WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第12話.22)

第12話・天野 茜(アマノ アカネ)とRuby(ルビィ)

**** 12-22 ****


「取り敢えず、Ruby の終了作業は、正常に完了してる筈(はず)だから、安心して、天野さん。まあ、破損してる可能性も無くはないんだけど。こればっかりは、再起動掛けてみないと、分からないと思うのよね。」

 続いて、維月が発言する。

「最悪、今日一日分の記憶が、飛んじゃってるかもだけど、ライブラリ間の整合性が取れてないと。それも、再起動前にログや中間ファイルをチェックすれば、修正出来る仕様だから。 Ruby の稼働中に突然電源が切れた、みたいな状況でない限りは、復元して再起動は出来る仕掛けは、用意されてるの。」

 そして、再び樹里が説明するのだった。

「唯(ただ)ね、緊急シャットダウンなんて、実際に実行したのは、多分、初めてだから。目論見(もくろみ)通りに機能してるかは、ね、やってみないと。この辺りの事は、本社のラボで、安藤さんや五島さんに、お任せするしかないよね。」

 発言の最後の方は、樹里は維月に向かって、同意を求めたのである。そして維月は、それには頷(うなず)いて応えた。
 そこで、恵が手を挙げ、樹里に尋(たず)ねる。

「そもそも、『緊急シャットダウン』って?」

 その質問に、樹里は直ぐに答える。

「ああ、恵先輩。それは、Ruby も普通の PC とかと基本的には同じで、計算とかの処理をメモリ上に展開して実行して、計算結果を不揮発性の記憶装置に書き込むんですが。計算の途中で終了したら、当然、メモリ上に展開してた状態が消えちゃう訳(わけ)です。 それで、消えちゃマズい計算の途中経過とかを、復帰用ファイルに書き出したり、ライブラリへの計算結果の登録情報なんかの整理するのが、所謂(いわゆる)、終了作業なんですが。 正規の終了作業だと、それに三十分位(ぐらい)掛かっちゃうので、復帰用ファイルへの書き出し方法を変更したりとか、書き出すデータのレベルを最低限に絞ったりして、終了に掛かる時間を一分程に圧縮したのが『緊急シャットダウン』なんです。」

 その説明を受けて、今度は直美が尋(たず)ねる。

「時々やってた『スリープ』とは、違うの? まあ、『スリープ』の処理には五分から十分程度、掛かってたと思うけど。」

「基本的な考え方は同じですよ。徒(ただ)、演算中の状態を書き出す方法とか、内容が違うだけで。『スリープ』の方は安全に稼働を中断する為の配慮が色々されてる分、時間が掛かりますけど。『緊急シャットダウン』の方は、兎に角、早く終了するのが目的なので。 だから或る意味、再起動時の安全への配慮を端折(はしょ)ってる訳(わけ)で、その辺り、『緊急シャットダウン』には危険(リスク)が有る、って事です。」

 樹里の説明を聞き終え、茜が問い掛ける。

「と、言う事は。Ruby は無事だと、思っていいんでしょうか?」

「そうね。大きな損傷(ダメージ)は無いと、思っていいわ。さっき維月ちゃんが言ってたみたいに、最悪の場合、今日、一日分の記憶が無くなってる、それ位の覚悟はしておく必要は有るけど。」

 そこで、維月が私見を加える。

「うん、でも。さっきコンソールの方に返って来てる、ログを見せて貰ったけど。データ・リンクからのログアウトとかまで、きっちり遣り取りしてる記録が残ってるから、ちゃんと終了作業が完了してる筈(はず)よ。 だから、多分、大丈夫。本社の方で、綺麗に復元して、再起動、掛けてくれると思う。 ま、時間は掛かる、とは思うけどね。」

「そうですか。」

 茜は一度、大きく息を吐(は)き、漸(ようや)く、その表情が少し緩(ゆる)むのだった。
 微笑んで、維月が言う。

Ruby も言ってたでしょ。開発の人達が居るから、心配するなって。」

「ああ…マリさんとエリカさん、って。マリさんって、維月さんのお姉さんの事ですよね?」

「そうね、多分。」

 茜に問われて、維月が答えた直後、今度は維月が樹里に尋(たず)ねるのだった。。

「…あれ?エリカって誰?」

「言われてみれば…Ruby からは、初めて聞く名前よね。でも多分、開発スタッフの誰か、でしょう? きっと。」

 そこで、クラウディアが声を上げる。

「エリカって、安藤さんの事でしょう?」

 そう言われて、樹里も思い出したのである。

「ああ、そう言えば。安藤さんの名前、『江利佳』だった。普段、『安藤さん』としか呼ばないから、すっかり忘れてたね、維月ちゃん。」

「そうね~、でも、Ruby が安藤さんを名前で呼ぶのって、珍しいよね。」

 維月に、そう言われても、樹里は、Ruby には安藤を名前で呼ばないように『謎のプロテクト』が掛けられていると言われていた件を、思い出す事が無かった。それは、彼女達の、その事に対する印象が薄かった、と言う事情も有ったのだが、それ以上に、彼女達が、その日の事の成り行きに、実は少なからず動揺していた所為(せい)なのである。

