WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第12話.15)

第12話・天野 茜(アマノ アカネ)とRuby(ルビィ)

**** 12-15 ****


 そんな折(おり)、インナー・スーツへの着替えを終えて格納庫に降りて来た茜が、緒美達に声を掛ける。

「お待たせしました~直ぐ、HDG を起動しますね。」

 緒美達は開かれてる大扉に近い側に居た為、茜が居る二階通路から降りて来る階段、つまり格納庫の奥側からは二十メートル程の距離が有った。その為、緒美と共に居た一団が誰なのか、茜には直ぐには解らなかったのだが、その人数から兵器開発部のメンバー以外の人が居る事は明白だったのだ。そして間も無く、その中に祖父である天野理事長が混じっている事に、茜は気が付いた。

「おじ…理事長!こんな所で、何してるんですか。」

 十メートル程、大扉側へと進んで、HDG の接続されたメンテナンス・リグの前辺りから、思わず上擦った声を上げる茜だった。天野理事長は、落ち着いて答える。

「お~う、校長達と一緒に、ちょっと見物、いや、見学させて貰うよ。」

 茜は、緒美に呼び掛ける。

「宜しいんですか?部長。」

「構わないわよ~別に。天野さんは、何時(いつ)も通りにやってね。」

 一瞬、返事に詰まる茜だったが、一息を吐(つ)いて声を返す。

「分かりました~。」

 すると、傍(そば)にやって来た瑠菜が、茜に声を掛ける。

「こっちの準備は、出来てるよ。」

「はい。」

 そう返事をすると茜は、ステップラダーを駆け上がり、その頂部で腰を下ろす。そこへ、瑠菜が声を掛けるのだった。

「何時(いつ)も通りにね、天野。」

 声の方へ視線を向けると、瑠菜とブリジットが微笑んで茜を見上げていた。茜も微笑んで、答える。

「分かってま~す。」

 そして茜は、何時(いつ)も通りの手順で、HDG に自身を接続していった。
 装着が終わると、メンテナンス・リグの前からステップラダーが退(ど)かされ、茜の HDG が床面へと降ろされると、接続が解放された。茜はメンテナンス・リグから離れると、LMF の前へと歩いて移動するのだった。
 その、一連の様子を眺(なが)めていた塚元校長が、ポツリと言う。

「ああ、動いた。歩いてる。」

 それに釣られる様に、天野理事長も言うのだ。

「そう言えば、動いている所を直に見るのは初めてだな。レポートに添付されていた動画なら、何度か見たが。」

 立花先生が、天野理事長に問い掛ける。

「如何(いかが)ですか?直接、ご覧になって。」

「そうだね。キミと鬼塚君のレポートから丸二年、それで、ここ迄(まで)進んだかと思うと、なかなか感慨深い物が有るね。」

 天野理事長は、立花先生の方へ視線を送ると、ニヤリと笑う。一方で、背後での、その遣り取りを聞いた緒美は振り返って、天野理事長に言った。

「これも、本社の皆さんの、努力の賜(たまもの)かと。」

「いや、キミのアイデアが有ってこそだよ、鬼塚君。」

 天野理事長は、直ぐに緒美へ言葉を返した。緒美は微笑んで「恐縮です。」と答え、LMF の方へと視線を戻す。
 LMF の側では、HDG の接続作業が瑠菜とブリジットの補助の元、着々と進んでいる。緒美はもう一度、振り向いて言った。

「先生方、此方(こちら)へ。ここに居ますと、外へ出る LMF の進路上になりますので。」

 そう言って、東側へと緒美は歩き出す。立花先生を始め、天野理事長や塚元校長、そして前園先生が後に続いて移動を始める。長谷川、金子、武東の三名も、先生達のあとに付いて歩き出すが、緒美の背後から金子が声を掛けるのだった。

「わたし達も、この儘(まま)、見ててもいい?鬼塚。」

 緒美は声の方へ振り向いて、答えた。

「いいけど、秘密は厳守でお願いね。」

 そう言った緒美の表情は、笑顔である。金子も微笑んで、声を返す。

「分かってる~。」

 緒美は安全と思われる、東側の一階倉庫扉前付近へ移動を終えると、HDG のメンテナンス・リグの向こう側に居る樹里に向かって、手招きをしつつ声を掛ける。

「城ノ内さ~ん、コンソールをこっちへ。」

「は~い、部長。」

 樹里はデバッグ用のコンソールを押して、緒美の居る方向へと移動を始める。そのあとを、コンソールに繋がるケーブルを捌(さば)き乍(なが)ら、クラウディアと維月が付いて来るのだった。

「部長、これを。」

 緒美の元まで到達した樹里は、早速、緒美に Ruby のコマンド用ヘッド・セットを渡すのだ。それを受け取り、自(みずか)らに装着した緒美は、樹里に指示を出すのだった。

「通信の音声、そのコンソールで先生方にも聞かせてあげて。」

Ruby の声も、出ますけど?」

「まぁ、構わないわ。一一(いちいち)解説するのも面倒でしょう?」

「わっかりました~。」

 樹里は、緒美のリクエスト通りに設定変更の操作を始める。緒美は口元へマイクを寄せ、茜と Ruby に呼び掛ける。

「天野さん、Ruby、聞こえる?鬼塚です。」

 両者からの返事は、直ぐに返って来る。

「はい、聞こえてます。何でしょうか?部長。」

「ハイ、此方(こちら)も良く聞こえます、緒美。」

 その返事は、既に樹里のコンソールから出力されている。

「この通信、城ノ内さんのコンソールから、音声出力される設定になっているから、了解しておいて。今日は、見物人(ギャラリー)が多いから。」

「ええ~、取り敢えず了解しました。以後、発言には注意します~。」

 茜が、そう返事をして来るので、緒美は笑いつつ「そうして。」と返すのだった。そして、続いて Ruby が訊(き)いて来る。

「緒美、ギャラリーの中には、まだ、ご挨拶をしていない方が数名見受けられますが、如何(いかが)致しましょう?」

 因(ちな)みに、この時点で Ruby と面識の無いメンバーは、塚元校長と会長秘書の加納、自警部の長谷川、飛行機部の金子と武東、以上の五名である。LMF の頭部、複合センサー・ユニットが、緒美達の方へ向いているのが見て取れるが、緒美は真面目な顔で言った。

