WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

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STORY of HDG(第11話.08)

第11話・天野 茜(アマノ アカネ)とブリジット・ボードレール

**** 11-08 ****


 そして、天神ヶ﨑高校側の指揮所へ向かって叫んだ。

「其方(そちら)も、直ぐに格納庫に入るよう、指示を出して!」

 緒美は慌てて、茜とブリジットの二人に、格納庫に入るよう通信で伝えるが、その一方で、大久保一尉はテーブル上に置いてあった双眼鏡を取り、再び庫外へと駆け出した。
 外に出て空を見上げると、三機で三角形の編隊を組んでいる『トライアングル』は、大久保一尉の頭上、ほぼ真上を通過して行った。それらからはジェットエンジンの様な、爆音は聞こえて来ない。どの様な動力機関なのか、いまだに原理は不明なのだが、空気が噴出する様な音と、風を切る様な音が混じった「シュルシュル」の様な、そんな音を立ててエイリアン・ドローンは飛行していた。

「見付かったかな?」

 吾妻一佐が、大久保一尉へと近寄り、話し掛けて来る。

「でしょうね。」

「我々の探知よりも、先行している様子だな。この上空を通過しただけ、ならいいんだが…。」

 飯田部長と桜井一佐も格納庫から出て来ると、大久保一尉の近く迄(まで)進んで、東の空を見上げていた。
 その前方を、ブリジットが操縦する LMF が通過して格納庫内部へと進み、その後、茜が到着し、格納庫の中へと入った。内部では LMF が機首を出口側へと回し、床面へと着地する。
 同時に、防衛軍の浮上戦車(ホバー・タンク)三輌も、次々と背後の第二格納庫へと入って行くのだった。

「行ってしまいました?」

 桜井一佐は空を見詰めて、誰に訊(き)くでもなく、そう言った。三機の『トライアングル』は、肉眼で見るには可成り小さくなっていた。
 大久保一尉は双眼鏡を覗(のぞ)いて、その行方(ゆくえ)を監視している。
 それから数秒か十数秒か、暫(しばら)く経って、大久保一尉が声を上げた。

「いや、旋回してます。戻って来ますね。」

 双眼鏡を降ろすと、そこに居た吾妻一佐と飯田部長、そして桜井一佐に声を掛け、歩き出す。

「皆さん、中へ。」

 そして、表に出ていた四人が格納庫内へと入ると、待機していた数名の整備要員の下士官達に向かって指示を出すのだった。

「正面扉閉鎖!急げ。」

 そして正面の大扉閉じられる中、大久保一尉は指揮所のテーブルへ戻ると、通信機のマイクを取った。

「指揮所より、全車。格納庫の扉を閉めて、命令有る迄(まで)、車内で待機。エンジンは切るな。」

「了解、待機します。」

 通信機からは一番車の車長、藤田三尉の返事が聞こえた。
 大久保一尉は指揮通信用のヘッド・セットを装着すると、天神ヶ﨑高校側の指揮所へ、つかつかと向かった。
 そして、緒美に向かって訊(き)くのだった。

「そのモニターで、外の様子が見られますか?」

「はい。古寺さん、格納庫の前からフィールドの中央方向を映して。瑠菜さんは、トライアングルの編隊を画面に入れられるか、やってみて。」

 佳奈と瑠菜の二人は「はい」と答えると、緒美の指示に従って観測機を操作する。

「ありがとう、助かります。」

 大久保一尉は一礼すると、モニターの前へと進んだ。吾妻一佐と桜井一佐、そして飯田部長は大久保一尉の背後からモニターに視線を注ぐのだった。そして、緒美は飯田部長の隣へと移動し、モニターを監視する。
 格納庫の外、上空からは、あの「シュルシュル」と言った、エイリアン・ドローンの飛行音が段段と大きく聞こえる様になっていた。

「捉えました。高度が可成り下がってますね。」

 瑠菜の言う通り、モニターには三機の、飛行形態のトライアングルが映し出されている。そして、その背景には空だけではなく、山の稜線も映っていた。トライアングルが接近しているので、ズーム撮影では直ぐに画面一杯になってしまい、瑠菜はその度(たび)にカメラのズーム設定を調節しなければならなかった。
 そして、聞こえていた飛行音が突然途切れると間も無く、小さな地響きと振動が伝わって来た。
 佳奈が操作する観測機からの画像を映したモニターには、格闘戦形態に変形したトライアングルが着陸した様子が映し出されていたのである。
 吾妻一佐が、呟(つぶや)く。

「奴ら、こんな所に何の用だ?」

 モニターに映されたトライアングル達は、周囲を見回す様に頻繁に機体の向きを変えている。その様子を見て、桜井一佐が小声で言う。

「何か、探しているのかしら? この儘(まま)、何もしないで飛んで行って呉れたらいいのだけれど…。」

 そして、三機のトライアングルは、揃(そろ)ってモニターの方向へ向いた。つまりそれは、撮影している観測機の方向であり、同時に、それは格納庫の方向である。

「瑠菜さん、古寺さん、観測機を動かさないでね。トライアングルは動く物には強く反応するから。」

 囁(ささや)く様な緒美の指示に、瑠菜と佳奈は声を返さず、頷(うなず)いて見せるのだった。
 モニターに映される映像では、一歩、二歩とトライアングル達は格納庫の方向へと、移動を始めている。
 吾妻一佐は上着の内ポケットから携帯端末を取り出すと、通話要請を送る。それが相手側に繋がると、声を低めて話し始めた。

