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Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

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STORY of HDG(第14話.06)

第14話・天野 茜(アマノ アカネ)とクラウディア・カルテッリエリ

**** 14-06 ****


「ああ、金子さん。どうぞ。」

 茜が三人を迎え入れると、開口一番、金子が室内へ向かって声を掛けたのだ。

「ハッピー・ニュー・イヤー!」

 即座に、部室の奥側から直美が声を返して来る。

「ハッピー・バースデー、でしょ?金子~。」

「あはは、ツッコミありがとー新島。」

 捨て身の『滑りネタ』を無事に回収した金子が嬉しそうに応じると、周囲からクスクスと笑い声が聞こえて来る。直美と金子の二人は、こう言った部分で波長が合うのだった。そんな金子の背後から彼女の後頭部をポンと武東が軽く左手で叩いて前へ進み出ると、武東は右手で胸元に抱えていた箱を長机の上へと静かに置き、そして言ったのだ。

「お招き頂いて、手ぶらで参加するのも何なので、これ、差し入れです。フライドチキンですけど、どうぞ。」

 武東は早速、皆(みな)が手に取れる様にと梱包を解くのだった。

「ああ、気を遣わせて、何(なん)だか申し訳無いわね、武東さん。」

 そう恵が言うと、武東は和(にこ)やかに「いえ、いえ。」と応じるのである。一方で、立花先生が懸念を一言、表するのだ。

「寮で夕食も有るんだから、食べ過ぎないのよ。」

 その立花先生の言に対して、軽口が維月の口から衝(つ)いて出たのだ。

「あはは、お母さんみたいな事、言わないでくださいよ~先生~。」

「誰が、お母さんですか。」

 苦笑いで抗議する立花先生には、金子が言うのだった。

「まあ、先生も含めて皆(みんな)、若いんだし。この人数なら、これ位(くらい)、問題無いですよ、先生。」

「慰(なぐさ)めて呉れなくても結構です、金子さん。」

「やだなぁ、本心ですよぉ、立花先生。」

 金子と立花先生は、互いに微妙な笑顔を送り合っているのだった。その傍(かたわ)らで、恵が立ち上がって言う。

「流石に椅子が足りないわね。CAD 室から、持って来ましょう。」

「あ、手伝います。恵先輩。」

 部屋の奥側、二階通路へ出るドアへと向かう恵を追って、其方(そちら)に近い席の瑠菜も席を立った。そして、その瑠菜を追って佳奈も席を立とうとするので、瑠菜が佳奈に向かって言うのだ。

「貴方(あなた)は今日の主役なんだから、座ってなさい。」

 そうして、瑠菜も部室を出て行ったのである。
 一方で、茜は金子に尋(たず)ねるのだった。

「所で、金子さん。村上さんも一緒なのは、どうしてですか?」

「どうしてですか?部長。」

 茜に続いて、連れて来られた村上自身も、金子に問い掛けるのだった。

「どうしてって、友達のバースデーに、村上一人、仲間外れじゃ可哀想かなって思って。」

 そう言って、ニヤリと笑う金子である。実は、佳奈の誕生日祝いに九堂の事も混ぜる提案は、茜の発案で恵から緒美へ、そして金子へと伝わっていたのだ。そして金子の隣で、武東が付け加える。

「それだけじゃ無いけど、まぁ、あとで正式発表が有る筈(はず)だから。ちょっと、待っててね、敦実ちゃん。」

 そうしている内に、隣の CAD 室からキャスター付きの椅子を三脚、恵と瑠菜が転がして運んで来るのだった。

「向こうへ、この椅子を運ぶのは面倒だから。こっち側の人がこの椅子を使って、今座ってるのを順に向こうへ送ってちょうだい。」

 その恵の声掛けに従い、部室の奥側席の瑠菜と佳奈、そして緒美の三名が CAD 室から運んで来た椅子に座り直し、他のメンバーも立ち上がると座って居た椅子を部室の入口側へと一つか二つずらし、そして座り直したのだ。空けられた椅子へと金子達、飛行機部の三名が着席するのを確認して、緒美が話し始める。

