WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

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STORY of HDG(第9話.10)

第9話・天野 茜(アマノ アカネ)と鬼塚 緒美(オニヅカ オミ)

**** 9-10 ****


「今日の朝、一番に、昨日の事に就いては、立花先生から報告を受けた。その後、防衛軍の方(ほう)と話をして、こちらは、まぁ、人的、物的に被害を被(こうむ)らない為の緊急回避的行動だった、と言う事で理解をして貰えたよ。まぁ、二度と今回の様な事の無いように、呉呉(くれぐれ)も自重(じちょう)して呉れ、と言われはしたのだが、それに就いては、わたしも同感だ。諸君がやった事に対しては、昨日の時点で立花先生から叱られただろうから、わたしの方から、それに就いて言を重ねる事はしないが、事情に関しては諸君から、直接、聞いておきたい。そう言う訳(わけ)で、ここに来て貰ったのだが、ここ迄(まで)は良いかな?」

「はい。」

 全員を代表して、緒美が返事をする。

「では、鬼塚君。キミが迎撃行動を取ると、判断した理由を聞かせて呉れ。」

 天野理事長が、真顔で緒美に問い掛けると、緒美が発言するより先に、茜が手を挙げ、発言の許可を求める。

「宜しいでしょうか?理事長。」

「何かね? 天野君。」

 表情を変えず、天野理事長は茜に発言を許した。

「部長は、最後まで避難するように、と、言っていたんです。責任は、HDG を勝手に持ち出した、わたしに有ります。」

「いいのよ、天野さん。」

 緒美は、前を向いた儘(まま)、茜の発言を制する様に声を上げた。そして、横に並んだ列から一歩前に進み出ると、天野理事長に向かって発言を続ける。

「最終的に、下級生に危険な行動をさせた事に変わりはありません。責任者として、停学でも退学でも、どんな処分でも受ける覚悟は出来ています。ですので、他のみんなには寛大な判断を、お願いします。」

 言い終わると、緒美は深く、頭を下げるのだった。

「おいおい、話を急ぐな、鬼塚君。処分がどうこうと言う話はしていない。わたしは事情を聞きたい、と、最初に言った筈(はず)だが?」

 一同に取っては、少々意外な天野理事長の発言だったが、それに続いて塚元校長が断言する。

「先に言っておきますけれど、今回の件で、皆さんに、何らかの処分を課する決定は、学校としてはありません。」

「では、話を続けるが。天野君、キミが、鬼塚君の指示を無視した、と言う理解で良いのかな?」

 天野理事長が、茜に聞き返す。それに対して、茜は即答した。

「はい、そうです。」

 そこで突然、クラウディアが手を挙げ、発言を求める。

「理事長、発言して良いでしょうか?」

「キミは、カルテッリエリ君だったね。何かな?」

「昨日、当初は、わたしを除いて他は皆、鬼塚部長に従って避難しようとしていました。それを、わたしが、迎撃するべきと言う方向に、みんなの意見を意図的に誘導しました。」

「ほう、それは立花先生の報告には無かった話だが、興味深い発言だね。 天野君、キミはカルテッリエリ君に誘導されたと言う自覚は有るかね?」

 茜は、少し間を置いて返事をする。

「確かに、当初は避難指示に従う積もりでしたから。誘導されたと言う面は、否定出来ませんが、でも、迎撃を行うべきとは、自分で判断した積もりです。」

「キミが迎撃の必要が有ると判断したのは、どんな理由から、なのだろうか?」

「クラウディア…さん、と鬼塚部長の遣り取りから、防衛軍の攻撃に因って、シェルターに避難していても人的被害が出る可能性が有ると、理解しました。それから、Ruby を放置しておくと、これも、防衛軍の攻撃に巻き込まれて破壊される恐れが有る、とも。この二つは、どうしても回避する必要が有ると考えました。」

Ruby に被害が及ぶ事は、人的被害が発生する事と同列なのかな?キミに取っては。」

「会社からすれば、徒(ただ)の装置かも知れませんけど、少なくとも、わたしには、そうは思えません。」

「そうか。解った。」

 天野理事長は椅子の背凭(せもた)れに一度、身体を預けて息を吐(つ)き、次の質問をクラウディアへと向ける。

「カルテッリエリ君、先刻、キミは意図的に誘導した、と言ったが。そもそも、あの時、防衛軍のネットワークに侵入して情報を…」

 天野理事長がそこ迄(まで)言った所で、突然、クラウディアの隣、列の一番右端に立っていた維月が、声を上げる。

「それに関しては、わたしの監督が行き届かなくて、申し訳(わけ)ありませんでした。」

 今度は維月が、深々と頭を下げる。それに対しては、塚元校長がフォローを入れるのだった。

「井上さん、いいのよ。確かに、あなたにカルテッリエリさんの監督をお願いはしたけれど、完全に彼女の行動を制御するなんて出来ないんだから。そこ迄(まで)、責任を感じなくても、良いんですよ。」

「あぁ、キミは井上主任の妹さんだったね。そう言えば、昨年は大変だったね。元気になって、本当に良かったよ。キミが大変な時に、お姉さんには重要な案件とは言え、仕事を押し付けた儘(まま)になってしまって、キミにも御家族にも、会社として申し訳(わけ)無かった、思っているんだ。」

