WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第8話.04)

第8話・城ノ内 樹里(ジョウノウチ ジュリ)

**** 8-04 ****


 緒美達三人が天野重工の天幕へと到着すると、茜とブリジットがインナー・スーツを着用し終え、立花先生と共に学校のマイクロバスから降りて来た。茜達三人は天野重工の天幕へと真っ直ぐに向かい、近付いて来る三人の姿を認めた緒美が、先に声を掛ける。

「ご苦労様、準備はいい?」

「今の状況は?」

 立花先生が、緒美の傍(そば)まで歩み寄って聞いた。

「LMF の方は Ruby が制御を起動中です。起動次第、自律制御でトランスポーターから降りて貰います。」

「あ、わたしは乗らなくても?」

 少し離れて、緒美と立花先生の遣り取りを聞いていたブリジットが声を上げた。

「ええ、うっかり転倒でもしたら、危ないから。LMF が地面へ降りたら、操作をお願いね。」

「はい、分かりました。」

 ブリジットの返事を聞いて、緒美は制服のポケットから携帯端末を取り出し、直美へとコールを送る。

「あ、鬼塚です。そちらの様子はどう?…分かった、天野さんを向かわせるわ。」

 通話を終えて携帯端末をポケットに仕舞うと、緒美は茜に向かって言った。

「HDG の方も起動準備出来てるそうだから、天野さんは、HDG の装着とスラスター・ユニットの起動迄(まで)やっててちょうだい。直(じき)に、試験場のセッティングも終わると思うから。」

「はい。」

 そう短く返事をすると、茜はブリジットに小さく手を振って、天幕の前に駐められているトランスポーター、一号車の後部へと向かって歩き出した。そうこうする内、一号車の後方に駐車されている二号車の荷台上から、LMF のメイン・エンジンが起動する音が聞こえて来る。
 その音に気が付いたのか、天幕の前を横切って二号車の方へ向かおうとする畑中を、緒美は呼び止めた。

「畑中先輩、LMF の係留は全部外されてますよね?」

「あぁ、大丈夫、終わってるよ。」

「LMF をトランスポーターから降ろしますから、二号車周囲の人払いをお願いします。」

「あいよ、ちょっと確認して来るから、待機させてて。」

 畑中は天幕の側からは見えない、トランスポーターの左側を目視で確認する為に、一号車の先頭方向へと駆けて行った。
 それとは入れ違いに、安藤が天幕の下へと試験場方向から戻って来る。

「緒美ちゃん、現場のターゲットとセンサー設置、ほぼ終わったそうよ。今、データ取得の最終確認やってる。終わったら連絡が来るから。」

「あ、はい。 城ノ内さん、Ruby のモニター回線、繋がったかしら?」

「はい、Ruby の音声をスピーカーに繋げますね。部長は、これを。」

 樹里はデバッグ用コンソールの前に立って状態を確認していたが、コンソールのスピーカーへの切り替え操作をして、緒美にコマンド用ヘッド・セットを渡した。程無く、Ruby の合成音声が聞こえて来た。

「LMF 起動確認。メイン・エンジン、スロットルの現在ポジションはアイドル。自律行動、開始の承認を待ちます。」

「了解。今、あなたの周囲の安全を確認中だから、その儘(まま)、待機してて。」

 ヘッド・セットのマイクに向かって、緒美が Ruby に語り掛ける。

「ハイ。待機します。」

 Ruby から返事が有るのとほぼ同時に、畑中が一号車の影から手を振って、声を上げる。

「おーい、鬼塚君。二号車南側の安全を確認。LMF 動かしていいよ~。」

「ありがとうございま~す。」

 緒美はヘッド・セットのマイク部を親指と人差し指で摘(つま)んで押し下げ、畑中に返事をすると、次いでマイク部を口元に戻して Ruby への指示を出す。

「いいわよ、Ruby。安全を確認、自律行動開始承認。中間モードへ移行して、トランスポーターから降りてちょうだい。」

 すると透(す)かさず、Ruby から緒美の指示に対する質問が、樹里が向かっているコンソールから聞こえる。

「トランスポーターの右側と左側、どちら側に降りますか?」

「そうね。南側、あなたの左側の方が広いから、そっちへ降りてちょうだい。トランスポーターから降りたら、今と同じ向きで待機してね。トランスポーターを移動して貰うから。」

「ハイ、分かりました。では、自律行動開始します。」

 LMF の機体下部に装備する一対のホバー・ユニットが起動すると、ユニットの作動音と吸気音が大きくなると共に、機体が荷台上で僅(わず)かに浮上する。トランスポーターの周囲では、荷台床面に吹き付けられた空気が地面へと滑り落ち、土煙が舞い上がる。
 LMF は荷台上で浮上すると、機体各所に設けられたバーニア・ノズルから圧縮空気を噴射して機首の方向を左側へと回し、トランスポーターに対して直角に機軸が向いた所で旋回を止める。そして、ホバー・ユニットの左右間隔(トラック)を広げると、ホバー・ユニットの出力を絞って荷台上へと降りた。次いで、トランスポーターの荷台上でホバー・ユニットの連結機構を展開し、機体上部を持ち上げるのだった。
 LMF のホバー・ユニットは、折り畳まれた連結機構を展開すると、それは地上での鳥の脚部の様な構造となる。それと同時に、LMF 機体側部上面に装備された、一対の腕部(アーム・ブロック)が展開される。この一対の腕部は、エイリアン・ドローンとの超接近戦の為の格闘用マニピュレータで、組み付こうとする相手を振り払ったり、反撃を行う事を想定しての装備だった。これは、現用の浮上戦車(ホバー・タンク)には装備されていない、LMF 特有の機構ではあるのだが、LMF 自体に実戦経験の無い現時点に於いて、その有効性は未知数である。

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 こうして機体モードを『中間モード』に移行した後、Ruby は LMF を操ってトランスポーターの荷台上から、左脚に当たるホバー・ユニットを踏み出し、前方の地面へと降ろした。ホバー・ユニット本体は機体全長の半分程の長さが有るので、LMF の一歩では踵(かかと)に当たるホバー・ユニット後端迄(まで)、一気に地面へ降ろす事は出来ない。その為、爪先立ちの様な姿勢で左側のホバー・ユニットを地面に降ろした後、左側ホバー・ユニットと同様に爪先立ちの様に右側ホバー・ユニットを地面に降ろし、一対のアーム・ブロックを動作させて器用にバランスを取り乍(なが)ら、二歩進んで踵(かかと)部を地面に降ろしたのだった。LMF はその位置で足踏みを繰り返す様に元の西向きへと機体の向きを戻して、アーム・ブロックとホバー・ユニットの連結機構を折り畳み、通常形態である高機動モードへと戻った。因(ちな)みに、左右のホバー・ユニットは、左右幅を広げたワイド・トラック・モードの儘(まま)である。
 そんな、LMF が自力でトランスポーターから地上へと降りる一連の動作を見ての、どよめく様な雰囲気が、少し離れた迷彩柄の天幕下から伝わって来るのだが、その辺り、そんな光景は見慣れた感の有る白い天幕の下に居る一同とは、当然の温度差が存在するのだった。

「畑中先輩、二号車の移動、お願いします。」

 緒美が声を掛けると、畑中は手を挙げて答え、トランスポーター二号車の運転席へと上がって行った。

 

- to be continued …-

 

※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。
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