「それじゃ、金子ちゃん達、飛行機部の人にも参加して貰った理由に就いて、説明しておくわね。 皆(みんな)も知っての通り、今月末に AMF が、天神ヶ﨑高校(こちら)に搬入となります。その次に、C号機とか、その他にも色々と検証対象になる試作装備が、順次、搬入される予定なんだけど。それらの検証をするにしても、準備とか整備とか、流石に人手が足りなくなるの。今でも、瑠菜さんと古寺さんの二人だけじゃ、手一杯でしょ?」

「まあ、そうですね。今は樹里達にも、手伝っては貰ってますけど。」

 緒美の発言に瑠菜が同意すると、微笑んで緒美は発言を続ける。

「そこで、飛行機部から若干名、応援をして貰う事で話が付きました。今度、運び込まれて来る AMF は航空機基準で造られているから、飛行機整備の経験者が居れば心強いし、村上さんなら天野さんやボードレールさんとも仲が良いから、ちょうど良い人材かな、と言う事で。先(ま)ずは村上さん、お願い出来るかしら?」

 緒美の説明は、最後が村上への参加意思の確認になったので、村上は姿勢を正して答えたのだ。

「分かりました、飛行機部(うち)の部長が了解済みの事でしたら、わたしに異存は無いです。」

 村上の発言に、間髪を入れず金子が「了解してるよー。」と声を上げたのだった。村上はクスッと笑い、「では、宜しくお願いします。」と頭を下げて見せたのである。
 そして、緒美が発言を続ける。

「それで、補充が一人だけって言うのも心許(こころもと)無いので、九堂さん、貴方(あなた)にも、応援をお願いしたいの。」

 急に話を振られて、少し慌てて九堂は答えた。

「いいんですか?わたし、部外者ですけど。」

 その発言には、維月が言葉を返すのだ。

「部外者ってのが、兵器開発部に入部してないって意味なら、わたしも同じだし。秘密保持誓約の意味が分かってる人で、既に『ここ』の仕事に関わった者(もの)なら、引き続き協力して貰えると、助かるって事。ですよね?鬼塚先輩。」

