WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第4話.16)

第4話・立花 智子(タチバナ トモコ)

**** 4-16 ****


「会長。もしも、鬼塚さんが、こんな大きな話に関わる事を躊躇(ちゅうちょ)する様でしたら、どうしましょう?」

 智子は、緒美が本社の真意を疑う可能性を、否定出来なかった。当面『反攻作戦』に就いて明かす事は出来ないし、その詳細は自分も知っている訳(わけ)ではない。そうすると、何故、本社が現時点でビジネスになるかどうかも分からないパワード・スーツの開発に、学生の身分である緒美を参画させるのか、誰が聞いても納得出来る様な説明は出来そうもなかった。いや、『反攻作戦』の事実を明かしたとしても、「彼女のセンスに期待して」と言う理由では、「胡散臭い」と思うのが普通だろう。この時点で、智子は、緒美にどう説明したらいいのか、見当が付かないでいた。

「心配しなくてもいいよ。責任は、我々大人が持つ。あのレポートを読んだから、我々も彼女のセンスに期待して、それに賭けてみようと思ったのに過ぎない。本人が望まないなら、無理強(むりじ)いをする必要は無いよ。その時は、我々大人が、汗をかくだけの事だ。」

 天野会長は、そう言って笑うのだった。

「分かりました。天野さんには、その様に伝えたいと思います。」

 智子が天野会長に、そう答えると、片山社長が影山部長に向かって言う。

「影山君。彼女…鬼塚君が、この件を受ける様だったら、この業務は企画部からの委託と言う形で。防衛軍から依頼されている HDG 案件に、予算付けはしてあるんだろう? その枠で進める、と言う事にして呉れ。業務形態とか工程管理とか、細かい所は関連部署と協議して、キミの方で決めて呉れて構わないから、報告だけは上げて呉れ。」

 それは片山社長から影山部長への、「あとは宜しく」と言う指示であった。

「分かりました。」

 影山部長は自分のノートに、三行程のメモを取ると、パタンと閉じるのだった。
 次いで、飯田部長が発言する。

「じゃ、技術データベースに就いては、こっちで手配しておこう。一、二週間は掛かるかな?仕掛けを作るのに。その辺りの準備が出来たら知らせるから、それ迄(まで)、彼女の方へは、今日の会議の内容は伏せておいてね、立花君。」

 智子は、飯田部長に聞き返す。

「どうしてでしょうか?鬼塚さんが拒否したら、本社側の作業が無駄になるんじゃ…」

「いや、全部準備が整ってから伝えた方が、本社側の本気度が彼女に伝わるだろう?」

「逆に、脅迫みたいになりませんか?」

「それは、キミの伝え方次第だ。こちらには恩に着せる気も、脅迫する意図も無い。そこは上手く伝えて呉れないかな。」

「…分かりました。」

「宜しく頼むよ。 さて、では。他に何か、質疑、連絡事項の有る方は?」

 飯田部長が会議の終了を確認するのだが、議事の続行を望む声は無かった。

「では、本日は、これにて終了。最初に言いました通り、本日の会議に就いては正式な議事録は残りませんので、その点、宜しくお願いします。」

 部長達は、それぞれが席を立つ。影山部長は小峰課長に声を掛け、何やら話している様だったし、大沼部長と坂本部長は、お互いのメモを交換している様子だった。片山社長と飯田部長は、天野会長に挨拶をした後、二人連れ立って早々に会議室から出て行ったのだった。
 そして、智子が席を離れようとした時、天野会長と秘書の加納氏が歩み寄って来た。

「立花君、今日はご苦労だったね。天神ヶ崎からだと、時間が掛かっただろう?」

「はい、まぁ。」

「我々は社用機で帰るんだが、キミも同乗するかい?」

 その話を聞いて、学校の滑走路は、そう言う事にも使っていたのかと、改めて気付いた智子だった。

「あ、いえ。お話は有り難いのですが。」

「何か、この後、予定が有ったかな?」

「はい。折角、此方(こちら)に来ましたので、このあと、実家の方に顔を出しておこうかと。」

「あぁ、そうかそうか。じゃぁ、親御さんに宜しく伝えて呉れ。又、何か困った事が有ったら、わたしか前園君にでも声を掛けて呉れ。遠慮は要らないからね。」

「はい。ありがとうございます。」

「うん。じゃぁ、お先に。」

 天野会長は、そう言って身体の向きを変えると、今度は影山部長と小峰課長に声を掛けるのだった。

「おぉ、影山君。良い人材を寄越して呉れて、感謝してるよ。これからも、宜しく頼むよ。あ、前園君にな、何か伝える事は有るかい?」

 影山部長は恐縮し乍(なが)ら、何か言葉を返している様だったが、それは智子には聞き取れなかった。天野会長は、笑って影山部長の肩を叩くと、挨拶を交わした後に、加納氏を連れて会議室を後にしたのだった。
 天野会長を見送った後、影山部長は智子に声を掛けた。

「お疲れ、立花君。」

「いえ。何だか大事(おおごと)になってしまった様で、申し訳(わけ)ありません。」

「まぁ、こういう事も有るさ。良い経験には、なっただろう?」

「会長と直接お話したのは、初めてですが…学校と本社、社用機で往復してらしたんですね。会議の度(たび)にとなると、パイロットの手配とか、大変そうですね。」

「あ、あぁ…キミが知らないのも無理は無いが、一緒にいた秘書の加納さん。彼が社用機…と言うか、会長の専属パイロットを兼務してるんだよ。」

「は?」

 或る意味、今日聞いた色々な話の中で、智子に取っては最も意外な事実であった。

「あぁ見えても、彼は元、航空防衛軍の戦闘機乗りだったそうだ。」

「…人は、見掛けに依らない物ですねぇ。」

 こうして、本社での会議は終了したのである。

 

- to be continued …-

 

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