WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第7話.12)

第7話・瑠菜 ルーカス(ルナ ルーカス)と古寺 佳奈(コデラ カナ)

**** 7-12 ****


 瑠菜が正式に入部して数日。前期中間試験を目前に控えた、2071年5月30日土曜日。
 この頃、新入部員の二人は、副部長である直美の指導の下、CAD 操作の習得を始めていた。一年生の授業では、製図の概論が終わり、漸(ようや)くT定規と三角定規を使った手描きの製図実習が始まったばかりで、そんな基礎学習が夏休み明け頃迄(まで)は続く予定である。だから、一足飛びに CAD の習得を始められた佳奈は、念願が叶っただけに、熱心に部活に参加していた。瑠菜はと言うと、そんな佳奈に付き合っている体(てい)ではあったが、他の同級生や授業に先行して、技術を習得出来る事に就いては満更でもなかったのである。
 
 兵器開発部に設置された CAD の機材は、本社・設計部での機器更新に因って余剰となったと言う「建前(たてまえ)」で、中古の機器を本社から移設した物である。それは勿論、本社上層部の配慮が有ってなのだが、そんな訳(わけ)で CAD のシステムは、本社で使用されている物と同一の仕様なのだった。
 元元は、学校の製図室に設置されている CAD を使用していた緒美達だったのだが、学校の CAD は当然、授業での使用が優先され、放課後も補習や自習で使用する生徒も多い為、部活で頻繁に且つ長時間、優先的に使用する事は出来ないと言う事情が有ったのだ。
 そんな状況を見兼ねた立花先生が本社と掛け合って、三台の端末を含む CAD システム一式が兵器開発部の部室隣の空き部屋へと導入されたのが、前年の十月頃の事である。
 因みに、当時一年生だった緒美達が、授業に先駆けて CAD 製図を習得したのは、設計製図の担当講師である前園先生に指導を受けたからなのだが、その辺りの配慮に就いても本社幹部や学校理事長(天野重工会長)の意向が働いていたのは、言う迄(まで)もない。
 
 さて、お話を5月30日土曜日に戻そう。
 『普通課程』の生徒の場合、基本的に土曜日には授業が無い。しかし、専門教科も履修しなければならない『特別課程』の場合、土曜日も四時限分の授業が設定されている。平日も火曜日から木曜日の三日間は『普通課程』には無い七時限目が『特別課程』には存在し、一週間で合計すると『特別課程』は『普通課程』よりも、七時限分授業時間が多いのである。
 そんな土曜日の放課後、昼食を済ませてから、普段よりも少し遅れて瑠菜と佳奈の二人は部室へと到着した。瑠菜達が部室に入ると、三人の先輩と立花先生が既に来ていたのだが、何やら深刻な面持ちで話し合いをしている様子だった。

「何か有ったんですか?」

 瑠菜は誰とは無く、そう声を掛け、入り口に最も近い席に着いた。その右隣の席に、佳奈も座った。
 直美が腕組みをした儘(まま)、視線を瑠菜に送りつつ答える。

「あぁ、昨日、LMF が予定通り山梨の試作工場をロールアウトしたって、知らせが来ててね~。」

「予定通りなら、良かったじゃないですか。」

「うん。それ自体に問題は無いんだけど。いよいよ、実機がこっちに送られて来る事になって、こちら側の受け入れ体勢が、ねぇ。」

 今度は恵がそう言って、溜息を吐(つ)いた。続いて、緒美が発言する。

「先生、やっぱり誰か、常駐して貰わないと。うちの人員だけじゃ、どうにもなりませんよ?」

「そうよねぇ…そもそも、こっちでテストする事自体に無理が有るのかもね。やっぱり、ここから先は、本社サイドに渡すしか無いかしら。」

 緒美の問い掛けに、諦(あきら)めムードの漂う立花先生の答えだった。この辺りで、今、議題になっているの事柄に就いて、瑠菜には見当が付いたのだった。

「LMF の性能確認試験の事でしたら、部長が計画立ててたんじゃないんですか?」

 瑠菜の問い掛けに、溜息を一つ吐(つ)いてから、緒美は力(ちから)無く微笑んで言った。

「計画は立ててたんだけどね…ほら、うちの部って全員、機械工学科じゃない。 仕様設計の段階はそれで何とかなってたんだけど、実機を動作させてのテストとなると、ソフト屋さんも必要でしょう?」

「あぁ~そう言う問題ですか… 先輩方の知り合いに、適当な人は居ないんですか?」

 緒美に問い返す瑠菜に、笑って直美が答える。

「あはは、そんな人材が居たら、とっくに引っ張り込んでるわ。」

「寮で情報処理科の知り合いに探ってもらったけど、わたし達の学年で協力してくれそうな人は居なかったのよね。」

「本社から人を派遣して貰う方向で依頼は出してたんだけど、彼方(あちら)は彼方(あちら)で忙しい案件を抱えてるらしくて…ね。長くても、一ヶ月以上は人を出せないって。」

 直美と恵に次いで、立花先生が本社側の都合を、極簡単に説明した。

「LMF の試験だけじゃなくて、HDG 本体や拡張装備に就いてもソフト絡みの仕様は、これから詰めて行かなくちゃだし、やっぱり、その辺りに明るい人材が居ないと、先先(さきざき)、作業が滞りますよ、先生。」

 緒美がそう言って、身体を伸ばす様に背中を反らした時、突然、佳奈が声を上げた。

「ソフトって、コンピュータのプログラムとかの事ですよね?」

 佳奈の発した、極めて初歩的な質問に、一瞬、声を失う一同だった。

「あれ?わたし、何か変な事、言いました?」

「大丈夫。間違ってないわよ、古寺さん。」

 一拍置いて恵がフォローを入れる一方で、佳奈の隣で瑠菜は深い溜息を吐(つ)くのだった。

「何を言い出すのよ、佳奈さん。」

「ねぇねぇ、瑠菜さん。樹里リンにお願いしてみようよ。あと、維月さんにも。」

 その、佳奈の唐突な提案に、行動にこそ移さなかったものの、内心では膝を打つ心境の瑠菜だった。

「ジュリリン?」

 聞き慣れない、人名らしき言葉を恵が聞き返すと、それには瑠菜が答えるのだった。

「城ノ内 樹里さんって言って、佳奈さんと同じ中学の出身で、情報処理科の一年生です。維月さんって言うのは、寮で樹里さんと同室の、同じく情報処理科の一年生なんです。秘密保持諸諸(もろもろ)に就いても信用出来る人達だと思いますよ。」

 瑠菜の答えを聞いた恵は、その二人の人物に思い当たった様子だった。

「あぁ…寮であなた達と、良く一緒に居る、あの二人ね。 そう、あの二人、情報処理科だったんだ。」

 

- to be continued …-

 

※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。
※誤字脱字等の修正の他に、作品の記述や表現を予告無く書き換える事がありますので、予めご了承下さい。