WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第3話.08)

第3話・Ruby(ルビィ)・1

**** 3-08 ****


 その緒美の様子に、逸早(いちはや)く気が付いたのは恵である。

「どうかしたの?部長。」

「…あぁ…いえ、天野さん。取り敢えず、HDG との接続を解除して。」

 緒美は恵の問い掛けを左手で制し、茜に話し掛けるのだが、帰って来た言葉は意外な内容だった。

「それが、出来ないんです。腕の接続、ロックが解除出来ません。これ、思考制御で外れる筈(はず)ですよね?」

 樹里の方へ振り返って、緒美は尋ねる。

「天野さんが、腕の接続が解けない、って言ってるんだけど。思考制御以外で外す方法って有ったっけ?」

「えっ?…あぁ、音声コマンドで、『腕部接続固定開放』で解除される筈(はず)ですが。」

「ありがとう…天野さん?音声コマンドを試してみて。『腕部接続固定開放』、言ってみて。」

「はい、やってみます。『腕部接続固定開放』…『腕部接続固定開放』…ダメです、外れません。」

「そう…こっちで検討してみるから、もう少し我慢してね。」

「はい…成(な)る可(べ)く早く、お願いします。」

 ヘッド・セットから聞こえて来たのは、茜の落胆した声だった。

「どうしたんですか?」

 樹里が心配気(げ)に、緒美に問い掛ける。

「トイレ、行きたいんだって。」

 緒美の、その簡潔な返答で、その場に居た一同が、事態を理解したのだった。

「腕のロックが外れないと、HDG との接続を開放する操作が出来ませんね…動力系がダウンすると、ロックの解除が出来なくなる様な設計じゃない筈(はず)ですけど…。」

 原因を探ろうと、樹里はコンソールを激しく操作している。

「原因の究明は後でじっくりやる事にして、今は、天野さんの救出が優先だわ。インナー・スーツの手首のスイッチ、別の人が外から押せるかしら? あと、それでダメなら強制開放スイッチね。」

「やってみましょう。」

 緒美の発案に言葉を返し、直様(すぐさま)、茜の元へと向かったのは瑠菜だった。
 歩行途中の姿勢の儘(まま)、固まってしまった HDG の元へ駆け付けると、瑠菜は茜の前に立った。一人、放置状態で心細い思いをしていた茜は、救援に来たのが誰であったとしても、その事実には大きな安堵感を覚えたのである。

「聞こえてたかもだけど、先ず、インナー・スーツのスイッチ操作をやってみるから。」

「はい、お願いします。」

 瑠菜は先(ま)ず、茜の右手側へ回り、HDG 腕パーツの前側の隙間から指を差し込み、右手首のスイッチを探す。幸いな事に手首は腕パーツ端面から、それ程、深い位置ではなかったので、指が届かないと言う事はなかった。瑠菜は指先の感触でスイッチを探り、それを押した。スイッチを押した感触は確かに有ったのだが、残念ながら HDG は、それに反応はしなかった。

「反応、無いわね…。左側も試してみましょう。」

 今度は左手側に位置を変えて、瑠菜は先程と同じ様に、茜のインナー・スーツの左手首のスイッチを押した。しかし、それも反応は無かった。

「ダメ…ですね。」

「じゃ、強制開放スイッチ、やるよ。」

「はい。」

 瑠菜は茜の正面に位置を変え、茜の胸の前に降りているフレーム側部下面を、前側から両手で持ち上げる様に掴む。その状態でフレームの下面の窪みへ指を差し込んで、強制開放スイッチを探り当てる。

「行くよ。」

 瑠菜は指先に力を入れて、強制開放スイッチを押し込んだ。
 しかし、これも又、何の反応も無かったのだった。

「嘘、これもダメ?」

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 思わず声を上げたのは、瑠菜だった。

「部長、強制開放スイッチも機能してません。どうしましょう?」

 茜にはヘッド・ギアの通信機能で、緒美へ状況を報告し、そして回答を待つ以外、為す術は無かった。
 一方、茜の報告を聞いた緒美達は、直ぐに次の対策を検討し始める。

「城ノ内さん、強制開放スイッチも機能してないって。次、何か手は有る?」

「強制開放スイッチは暴発防止の意味で、システム系が生きている内は起動しない様にインターロックが掛かってますね…この仕様は、こう言う事態が起きるとなると要検討ですけど。システム系まで完全に落とすとなると、バッテリーが完全に切れるのを待つしかない、でしょうか。」

 そこで、直美が声を上げる。

「いっその事、バッテリーを外しちゃえば?」

 その発案に答えたのは、佳奈である。

「あ、副部長、バッテリーはリグに接続しないと、外せないんですよ。さっきは忘れてましたけど…。」

「何で、そんな仕様になってるのよ?」

 直美の疑問に答えたのは、緒美だった。

「あぁ~そう言えば、加速度や衝撃とかで脱落しない様に、ロックが掛かってたわね。バッテリーのロックを解除するには、メンテナンス・リグに接続して、ロック解除コマンドを入力しないと。」

「バッテリーが切れるの待つとしたら、あと一時間位(ぐらい)?」

 再びの、直美の問いに、今度は樹里が答える。

「いえ、動力系が電力を使わない状態になってますからね…あと五時間位(ぐらい)は、バッテリーが持つ筈(はず)です。」

 樹里の回答を聞いて、一同は揃って深く溜息を吐(つ)いたのだった。

 

- to be continued …-

 

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