WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

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STORY of HDG(第7話.01)

第7話・瑠菜 ルーカス(ルナ ルーカス)と古寺 佳奈(コデラ カナ)

**** 7-01 ****


 今回は時間軸を一年ほど遡(さかのぼ)った所から、物語を始めよう。その日は、天神ヶ崎高校での第二十二期入学式を二日後に控えた、2071年4月01日水曜日である。
 時刻は午後四時を少し回った頃だろうか、この年、天神ヶ崎高校に入学する瑠菜は、最寄り駅で乗車したタクシーから、校門の前で降りたのだった。事前に送られて来ていたチケットでタクシー料金を支払った瑠菜は、手提げの小さなバッグのみを持って学校の敷地内へと入って行った。
 これから三年間、この学校の敷地内に用意されている女子寮で生活する事になるのだが、着替え等(など)生活に必要な荷物は実家から発送してあったので、既に此方(こちら)に届いている筈(はず)だった。瑠菜は、タクシー・チケットと一緒に送られて来ていた案内書類の校内見取り図を頼りに、学校の広い敷地内を女子寮を目指して歩いて行く。
 天神ヶ崎高校は小高い山の中腹の、なだらかな斜面を造成して建てられているので、北に向かって敷地の奥へと向かうと、緩やかではあるが坂道を登って行く事になる。事務棟や校舎の脇を抜けて敷地の一番奥、つまり一番高い所に、実習工場を挟んで西側に男子寮が、東側に女子寮が建てられていた。
 その日は、在校生に取っては始業式の日だったので、私服で校内を歩いていた瑠菜は、制服を着た先輩達に度々(たびたび)出会(でくわ)すのだった。始業式の日の、その時間まで校内に残って居たのは入学式の準備を進める生徒会役員か、その手伝いをしている生徒なので、私服の瑠菜を見ても「あぁ、新入の寮生だな」としか思わない。だからそんな先輩達へは軽く会釈をしつつ、瑠菜は女子寮を目指して校内を進んで行った。

 女子寮のエントランスに辿り着くと、大きな硝子ドアを押して、瑠菜は中へと入る。すると、右手側にカウンターテーブルと硝子戸が有り、その硝子戸の向こう側に居た管理人らしき女性と目が合った。

「こんにちは。」

「あ、新入生かな?」

 自分の母親よりも一回り位(くらい)年上だろうか? そんな事を考え乍(なが)ら、瑠菜がカウンターテーブルへと歩み寄りつつ挨拶をすると、中に居た女性が硝子の引き戸を開けて、瑠菜に声を掛けて来た。

「はい。今年からお世話になります、ルーカス 瑠菜、です。」

「え~と…学科を教えてくれる?」

 その女性はタブレット端末を取り出し、画面を操作している。

「機械工学科、です。」

「機械工学科のルーカスさん…ルーカスさん、と。あ、はい、有った。あなたは 206 号室ね。あ、わたし、管理人の渡辺です~よろしくね。」

「あ、はい。よろしくお願いします。」

 渡辺さんは、カウンターの下からカードを一枚取り出し、カウンターテーブルの上に置いて、瑠菜へと差し出した。

「これね、お部屋のカード・キー。代用なんだけど、一応、受け取りのサインしてちょうだい。こっちに。」

 クリップボードに挟んだ受取証とボールペンを取り出すと、それもカウンターテーブルへと置き、瑠菜の方へと差し出す。

「代用?ですか。」

「ええ、入学式が済んだら学生証カードが貰えるから、それがお部屋のキーも兼用なのよ。それが貰えるまでの代用なの。学生証を貰ったら、そのカード・キーは返却してね。」

「あぁ、成る程。そう言う事ですか。」

 瑠菜はクリップボードの書類にサインをして、カード・キーを受け取る。

「はい、ありがと。え~と、お部屋はオートロックになってるから、部屋を出る時は必ずカード・キーを持って出てね。特にトイレとかお風呂の時に、慣れる迄(まで)はうっかりする人が多いから、気をつけてちょうだいね。」

「はい。わかりました。」

「それから、一年生はみんな二人部屋だから…あなたと同室の子は…古寺 佳奈さん、もうお部屋に入ってるわね。それから、あなた宛の荷物は届いてたから、お部屋の中へ運んであります。」

「あ、はい。ありがとうございます。」

「シューズボックスはそっちの~部屋番号と同じ番号のを使ってちょうだい。スリッパとか上履きは用意してある?案内に書いてあったと思うけど。」

「あ、荷物に入れて送っちゃいましたから、届いている段ボール箱の中に。」

「あぁ、そう。じゃ、取り敢えず来客用のスリッパを使ってて。あとで戻しておいてくれたらいいから。」

「はい、分かりました。」

 瑠菜はカウンターテーブルの下、足元に幾つか用意されていた来客用のスリッパを取ってから、シューズボックスが両サイドに立ち並ぶコーナーへと行き、自分の部屋番号のボックスを探し、扉を開ける。一つのボックス内は中央で仕切られ、左右がそれぞれ三段に分けられている。向かって右側の下段にスニーカーが一足、既に入れられていた。それが同室の佳奈の物であろう事は、瑠菜にも直ぐに察しが付いた。瑠菜は同じ様に、左側の下段に自分が履いて来たスニーカーを入れ、来客用スリッパでエントランスから中へと入って行った。「あとで、制服用の革靴をシューズボックスへ、入れて置かなくちゃ。」そんな事を考え乍(なが)ら、管理人室脇の階段へと向かう。
 階段室へと入る手前で、管理人室から渡辺さんが出て来て、瑠菜に声を掛けた。

「206 号室はこの階段を上がったら、奥に向かって左側三番目の部屋だから。注意事項とか決まり事は各部屋に説明書きが置いてあるけど、分からない事が有ったら、何時(いつ)でも、遠慮無く聞いてね。」

「はい、ありがとうございます。」

 瑠菜は渡辺さんに一礼すると、二階へと階段を上がって行った。
 階段を上がって二階廊下へ出ると、奥に向かって左手側三番目の部屋のドアの前、つまり瑠菜が目指す 206 号室のドアの前に、少女が一人、ドアを背にして座り込んでいるのに気が付いた。

 

- to be continued …-

 

※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。
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