「悪いけど、挨拶は後(あと)にして、Ruby。HDG のドッキングが終わったら、メイン・エンジン・スタートよ。」

「分かりました。それでは、初対面の皆様とのご挨拶は後程。ドッキング・シークエンスを続行します。」

 天野理事長とは本社のラボで、前園先生に就いては昨年来、CAD の講習等で度度(たびたび)、部室を訪(おとず)れていたので、Ruby は、その二人には面識が有ったのである。
 一方で、金子が近くに居た恵に、声を掛ける。

「さっきの、挨拶がどうとか、言ってた女の人は誰?」

Ruby の事? あの LMF に搭載されている AI よ。」

 そう言って、恵は LMF を指差す。すると、続いて武東が所感を述べる。

「へぇ、戦車の制御 AI にしては、挨拶だとか、らしからぬ事を言うのね。」

「元元が汎用 AI として開発されていた物らしいから。詳しい事は、わたし達も知らないんだけど。」

 そこで、長谷川が金子と武東に尋(たず)ねるのだった。

「キミらは、あれが動いてる所、見た事が有るの?」

 金子は、短く答える。

「有るよ。」

 それに補足する様に、武東が言うのだった。

「飛行機部は、第一格納庫で部活やってるから。兵器開発部が試運転で、滑走路やエプロンを使ってれば、自然と見えちゃうのよね。他の部活や、一般の生徒は、こっち側には滅多に来ないから知らないでしょうけど。」

「って言うか、自警部はアレの存在とか、知らなかったの? 一年前からここに有ったのに。」

 金子は横目で長谷川の方を見乍(なが)ら、ニヤリと笑って言った。長谷川は、苦笑いで答える。

「知らなかったよ、先月の騒動で、ここに立ち入る迄(まで)はさ。そのあとも、ここに有る物は本社が管理する資産だから、自警部や学校が関与する必要は無いって言われてるしさ。」

「ふうん、そうなんだ。 ちょっと意外ね。てっきり、自警部も一枚噛んでる物だと思ってたわ。」

 金子と長谷川の会話に、割り込む様に恵が一言。

「あ、Ruby…あの AI に関しては、国家機密級のプロジェクトだそうだから、絶対に他言はしないでね。」

「え?マジ?」

 驚いて言葉を返したのは、金子である。続いて、長谷川がポツリと言う。

「道理で、追い出される訳(わけ)だ。」

 そこで LMF の、メイン・エンジンの起動する音が、聞こえて来たのである。茜と Ruby からの報告に対して、てきぱきと状況を確認し、進めていく緒美の様子を、その背後から眺(なが)めて、武東は左隣に居た恵に耳打する。

「鬼塚さん、カッコいいわね。」

 恵が怪訝な顔付きで、武東の方へ視線を動かすと、当の武東は、くすりと笑って見せた。
 丁度(ちょうど)その時、LMF のホバー・ユニットが唸(うな)りを上げ、噴出した気流が床面に沿って四方へ広がる。格納庫内に風を巻き起こし乍(なが)ら、LMF はゆっくりと前進を始めたのだった。そして、瑠菜と佳奈が操作する、球形観測機が二機、LMF を追い抜いて外へと飛び出して行った。
 振り向いて、長谷川に緒美が言う。

「それじゃ、長谷川君。其方(そちら)の方も、準備をお願い。」

「了解。」

 長谷川は、マルチコプターのコントローラーを取りに向かった。
 LMF は格納庫を出て十メートル程進むと、西向きに姿勢を変えて停止する。続いて、腕部と脚部を展開し、『中間モード』へと、LMF は移行したのだった。

Ruby、アームの制御は、連動モードで。」

 茜の Ruby への指示が、樹里のコンソールから聞こえる。
 LMF の方へ目を遣ると、その前面にセットされている茜の HDG と同じ様に、LMF のロボット・アームが構えるのが見て取れた。続いて、茜はシャドー・ボクシングの様に何度か腕を振って、その連動感覚を確かめるのだった。

「部長、此方(こちら)は、準備完了です。」

「オーケー。ちょっと、その儘(まま)。待機しててね、天野さん。」

 緒美は横を向き、隣のコンソールをモニターしている樹里の傍(そば)に控えているクラウディアと維月に、問い掛ける。

「この間みたいに、観測機からの映像をモニターに映すのは、大変かしら?」

「いえ、モニターを持って来て、コンソールと繋げばいいだけですから。表示用のソフトは、コンソールに入ってますよね?城ノ内先輩。」

 クラウディアに尋(たず)ねられ、樹里は即答する。

「勿論。寧(むし)ろ、それを消す理由も無いしね。」

「それじゃ、準備をお願い。お客さん達にも。テストの様子が見易い様に。」

 緒美の指示を受け、「分かりました。」と維月が答えると、クラウディアと二人、シミュレーターの状況を表示するのに使用していた二台のディスプレイと、それを乗せていた長机を取りに向かった。それには、手の空いていた直美や恵、ブリジットも参加して、ディスプレイの設置と配線接続が手早く進められたのである。

 

- to be continued …-

 

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