WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第7話.08)

第7話・瑠菜 ルーカス(ルナ ルーカス)と古寺 佳奈(コデラ カナ)

**** 7-08 ****


 目の前の長机の上には、幾つものファイルや図面の束が置かれており、正面の髪の長い女子生徒の前にはタブレット端末とキーボードが置かれていた。向かって左手側の席に着いている女性教師はモバイル PC で何か作業中の様子だったし、向かって右側のショート・カットの女子生徒は図面のチェックをしている様に見受けられた。ドアを開けてくれた眼鏡の女子生徒は部屋の奥へと移動し、お茶の用意をしている様子だった。

「ええっと、二人共、入部希望、と言う事でいいのかしら? あ、わたしは部長の鬼塚、機械工学科の二年ね。こちらが顧問の立花先生、で、こっちが副部長の新島。あっちが会計の森村、二人ともわたしと同じで機械工学科の二年よ。」

 佳奈と瑠菜の正面の席の、髪の長い女子生徒、つまり、緒美が先(ま)ず二人に話し掛けた。そして、それに答えたのは、瑠菜である。

「入部希望って言うよりも、先(ま)ずはこの部活に就いて伺(うかが)いたいんです。掲示板の張り紙では、詳細が分からなかったので。因みに、こちらに興味が有るのは隣の彼女で、わたしは…まぁ、付き添い、みたいなものです。」

「あなた達は、以前からのお友達?」

 そう問われて、瑠菜と佳奈は顔を見合わせた。そう言えば、そんな風にお互いの関係を考えた事が無いのを、緒美に問い掛けられて、改めて気付いた二人だった。そして瑠菜が、答える。

「いえ、以前から、と言う訳(わけ)ではないです。取り敢えず、今は寮で同室、と言う事ですが。」

「あぁ、そう言う事か。あなたが付いて来た気持ち、何となく分かるわ、うん。」

 瑠菜の答えを聞いた直美が、そう言って「あはは」と笑うと、お茶の入ったカップを運んで来た恵も、釣られる様に、くすりと笑うのだった。そして、緒美も頬を緩めて、向かい合う二人に問い掛ける。

「そう。 取り敢えず、お名前、教えて貰えるかな?」

「あ、すみません。機械工学科一年、ルーカス 瑠菜、です。」

 慌てて、瑠菜が答えた。しかし、瑠菜と緒美の遣り取りを眺(なが)めている風(ふう)の佳奈は黙った儘(まま)だったので、長机の下で左隣に座っている佳奈の脚に、瑠菜は左手の甲で軽く触れて、返事を促(うなが)した。

「え?あ、はい。同じく、機械工学科一年の古寺 佳奈です。」

「コデラ?…どう書くのかしら。」

 瑠菜と佳奈の前にお茶のカップを置いた後、立花先生の隣、瑠菜達から見て手前側の席に座り乍(なが)ら、恵が尋(たず)ねる。

「えっと、古いお寺、と書いて古寺です。」

「あ、小さい寺じゃないんだ。成る程。 じゃ、部長、進めてください。」

 恵に進行を託された緒美は、佳奈に問い掛ける。

「古寺さんは、あの掲示の内容で、どうしてここに来ようと思ったのかしら? 確かに、詳しい事は何も書かなかったし。」

「はい。CAD 製図の事が書かれていたので。わたしは設計とか製図の勉強がしたくて、この学校を選んだので。出来るだけ沢山、そう言う経験をしたいんです。」

「おぉ、そう言う、やる気のある子は大歓迎だわ~。」

 佳奈の返事に、現在進行形で図面作業をしている直美は歓喜のコメントである。

「当面の活動内容は、古寺さんの希望に添う物になりそうだけど。徒(ただ)、この部活の、今の活動テーマは可成り特殊だし、本社の方で秘密指定されている事柄も扱う事になるから、その辺りの事を、予め確認しておきたいの。」

「秘密?ですか…。」

 相変わらず、佳奈の反応は「ぼんやり」としていた。フォローするべきか、とも瑠菜は思ったのだが、もう暫(しばら)く様子を見る事にして、敢えて黙っていた。

「そう。入学する時に、秘密保持に関係した誓約書にサインしたと思うけど、内容は覚えてる?」

「え~と…はい。要するに秘密指定された情報は、他の人に話しちゃダメ、ってアレですよね。」

「話す以外にも、図面や資料やデータを見せたり、渡したりしてもダメって事なんだけど。もしも、誓約に違反すると学校を退学させられたり、損害の賠償を請求されたりする事になるの。だから、秘密である情報を他の生徒に漏らすと、それを知った人も秘密を守ると言う負担を負わせてしまうし、場合に依ってはその人も退学や賠償のリスクを負う事になるから、この部活での活動に就いて他人(ひと)に話す事には注意が必要になるわ。そう言う覚悟は出来る?古寺さん。それから、ルーカスさんも。この先の話を聞くと、入部する、しないに関わらず、秘密保持の責任は負って貰う事になるけど。」

「はい、大丈夫です。内容に依って秘密なのかどうか、個別の判断は難しそうだから、ここでの事はしゃべらなければいいんですよね。」

 緒美の、半分、脅し文句の様な説明に、表情も変えずに佳奈は即答したのだった。その答えを聞いて緒美が微笑んだのを見て、佳奈の回答が気に入ったのだろうなと、瑠菜は思った。

「ルーカスさんは、どうかしら?」

 微笑んだ表情の儘(まま)、緒美は瑠菜に回答を求めた。

「あ、それで、この間の部活説明会に、この部活は出てなかったんですか。」

 緒美の問い掛けには直ぐに答えなかった瑠菜だったが、その代わりに、頭の中で唐突に浮かんだ考えを、その儘(まま)口にしていた。それを聞いた目の前の先輩達と先生が、くすりと笑うのを見て、瑠菜は自分の考えが間違いでなかったと、確信に近い感覚を得ていた。

「まぁ、大体そう言う事よね~。ね、部長。」

 恵が、そう答えると、緒美がそれに続く。

 

- to be continued …-

 

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