「あぁ、わたしだ。現在のわたしの所在は分かるな? 今、エイリアン・ドローンの襲撃を受けている。至急、救援を…そうだ、頼むぞ。」

 通話が終わるのを待って、大久保一尉が尋(たず)ねた。

「どちらに?」

「総隊本部の、わたしの執務室だ。多分、この方が話が早い。」

「ですが、救援が到着するのに早くて二十分、いや、三十分は掛かりますか。」

「そうだな。」

「時間稼ぎが必要ですね。」

「手は有るか?」

「やってみましょう…。」

 大久保一尉はヘッド・セットのマイクを口元に寄せ、呼び掛けた。

「指揮所より全車。救援を要請しているが、到着迄(まで)の三十分間、奴らを引き付けて呉れ。『鬼ごっこ』だ、但し、絶対に掴まるな。三十分間逃げ切って、奴らを此方(こちら)に近付けるな。」

 ヘッド・セットには直様(すぐさま)、各車の車長から「了解」の返事が大久保一尉には聞こえていたが、それはその場に居た他の者には分からなかった。しかし間も無く、隣の格納庫の大扉が開き、浮上戦車(ホバー・タンク)が次々と発進して行った事は、その物音で誰にも明らかだったのだ。
 吾妻一佐は、再び携帯端末を取り出すと、パネルを操作して、もう一度、通信要請を送った。

「河西か?其方(そちら)に居る人員は把握しているか?」

 河西氏とは、管理棟に待機していた吾妻一佐の秘書を務める士官で、階級は三尉である。吾妻一佐は、河西三尉からの報告を聞き、指示する。

「分かった。いいか、管理棟の中心部に全員を集めて待機しろ。救援は呼んであるが、到着迄(まで)、暫(しばら)く掛かる。戦研隊が時間を稼いで呉れるが、今、外に出るのは危険だ…そうだ、其方(そちら)は任せる…よし。」

 通話を終えた吾妻一佐は、携帯端末を上着の内ポケットへと押し込む。モニター画面の中では、三機のエイリアン・ドローンを翻弄(ほんろう)する様に、三輌の浮上戦車(ホバー・タンク)が縦横無尽に走っている。

「この儘(まま)、逃げ切れるかな?」

「そう願います。」

 吾妻一佐の呟(つぶや)きに、モニターを見詰め乍(なが)ら、表情を変える事なく大久保一尉は答えるのだった。

 その後方から、モニターで外の様子を見ていた緒美の耳には、ヘッド・セットを通じて茜の声が聞こえて来る。

「あの、部長。わたしも、防衛軍に協力した方が?」

 緒美は振り向いて、声を上げず、茜に首を振って見せる。

「でも…。」

 茜が続いて何か言いそうになるのを、緒美は右手を前へ挙げて押し止め、そして声を上げた。

「みんな、ちょっと LMF の前に集合して。あ、観測機、佳奈さんの方はカメラの向きその儘(まま)、固定で。瑠菜さんの方は六機を追跡モードで。」

 そう言い残して、緒美は茜が立っている格納庫の中央付近、LMF の前へと歩き出す。ブリジットは LMF のコックピットから降り、茜の傍(かたわ)らに立っていた。
 瑠菜と佳奈は、緒美の指示通りに観測機を設定すると緒美の後を追った。他のメンバーも、緒美の元へと集まって行く。すると、緒美が振り向いて、声を上げるのだった。

「立花先生。」

 声を掛けられて、立花先生が振り向くと、十メートル程離れた場所で緒美が右手を挙げているのが見えた。嫌な予感がした立花先生は、席を立つと周囲に居た天野重工のメンバー達に声を掛けるのだった。

「畑中君、あなた達も来て。それから、部長も、お願いします。」

 立花先生に声を掛けられた飯田部長は、訝(いぶか)し気(げ)に聞き返すのだった。

「どうしたんだい?」

 立花先生は、小声で答えた。

「あの子達、又何か、仕出(しで)かす気かも知れません。止めないと。」

 そう言い終わるが早いか、立花先生は緒美達の元へと急いだ。飯田部長と畑中達も、その後を追うが、その足取りには立花先生程の緊迫感は無い。
 他の面面よりも一足先に緒美達一同の元へ到着すると、開口一番、立花先生は言った。

「あなた達、又、無茶な事、考えてるんじゃないでしょうね?」

 声は抑えていたものの、立花先生のその剣幕を見た緒美は、宥(なだ)める様に答えるのだった。

「まだ、何も言って無いじゃないですか。」

「言われる迄(まで)もなく、分かるわよ。駄目よ、絶対に。」

「おいおい、立花君。一応、話くらい聞いてあげても、いいだろう?」

 苦笑いしつつ、背後から飯田部長が声を掛けて来るが、立花先生は直ぐに切り返すのだった。

「聞かなくったって分かります。天野さんが、防衛軍の応援をしたい、とか、言ってるんでしょ?」

 それを聞いたブリジットが、半(なか)ば呆(あき)れる様に、しかし声を低めて言う。

「流石、立花先生。」

 続いて、緒美が諭(さと)す様に茜に言うのだった。

「今回は、防衛軍の人達も居るのよ、前回とは状況が違うの。だから、無茶な事は考えないで、天野さん。」

 緒美が全員を集めたのは、茜を説得する為だったのだ。しかし、茜は反論する。

 

- to be continued …-

 

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