WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第11話.03)

第11話・天野 茜(アマノ アカネ)とブリジット・ボードレール

**** 11-03 ****


 翌日、2072年7月22日金曜日。天神ヶ崎高校兵器開発部の一同は、三週間ほど前に火力運用試験を行った、防衛軍の演習場に到着していた。前回と同じく、学校所有のマイクロバスでの移動で、今回の運転手は前日に準備の為に来校していた、天野重工試作部の倉森である。
 兵器開発部の一同を乗せたマイクロバスは、前回よりも演習場の奥へと進み、管理棟の前を通り過ぎて、その西側に二棟並んで建てられている格納庫の前で、Uターンする様に回頭して停車した。
 一時間程、先行して学校を出発していた LMF を運搬した大型トランスポーターや、HDG 専用トランスポーター、その他の荷物を積んだ小型コンテナ車の計三台は、当然、既に到着しており、畑中達が LMF の繋留を外す作業を進めているのが、バスの中からも見て取れたのである。

「ご苦労さん。今日も暑いね~。」

 そう言って、降りて来る兵器開発部の面面を、飯田部長が出迎えると、バスから降りて来る緒美達は、飯田部長と、その横に立っている、ブルー・グレーのスーツを着た年配の女性、桜井一佐にそれぞれが一礼するのだった。緒美は桜井一佐の服装の所為(せい)で、それが前回、挨拶だけをした航空防衛軍の桜井一佐だと気が付かなかったのだが、その点、立花先生は違った様子だった。

「先日の運用試験でお目に掛かった、航空防衛軍の…。」

「桜井よ。良かった、覚えていて頂いてて。」

 立花先生が声を掛けると、桜井一佐は微笑んで答えるのだった。

「今日は、制服ではないんですね。」

「ええ、飯田さん達と合流する迄(まで)、公共交通機関でしたので。」

「あぁ、成る程。」

 そして、緒美達の方へ向き直り、桜井一佐が声を掛ける。

「部長の鬼塚さんとは、前回、お会いしたわね。」

「はい。」

 緒美は、短く返事をした。桜井一佐は、緒美の背後に並んで立つ、兵器開発部のメンバーに、声を掛ける。

「航空防衛軍の桜井です。先先(さきざき)、航空装備の評価試験が始まったら、皆さんに協力する事になっている関係で、飯田部長のご厚意も有り、今日の模擬戦の様子も見学させて頂く事になりました。宜しくね。」

 その発言を聞いて、立花先生が飯田部長に問い掛けるのだった。

「そう言う話、なんですか?」

「うん、まぁ、そんな話だな。」

「その辺りの方針は、何時(いつ)頃、決まった事なんでしょうか?」

「B型や航空装備に就いては試作機の完成が、ずるずると延びてるからね。伝達するタイミングを、計っていた所だったんだが。」

 そこで、桜井一佐が声を上げるのだった。

「先日、少々無茶な事をした事、噂は聞いてますよ。ですので、今日の模擬戦、何(ど)の様な展開になるのか、興味深く、拝見させて頂きますね。」

 それに対して、緒美が発言する。

「御期待に添えるかどうかは、分かりませんが。わたし達は出来る事を、やるだけです。」

 桜井一佐は、微笑んで、徒(ただ)、頷(うなず)いた。
 そこへ、格納庫の方向から八名の男女が歩いて来るのに、その場の一同は気が付いた。先頭を歩いているのは、陸上防衛軍の吾妻(アガツマ)一佐である。

「おぉい、飯田さん。皆さん、ご到着だね。」

 吾妻一佐が上機嫌そうに声を掛けて来るので、緒美達はその一団の方へと向き直り、揃(そろ)って一礼をする。

「今回の模擬戦の主催者、陸上防衛軍の吾妻一佐だよ。鬼塚君は、前回、お会いしたよね。」

 飯田部長が、吾妻一佐を兵器開発部の面面に紹介すると、吾妻一佐は自(みずか)らが引き連れる一団を紹介するのだった。

「こちらが、本日、諸君等の対戦相手を務めて呉れる、戦技研究隊の搭乗員だ。で、こちらが隊長の大久保一尉。」

 紹介された大久保一尉は色黒の、背の高い男性で、その体格と引き締まった表情が、如何(いか)にも『軍人』と言う雰囲気を漂わせている。大久保一尉は、一番近くに居た飯田部長に「宜しく」と、右手を差し出した。飯田部長は握手に応じ、続いて大久保一尉に兵器開発部の紹介をするのだった。

