WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

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STORY of HDG(第12話.04)

第12話・天野 茜(アマノ アカネ)とRuby(ルビィ)

**** 12-04 ****


「接近戦の手段を封じる事で、彼女達がそれを避ける意志を示していた、と言う事です。そうすれば、わたし達、大人側が余計な心配は無いだろう、と。 でも、それは彼女達、特に天野さんに取っては、リスクを余計に大きくする行為だったのですが、その時点で、わたしも飯田部長も、天野さんに接近戦用の装備を持つように薦める事は、思い付きもしませんでした。」

「まぁ、その辺り、余り気に病む必要は無いよ。キミにせよ飯田君にせよ、軍事作戦や戦闘指揮に関しては素人(しろうと)なんだ。それに、茜は兎も角だが、鬼塚君の方は、そのリスクを回避する作戦を、ちゃんと考えていた様子だしな。」

「申し訳ありません、監督者として、本当に力不足(ちからぶそく)で。」

 座った儘(まま)で、立花先生は深深と頭を下げるのだった。すると、天野理事長は透(す)かさず、言葉を返した。

「だから、気にしなくてもいいよ、立花先生。結果的に全員無事だったし、損害も出ていない。キミは十分に、監督者としての責任は果たした。」

「そう言って頂けると、幾分、気は楽ですが。」

 顔を上げた立花先生は、苦笑いである。一方で、溜息を吐(つ)いて、塚元校長は言うのだった。

「しかし…又、こんな事が起きるのでしょうか?理事長。 幾ら自発的な行動とは言え、戦闘に巻き込まれる危険性が分かっていて、生徒達にこの儘(まま)、活動を続けさせると言うのはどうかと。 例え、彼女達にそれに対応する能力が有るにしても、ですよ?」

「又、同じ様な事が、と問われれば、その可能性は低くはないな。一般には報道されてはいないが、前回の襲撃の際、広島の防空レーダーが被害を受けていたそうだ。此方(こちら)側のは、うちの子達が守って呉れたが。」

 その天野理事長の発言を聞いて、立花先生は気が付いたのである。

「それじゃ、今回、エイリアン・ドローンが接近していたのに、気が付くのが遅れたのは…。」

「ああ、防空監視網の穴を突かれた格好だ。無論、防衛軍が対策をするだろうが、それなりに時間は必要だろうな。」

「…そうでしたか。」

 そして、身を乗り出す様にして、塚元校長が提案する。

「でしたら、少なくとも、その対策が出来る迄(まで)、兵器開発部の活動を休止させては? 今は、夏休み期間中でもありますし。」

 その提案に、先に異を唱えたのは、立花先生だったのである。

「校長、エイリアン・ドローンの襲撃は、段段と規模と頻度が増して来ています。先に送れば、送る程、危険度は増す事になるのではないかと。」

 次いで、天野理事長が発言する。

「今のスケジュールだと、年内一杯で、予定している開発項目に、一通りの目処(めど)が付く。そこ迄(まで)は、彼女達の協力を得たい所だな。」

「会社として、お金儲(かねもう)けが大事なのは分かりますが、それに生徒達を、危ない目に遭わせて迄(まで)と言うのには、賛同、致し兼ねます。」

 そう、語気を強めて塚元校長が言うので、天野理事長も厳しい表情で、しかし落ち着いて言い返すのだった。

「この開発案件に、利益なぞ殆(ほとん)ど有りはしませんよ。国家や人類の存続危機に繋がらない様、対抗手段を得る為の開発です。無論、社員に只働きをさせる訳(わけ)にはいかないので、相応の報酬が得られる様に考えてはいるが。その辺り、誤解はしないで頂きたい。」

 一息置いて、天野理事長は続けた。

「勿論、校長の懸念は理解しています。だから、防衛軍の協力も得て、彼女達に護衛を付ける事も考えている所だが…態勢が整うまで、或(あ)る程度、時間が掛かるのは仕方が無い。で、立花先生?」

