WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第9話.08)

第9話・天野 茜(アマノ アカネ)と鬼塚 緒美(オニヅカ オミ)

**** 9-08 ****


「天野~、装備を先に、コンテナへ戻して来な~。」

「あぁ、うっかり。」

 駆け寄って来た瑠菜に指摘され、武装を装備した儘(まま)では、メンテナンス・リグに接続するのに難が有る事を思い出した茜は、武装コンテナが配置されている格納庫の奥へと向かった。その間に、瑠菜はメンテナンス・リグ側の、接続準備を始める。
 第三格納庫の南側大扉の側では、LMF がゆっくりと庫内へと進入して来ており、LMF が進むに連(つ)れて、左右のホバー・ユニットが床面に吹き付ける気流と騒音が、格納庫の内部に充満するのだった。
 LMF は低速で格納庫内の定位置まで進むと、その場で百八十度の回頭をし、ホバー・ユニットの出力を絞って着地する。ホバー・ユニットが停止すると、彼女たちの制服のスカートや髪を乱す、床面から吹き上げる様な風が止むのだった。耳を塞ぎたくなる様だった騒音も、暖機(アイドル)運転状態のメイン・エンジンだけなら、それ程の物でもない。

Ruby、外部電源、接続するよ~。」

 LMF の後部に回り込んだ直美が、電源ケーブルの接続プラグを手に、声を上げた。

「ハイ、お願いします。」

 外部スピーカーで答える Ruby の合成音声を聞いて、直美はケーブルを引っ張りつつ、LMF の機体後方下部へと入って行く。
 その横を、武装をコンテナに収め終えた茜が、HDG を装着した儘(まま)で歩いて通り過ぎ、メンテナンス・リグへと向かうのだった。

「接続完了~、古寺~ブレーカー、上げて~。」

 LMF の下から直美は、ケーブルの接続元である北側壁際の配電盤に向かって、佳奈に指示を出す。

「は~い、電源、投入しま~す。」

 佳奈は直美に向かって返事をすると、ブレーカーのトグル・スイッチを押し上げた。

「外部電源の接続を確認しました。LMF のエンジンを停止し、機体制御の終了作業に移ります。」

 Ruby が宣言すると間も無く、LMF のメイン・エンジンが停止し、格納庫の内部は再び静かになる。
 LMF のコックピットからは LMF の機体伝(づた)いにブリジットが降りて来る。その一方で、HDG のメンテナンス・リグでは、茜がインナー・スーツと HDG との接続を解除し、メンテナンス・リグの前に恵が用意したステップラダーへと、一旦、上がるのだった。

「茜~。」

 LMF の方から、ブリジットが駆け寄って来る。

「お疲れ様~。」

 ステップラダーから床面に降りた茜が、そう言いつつ肩の高さ程に右手を挙げると、ブリジットがその右の掌(てのひら)に自分の右の掌(てのひら)を「パン」と打ち合わせる。

「お疲れ~。」

 そう言葉を返して、ブリジットは微笑む。

「天野さん、ボードレールさん、ご苦労様。兎に角、無事に終わって良かったわ。」

 茜とブリジットの二人に、そう声を掛けて緒美が迎えた。

「はい。」

「上手く行きましたね、部長。」

「そうね。 Ruby も、ご苦労様。」

 二人の返事を聞き、緒美は LMF に向かって、Ruby に声を掛けた。

「ハイ。お役に立てたのなら、わたしも嬉しいです、緒美。」

「お役にって、わたしの方は、半分以上、Ruby のお陰よ。」

 Ruby の返事に、ブリジットは、そうコメントを返す。

「ありがとう、ブリジット。」

 Ruby がブリジットのコメントに謝辞を返した、その瞬間、東側二階部分の部室内から何やら物音が聞こえたかと思うと、部室から二階通路に出る扉を勢い良く開いた時の金属同士の衝突音が、「ガンッ!」と格納庫に内に大きく響いた。二階通路に出る扉にはドア・ダンパーが取り付けられていないので、勢い良く扉を押し開けると、外側に開いた扉のドア・ノブが、二階通路の転落防止柵にぶつかるのだ。

