WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

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STORY of HDG(第10話.07)

第10話・森村 恵(モリムラ メグミ)

**** 10-07 ****


「それで、話は戻りますけど。学校の方へは、わたしの事、どこ迄(まで)報告されるお積もりでしょうか?先生。」

 恵は真顔になって、立花先生に問い掛ける。一方で、立花先生は笑顔を残した儘(まま)、答えた。

「さっきの話の通りよ。恵ちゃ…森村さんに男女交際の事実はありません。そう、校長には言っておくわ。出回ってる噂話には就いては、本人が断る為に『他に好きな人が居る』って言ったのに、尾鰭(おひれ)が付いた物ですって事で。」

「わたしが好きなのは女子だって、そう言ってしまった方が安心して貰えるでしょうか?校長先生に…。」

「う~ん…。」

 立花先生は、天井を見上げ、少し考えてから、視線を恵へと戻し、答える。

「それは当面、伏せておきましょう。校長は信頼出来る人だけけど、超プライベートで敏感な事柄だから。うっかり、周囲に漏れたりすると、面倒臭いし。 それとも、好(い)い加減、隠しておくのは負担?」

 恵は力(ちから)無く笑い、答えるのだった。

「そう言う事では無いですけど、タブー視されるのも、どうなかぁ…と。」

「二十年…三十年も前に比べれば、そう言う事も社会的には普通になって来たとは思うけど。それでも、あなた達の年頃だと、興味本位的な対応になり勝ちだし、それを知った周囲の方が変に気を遣ったり…そう言うの、嫌じゃない? それとも、敢えて公表して、緒美ちゃんにアタックしてみる?」

「それは…恐いですね。嫌です。」

「そう…わたしは、個人的には、周囲に公表するとか、タブー視するとか、そんな事はどうだっていいと思うのよ。唯(ただ)、緒美ちゃんに伝えるかどうか、それだけは、しっかりと考えた方がいいわ。」

「隠し事は良くない、ですか。」

「う~ん、そうじゃなくてね。要は、あなたが自分の選択を納得しているか、どうかなのよ。 多分、緒美ちゃんはあなたが納得して選択した事なら、全面的に支持して呉れると思うわ。彼女、あなたの事は、多分、他の誰よりも信頼してる筈(はず)だから。」

「難しいですね。…その、納得出来る選択って。」

 恵は、一言こう答えると、微笑むのだった。

「だから、わたしは恋愛事(ごと)が苦手なのよ。」

 そう言って、立花先生も微笑む。そして、言葉を付け加えるのだった。

「まぁ、恋愛関係では無いにしても、恵ちゃんと緒美ちゃんは、既に信頼関係で結ばれている訳(わけ)よ。それはそれで、得難い関係なのは確かね。」

「だから、わたしは緒美ちゃんを傷付けたくはないし。友達の儘(まま)、わたしは、わたしのこの気持ちが小さくなるのを待ってます。」

「何だ、答えは出てるんじゃないの。」

「はい。今の気持ちが小さくなったら、次は、わたしの事を恋して呉れる人に、恋がしたいなぁ~。」

 恵は、両腕を振り上げ、椅子に座った儘(まま)で、背筋を伸ばす。その様子を、右手で頬杖を突いた姿勢で、立花先生は眺(なが)めつつ、笑顔で言う。

「きっとそうなるわ、何て、無責任な事は言わないけど。あなた達は、まだまだ若いんだから、まぁ、頑張りなさい。」

「先生にだって、これから、いい出会いが有るかも、ですよ?」

「だから、わたしの事はいいの。」

 二人は、声を上げて笑った。
 そして、立花先生は呼吸を整えてから、恵に声を掛ける。

「あぁ、そう言えば。こんなにしっかり、恵ちゃんとお話ししたのは、初めてかしらね。」

「そう…でしょうか?」

「そうよ。あなた達が部活に参加する様になって丸一年だけど、恵ちゃんが居る時は必ず、緒美ちゃんが居たもの。」

「そうですね。わたしが居ても、緒美ちゃんは先生とお話ししてる事の方が、多いですから。わたしとしては、実はちょっと、妬(や)けてました。」

「あら、ごめんなさい。わたしの方は、別に下心は無いから、許してね。」

「勿論、分かってます。先生は開発とか、お仕事の事しか、話題にしてませんでしたから。」

そして再び、二人は、声を上げて笑うのだった。


 それから暫(しばら)くして、時刻が正午になると、立花先生と恵は、一年生組三人と、更に維月が学食で合流し、共に昼食を取る事となった。
 夏期休暇期間中ではあったが、学校の職員は平日であれば普通に勤務していたし、帰省せずに学生寮に残っている生徒や、部活で登校している生徒達も居る為、普段よりも幾らかメニューの種類が減らされてはいるものの、お昼の学食は開かれていた。但し、土日に就いては、学校の職員は休日なので学食も休みとなり、寮生達には寮の食堂で昼食が用意されるのである。

