WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第9話.03)

第9話・天野 茜(アマノ アカネ)と鬼塚 緒美(オニヅカ オミ)

**** 9-03 ****


「あ、ヤバイ、自警部の見回り。」

 思わず、直美がそう呟(つぶや)いた。
 自警部は避難指示が出された後、校内に残っている者が居ないか、全ての教室や部室等、学校の施設を全てチェックして回るのだ。当然、兵器開発部の部室や、第三格納庫も例外ではない。
 恵は声を潜めて、緒美に問い掛ける。

「どうする?緒美ちゃん。」

 その問いに緒美が答える前に、直美が小声で言うのだった。

「取り敢えず、ドアはロックされてるから、居留守で乗り切る?」

「ダメよ。非常時なら校内のどこのドアでも開けられる、緊急パスコード持ってるんだから、自警部は。」

 直美の提案を恵が一蹴した直後、自警部部員がドアを叩く。

「おーい、誰か残ってるのか?開けるぞー。」

 それから間も無く、ドアが開かれると、ヘルメットを被り、プロテクト・アーマーを着用した男女二人組の自警部部員が部室内に入って来た。そして、男子自警部部員が部長である緒美に向かって声を掛ける。

「何やってんの、鬼塚さん!避難指示の放送、聞こえてただろ。」

「あぁ、何だ、長谷川君か。見回りご苦労様。」

 声を掛けてきた自警部員は緒美達と同じクラスの男子生徒だったので、緒美は何事も無いかの様に返事をした。
 一方で、樹里がもう一人の、女子自警部部員に声を掛ける。

「あれ?田宮さん、今日は当番の日だったの?」

 彼女は、樹里の級友だった。田宮は、困った様に愛想笑いを浮かべる。

「ご苦労様、じゃないだろ。ここに居るので全員?避難して!直ぐに。」

 長谷川はその時点で部室に居る人数を確認して、避難するよう、緒美に促(うなが)す。

「いやぁ、下にあと四人ほど居るんだけどね。」

 少し戯(おど)けた調子で直美がそう言うと、困惑した表情で長谷川が言葉を返した。

「冗談じゃないよ。今回のは訓練じゃないんだから。」

「直ぐに避難が必要です。下に居る人を呼んでください。」

 長谷川に続いて、田宮も声を上げた。
 それとほぼ同時に、長谷川の腰に装備されていた携帯型の無線機から声が聞こえて来る。

「こちら本部、B3班、状況を報告して下さい、どうぞ。」

 長谷川が慌てて無線機をベルトから取り外すと、彼の正面に立っていた直美が、さっと手を伸ばし、長谷川の手元から無線機を奪い取った。

「あ~こちらは異常無し、です。」

 直美が勝手に本部への返事をするが、それには当然、相手側も黙っては居ない。

「誰だ?今の声、長谷川じゃないだろっ!長谷川はどうした?」

「あ~うるさいっ。」

 直美は無線機の電源スイッチ・ノブを、オフへと回す。

「ちょっと、新島さん、返して。」

 長谷川は無線機を取り返そうと右腕を伸ばすが、直美はそれをさっと躱(かわ)し、三歩ほど後ろに下がると真面目な顔で言う。

「今、わたし達は、あなた達と遊んでいる場合じゃないの。」

「それはこっちの台詞(せりふ)だ。兎に角、無線機を返して。」

 女子に飛び掛かるのは躊躇(ちゅうちょ)し、長谷川は立ち止まって直美に向かって手を伸ばす。その横、長谷川とスチール書庫との間を抜けて、田宮が前へ出ると、直美と田宮が睨み合う状況となる。田宮は少しずつ、直美との間合いを詰めて行った。

「ここで押し問答してる時間は無いわ。新島ちゃん、返してあげて。 長谷川君には二つ、お願いが有るの。一つ目は、暫(しばら)くわたし達の事は見逃して欲しいの。それと、二つ目は、多分、シェルターに避難してる立花先生を捜して、先生に伝えて欲しい事が有るの。」

