WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第3話.11)

第3話・Ruby(ルビィ)・1

**** 3-11 ****


「まさか、行き成りドッキング・テストになるとは、思わなかったわね。」

 樹里の傍(かたわ)らでコンソールのモニターを見詰めている緒美に、歩み寄って来た立花先生が話し掛けた。

「大丈夫ですよ。ドッキング・システムはメンテナンス・リグのと同じ仕様なんですから。あとは Ruby が上手くやってくれます。」

 微笑んで、そう答えた緒美に、立花先生も笑顔で答える。

「そうね。」

 二人の視界の先では、LMF が茜の後方でゆっくりと方向転換をしていた。


 一方で救助を待つ茜は、左手方向から接近していた LMF が自分の後方へと廻った事で、LMF を目視出来なくなっていた。後方から、LMF のエンジン音とホバー・ユニットが吹き出す空気の音のみが聞こえて来ていて、それはそれで不安を煽る状況ではあった。

Ruby 今、どこ?」

「茜の後方、凡(およ)そ五メートル。ドッキング・シークエンスを実行中ですので、その儘(まま)、動かないでください。」

 ヘッド・ギアのレシーバーから聞こえる Ruby の返事を聞いて、茜は苦笑するのだった。

「動きたくても動けないわ。」

「そうでした。」

 背後の騒音が更に大きくなり、いよいよ LMF が間近に来ている事が茜にも解ったが、LMF が、どの様な姿勢や速度で接近しているのかは、相変わらず解らなかった。茜は Ruby を信頼してはいたが、あの巨体を持つ LMF が、大きな音を立てながら背後から接近していると言う状況は、可成りスリリングである事は否定出来ない。

「ドッキング・アーム位置調整します。」

 LMF はコックピット・ブロックが接続されていたドッキング・アームを、HDG の接続ボルトの高さに合わせて上下位置を微調整するが、茜が少し前傾姿勢であった為、HDG 側の接続ボルトは水平ではなかった。Ruby は角度を合わせる為、LMF 機体の傾きを調整し乍(なが)ら、更に茜に接近して行く。

「ドッキングまで、あと一メートル…ドッキング時に多少、衝撃が有るかも知れません。注意してください。」

「解った。よろしく、お願いね。Ruby。」

 Ruby が LMF の機体各部に装備されたバーニア・ノズルから圧縮空気を細かく噴射して、角度や位置を微調整しているのが、その繰り返されるバーニアの噴射音で、茜にも理解が出来た。背後から照らす、西に傾いた夕方の太陽が、茜の目の前に自身の影を長く伸ばしていたのだが、その影も既に LMF の巨大な影の中に飲み込まれていた。
 そして、背後から少し押される様な感触が有った直後、ヘッド・ギアから Ruby の合成音が聞こえた。

「ドッキング。接続ボルト、ロックします。」

 続いて、幾つかの機械音と同時に軽い振動が伝わると、ヘッド・ギアのスクリーンに表示されていたエラー表示が消え、今まで固まっていた手脚の動作が自由になったのだった。制御電源が HDG 内蔵のバッテリーから、LMF から供給される電源に切り替わったのだ。

「ドッキング完了。ドッキング・アームを引き上げ、格納庫へ移動します。」

「ちょっと待って、Ruby。」

 茜は Ruby の行動を制止し、HDG の腕ブロックから自身の両腕を引き抜いた。今度は、設計通りに思考制御で、腕ブロック内部の接続ロックが外れたのである。
 自由になった腕で、茜は先(ま)ずヘッド・ギアを外し、右手で左手首のスイッチを操作すると、HDG の拘束が解放された。茜は上部フレームが上後方へ跳ね上がると、左手に持っていたヘッド・ギアを HDG の腕ブロックに引っ掛け、次いで腰部リングに両手を掛けて上体を持ち上げ、HDG から抜け出すと再びヘッド・ギアを手に取り、言った。

Ruby、後は任せたわ。」

 そう言うが早いか、茜は格納庫へ向かって走り出したのだった。

 その様子を、格納庫内部から眺めていた緒美達だったが、勢い良く駆け込んで来た茜は、緒美達が声を掛ける間も無く、格納庫奥のトイレへと走り去って行った。

「あれだけ走れるんだったら、まだ、余裕が有ったみたいね。」

 笑い乍(なが)ら直美が恵に話し掛けていた一方で、緒美には Ruby が話し掛けていた。

「茜は大丈夫ですか?」

 LMF は HDG とドッキングした位置に留(とど)まった儘(まま)で、茜の『ちょっと待って』の指示を実行していたのだった。

「あぁ、大丈夫よ。戻ってらっしゃい、Ruby。」

「ハイ。移動を再開します。」

 空になった HDG を定位置にリフト・アップすると、LMF は再び、ゆっくりと動き出した。九十度、格納庫の方へ向きを変え、低速で緒美達の居る方向へと移動を始める。
 その時、トイレの方から茜の声が聞こえて来た。

「すいませ~ん、誰か、インナー・スーツ脱ぐの、手伝ってくださ~い。」

 

- to be continued …-

 

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