「こちらが、顧問の立花先生。そして、こっちが部長の鬼塚君。今日は、宜しくお願いしますよ。」

 立花先生と緒美は、握手の為の手を差し出さず、それぞれがもう一度、一礼をする。
 すると、大久保一尉が右の掌(てのひら)を上にして緒美を指し示し、尋(たず)ねる。

「対戦相手の搭乗者は、あなたが?」

 透(す)かさず、緒美の後列から茜とブリジットが、一歩、進み出て、茜が声を上げる。

「いえ、お相手はわたし達が。宜しくお願いします。」

 大久保一尉は、特段、表情を変えるでもなく、茜達に尋(たず)ねる。

「お名前を、伺(うかが)っても、宜しいですか?」

「はい。わたしは天野、です。」

ボードレール、です。」

「では、パワード・スーツの方は、ボードレールさん、あなたが?」

 大久保一尉は、体格の良い、ブリジットの方が HDG の装着者(ドライバー)だと、咄嗟(とっさ)に思ったのだ。だが、それには茜が答えたのだった。

「いえ、それは、わたしが。」

 続いて、ブリジットも発言する。

「わたしは LMF のドライブを。」

 大久保一尉は、視線を動かして二人の顔を順番に見ると、表情を変える事無く、言った。

「成る程、了解しました。」

 クルリと身体を横に向け、部下の方を見て、大久保一尉は声を上げる。

「皆さんと対戦する、我が隊の搭乗員を紹介しておきます。先(ま)ず、一番車車長、藤田三尉。」

 名前を呼ばれた三十代らしき女性隊員は、両手を後ろで組み、黙って小さく一礼をする。

「二番車車長、二宮一曹。」

 藤田三尉の隣に立つ、四角い顔が印象的な男性で、見た所は三十代前半である。藤田三尉と同じ様に、両手を後側で組み、小さく一礼をした。

「三番車車長、元木一曹。」

 二宮一曹の隣に立つ、少し華奢(きゃしゃ)な印象の男性で、二十代後半と見受けられた。大久保一尉に名前を呼ばれ、前の二人と同様に一礼をするのだった。

「一番車操縦手、松下二曹。」

 目付きの鋭い、二十代後半の女性隊員だったのだが、何故か一瞬、茜とブリジットは、彼女に睨(にら)まれた様な気がしたのだった。

「二番車操縦手、江藤三曹。」

 眼鏡を掛けた、優し気(げ)な印象の二十代前半の男性で、一礼の動作にもメリハリ感が有り、それが生真面目そうな性格を窺(うかが)わせていた。

「三番車操縦手、日下部三曹。」

 隣の江藤三曹とは対照的に、茜達を舐める様にじろりと見渡した後、上目遣いでゆっくりと一礼する動作は、女子である兵器開発部の一同には、何か気持ちの悪い印象を与えたのだった。
 そして、一通りの紹介を終えて、大久保一尉が締め括る。

「以上、六名、三組が本日、皆さんの対戦相手を務めます。」

「戦車戦に於いては、陸上防衛軍が誇る精鋭達だ。模擬戦で負けたとしても、けして恥でないぞ。頑張って呉れ給え。」

 大久保一尉に続いて、吾妻一佐は、そう言って笑うのだった。

「では、一佐。自分らは準備を進めますので。」

 大久保一尉は吾妻一佐の方へ向き直り、敬礼をする。すると、その背後の六名も身体の向きを変え、吾妻一佐に敬礼をするのだった。
 吾妻一佐が敬礼を返し、その手を下げると、大久保一尉も手を降ろし、身体の向きを部下の方へ向けて声を上げた。

「では、全員、準備に掛かれ!駆け足。」

 号令の下、六名は駆け足で奥側の格納庫の前に駐められている、三台の浮上戦車(ホバー・タンク)へと向かった。

「それでは、其方(そちら)の準備が整いましたら、お知らせください。」

 大久保一尉は、そう言い残すと、吾妻一佐と共にその場を後にしたのだった。
 陸上防衛軍の一団が去ったあとで、最初に口を開いたのは飯田部長である。

「いやぁ、如何(いか)にも、な感じだったなぁ…防衛軍は、どこもあんな感じですか?桜井さん。」

「あれは、『陸上』独特じゃないかしら。少なくとも、航空(うち)はもうちょっと、スマートだと思うけれど。」

 桜井一佐は、苦笑いである。そして、直美が緒美に向かって言うのだった。

「それにしても…あの、吾妻?さんの言い方。うちが負けるの、確定みたいな。随分と、見縊(みくび)られてるみたいよね。」

 続いて、ブリジットが所感を漏らす。

「それに、あの真ん中のお姉さん。何か、睨(にら)んでたよね、こっち。 ねぇ、茜。」

「うん…気の所為(せい)、かな?」

 自信無さ気(げ)に、茜も同意すると、続いて瑠菜がげんなりとした表情で言うのである。

「わたしは、最後の男の人、目付きが気持ち悪かった~。」

「あれは、ちょっと無いよね~。」

 と、瑠菜の発言に同意するのは樹里だった。そこで、「パン、パン」と二度、掌(てのひら)を打ち合わせ、緒美が言うのである。

「取り敢えず、わたし達も準備に掛かりましょう。」

 一同は、緒美の指示に従い、既に到着していた、天野重工のトランスポーターの方へと歩き出すのだった。

 

- to be continued …-

 

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