「何やってるの!あなた達はっ!」

 二階通路に出てくるなり、突然、そう叫んだのは立花先生だった。その後、二階通路の転落防止柵の上に両手を掛けて肩で息をし乍(なが)ら、一度、柵の手摺(てす)り部分に額を着ける様に項垂(うなだ)れて、立花先生は息を整えていた。
 その様子を見て、避難していたシェルターで自警部部員の長谷川から緒美の伝言を聞き、慌てて走って来たのだろうなと、そこに居た一同には見当が付いたのである。
 数秒間、立花先生にどう声を掛けた物かと一同が逡巡(しゅんじゅん)していると、顔を上げた立花先生は小走りで格納庫へと降りる階段へと向かい、階段を一気に駆け下りると、茜とブリジットに向かって駆け寄って来る。

「茜ちゃん!怪我は無い?」

 茜の目の前で立ち止まった立花先生は、茜の両側の肩より少し下の上腕部を鷲掴(わしづか)みにする様に両手を掛けると、本人に直接、安否を尋ねる。茜はその勢いに、驚きつつ、極短く答えた。

「あ、はい。」

 茜の返事を聞いた立花先生は、茜の両腕を掴(つか)んだ儘(まま)、茜の左隣に立つブリジットに視線を移して問い掛ける。

「ブリジットちゃんもっ!大丈夫?」

 ブリジットは両方の掌(てのひら)を上に向けて肘の高さ迄(まで)前方に上げ、微笑んで答える。

「ご覧の通りです。」

「はあ~、良かった~…。」

 立花先生は茜の両腕を掴(つか)んだ儘(まま)、一度、首を項垂(うなだ)れ、大きく息を吐(は)いて、そう言ったのである。

「あの、立花先生? ご心配をお掛けしたみたいで…。」

「心配ですって?しない訳(わけ)、無いでしょ!無茶な事してっ。」

 茜が言い終わらない内に、立花先生は顔を上げて声を荒らげる。立花先生の眼鏡の奥、両目からは、ぽろぽろと大粒の涙が零(こぼ)れていた。それを見て茜とブリジットは、言葉を失うのだったが、茜とブリジット以外のメンバーは立花先生の背後に居た為、立花先生の、その様子には気が付いていなかったのである。
 そして、LMF の後方側から歩いて来た直美が、不用意に声を掛けてしまう。

「先生、まだ避難指示、解除されてないのに、シェルターから出て来ちゃったら、不味(まず)いんじゃないんですか?」

 直美に取って、それは普段通りの軽口だったのだが、茜は複雑な表情を作って、声を上げずに『副部長、やめて~』と唇を動かし、直美を制しようとしていた。勿論、それが直美に伝わる事は無かったのだが。
 立花先生は茜の両腕を掴(つか)んだ儘(まま)、振り向いて声を上げた。

「こんな無茶な事をする、あなた達に言われたくはありません!」

 ここで漸(ようや)く、緒美達も立花先生が泣いている事に、気が付いたのである。

「大体、緒美ちゃん!あなたが付いていて、どうしてこんな事になってるの!」

 立花先生は茜の両腕を掴(つか)んだ儘(まま)、今度は、矛先を緒美へと向ける。
 緒美は、徒(ただ)、「申し訳(わけ)ありません」と言う他、無かったのだが、この後、立花先生は茜の両腕を掴(つか)んだ儘(まま)、『もしもの事が有ったら』と言う仮定の下、『誰にも、如何(いか)に責任が取れないか』と言う事に就いて、泣き乍(なが)ら怒りつつ、延延と捲(まく)し立てるのだった。
 普段は常に冷静な立花先生の泣き顔など、兵器開発部のメンバーは誰一人として、想像すらした事は無かっただけに、立花先生のそんな様子は、緒美達には少なからず意外だったし、或(あ)る意味、ショックだった。そして一同は、立花先生に心配を掛けた事に就いては、心の底から大いに反省したのである。

 結局、立花先生の涙から始まった佳奈の『貰い泣き』が、最終的に号泣へと至るに及び、漸(ようや)く立花先生も落ち着きを取り戻し、先生の両手に掴(つか)まれた儘(まま)だった茜の両腕は、やっと解放されたのである。
 丁度(ちょうど)その頃、避難指示解除の放送が流れ、一同は現場の片付けをして、その日は解散という事になったのだが、緒美だけは報告の為の事情聴取と言う事で、その後も暫(しばら)く、立花先生に身柄を拘束される事となったのだった。

 こうして、茜と HDG の初出撃が果たされたのだが、この話は、これで終わりではない。

 

- to be continued …-

 

※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。
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