「いえ、姉は自分の責任を果たす事を優先したのだと思いますから。お気遣い無く。」

 維月はもう一度、小さく頭を下げるのだった。

「話が逸(そ)れたので、元に戻すが。カルテッリエリ君が、あの時、防衛軍から情報を取得しようと思ったのは、キミが母国で遭遇した事件が影響しているのだろうか?」

 クラウディアは、天野理事長の質問を聞いて、一度、目を閉じ、深く息を吸ってから答えた。

「そう、ですね。あの事件の影響は、否定しません。」

「そうか。では、その事件の所為(せい)で、キミが他のメンバーを危険な方向に誘導したと言う事なら、巻き込まれたみんなには、その理由を知る権利が有ると思うが、どうかね?」

「そうですね。わたしは、別段、あの事件の事を隠しておきたい訳(わけ)ではありませんので、みんなが知りたいと言う事なら、別に構いません。」

 そこで、塚元校長が提案するのだった。

「あなた達はどうかしら?事件の事、聞いてもいいと思う人は、手を挙げてみて。」

 すると、クラウディアと緒美を除くメンバー達が、掌(てのひら)を前に、肩の高さ位に挙げるのだった。あの時、クラウディアが迎撃を強硬に主張した理由に就いては、あの場に居た者は皆が、何か引っ掛かりを感じていたのである。ここで手を挙げなかった緒美にしても、それは同様だった。緒美が手を挙げなかったのは、徒(ただ)、クラウディアのプライバシーに踏み込む事が適切だと思えなかった、それだけが理由である。
 そして、維月が隣に立つクラウディアに語り掛ける。

「あなたが話して呉れるなら、ちゃんと聞くけど、言いたくない事なら、無理に言わなくてもいいのよ、クラウディア。」

「ありがとう、イツキ。大丈夫。」

 塚元校長は一度頷(うなず)いて、クラウディアに言うのだった。

「わたしもね、ここに居るみんなには、あなたの事を、もう少し知って貰っておいた方が、良いと思うのよ、カルテッリエリさん。」

「はい。では…。」

 クラウディアは一度、話し始めようとするが、直ぐに、少し黙り込む。そして、再び、話し始めた。

「どう、話せばいいのか、直ぐに纏(まと)まらないのだけれど。 まぁ、簡単に言えば。 エイリアン・ドローンへの空軍の攻撃で、出掛けた先で避難したシェルター…わたしの場合はビルの地下室だったけど。 そこが崩落して、生き埋めになった事が有る…そんな事件、です。」

 そのクラウディアの説明に、塚元校長が捕捉を加える。

「その時、一緒に居たお友達が、犠牲になったのよね。」

「はい。幼馴染みで、一番仲の良かった友人でした。」

 クラウディアは淡々と、言葉を続ける。

「わたしは、見ての通り、普通の人よりも身体が小さいので、崩れて来た瓦礫の隙間に偶然、入って。」

 クラウディアは、一度、大きく息を吸った。

「わたしは無傷でしたが、彼女は即死だった、と聞いています。」

 クラウディアは、もう一度、大きく呼吸をする。

「遺体の損傷が激しいので、お別れする時も、姿は見せては貰えませんでした…。」

 最後の方(ほう)、クラウディアの声は涙声に変わっていた。維月は左隣のクラウディアを抱き寄せて、言った。

「もういいよ、解ったから。それ以上はいいよ、クラウディア。」

 正面から背中の方へ両腕を回し、顔を維月の胸の下辺りに押し付ける様にして、クラウディアは涙が落ちるのを堪(こらえ)えている様だった。その様子を見兼ねてか、塚元校長が話を補足する。

「まぁ、そんな事が有ったのが二年ほど前の事で。それから、一年間位(くらい)、カウンセリングを受けたりしていたそうなんだけど。地元に居ると、色々と思い出す事が多くて、精神的に不安定になったりもしたそうでね。カウンセラーの見解でも、生活の環境を変えた方が良いだろうと言う事も有って、日本(こちら)に来る事になったのよ。」

 塚元校長が話し終わる頃、クラウディアは一度、深呼吸をしてから、前へ向き直った。

「すみません。途中で何を言ってるのか、自分でも解らなくなりました。」

 クラウディアは涙を拭(ぬぐ)って、塚元校長に一礼する。

「矢っ張り、あなたにはまだ、辛(つら)い事だったわね。ごめんなさい。」

「いえ、此方(こちら)に来てから暫(しばら)く思い出す事の無かった記憶が、急に、いっぱい…フラッシュ・バックしたので。ちょっと、感情を抑えられなくなりました、けど、もう大丈夫です。」

 クラウディアの様子が落ち着いたのを見て、茜は塚元校長の話の中で、一つだけ疑問に思った事を聞いてみる。

「ねぇ、クラウディア。環境を変えるって言うのは解るんだけど、それが、どうして日本だったの?」

「アンナのママはね、日本人だったの。」

 クラウディアは充血した目でブリジット越しに茜を見詰めて、即答した。そして、その答えを聞いて、茜は、何故、クラウディアが流暢に日本語を話すのか、その理由が分かった気がして、思わず呟(つぶや)くのだった。

「あ、成る程。そうか。」

 そこ迄(まで)黙って聞いていた天野理事長が、クラウディアに問い掛ける。

「それでは、その事件の様な状況が、この学校でも起きる事を危惧して、避難指示を聞いた際にエイリアン・ドローンの動向を確認する為に、キミは防衛軍のネットワークに侵入した、と言う理解で良いかな?カルテッリエリ君。」

 

- to be continued …-

 

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