Ruby も、少し動揺していたのかもね。」

 樹里は冗談半分に、そうコメントを維月に返したが、そこで、その話題は終わってしまったのである。
 そして緒美が、茜に声を掛ける。

「取り敢えず、天野さん。装備を降ろして、着替えていらっしゃい。お疲れ様。」

「はい。」

 茜が右のマニピュレータで保持した儘(まま)の荷電粒子ビーム・ランチャーを武装格納コンテナへ戻す為、格納庫の奥へ歩き出すと、ブリジットが声を上げ、駆け寄って行く。

「あ、手伝うわ~茜。」

 一方で、瑠菜が隣に居る、佳奈に言う。

「佳奈、リグの操作、やってあげて。観測機の方は、わたしの方でやっとく。」

「うん、分かった。お願いね、瑠菜リン。」

 佳奈は、そう答えて立ち上がると、HDG 用のメンテナンス・リグへと向かう。そして瑠菜は、緒美に尋(たず)ねるのだった。

「部長、観測機は回収しますけど?」

「ああ、そうね。 お願い、瑠菜さん。」

「了解しました~。」

 瑠菜は二台のコントローラーを交互に、操作を始める。

「それじゃ、こっちも片付け、始めますか~手伝って、クラウディア。いいですよね?鬼塚先輩、こっちのモニターとか片付けちゃっても。」

 維月に訊(き)かれ、緒美は頷(うなず)いて答える。

「お願い、井上さん。」

 すると、直美と恵は、維月達に合流するのだった。

「わたし達も手伝うよ~井上。」

「指示してちょうだいね。」

「ああ、すいません。樹里ちゃんの方で、モニターの終了作業が終わったら、配線とか外して行ってください。」

 格納庫内の作業が『片付けモード』に移行したのを見計らって、天野理事長は緒美と立花先生に、声を掛けるのだった。

「では、我々はそろそろ引き上げるかな。本社や、防衛軍の方(ほう)とも連絡を取らなければならんし。 立花先生、後の事は、宜しく頼むよ。」

「あ、はい、理事長。」

 立花先生が返事をし、天野理事長と秘書の加納が南側大扉の方へ向き直った時、緒美が二人に駆け寄り、呼び止めるのだった。

「あの、理事長。」

「何かね?鬼塚君。」

 立ち止まり、振り向いた天野理事長に、緒美は少し声のトーンを抑え気味に話し掛ける。

「お願いしたい事が有ります、個人的に。その…『会長』に。 後程、少し、お時間を頂けませんでしょうか?」

「後程?ここでは、マズい話かな。」

「そう、ですね。」

「そうか…まあ、いい。理事長室に居るから、此方(こちら)が片付いたら、連絡して呉れ。立花先生も同席してもいいのなら、話を聞こう。」

「分かりました、お願いします。」

 緒美は、小さく頭を下げる。

「うん、それじゃ、また後でな、鬼塚君。 では、行こうか~、加納君。」

 踵(きびす)を返すと、天野理事長と加納は、格納庫の外に止めてある自動車へと向かった。

「緒美ちゃん、どうしたの?」

 緒美の背後から、立花先生が問い掛けて来るので、緒美は振り向いて答えた。

「理事長にお願いしたい事が有るので、後で時間を頂きました。先生も同席してください。」

 そう言われると、立花先生は緒美の傍(そば)まで行き、小声で尋(たず)ねた。

「何?ヤバイ話だったら嫌よ。」

「当面、皆(みんな)には内緒にしておきたいので、詳しい内容は後程。」

 緒美は、そう言うと、ふっと笑うのだった。その表情を見て、立花先生は言った。

「あんまりドキドキさせないでね、緒美ちゃん。寿命が縮んじゃうわ。」

 苦笑いで、そう言った立花先生の表情を見て、緒美はくすりと笑ったのだった。
 そんな遣り取りの後、二人は樹里の操作するコンソールへと向かう。そして緒美が、樹里に声を掛ける。

