WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第5話.04)

第5話・ブリジット・ボードレール

**** 5-04 ****

 

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 茜は指示された通り、モニターの視界を頼りに、三歩、四歩と歩いてみるが、特に問題は無い。すると、スクリーンの視界の中に緒美が現れて、茜の方へと手に持った金属製のパイプを差し出す。

「このパイプ、掴んでみて。天野さん。」

「はい、やってみます。」

「あ、ついでだから、マニピュレータでやってみましょうか。」

「分かりました。」

 茜は右腕のマニピュレータを展開し、目の前の緒美の方へ手を差し出す。スクリーンの視界には自分の手が映っているので、視覚を頼りに位置を修正してパイプの先へとマニピュレータを誘導する。最初は感覚と視界との間に微妙なズレを感じたが、それも直ぐに気にならなくなった。茜は、自分の手でパイプを握る様に、マニピュレータでパイプの先端を握る事が出来た。

「位置合わせは、それ程、苦じゃないですけど。フィードバックが無いから、握り具合の調整が難しいですね。練習しないと。」

「あぁ、柔らかい物をマニピュレータで扱う事は、始めから想定してないしね。その為の、素手が露出するデザインだから、まぁ、問題は無いでしょう。」

「そうですね。」

 茜は握っていたパイプを離すと、マニピュレータを格納した。

「それじゃ、その儘(まま)、ディフェンス・フィールドの起動もやってみましょうか。みんな、ちょっと離れてね。」

 緒美は茜の周囲に居た人達に、下がるように手で合図する。合わせて、茜も周囲に物が無い、空いたエリアへと歩いて移動して、実松課長を始め、茜の近くにいた数人が凡(およ)そ五メートル程(ほど)の距離を取った。

「天野さん、じゃぁ、やってみて。」

「はい。ディフェンス・フィールド起動します。」

 これも思考制御で、茜はディフェンス・フィールドの起動コマンドを入力する。ディフェンス・フィールド・ジェネレータの内側が青白く発光するが、外からの見た目では変化は分からない。だが、間も無く想定外の変化が現れたのだった。
 ヘッド・ギアのフェイス・シールド内部スクリーンが、突然、映らなくなったのだ。

「あれ?トラブルです。視界が…モニターが消えました。樹里さん、そちらでエラー・コード、何か出てます?」

 デバッグ用のコンソールに就いていた樹里は、少し操作をして確認するが、それらしい反応は見当たらなかった。

「いいえ、エラーは出てないみたいだけど。ディフェンス・フィールドの電磁場干渉かしら? ちょっと、フィールドをオフにして見て。」

「はい。やってみます…あ、モニター、映像が復帰しました。もう一回、フィールドを上げてみますね…あ、又、消えました。矢っ張り、ディフェンス・フィールドが関係しているのは間違いなさそうですね。」

「おい畑中君、映像回路のどこか、シールドが上手く出来て無いんじゃないのかい?」

「ええっ、そりゃマズイなぁ…。」

 実松課長に言われ、慌てて茜の元へ畑中は駆け寄っていく。

「あっ、畑中先輩!駄目です。」

 緒美は声を上げるなり、手に持っていた金属パイプを茜に向かって投げつけた。畑中の背後から飛んできた金属パイプは、彼の目の前で HDG-A01 のディフェンス・フィールドに接触し、青白いスパークを残して跳ね返る。

「うわっ!」

 畑中が立ち止まると、その足元にパイプが転がって来たのだった。

「ディフェンス・フィールドへの、人間の体当たり実験とかやってませんから、どうなるか分かりませんよ。原理的に、感電とかはしないと思いますけど、火傷(やけど)位(ぐらい)はするかも知れませんから。 他のみんなも、気をつけてね。」

 足元に転がって来た金属パイプを拾い上げ、畑中は溜息を吐(つ)いた。

「いや、うっかりしてた。ゆっくりなら、いいんだっけ?」

「ゆっくりでも、人は近づかない方がいいと思います。」

 緒美は微笑(ほほえ)んで、答えた。

「取り敢えず、フィールドをオフにしますね。」

 茜は、ディフェンス・フィールドを解除して、ヘッド・ギアのフェイス・シールドを上げる。

「瑠菜さん。前のヘッド・ギア、持って来てちょうだい。」

「はい、部長。」

 現在、茜が装着しているフェイス・シールド付きのヘッド・ギアは、フェイス・シールドの開閉機構の都合も有り、新規製作の物だった。これ迄(まで)のテストで使用していたヘッド・ギアは、部室に保管して有ったので、それを瑠菜が取りに行ったのだ。
 間も無く、瑠菜がフェイス・シールドの無い、初期型のヘッド・ギアを手に階段を降りて来る。駆け足で茜の元へ行くと、ヘッド・ギアを茜に手渡した。

「じゃぁ、こっちと交換してみてね。」

 瑠菜が、茜の装着していた新型ヘッド・ギアを外すと、茜は既に使い慣れた感の有る、初期型ヘッド・ギアを自ら装着した。

「こっちのヘッド・ギアで、ディフェンス・フィールドの反応を試してみますから、離れててくださいね、瑠菜さん。」

 瑠菜が傍(そば)から離れるのを確認した茜は、ゴーグル型のスクリーンを降ろしてから、ディフェンス・フィールドの起動を行った。そして、スクリーンの表示を何度か切り替えて、ステータスを確認する。

「あぁ、こっちだと大丈夫ですね。表示は消えません。」

「良かった。じゃぁ、今日はそっちのヘッド・ギアでテストを続けましょう。」

「悪いね。新型は持ち帰って、修正するよ。」

「お願いします。」

 瑠菜は手に持っていた新型ヘッド・ギアを、畑中へと手渡す。

「じゃぁ表へ出て、フル・バージョンでの運動試験、やってみましょうか、天野さん。」

「はい。」

 茜は南側の大扉へと向かって、歩き出した。透かさず、佳奈が駆け足で大扉へと先回りし、大扉を押し開ける。

「あ、佳奈さ~ん。ありがとうございま~す。」

 手を挙げて、茜がお礼を言うと、佳奈も大きく手を振って答えて見せるのだった。
 茜は HDG を装着したまま、一歩一歩、格納庫南側の大扉へと歩いて行った。

 

- to be continued …-

 

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