WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第3話.01)

第3話・Ruby(ルビィ)・1

**** 3-01 ****


 2072年4月28日木曜日。
 茜が『兵器開発部』に入部して、丁度(ちょうど)二週間目になる、その日の放課後、茜は部室のドアの前に立っている。
 ドア・ノブに手を掛けて見たが施錠された儘(まま)の様子で、ドアの右脇に有る換気窓の模様硝子越しにも、室内が暗いのが見て取れた。どうやら今日は、茜が一番最初に部室に来たらしい。これ迄(まで)の二週間、常に先輩の誰かが先に来ていたのだが、「そりゃ、こう言う日も有るよね」と、茜は思っていた。

「機械工学科一年、天野 茜。」

 茜はドア脇のキーパネルに向かって、そう声を出し、右の掌(てのひら)をパネルに重ねる。すると、「ピッ」と電子音が鳴り、ドアのロックが解除された。
 二年前迄(まで)は単純なカード式だった部室…否(いや)、第三格納庫のロック・システムであったが、緒美達が本社からの委託で『HDG』の開発研究を始め、Ruby が搬入されて来た折りに、本社仕様の生体認証付きのロック・システムに交換されたのだ。茜は入部翌日に、声紋と手形(毛細血管パターン)を登録していた。

 茜は部室に入ると灯(あか)りを点け、換気の為に入り口横の窓を、そして、部室奥へ進んで格納庫側の窓を少し開けた。

「こんにちは、茜。」

 Ruby が茜に、声を掛ける。

「ご機嫌、いかが?Ruby。」

「問題有りません。今日は、茜が放課後では一番でしたね。」

「その様ね。Ruby は昼間や夜中、誰も居なくて退屈じゃない?」

「入力やアクセスが無ければ待機状態になりますし、ネットワーク経由で本社から時々アクセスが有ります。それに、お昼休みには、良く、緒美が来てくれます。そもそも、AI は『退屈』の様な感情を、持たない様に設計されています。」

「そうだったね。わたしは時々、Ruby が AI だって、忘れちゃうのよね。」

「その様な茜の態度は、AI と人間との違いを考えるサンプルとして、とても興味深いです。」

Ruby の成長に、プラスになるのなら嬉しいわ、わたしも。」

 入部した翌日から、茜は『HDG』の仕様書や設計資料を読み込む傍(かたわ)ら、こんな風に Ruby と会話をしていた。
 緒美は入部時の約束通り、『HDG』のシステムに就いて茜に仕様の解説をしていたし、時折、CAD 室から二年生の瑠菜が、装甲のデザインに就いて緒美と茜に意見を求めに来たり、制御設計担当の樹里も、茜への制御仕様の解説に加わったり、制御方法に就いて意見を交換したり、そんな風に二週間の放課後が過ぎていた。
 取り敢えず、茜は部室中央の長机に置いた儘(まま)になっていたファイルを一つ取り、未読の資料を読み始めた。

 茜が資料を読み始めてから暫(しばら)くして、外階段を上がって来る複数の足音が聞こえて来た。間も無くドアが開き、緒美を先頭に恵、直美と、三年生組が入って来る。それに続いて、瑠菜、佳奈、樹里の二年生組も入って来た。二年生組は、それぞれが段ボール箱を抱えていて、部室に入って来ると、先(ま)ず、その段ボール箱を長机の上に置いた。

「ご苦労様。運んで貰って助かったわ。ありがとうね、みんな。」

 緒美が、二年生一同の労(ろう)を労(ねぎら)って声を掛ける。

「連休前に届くなんて、偶然かしら?」

 恵が何時(いつ)もの様に、お茶の支度をし乍(なが)ら。

「寧(むし)ろ、連休迄(まで)に終わらそうと思ったんじゃない?それ、作るの。」

 とは、直美の所感である。

「まぁ、本社、試作部のスタッフとしては、そんな所でしょうね。」

 そう言い乍(なが)ら、緒美は早速、段ボール箱開封を始めていた。二年生達は、それを取り囲んで、様子を眺めている。

「部長、それは?」

 茜が問い掛けるが、緒美は直ぐには答えず、箱の中から、その中身を、掲げる様に取り出して見せると、その周囲にいた二年生達が歓声を上げた。それが何かは、茜にも直ぐに理解出来た。それは図面で何度も見た、『HDG』の制御用ヘッド・ギアだったのだ。

「あなたの頭のサイズに調整済みですって、天野さん。」

「…と、言う事は。他の箱は…。」

 手にしていたヘッド・ギアを机の上に置いた緒美は、続いて他の箱も開封し、中身を取り出して机の上に並べた。それは、茜のサイズに合わせて作られた『HDG』のインナー・スーツ一式である。

「今日、立花先生の所に届いたのを、引き取って来たのよ。さぁ、いよいよテスト・ドライブが出来るわよ。」

「じゃ、早速、やってみましょうよ、部長。」

 瑠菜が少し興奮気味に、緒美に提案する。二年生達も入学してからの一年間、『HDG』の設計図面描きを担って来たのだから、実物が起動出来るを目の前にして、興奮するのは無理からぬ事だろう。

「まぁ、落ち着いて、瑠菜さん。紅茶を淹(い)れたから、先(ま)ず、試験手順の確認から始めましょう。」

 恵が何時(いつ)も通りのマイペース振りを発揮して、全員分の紅茶のカップを運んで来た。茜は少し慌てて席を立ち、恵がカップを配るのを手伝うのだった。


- to be continued …-

 

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