WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第6話.09)

第6話・クラウディア・カルテッリエリ

**** 6-09 ****


「天野さん、其方(そちら)のお二人は、A組のお友達?」

 維月は、場の雰囲気を取り繕(つくろ)おうと思ったのか、茜に話し掛けた。

「はい、こっちが村上さんで、向こうが九堂さん。」

 茜に紹介されて、二人は上級生風の維月に、軽く会釈をするのだった。

「わたしは、情報処理科の井上 維月。二回目だけど、同じ一年生だから、ヨロシクね。で、こっちは同じく情報処理科一年のクラウディア、ドイツ国籍なのよ。」

 維月が自己紹介をする一方で、クラウディアは黙々とパスタを食べている。
 その一方で、村上さんがラーメンを啜(すす)るのを一旦止めて、茜に問い掛ける。

「お二人とも、寮で見掛けた事は有ったけど、D組だったのね。天野さんはどうして、面識が?」

 すると、向かいに座っていた九堂さんが言う。

「あ、入学式のあとで、天野さんに絡んでたの、あの子じゃない?」

 九堂さんの発言を、慌てて茜はフォローするのだった。

「別に、絡まれてた分けじゃ…。」

「いや、ああ言うのを、絡まれてたって言うのよ、普通。」

 茜のフォローを台無しにする、ブリジットの突っ込みである。

「兎も角、あの一件とは別に、部活の方でね。」

 と、言い乍(なが)ら、茜はランチセットのハンバーグを一切れ、口へと運ぶのだった。

「あ、天野さんもランチセットなのね。そちら…九堂、さんも。」

 維月は二人が、自分と同じメニューだったのに気が付いて、そう声を掛けた。

「わたしは、ほぼ毎日、ランチセットですけどね。メニューが日替わりなので。」

 茜は微笑んで、そう言った。

「わたしはハンバーグが好きなだけです~。」

 とは、九堂さんの弁である。

「村上さん、は、ラーメン、好きなの?」

 維月が村上さんへと話を振ると、少し考えてから村上さんは答えた。

「いえ、特に好物という訳(わけ)ではないんですけど。 今日、シェルターに入ってたら、何だか無性にラーメンが食べたくなったんです。その時はスープは豚骨のイメージだったんですけど、ここのは醤油か塩しか選べないので、今日は塩にしました。理由は…わたしにも分かりません。」

 言い終わると、村上さんは両手でラーメン鉢を持ち上げ、スープを一口、味わうのだった。

「あはは、みんな個性的で面白いわ~。いい人選だわ、天野さん。」

「別に、わたしが選んだ訳(わけ)ではなくて、ですね。何となく気が合うから集まっただけ、と言いますか。大体、ランチのメニューで、そんな事が分かるんですか?維月さん。」

「だって、みんな、それぞれ好きなメニューを選んでるじゃない。グループ内に、変な気遣いや、同調圧力が無い証拠よ。」

「そんなものですかね。」

 維月の説に無条件で納得は出来なかったが、取り敢えず、茜は野菜サラダのレタスを口へと運ぶ。その時、パスタをほぼ食べ終えたクラウディアが、コップの水を一口飲んでから、茜に言った。

「それで?そんな話をする為に、このテーブルに来たの?」

「何、偉そうに言ってるの。たまたま四人分の空席が有ったから、このテーブルに来ただけでしょ。」

 早速、クラウディアに反論するブリジットだったが、続いた茜の発言は、ブリジットには少し意外な内容だった。

「わたしがクラウディアさんに、聞いてみたい事があったの。あなたの地元でも、矢っ張り、シェルターとか有ったのかなって思って。」

 茜は笑顔で、そう質問したのだが、クラウディアは直ぐには答えず、顔は向かい側の維月の方へ向けた儘(まま)、視線だけを茜の方へと向けた。ブリジットと村上さん、九堂さんは食事を続けつつ、クラウディアの返事に注目していた。維月も又、ランチセットのコンソメ・スープに口を付け乍(なが)ら、視線だけをクラウディアへ送っていた。
 クラウディアは、維月が送る視線の圧力に負けて、口を開く。

「…そうね。こっちと違って、大概の家には地下室が有るから、わざわざシェルターを作ったりはしないわね。」

 クラウディアの回答を受けて、九堂さんが真っ先に聞き返す。

「学校にも?」

「全校生徒を収容出来る様なのを作るよりも、避難が必要になったら保護者に引き渡す方が安上がりだし、子供の安全確保は各家庭がやるべき事だから、学校はそこ迄(まで)責任を持たないでしょ。そう言う意味で、今日の避難訓練には驚いたわ。授業を潰して迄(まで)、学校がやる事なのか…まぁ、訓練の意義まで否定はしないけど。一つ思ったのは、ここは平和だなって事。」

 普通に答えるクラウディアを、維月はニコニコ顔で眺めていた。それに気付いたクラウディアが、維月に向かって声を上げる。

「何よイツキ。何か変な事、言った?」

「いいえ。ここが平和だって感想には、同感だけどね。ここみたいじゃない所でも、日本じゃ同じ様な事、やってるのよ。 天野さんとボードレールさんは関東組なのよね? わたしも実家は神奈川なんだけど、あっちでもやってたわ。避難訓練。」

「そうですね。わたし達の中学にもシェルターは有りました。さっき、ここが地元の子に聞いたんですけど、この辺りではシェルターは無いけど、避難訓練はやってたそうですよ。 村上さんは名古屋で、九堂さんは福岡だっけ?」

 茜は村上さんと九堂さんに水を向ける。先に口を開いたのは、村上さんだった。

「名古屋は関東や北九州に比べれば、襲撃事件は少ない方だと思うけど。小学校、中学校と避難訓練はやってた。わたしの通ってた所には、シェルターは無かったなぁ。」

「福岡、特に海沿いの所は東京並みに襲撃事件が起きてたから、シェルターは有ったし、訓練よりも本当の避難指示でシェルターに入る事の方が多かったわね。それを思うと、確かに、この辺りは平和よね~。」

 そう言うと、九堂さんは明るく笑った。

 

- to be continued …-

 

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