「そう言う事。」

 微笑んで、緒美は小さく頷(うなず)いた。続いて直美が、九堂に声を掛ける。

「要(カナメ)、どこの部活にも入ってないんでしょ?」

「はあ、そうですけど。 まあ、敦実もこっちの活動に参加して、わたし一人、仲間外れってのも嫌なので…。でも、わたし、飛行機とか、詳しくないですよ?」

 その九堂の憂慮には、恵がフォローを入れる。

「AMF や、その他の装備に就いても、搬入されたら、最初に本社の人が技術指導はやって呉れる約束だから。余り心配しなくてもいいわ。」

「そう言う事でしたら。お世話になろうかと、思います。」

 九堂の承諾を得て、緒美は笑顔で言うのだ。

「それじゃ、ボードレールさんへの教習のあとも、引き続き宜しくね。九堂さん。」

 そんな緒美に対して、直美が問い掛ける。

「それで機械(メカ)の担当者は補強出来たけど、電気(エレキ)の方も必要って話だったでしょ? そっちのは、当てが有るの?鬼塚。」

 その直美の問い掛けに、金子が応える。

「あ、電気(エレキ)担当の方の助(すけ)っ人(と)には、わたし達が入ろうかと思ってるの。幸い、わたし達は電子工学科(そっち)だから、心得も有るしさ。」

 そう言って、金子と武東が、スッと右手を肩口程に挙げたのだった。直美は、金子に聞き返す。

「それは有り難いけど、三年生が二人も。飛行機部の方はいいの?」

「三年だから、いいのよ。あとの事は、二年の副部長に任せてあるから。来年は、あいつが部長やるんだし。」

 そう、笑顔で金子が言うと、武東が続いた。

「大丈夫よ。前島君、優秀だから。 会計の方も、引き継ぎの二年生は、もう準備してあるから、飛行機部(うち)の方の事は、御心配には及びませんわ。」

「それに、手伝うなら事情の分かってる者(もの)の方がいいでしょ。無闇に事情を知ってる者(もの)を増やす訳(わけ)にもいかないんだし。」

 金子のフォローに、緒美は静かに頷(うなず)いて応える。

「申し訳無いけど、正直(しょうじき)、助かるわ。ありがとう、金子ちゃん。武東ちゃんも。」

「いいのよ。友達の手助けが出来るのなら、それだけで嬉しいんだから。ね、村上。」

 最後に、自分に話を振られた村上は、「あ、はい。部長。」と、慌てて答えたのである。

「それじゃ、わたしの方から連絡しておく事は、以上です。先生の方からは、何か有りますか?」

 緒美が、そう言って立花先生に水を向けるが、立花先生は顔の前で右手を振って言ったのである。

「あー、無いわね、特に。今日の所は。」

 すると、茜が立花先生に問い掛けるのだ。

「昨日の会議の件とか、何か無いんですか?先生。」

「無いわねー。昨日の件に就いては、貴方(あなた)達に聞かせる様な、有意義な議論は何も無かったし。ねぇ、恵ちゃん。」

 話を振られた恵は、くすりと笑い応える。

「ええ、ホントに。画に描いたのを額に入れて見えない場所に飾った様な、不毛な会議でしたから。」

「どう言う例えですか、それ。」

 そう不審気(げ)に尋(たず)ねたのは、樹里である。それに対し、恵は笑顔で応える。

「言葉通りの意味よ。体裁は整えてあるけど、役に立っているのかどうか分からないって事。」

 恵の説明を聞いて、維月が笑って言うのだった。

「あはは、見えない所に飾ってあるんじゃ、そりゃ、役に立ってるかどうか分からないですね。」

「いや、そう言う話じゃなくて…。」

 樹里が、維月に向かって反論しようとするので、緒美が声を上げる。

「まあ、わたしが森村ちゃんから聞いた話を纏(まと)めると。 わたし達が防衛軍の作戦行動に割り込んだのが、彼方(あちら)方の自尊心(プライド)を痛く傷付けていたそうで、それで頭に来た司令部の方々が、天野重工(かいしゃ)と天神ヶ﨑高校(がっこう)に対して、嫌がらせをしたかった、と言うのが昨日の会議の主な趣旨だった、と。誤解を恐れずに言うと、そう言う事らしいわ。ま、文句はわたしか、天野さんに直接言いたかったみたいなんだけど。 それに、どうやら会議に出席していた司令部の方(かた)には、わたしと天野さんの事、男子生徒だと思われていたらしいわよ。」

 そう話した緒美の表情は、後半の辺りは薄笑いであった。緒美と直美の二人は、恵から昨夜の内に、昨日の会合の様子を一通り、聞き取り済みだったのである。そんな緒美に対して、茜が尋(たず)ねる。

「でも、この間。わたしと部長は、防衛軍の指揮管制の人と通信で話しましたよね? それでどうして、男子生徒だと…。」

 その茜の疑問には、立花先生が答えた。

「それは多分だけど、現場の人の話を司令部の方(ほう)では、詳しく聞き取りをしてないんでしょう。事が起きて、中(なか)二日(ふつか)での会合だったから、彼方(あちら)側で情報を整理してる時間は、余り無かった筈(はず)よ。」

 それに関しては、飯田部長と桜井一佐の思惑通りだったのである。しかし、その事が立花先生に知らされてはいなかったのは、勿論である。
 そして立花先生の発言を受けて、直美が呆(あき)れた様に言うのだ。