「あ、はい。何(なん)でしょうか?」

「在り来たりの事しか言えなくて、心苦しいのだが。護衛の態勢が整う迄(まで)、あの子達が無茶をしない様、気を付けてやって欲しい。」

「それは、勿論、その積もりですが…昨日の様な突発的な状況で、目の前で被害が出るであろう場合に、天野さん達を制するのは、難しいかと。」

「そうなったら、それで仕方が無い。その時は、後方の部員達の安全確保を考えてやって呉れ。」

 その言葉に、塚元校長は睨(にら)む様な視線を送り、天野理事長に訊(き)いた。

「宜しいんですの?それで。」

「茜も、前に出て行く以上、それ位(くらい)の覚悟をしているだろう。まぁ、もしもの事態になったら、娘…あの子の両親には、恨まれるだろうがな。しかし仮に、そんな状況で茜が何もしなかったら、恐らく、もっと多くの犠牲が出て、その方が茜に取っては辛い事も有るだろうし…まぁ、難しい判断だな。兎に角、我我は我我で、出来る事を探して、一つずつ手を打っていくしかない。」

 天野理事長は、そう言ってソファーに凭(もた)れ掛かると、目を閉じて、深く息を吐(は)いた。


 再び、兵器開発部の部室である。
 茜が部室へ到着したのは、時刻が午前十一時になろうかと言う頃だった。ドアを開けて部室へと入った茜は、真っ先に、ブリジットの姿が無い事に気が付いた。時刻的に、バスケ部の朝練からは、もう戻っている筈(はず)だったのだ。そう思えば、寮の部屋には着替えに戻った気配も無かった。

「あれ?ブリジットは、今日は一日、バスケ部でしたっけ?」

 茜に、そう問われて、緒美と恵は一度、顔を見合わせる。そして、恵が答えた。

「もう直(じき)、戻って来ると思うけど。」

「そうですか、そう言えば副部長の姿も見えませんね。」

 そう言いつつ、茜は右肩の背中側へ縦に担いでいた、長さが1.5メートル程の黒い合成皮革製ケースを床面へと降ろすと、背後の書類棚へ立て掛け、空いていた席に着いた。

「新島ちゃんも、ちょっと用事でね。直ぐ戻ると思うけど。」

 今度は緒美が、微笑んで答えた。すると、続いて瑠菜が茜に問い掛ける。

「天野、何よ?その黒いケース。」

「ああ、これですか?竹刀(しない)ですよ。」

 即答する茜に、佳奈が聞き返す。

「シナイって、剣道に使う?」

「はい。」

 再び、瑠菜が尋(たず)ねる。

「何(なん)で又、そんな物。」

「偶(たま)には、素振り位(くらい)しようかと思って、こっちに持って来てはいたんですけど。流石に、寮で夜中に竹刀(しない)を振り回してると、危険人物っぽいので。この三ヶ月、ほぼ封印状態で…。」

 さらりと説明する茜に被せる様に、瑠菜は言うのだった。

「あ~いやいや、何(なん)で部室に持って来たかって事。」

「え?…ああ、ブリジットに、ちょっと稽古(けいこ)をして貰おうと思いまして。」

「剣道の?」

 そう訊(き)いて来たのは、恵である。

「はい。」

 そこで、Ruby が茜に尋(たず)ねるのだった。

「LMF の、腕を使った戦闘に就いて、練習が必要なのは、ブリジットではなく、わたしなのでは? 茜。」

「勿論そうだけど、LMF の動作制御にも、HDG と同じで操縦者(ドライバー)、この場合はブリジットの、動作イメージとかが反映されるでしょ。だからブリジットにも、格闘戦の基礎的な動作のイメージが、出来てる方がいいと思うの。」

