STORY of HDG(第6話.13)
第6話・クラウディア・カルテッリエリ
**** 6-13 ****
その上位三名は、次の通りだった。
1. 機械工学科 天野 茜 967点
2. 情報処理科 井上 維月 942点
3. 情報処理科 クラウディア・カルテッリエリ 918点
得点は今回の試験教科、十教科の合計得点である。
「あら。」
茜は一言そう言うと、それ以上の感想は口にしなかった。そして、ブリジットが続ける。
「なんだ、クラウディア。入試の時より順位、下がってるじゃないの。あぁ、それで維月さん、探してたんだ。」
「Ah~!油断してた!入試結果には、イツキの名前が無かったから。」
クラウディアは手近な椅子に腰掛け、頭を抱える様にして部室中央の長机に突っ伏した。
「そりゃ、維月さんは今年の入試は受けてないんだから、入試結果に名前が無いのは当然よね。」
とは、ブリジットの弁である。
「う~ん、入試を受けてないって言ったら、推薦枠の人も居るじゃない? だから、推薦枠の人がもっと上位に来るだろうと思ってたから、わたしの順位に就いては意外な結果だわ…。」
「何、言ってんの。茜はそもそも、推薦枠の人だったじゃない。」
茜の天然コメントへ、的確なブリジットの突っ込みである。
「大体、天野さんの得点より上って、注文として可成り厳しいよね~。」
クスクスと笑い乍(なが)ら、恵がそう評すると、茜が尋ねるのだった。
「それにしても、維月さんって、何気に凄い人だったんですね。」
「まぁね~、去年、休学する迄(まで)、樹里とトップ争いしてたもんね。」
茜の問いに答えたのは、瑠菜である。それに続いて、発言したのは樹里だった。
「それに、維月ちゃんは今回の試験範囲は二度目だから。去年と全く同じ問題は出てないと思うけど、それでも十分有利な筈(はず)よ。だから、てっきり今回の一年のトップは、維月ちゃんだろうと思ってた。」
「そうそう、その維月ンの上を行っちゃった茜ンは、又、凄いよねぇ。」
「まぁ、この一月(ひとつき)位(ぐらい)の、天野の様子見てればね、わたしは驚かないけど。」
「あの、え~…恐縮です。」
樹里に続く、佳奈と瑠菜の発言を聞いて、茜は嬉しいやら気恥ずかしいやらで、顔を紅潮させるのみだった。
「まぁ、点数を見れば、クラウディアも十分健闘したんじゃない? 毎度、引っ掛け問題を混ぜる先生もいるしね。」
慰める様な発言は、直美である。それに続いて、恵も言うのだった。
「そうね~、出題の文章も普通の会話とは又、違う言葉遣いになるから、日本語ってややこしいわよね。」
「慰めてくれなくてもいいです~。そういう先輩方は、どうだったんですか?試験の結果は。」
クラウディアは机に突っ伏した姿勢の儘(まま)、顔を上げて言った。
「鬼塚と城ノ内は、それぞれ学年一位、盤石だよね~。わたしは、上位三十位なんて縁が無いけど。森村は二十六だったっけ?」
「まぁ、なんとか。」
笑い乍(なが)らクラウディアの問い掛けに答える直美の振りに、恵は微笑んで答えた。
「わたしも上位なんて縁が無いですよ~、瑠菜リンは二十八位だったよね~。」
「そうね。今年中に二十位以内には、入りたいと思って頑張ってるんだけど。佳奈だって、上位三十位に後一歩位(ぐらい)じゃない? 三十位の人と、二十点位(ぐらい)しか違わないんだから。」
と、佳奈、そして瑠菜が答える。
「まぁ、気が付いて見れば、結構な成績上位者の集まりになっちゃてるわね~。」
「そうりゃ、そうですよ。天野重工の中でも最先端の代物(しろもの)を扱ってるんですから。別に、成績基準で部員を集めた訳(わけ)じゃないですけど。」
立花先生の所感に対して、何時(いつ)も通りの冷静な言葉を返す緒美である。
そんな折、部室のドアが静かに開き、室内の様子を窺(うかが)う様に、維月が顔を覗(のぞ)かせる。机に突っ伏していたクラウディアが、それに気付き、両手で机を押す様にして、声も上げずに勢い良く腰を上げた。
「はぁい。」
引き攣(つ)った笑顔を見せつつ、維月は左手を振って見せるのだが、クラウディアは無言で維月の方を見詰めている。維月は、気まずそうに言葉を続ける。
「いやぁ~そろそろ、ネタバラシも終わってるかな~って思って…。」
「そんな所に何時(いつ)迄(まで)も立っていないで、入って来なさいよ、維月ちゃん。」
開いたドアから顔だけ覗(のぞ)かせた儘(まま)の維月に、入室するように促したのは樹里である。
維月は後ろ手にドアを閉めると部室の中へと進み、クラウディアの向かいの席に座った。その動きを、クラウディアは視線で追っていたが、始終無言の儘(まま)だった。
「クラウディア、言いたい事が有るなら、さっさと言いなさい。」
そう、クラウディアに発言を促したのも樹里だった。
- to be continued …-
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