「それにしたって、大人気(おとなげ)無いよね。」

 直美は別段、憤慨(ふんがい)していた訳(わけ)ではなかったのだが、緒美は直美を宥(なだ)める様に言うのだった。

「まあ、それだけ頭に来てたって事らしいけど。 何(なん)にしても、わたし達は、別に防衛軍と敵対したい訳(わけ)ではないから、皆(みんな)も、その辺り、勘違(かんちが)いしないようにしてね。基本的に、防衛軍は味方なんだから。」

 続いて、立花先生も発言する。

「防衛軍からしてみれば、民間の未成年者が、面白半分、遊び感覚で余計な真似をするのは止めて呉れ、って言いたかったみたいだけど。 一応、それは彼方(あちら)側の誤解や思い込みで、わたし達は被害の拡大を防ぐ為に、緊急回避的に自己防衛をしていたと、それは或(あ)る意味、防衛軍に協力していたんだって事を、少なくとも防衛省側には理解して貰えたとは思うの。徒(ただ)、こっちの開発計画も大っぴらには出来ない都合も有るから、防衛軍の部隊レベル迄(まで)、此方(こちら)の認識が伝わるかと言うと、それは望み薄なのよね。だから、幾ら必要な事をやっていたとしても、わたし達が現場に居ると嫌われる事になりそうなのは、今後も変わらないと思うの。そう言う訳(わけ)だから、今後も極力、戦闘への参加は回避するように。いいわね、皆(みんな)。」

 立花先生が話し終えると、部室は静まり返り、全員が真面目な顔で席に着いていた。立花先生は深く溜息を吐(つ)くと、声を上げたのである。

「ほらぁ、こう言う雰囲気になるでしょ。だから、昨日の話はしたくなかったのに~。」

「まあまあ、立花先生。皆(みんな)も、昨日の事は気に掛かっていたんですよ。何も教えて貰えないって言うのも、又、それはそれでストレスですから。」

 今度は、立花先生を宥(なだ)める緒美なのである。そして立花先生が、もう一度、口を開く。

「兎に角、以上で昨日の件に就いては、お仕舞い。今は一応、お祝いの席なんだから、あとは皆(みんな)で賑(にぎ)やかにやってちょうだい。期末試験も、目前でもあるしね。」

「ああ~試験の話はしないで~。」

 間を置かずに声を上げたのは、金子である。その戯(おど)けた調子の声を聞いて、一同からはクスクスと笑いが溢(こぼ)れるのだった。

「何?金子ちゃん。試験に心配事?」

 真面目な顔で問い掛ける緒美に、ニヤリと笑って金子が言うのだ。

「毎回学年トップの鬼塚に言われると、何か癪(しゃく)だよね。」

「どうしてよ?」

 釈然としない表情で問い返す緒美だったが、そこで武東が金子に向かって言うのだった。

「鬼塚さんに言われるのが悔(くや)しいのなら、貴方(あなた)も、真面目に試験勉強すればいいのに。博美だったら、本気でやれば上位、十位くらいには入れるでしょ?」

「ヤだよ、面倒臭(めんどくさ)い。学校の定期試験なんて、落第しない程度に点を取っておけばいいの。」

 即座に、そう言い返す金子だったが、今度は直美が笑って声を掛ける。

「あはは、それ、先生の前で言っちゃダメでしょ~金子。」

「あ…。」

 直美に言われて気付いた金子は、慌てて立花先生の顔色を窺(うかが)うのだった。その立花先生は、微笑んでコメントをする。

「先生って言っても、わたしは講師ですから。他の先生達とは立場が違いますので、さっきのは、まぁ、聞かなかった事にしておきましょう、金子さん。」

「あははは~だから、好きなんだ~立花先生。」

「うふふ、あら、ありがと、金子さん。」

 金子と立花先生が、そんな遣り取りをしている最中(さなか)、唐突(とうとつ)に佳奈が奇妙な事を言い出すのだ。

 

- to be continued …-

 

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