STORY of HDG(第1話.12)
第1話・天野 茜(アマノ アカネ)
**** 1-12 ****
「ジェネレーターの配置案ですよ、ディフェンス・フィールドの。新島先輩。」
「去年の終わり頃から、部長を含めて四人、ずっと悩んでたものね~。」
瑠菜が鬼塚部長に代わって、新島副部長へ説明すると、佳奈がそれを補足した。
試作機が、基本パーツのみの構成で本社の試作部から納入されていたのは、外装デザインの最終案が、まだ定まっていないのが原因だったのだ。
「あぁ、その件のね~。」
新島副部長と同じく、状況がよく解っていなかった恵も、漸(ようや)く納得した様子だった。
「ちょっと、もう一回見せて。瑠菜。」
新島副部長に促(うなが)されて、瑠菜はスケッチを長机の上に戻す。そしてスケッチを指差して、瑠菜は茜に問い掛ける。
「このスカート・アーマーの分割だけど、ヒンジは外側よね?」
茜はスケッチを覗き込む様に確認して、答えた。
「そうですね…内ヒンジにしちゃったら、歩く時とかに、内側に入り込んで邪魔でしょうね。あ、でも徒(ただ)のスケッチですから、ケーブルの取り回しとか、考えてませんけど。」
「うん。ケーブル類はヒンジの軸を通せば大丈夫だと思うわ。 あ、肩のアーマーには…根本だけでも、可動制御が必要じゃない?」
瑠菜は、隣の佳奈に声を掛ける。
「そうね~腕の上げ下げの邪魔になるかもね…制御は出来そう?樹里リン。」
「うん。大丈夫、大丈夫。制御ソフトよりも、そこに可動軸を仕込む方が大変かもよ。瑠菜ちゃん。」
「それは、何とかするわ~。」
二年生間で話が進んでいるのを見て、鬼塚部長が声を掛ける。
「じゃぁ、その線で行けそう?」
「はいっ!これなら関節の可動範囲に制限は無いですし、構成も簡単になりそうだし。ジェネレーターの面積も広いから、防御性能も十分だと思います。どうして、今まで思い付かなかったかなぁ~…ねぇ、佳奈。」
「参考に見た SF 映画やアニメだと、ロボットの中に人間が入ってる様なの、ばっかりだったもんね。」
「そうそう、スリーブで構成する事しか考えてなかったわ。」
「先入観って、怖いよね~。」
瑠菜と佳奈の遣り取りの最後に、樹里がそう言って笑った。
「取り敢えず、この線で図面化を始めます。このスケッチ、貰ってもいい?」
「あ、はい。どうぞ。」
「じゃぁ、願いね、みんな。」
「はい。よ~し、一週間で図面完了が目標よ。樹里も手伝ってね。」
二年生の三人が連れ立って CAD 室へ向かう途中、瑠菜が茜の前で立ち止まる。
「天野さん、だったわね。又、アイデアを聞かせて貰うかもだけど、その時はお願いね。」
瑠菜は左手で、茜の左肩をポンと軽く叩いた。
「あ、はい。わたしで良ければ。」
三人は部室を出て、CAD 室へ戻って行った。
「まぁ、初日から大活躍ね、天野さん。」
とは、成り行きを見守っていた、立花先生の弁である。
「わたしも、びっくりです。」
唯(ただ)、照れ笑いするのみの茜だったが、ふと、部室の壁に掛かっている時計が視界に入り、時刻がもうすぐ午後六時になろうかとしている事に気が付いて、少し慌てて言った。
「すいません、ちょっとお話を聞くだけの積もりだったから、鞄が教室だし、友達が待ってるといけないので、一度、教室に戻って来ます。」
「だったら、今日は帰っちゃっていいわよ。行き成り帰りが遅くなって、同室の子が心配したらいけないし。」
『特別課程』の生徒は全員が寮生なのだが、一年生の寮生は、基本的に二人部屋なのである。鬼塚部長の言(げん)は、その辺りの事情を配慮しての事である。
「先輩たちは何時(いつ)も、何時頃迄(まで)、部活してるんですか?」
その茜の問いに答えたのは、恵だった。
「寮の夕食の時間が有るから、七時には切り上げるてるわ。同室の子には、明日からは、その位(くらい)になるって言っておいてね。」
「はい、分かりました。じゃ、今日はこれで…。」
「また明日、放課後にね。」
茜がお辞儀をして顔を上げると、鬼塚部長はニッコリと笑って軽く手を振る。
部室を出た茜は、第三格納庫の外階段を降り、小走りで教室の在る校舎へと向かった。
- to be continued …-
※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。
※誤字脱字等の修正の他に、作品の記述や表現を予告無く書き換える事がありますので、予めご了承下さい。