「城ノ内さん、今日のログ、本社の方へ送れそう?」

「はい、それに就いては問題無く。 所で、部長。さっき天野さんに言ってた、エイリアン・ドローンが逃走した理由って、『当たり』ですかね?」

「さあ、どうかしらね。でも、わざわざ襲撃しに来ておいて、その対象をほっぽって逃走したんだから、それなりの理由は有ったのでしょうね。」

 冗談っぽく答える緒美に、立花先生が問い掛ける。

「又、襲撃して来るかしら?」

 その問いに、緒美は即答する。

「もう、来ないでしょうね。少なくとも、HDG を狙っては。」

「どうしてです? 一度は逃げたけど、結局、又、攻撃して来たじゃないですか。現に、それで LMF は壊されちゃった訳(わけ)ですし。」

 樹里の反論に、微笑んで緒美は答えた。

「それは、こっちが追撃をしたから、向こうは反撃をした迄(まで)の事よ。もう、向こうからは、仕掛けては来ないと思うわ。その辺り、彼方(あちら)側は、物凄く合理的だから。今日だって、結果的にエイリアン・ドローンは、全滅した訳(わけ)だし。」

「HDG との交戦を避けた方が、エイリアン・ドローン側は損害が少ない?」

「そう、判断したでしょうね。 勿論、ここから遠い場所への襲撃は、継続される思うけど。」

「成る程。」

 樹里と立花先生の二人は、緒美の考えに納得したのだった。


 こうして、兵器開発部一同の夏期休暇期間中、帰省前に発生した一件は、収束したのである。
 事後の対外的な折衝や後始末に関しては、天野理事長曰(いわ)く「大人の役割だ」と言う事で、彼女達の帰省の予定は、当初の通りとされた。LMF が損壊し、Ruby の安否も正確には分からない中、「呑気に帰省なんかしていられない」と言う意見も有ったのだが、なればこそ「親元に帰って、気分を変えて来なさい」とは、立花先生の弁である。緒美が茜に言っていた通り、例え学校に残っていたとしても、彼女達に出来る事は『何も無い』のである。

 事後処理として、二日間を掛けて防衛軍の部隊がエイリアン・ドローンの残骸を回収し、同時に進められた天野重工による LMF の回収作業には、三日を要した。
 腕部や脚部が分解され、搬送車へ積み込まれた LMF は、一日掛けて山梨県に所在する試作工場へ運び込まれ、そこで Ruby のコア・ブロックが、LMF の胴体部より分離された。その作業には、更に三日が費やされ、最終的に Ruby のコア・ブロックが、天野重工本社のラボへと搬入されたのは、Ruby が停止した日から九日目となる、8月19日、金曜日だったのである。

 兵器開発部一同の努力と Ruby の犠牲的行動に因って、市街地からは可成り離れた場所でエイリアン・ドローンの進行を食い止める事が出来たのは、不幸中の幸いだったと言えるだろう。結果的に、この一件に因る市民への被害は発生しておらず、又、一般市民や報道関係者が映像等を撮影する機会が皆無だったのも、事後処理を進めるのには好都合だった。
 更に、エイリアン・ドローンが通過したのが、天神ヶ崎高校の敷地内と天野重工が所有する土地の範囲に収まっていたと言う幸運も重なって、全てが天野重工と防衛軍及び、防衛省との合意に基づいて、円滑に処理されたのである。
 最終的な対外発表としては、全てに置いて防衛軍が対処した事になっており、川岸で損壊した LMF に就いては陸上防衛軍所属の試作戦車として、その存在のみが公表された。だが、静止画像や動画等の映像資料は、その一切が非公開とされたのである。「新型、試作兵器の詳細に就いては、諸外国との軍事バランス的な兼ね合いも有り、一切を秘密事項とします。」とは、防衛軍側の公式コメントであるが、これに対し『新型、秘密兵器に関するスクープ』を狙う報道関係者側は、激しく抵抗していた。その一方で、大きな被害が発生した訳(わけ)でもないこの襲撃事件その物に就いては、最終的には地方都市の小規模な襲撃事件の一つとして、程無く、マスコミからは忘れ去られたのである。
 実の所、防衛軍としては『前の襲撃事件の折に、六機のエイリアン・ドローンを見失っていた失態』に就いてマスコミから責められる事の方が、大きな問題となるのを危惧(きぐ)していた。しかし、『新型、試作兵器の詳細は非公表』とした対応への批判報道が過熱して呉れたお陰で、結果的に『そもそもの失態』の方が霞(かす)んでしまったのだ。
 それが偶然なのか、誰かが意図した事なのか。その真相はに関しては、永久に闇の中なのである。

 

- 第12話・了 -

 

※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。
※誤字脱字等の修正の他に、作品の記述や表現を予告無く書き換える事がありますので、予めご了承下さい。