「成る程、わたしも経験の無い事なので、それは試してみたいと思います。」

「うん、やってみて、上手くいかない様だったら、又、考えましょう、Ruby。」

「ハイ、茜。」

 Ruby の返事を聞いて、茜は緒美の方へ視線を変え、言うのだった。

「と、言う事で、やってみたいんですけど。如何(いかが)でしょうか?部長。」

「うん、まぁ、やってみても損は無さそうね。いいんじゃない? でも、怪我とかしない様に、気を付けてね。」

「はい。それは、勿論。」

 そして、複数人が外階段を登ってくる足音が、戸外から聞こえて来る。間も無く、ドアを開けて入って来たのは、樹里を先頭にソフト担当の三名と、立花先生だった。

「唯今、戻りました~。」

 先頭に立っていた樹里が、そう声を掛けつつ中央の長机へと歩み寄って来るので、恵が尋(たず)ねるのだった。

「立花先生もご一緒でしたか。」

「ええ。理事長室からの帰りに、通信会議室の方へ寄ってみたら、ちょうど終わった所だったのよ。本社との打ち合わせ。」

 立花先生が恵の隣の席に座ると、樹里と維月、そしてクラウディアも、それぞれが空いていた席に着いた。そして、緒美が樹里に訊(き)くのだった。

「話は付いたの?城ノ内さん。」

「はい。昨日聞いていた通り、防衛軍仕様の LMF 改型用に用意してあった、訓練用シミュレーターのソフトが転用出来るそうなので、その方向で。」

 続いて、維月が補足を加える。

「唯(ただ)、LMF 改のは HMD(ヘッド・マウンテッド・ディスプレイ)に映像を表示する仕様なので、それをこっちの、LMF のコックピット・ブロック用へ変換するモジュールを追加する必要が有るので、ソフトの改造に三日欲しいそうです。」

「え?三日で出来るんだ、そう言うの。」

 そう、感想を漏らしたのは瑠菜である。それに対し、樹里が微笑んで解説を付け加える。

「うん、基本的には表示画像の座標変換をすれば済む話、だそうだから。ソフト改造作業に二日、チェックに一日、だって。」

「三日って事は、月曜日から、火、水、木曜日には使える様になるって計算でいいのかしら?」

 樹里の説明に、指折り数え乍(なが)ら恵が日程を確認する。すると、クラウディアが半ば呆(あき)れた様に言うのだった。

「それが、今日から取り掛かるから、火曜日にはインストール出来るだろうって、五島さんが。」

「え?火曜日って…土日もビッシリ、作業するって事?」

 恵が聞き返すのを、苦笑いしつつ維月が答えた。

「土日にやる方が、邪魔が入らなくて進みが、いいんだそうですよ。」

 それに、涼しい顔で立花先生が付け加えるのだった。

「まぁ、開発、設計三課の五島さんって言えば、会社に住んでるって言われてるらしい人だから。どこかで、代休は取ってる筈(はず)だけど。 皆(みんな)は、卒業して本社採用になっても、真似しちゃ駄目よ。」

「あはは、うちの姉も、似た様な様子らしいですよ。まぁ、うちのは両親からして、そんな感じなんですけどね。」

 そう維月が言うので、隣の席の樹里が尋(たず)ねるのだった。

「安藤さんも、そうなのかな?」

「いや~安藤さんは、割と、ちゃんと休みを取ってる方だって聞いたけど? まぁ、ソフト部隊が長時間勤務になり勝ちなのは、業界的な傾向じゃない? うちの親とか見てると、マジでそう思うよ~。」

 維月の返事に対し、立花先生が言うのだった。

「う~ん、ソフト部隊に限らずね、メカでは設計の人達も、結構な長時間勤務になるみたいよ。職種に限らず、頭脳労働的な業務は、乗った時には、どこ迄(まで)でも続けたくなっちゃうのよね。脳内麻薬とか出てるんじゃ無いか、って位(ぐらい)。」

 それに、茜も問い掛ける。

「企画部も、そうだったんですか?」

「そうね~乗りが悪い時は、さっさと切り上げて頭を冷やした方がいいけど、乗ってる時はね、兎に角楽しいのよ、これが。まぁ、あとで冷静になって見直すと、出来てた書類がとんでもない内容だったりするんだけどね。」

 そして、瑠菜も立花先生に訊(き)くのだった。

「深夜テンションって奴ですか?」

「あはは、そんな感じ。」

 立花先生は笑って、そう答えるのだった。

 

- to be continued …-

 

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