WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第2話.08)

第2話・鬼塚 緒美(オニヅカ オミ)と新島 直美(ニイジマ ナオミ)

**** 2-08 ****


 一方、その、緒美の唐突な質問に、立花先生は表情も変えずに答えた。

「そうね、否定はしないわ。」

「しないんですか。」

「しないんだ。」

「いや、そこは否定しようよ、先生。」

 三人のコメントを聞いた、立花先生の表情は少し和らいだ様に、緒美達には見えた。

「こう言うと、不謹慎に聞こえるかも知れないけど。わたしはね、楽しいから仕事をしてるのよ。ここへの出向の辞令を受けた時には、正直、落ち込んだけど、鬼塚さん達のお陰で、又、楽しい仕事が出来そうで、今はホントに嬉しいの。 勿論、現実の仕事は楽しい物ばかりじゃ、ないけどね、でも、自分なりの意義を見出(みいだ)せる仕事は楽しいの。それが、社会的に意義が有るかどうかは関係無くね。」

「そう言う物ですか…。」

「そう言う物よ、鬼塚さん。 冷静に考えたら、こんな面倒臭い事、楽しくなくっちゃ、やってられないわ。まぁ、その辺りの動機付けは、人それぞれでしょうけれどね。 さて…。」

 立花先生は、席を立つと机の上のバッグを手に取り、中から一枚のメモ紙を取り出し、緒美へ差し出した。

「これ、技術データベースのログイン・パスワードよ。取り扱いには、注意してね。」

 緒美はメモ紙を受け取り、一度、書かれている内容を確認して、取り敢えず制服のポケットに入れた。

「じゃぁ、わたしは今日の所は、引き上げるわね。」

 机の上に出した儘(まま)だった PC を鞄に仕舞い、立花先生は部室の出入り口へ歩いて行く。ドアを開けて振り向くと、三人へ向かって言った。

「戸締まり、その他、後は宜しく。それから、研究の進展、期待してるわよ。じゃぁね~。」

 立花先生は、ドアを静かに閉めた。段々と小さくなっていく、外階段を降りる足音を、部室に残された三人は聞いていた。
 緒美はふと、時計を見る。部室の壁に掛けられていた、飾り気の無いアナログ式の時計の針は、午後六時を少し過ぎていた。

「今日の所は、わたし達も、お開きにしましょうか。」

 緒美は恵と直美に、そう提案した。

「そうね、今から何か作業をする気にもならないわね。」

 直美の言葉に、恵も頷いた。

「寮に戻って一息ついたら、夕食の後、ちょっと打ち合わせしましょうか。わたしの部屋で良い?」

「あぁ、鬼塚さんは部屋、一人だっけ。」

 通常、一年生は二人部屋になるのが通例だが、緒美達の学年は女子が奇数人だった為、緒美は二人部屋を一人で使っていたのだった。何故、緒美が特別待遇となっていたのかと言うと、それは彼女の入試の成績がトップだったからだ。

「どうせだから、夕食も三人で食べましょうよ。いいでしょ、直ちゃん。」

「そりゃ、構わないけど。」

「それじゃ、帰りましょうか。」

 緒美達三人は、飲んだお茶の後始末をし、机と椅子を整頓して、部室を後にした。

 こうして、『兵器開発部』のパワード・スーツ、『HDG』の開発活動がスタートされたのだった。
 それからの一ヶ月間、緒美を中心として天野重工の『技術データベース』を読み込む作業が続けられたのだが、その結果、後に『HDG』の基幹技術となる、開発はされたものの利用される事無く眠っていた『FSU』と『ディフェンス・フィールド』の技術が、緒美に因って『発掘』される事となる。
 その他の、当初、緒美自身が研究開発が必要として挙げていた項目に就いても、天野重工の既存技術の転用や組合せに因って、解決が出来る目途が次々と立っていった。
 日を追う毎(ごと)に、天野重工の技術を得る事に因って緒美の研究は具体性を増していき、それに合わせて本社開発部の技術者との関わりも増えていった。そして、一年目が終わる頃には、本社開発部に於いて、周辺機器の幾つかについては設計が終了し、『HDG』本体の基礎設計に着手される状況に迄(まで)、なっていたのだ。
 その進展振りには本社上層部も驚いている、と、緒美達は立花先生から聞かされたのだったが、その進展のスピードに誰よりも驚いていたのは、実の所、開発を主導している筈の緒美自身だったのである。
 2070年も暮れようかと言う頃、緒美は恵に、ポツリと、こう漏らした。

「大人の本気って、怖いわね…。」

 

- 第2話・了 -

 

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