WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第4話.12)

第4話・立花 智子(タチバナ トモコ)

**** 4-12 ****


 説明を指示されて、智子は再び席から立とうとするが、直ぐに影山部長が、それを制するのだった。

「あぁ、いいよ。座った儘(まま)で。」

「はい。では…。」

 智子は座り直して姿勢を正し、説明を始めた。

「先程、お話が有りました通り、この四月から天神ヶ崎高校の講師として出向している訳(わけ)なんですが。講師としての仕事の他に、『兵器開発部』の顧問としての役割も引き継ぎまして…。」

 そこで、智子は一息の間を置いた。それは「兵器開発部とは?」との、質問が返って来る事を想定したからだったのだが、意外な事に、その質問は返って来なかった。「部長達には、天神ヶ崎高校の兵器開発部の事は、周知の事実なのだろうか?」と、疑問にも思ったのだが、面倒な説明の手間が省けるのならば、それはそれでいい事だと思い直し、智子は説明を続けた。

「…その部活に興味を示して、わたしの所に来たのが、そのレポートを書いた一年生の鬼塚さんです。彼女は、エイリアン・ドローンに対抗出来る、軍事用パワード・スーツの開発に就いて、個人的に研究していたそうで、その活動の場として兵器開発部が適当かどうかを確認したかったのだそうです。 そこで、彼女が考えているパワード・スーツが、どの様な物なのか、明らかにする為に書いて貰ったのが、今回読んで頂いたレポートです。 レポートの纏(まと)め方に就いて、彼女は書いた経験が無い…まぁ、去年まで中学生だった訳(わけ)ですから、無理も無いですが。そう言う訳(わけ)で、レポートとしての体裁の整え方等、わたしが指導、監修はしましたが、レポートの内容は鬼塚さん自身のアイデアに因る物です。」

 そこ迄(まで)、智子が話した時、智子と同じ廊下側一番上手の席から、開発部の大沼部長が声を上げた。

「レポートに記載されているアイデアの、技術的な裏付けに就いては、どの様に考えているのかな?」

「先程も言いましたが、去年まで中学生だった彼女が、技術的な専門知識を持ち合わせている筈がありません。天神ヶ崎での専門教科の修得も、これからの話ですし。ですから、技術的な裏付けは、現時点では無いと言っていいでしょう。」

「寧(むし)ろ、専門知識も無しに、これだけのアイデアを思い付いたと言う事の方が、凄いんじゃないか。」

 大沼部長の正面の席で、事業統括部の飯田部長が笑い乍(なが)ら、言った。

「勿論、表層的ではあれ、必要となる専門知識に就いて彼女なりに勉強はしています。今の所は SF 的…と言った感じのアイデアですが、その事は彼女自身も理解しています。ですから、天神ヶ崎で技術や工学の知識を学んだ上で、天野重工に正式に入社して、それから自身のアイデアを会社側へ提案する積もりだった様です。」

「真っ当な考え方だね。安心したよ。」

 智子の説明に感想を漏らしたのは、大沼部長と影山部長の間の席に着いている、試作部の坂本部長である。

「では、そのレポートを小峰課長経由で此方(こちら)に送って来た、キミの意図を聞きたい。」

 影山部長は、妙に感情の抑制されたトーンで、智子に回答を求めた。その言外の雰囲気から、智子は直感的に「それを確認する為に呼び出されたのか」と感じたのだった。

「意図…ですか。そうですね…わたしは、昨年、ほぼ一年間『HDG』の企画検討チームに参加していました。その経験から、鬼塚さんのパワード・スーツ案が最適解である、と提案したいのです。」

「『HDG』?」

 『HDG』に就いて聞き返したのは、試作部の坂本部長である。その質問には、企画部、影山部長が答える。

「あぁ、坂本さんはご存じ無いですね。防衛軍から依頼されていた、防衛装備としてのパワード・スーツの開発可能性を検討する案件で、防衛軍側が仕様に付けた名前が『Hyper Dominative Gear、略して HDG』。小峰課長、あの件は、今、どうなってるんだっけ?」

「開発可能性の検討、と言う事で要求仕様自体が可成り曖昧と言うか、概念だけしか示されていない物だったので、開発検討の前段階として、企画部でもう少し具体的な仕様を検討していたんですが。仕様を決め切れない内に、防衛軍側が興味を失ってしまったと言うか、現状で作業は宙に浮いてます。」

 小峰課長の説明に、開発部の大沼部長が補足の発言をする。

「防衛軍が出して来た仕様だけでは、開発の検討所(どころ)じゃなかったので、企画部に防衛軍ともう少し具体的な仕様の摺り合わせを、して貰ってたんだよね。」

「はい。しかし、防衛軍の方も、運用も装備もした事がない類(たぐい)の代物なので、具体的なビジョンが何一つ無くて。その辺りは丸投げされてしまった、と言いますか。 その一方で防衛省内でも、背広組の方(ほう)は現有装備で何とかしろ、の一点張りだったりで、新装備を要求している制服組とは、なかなか折り合いが着かない様子でして。もう暫(しばら)く、正式な予算化も出来そうもないので、此方(こちら)も余り大っぴらにも動けず、と言う状況です。」

「現有装備で何とかしろ、ってのは役人の言いそうな事だな。」

 事業統括部の飯田部長は、そう言って、笑った。

「そもそも、あのエイリアン・ドローンに対抗するのに、パワード・スーツって言う選択はどうなのかな? 有効な装備だと考えて良いのかな、立花君。」

 飯田部長の隣で、片山社長は真面目な表情を崩さず、智子に問い掛けた。

 

- to be continued …-

 

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