くトライアングルを見送り乍(なが)ら、息を吐(つ)いて、そう呟(つぶや)いた。
 BES を待機モードに戻して、背中を伸ばし、一度、周囲を見回して、茜は緒美に尋ねた。

「これで、終わり、でしょうか?」

 緒美は、一呼吸置いて、言った。

「確認するわ。」

 クラウディアへ視線を向けると、緒美は尋ねた。

「状況は?」

「あ~はい。防衛軍の情報では、この周辺に他のエイリアン・ドローンは探知されていませんし、こちらに向かっている物も、現時点ではありませんね。」

 そう答えた後で、茜の行動をモニターしていなかったクラウディアと維月は、緒美に聞くのだった。

「四機目、仕留めたんですか?」

「天野さんが?」

 緒美は微笑んで、一言で答える。

「そうよ。」

 一度、顔を見合わせたクラウディアと維月だったが、クラウディアが慌てて緒美の方に向き直り、声を上げる。

「あ、部長さん。防衛軍の戦闘機が近付いて来てます。時間にして、あと六分位(ぐらい)の位置。」

「そう、分かった。 天野さん、ボードレールさん、ご苦労様。あなた達は直ぐに戻って来て、防衛軍の戦闘機が接近してるそうだから。」

 緒美のヘッド・セットには、茜とブリジットの返事が聞こえていたが、それは他の一同には解らない。しかし、南側大扉越しの正面辺りに見える LMF は、間も無く向きを変えて第三格納庫へ向かって動き出し、その LMF が格納庫に到着するよりも早く、茜の HDG が格納庫の前、駐機場に降り立つのだった。
 茜は一度振り向き、接近して来る LMF のコックピットに向けて手を振る。キャノピーを持ち上げて有視界モードで操縦していたブリジットはそれに答えて、手を振り返した。それを見届けて、茜は格納庫の中へ向けて歩き出す。

「観測機も、戻しますね、部長。」

 振り向いて、瑠菜がそう聞いて来る。その隣にしゃがみ込んでいた直美は立ち上がり、背中を伸ばすのだった。

「いいわ。古寺さんの方も、観測機を戻しておいてね。」

「は~い。」

 佳奈が素直に返事をすると、その隣に陣取っていた恵も腰を伸ばす。そんな時、緒美に取っては不意に、直美が声を掛けるのだった。

「ねぇ、鬼塚。天野ってさぁ、ひょっとして、本当は剣道部に行きたかったんじゃないのかな?」

「どうしたの?急に。」

 緒美は問い掛けられた言葉の真意を測り兼ねて、聞き返した。

「いや、さっきのみたいに動けるって事はさ、結構な実力者って事なんじゃないのかなって思えてさ。」

「あぁ、成る程…そう言う事。」

 言われてみれば、と思い、緒美が少し複雑な表情を浮かべると、そこに恵がコメントを挟(はさ)む。

「でも、天野さんは有段者ではない、とか、大会に出る様な選手にはなれなかった~みたいに言ってたけどね。」

「そうなの?」

 恵の語った情報は、直美の持った印象からは意外だった。

「それは又、今度、本人に確認してみましょうか。」

 緒美がそう提案した所で、メンテナンス・リグの前に辿り着いた茜が、呼び掛けて来るのだった。

「すいませ~ん、HDG を降ろすので、リグの操作お願いしま~す。」

「はいよ~。 佳奈、こっちのコントローラー、終了作業お願いね。」

「は~い。」

 瑠菜が立ち上がり、メンテナンス・リグへと駆け寄って行く。それと入れ替わる様に、球形観測機が次々と格納庫内へと戻って来ると、それぞれが自律制御で元のコンテナへと納(おさ)まるのだった。

 

- to be continued …-

 

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