 恵達に立花先生を加えた、兵器開発部の一同が歓談し乍(なが)ら昼食を取っていると、ランチセットのトレイを両手で持った塚元校長が、通りすがりに声を掛けて来る。

「夏休み中なのに、みんなご苦労様ね。立花先生も。」

 テーブルの一同、食べる手を止め、座ったまま会釈する。すると、塚元校長は慌てて言葉を繋げる。

「あ、気にしないで、お食事、続けてね。ごめんなさいね、気を遣わせちゃって。」

 そのテーブルで、最上級生である恵が、代表して声を返す。

「いえ、大丈夫です。校長先生は、何時(いつ)も学食(ここ)をご利用でしたか?」

「そうよ。時間が何時(いつ)も遅めだから、生徒の皆さんと顔を合わせる事は、少ないのよね、残念な事に。 あ、ルーカスさん、CAD 講習の方は順調かしら?」

 ちょっと緊張気味に、瑠菜が答える。

「え、あ、はい。あの、順調です。先生がいいので。」

「そう。熱心なのはいい事だけど、折角の夏休みなのだから、帰省して、御両親に元気なお顔、見せてあげてね。」

 その言葉に、佳奈がマイペースに返事をする。

「わたし達は、来週、帰省の予定です。校長先生。」

「そう…。」

 そこで、立花先生と恵が並ぶ席の背後側から、塚元校長を呼ぶ、男性の声が聞こえて来た。

「おーい、校長先生ー。こっち、こっち。」

「あら、お呼びだわ。」

 塚元校長が、そう言うのと同じタイミングで、立花先生は振り向いて、声を掛けて来た方向を確認してみる。その三つ向こうのテーブルに集っていた顔触(かおぶ)れに気付いた立花先生は、慌てて前に向き直った。
 その様子に気が付いた塚元校長が、声を掛ける。

「どうかされました?立花先生。」

「あ、いえ。何でもないです、はい。」

「そう?それじゃ、皆さんはごゆっくりどうぞ。お邪魔しました。」

 そう言って、立ち去ろうとした塚元校長を、立花先生が呼び止めるのだった。

「あ、校長。このあと、少しお時間、よろしいでしょうか?」

「このあと?そうね、一時半から、なら。何かしら?」

「先日依頼された、調べ事の件で。」

「あら、流石、仕事が早いわね、立花先生。」

「恐縮です。」

「それじゃ、一時半、校長室でいいかしら?」

「分かりました、その時間に伺(うかが)いますので。」

「はい。お待ちしてますよ。では。」

 塚元校長は、呼ばれたテーブルへと歩いて行ったのだった。
 恵は、塚元校長が離れるのを待って、右隣の席の立花先生に尋(たず)ねた。

「どうされたんですか?さっき。向こうのテーブルには、どなたが…。」

 そして、恵も振り返って、ちらと三つ向こうのテーブルの顔触(かおぶ)れを確認するのだった。

「あ、成る程…。」

「取り敢えず、関わらない方が良さそうでしょ?」

 立花先生は、声を抑え気味に、恵に言った。
 その様子を不審に思った瑠菜が、正面に座っている立花先生と恵の肩越しに、向かい側の、三つ向こうのテーブルの顔触(かおぶ)れを確認するのだった。

「あぁ、校長先生を呼んでたの前園先生じゃないですか。それと、師匠…あとは重徳先生に、助手の二人と…あと二人は…理事長?それと…。」

 最後の一人が誰か分からない瑠菜に、立花先生が答えを提示する。

「最後の一人は、理事長秘書の加納さんね。」

「そこに校長先生が加わると、うちの学校じゃ、ほぼ最強のメンバー構成ですね。」

 恵が解説を加え、クスクスと笑うのだった。その意味が、今一つ理解出来ず、樹里は立花先生に尋(たず)ねる。

「あの集まりは、どう言う繋(つな)がりになるんですか?立花先生。」

「あぁ、わたしも詳しい事は知らないけど。理事長が天野重工の創業者の一人だって事は、みんな知ってるわよね?」

「はい。」

 立花先生と向かい合って座っている、一年生組の三人、樹里、佳奈、瑠菜は、揃って頷(うなず)く。

「で、天野重工の創業者のもう一人が、既に亡くなった塚元相談役で、その方の奥様が校長先生。その塚元相談役と天野会長は大学時代からの友人で、重徳先生は、その大学時代の後輩だそうよ。」

 立花先生の解説を聞いて、恵が声を上げる。

「あぁ、それで。重徳先生と理事長が仲良しなのは、そう言う事だったんですね。」

「そうらしいわ。それから前園先生は、天野重工が浜崎重工の航空機事業を吸収合併した時に、浜崎から移ってきた方(かた)で、その後、航空機の設計とか技術的な事を前園先生から教わったのが、実松課長ですって。」

 今度は、瑠菜が声を上げる。

「え、師匠の先生だったんですか?前園先生。」

「飽くまで、航空機関連に就いて、よ。それ以前から実松課長は、どんな装置の設計も熟(こな)す、立派な設計技術者だったそうだから。」

 そこ迄(まで)の解説を聞いて、納得した様に、樹里が言うのだった。

「成る程、じゃあ、彼処(あそこ)は今、ちょっとした同窓会みたいな感じな訳(わけ)ですね。」

 

- to be continued …-

 

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