「何をやる気なんだよ?鬼塚さん。」

「こっちに向かっているエイリアン・ドローンを、わたし達で迎撃します。」

「何を言って…」

「細かい説明をしている暇は無いの。カルテッリエリさん、今、敵の状況は解る?」

 長谷川が何か言い返そうとしたのを、途中で遮(さえぎ)り、緒美はクラウディアに状況の確認を求める。

「さっき、こっち向きに飛んで来てた十二機は二手に分かれました。半分の六機は西向きに進路を変えてます。あとの六機は相変わらず、こっちに向かってますが、随分と減速したので、今の速度で約十五分の位置ですね。」

 クラウディアは愛用のモバイル PC を覗(のぞ)き込んで、状況を説明する。その背後には、既に諦(あきら)め顔の維月が、黙って立っていた。

「減速したって事は、ここを通過する気は無いって事ね。みんな、下に降りて。わたし達は、天野さん達を全力でサポートするわよ。」

 そう言い残すと、緒美は部室奥の出口へと向かって歩き出した。

「はい。そう言う訳(わけ)だから、暫(しばら)く報告は待って貰えるかな?」

 直美は微笑んで、田宮に無線機を渡すのだった。そして、緒美を追って部室を出て行く。
 同じ様に、恵と樹里、クラウディア、そして維月が、緒美を追って部室奥の北側出口から出て行った。その場に取り残された、長谷川と田宮の二人は、困惑して顔を見合わせるのだった。

「どうします?先輩。」

 直美に渡された無線機を、長谷川に手渡しつつ、田宮は聞いた。

「どうしたものかな…。」

 長谷川は無線機の電源を入れ直し、自警部の本部へコールを送る。

「あ~、こちらB3班、本部どうぞ。」

「こちら本部、長谷川、無事か?どうぞ。」

「はい、長谷川、田宮、両名とも異常無し。それでちょっと、もう少し、状況確認の必要な事案有り。確認が取れ次第、又、連絡します。あ、それから、シェルターの方に特許法の立花先生が避難されていると思うんですけど、所在を確認しておいて貰えますか?どうぞ。」

「何かトラブルか?応援が必要か?どうぞ。」

「いえ、応援は必要はありません。どうぞ。」

「逃げ遅れた生徒が居なければ、君らも早く戻って呉れよ。どうぞ。」

「了解。確認が済み次第、戻ります。以上、報告終わり。」

 通話を終えて、長谷川は大きく息を吐(は)いた。

「いいんでしょうか?」

 田宮が問い掛けると、少し考えてから長谷川は答えた。

「取り敢えず、嘘は言ってない。 兎に角、もう少し様子を見て、立花先生への伝言の内容とか聞いてから引き上げるかな。連中は何を言っても聞いて呉れそうにないし。」

「迎撃って言ってましたけど、出来るんですか? そもそも、エイリアン・ドローンがこっちに来てるって情報自体…。」

「知らないよ。でも、実際に避難指示が出てるんだから、こっち方面が危険になってるのは本当なんだろうな。」

 長谷川は緒美達が出て行った部室の奥へと歩き出す。田宮も、その後に続いた。


 一方、その頃の格納庫内では、メンテナンス・リグの起動が終わり、茜が HDG に自身を接続していた。その背後では、LMF がメイン・エンジンの起動を終え、コックピットに収まったブリジットが、Ruby と共にシステム・チェックを進めている。

「あぁ、そう言えば、先生の許可、取らなくて大丈夫だったでしょうか?」

 唐突にそう言って、茜は HDG の各パーツをロックする。

「茜ンは真面目さんだなぁ。」

 正面に立っていた佳奈が笑い乍(なが)ら、茜にヘッド・ギアを渡した。

「大体、あの先生が許可して呉れる訳(わけ)、無いでしょ。」

 当然という面持ちで、瑠菜がそう言うと、それには笑みを浮かべて佳奈が付け加える。

「智リンも真面目さんだからね~。」

「成る程。確かに。」

 茜は、ヘッド・ギアを装着すると、スクリーンを降ろして機体のステータスを確認する。

「じゃぁ、スラスター・ユニット、起動します。」

「どうぞ~。」

 茜の宣言に、メンテナンス・リグの後方、操作パネルへと回った瑠菜が答えた。
 そこで、階段を降りて来る緒美達の姿に、茜は気が付いたのだった。

 

- to be continued …-

 

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