WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

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STORY of HDG(第11話.18)

第11話・天野 茜(アマノ アカネ)とブリジット・ボードレール

**** 11-18 ****


「じゃ、何機ぐらいなら?」

「そうね、五機…六機かしら? でも、制圧出来ればいいって話じゃないし。」

「どう言う事です?」

 続いて訊(き)いたのは、樹里だった。

「要は救出作戦だから、戦闘ヘリから無闇矢鱈とロケット弾やミサイルを撃ち込む訳(わけ)にはいかないのよ。流れ弾が格納庫や管理棟に当たったら、洒落にならないでしょ?中に避難してる人が居るんだから。」

「それはそうですね…。」

「だから、先(ま)ず、陸上戦力…戦車なんかを五、六輌投入して、トライアングルの注意を引いて。次に大型ヘリを建物の近くに着陸、避難させる人を搭乗させる。大型ヘリが離陸して安全域まで退避したら、地上戦力を後退させて航空戦力…これは陸上防衛軍の戦闘ヘリか、航空防衛軍の戦闘機か、で攻撃、って感じの流れになるでしょうね、普通。」

 そこ迄(まで)の説明を聞いて、ブリジットは苦笑いし乍(なが)ら言った。

「結構、大掛かりですね。」

「そうよ。ここに何人居ると思ってる?」

 そう緒美に問われ、ブリジットは指折り数えてみる。

「わたし達が九人、立花先生、飯田部長、畑中先輩、倉森先輩、新田さん、大塚さん…これで十五人。」

 続いて、茜が付け加える。

「あと、飯田部長の秘書の蒲田さん、飯田部長のお客さんの、桜井?さん…。」

 それに、樹里が追加する。

「その桜井さんにも、秘書の方(かた)が一人居たよね。後は陸上防衛軍の吾妻さんに、戦車隊の隊長さん。戦車乗員の方(かた)が六人。これで、合計二十六人?」

 最後に、緒美が付け加える。

「戦車隊の整備や事務の人が第二格納庫に十人位(ぐらい)、管理棟の方にも十人位(くらい)は居た筈(はず)だから、合わせて四十六人。要するに、五十人前後の人を一気に移送する必要が有るから、大型ヘリでも二機は必要になるし、誘導と警護に、十人前後の兵員も必要になるでしょうね。そうなると、その人員の輸送手段も必要になるわね。」

「うわぁ、大変だ…。」

 素直な感想を口にするブリジットだったが、その隣で茜には、ふと気が付く事が有ったのだ。

「あれ?ちょっと、待ってください、部長。その救出作戦が実行されてたら、HDG や LMF はどうなります?」

「いい所に気が付いたわね、天野さん。人命優先になるだろうから、当然、機材は置いて行け、って事になるでしょうね。」

「それで、その避難のあと、トライアングルに向けて、対地攻撃が始まる訳(わけ)ですよね?」

 その茜の確認を聞いて、ブリジットが言うのだった。

「そこに HDG や LMF を残してたら、無事では済まないんじゃ?」

「でしょうね。それでも、全員が救出されれば、まだいいけどね。」

 今度は、樹里が緒美に尋(たず)ねる。

「その救出作戦、成功率はどの位(くらい)なんでしょう?」

「さあ、五分五分じゃないかしら? 前に米軍の、似た様な状況での作戦レポートを読んだ事が有るけど。兎に角、トライアングルが動く物に反応するから、地上に引き付けておいて、救出のヘリを発着させるのが大変だったみたいよ。実際、その作戦ではヘリが一機、堕ちてるしね。」

 その緒美の答えを受けて、茜がポツリと言った。

「会社的には、賭をするには、可成り分が悪いですよね、それって。」

 そして樹里が、或る考えに思い当たるのだった。

「あぁ、それで。飯田部長は、積極的に反対しなかったのか…。」

「まぁ、全部想像だけどね。でも、飯田部長には、その計算は有ったと思うわ。」

 ブリジットは、茜に尋(たず)ねる。

「飯田部長って、軍事(そっち)方面に詳しい人だったの?」

「あぁ~以前(まえ)にお婆ちゃんから聞いた話だけど。現社長の片山…社長がプラント系の技術者出身だから、事業統括の方は、防衛装備とか、そっちの業界に詳しい飯田部長が選ばれた、とか。片山の叔父様とは、昔から仲が良かったそうだし。わたしは、この間迄(まで)、直接の面識は無かったんだけどね。」

 念の為に記しておくが、茜の母親、薫(カオル)が天野重工会長の長女で、片山社長の妻、洸(ヒカル)が天野会長の次女、つまり茜の叔母なのである。
 今度は、樹里が茜に尋(たず)ねる。

「お婆ちゃん、って、理事長…って言うか、会長夫人?」

「あぁ、はい。」

「で、片山社長が叔父様、と。」

「ええ、そうですけど。どうかしました?樹里さん。」

「いやぁ~天野さんが、理事長や社長の身内だって、忘れてたなぁ~って、思って。」

「いいです。その儘(まま)、忘れててください。」

 ニコニコとしている樹里に対し、茜は苦笑いである。そんな茜に、緒美が問い掛ける。

「その、お婆様は、天野重工の役員か何かを?」

「いいえ、直接、経営に口は出してませんけど。一応、株主って言う事で、取締役の人事とか、その辺りの情報は入って来るみたいなんですよね。あと、家(うち)の母も、株主扱いになっているので、おば…祖母が時々、家(うち)に来ては、そんな話をしてるんですよ。」

「ああ、成る程。そう言う事。」

「はい。」

 そんな事を茜達が話していると、格納庫の方向から立花先生達が、歩いて来るのだった。二組が合流すると、立花先生が緒美に尋(たず)ねる。

「こんな所で、立ち話? 何か有った?」

「あぁ~いえ。大した事では。 格納庫の方は、バラシとか終わったんですか?」

「ええ、粗方(あらかた)。防衛軍サイドは、一刻も早く、わたし達、学校の関係者は追い出したいみたいだから、梱包とか積み込みは、畑中君達に任せる事になったわ。」

「現場に未成年者が~とか、言ってましたものね。」

「そう言う訳(わけ)で、みんな、バスに乗って。トイレとか行きたい人は、出発迄(まで)に済ませておいてね。 あと、茜ちゃんとブリジットちゃん、悪いけど着替えるのは、学校に戻ってからにして。ごめんね。」

「それは、構いませんけど。ブリジットは、大丈夫?」

「うん、平気。」

 そして一同は、格納庫の東側に止めてあるマイクロバスへと向かって歩き出す。ほぼ真上から照らし付ける日差しに焼かれ、額に浮かんだ汗を、右手の甲で拭いつつ、立花先生は言う。

「しかし、暑いわね。さっき迄(まで)、緊張してた所為(せい)かな、暑さなんて忘れてたのに…。」

「もっと暑くなってますよ、バスの中は。きっと。」

「嫌な事、言わないで~恵ちゃん。」

 そこで、直美が声を上げる。

「そう言えば、誰が持ってるの?バスの鍵。」

「大丈夫、わたしが預かってます。」

「おお流石、森村。」

「それじゃ、わたし、ちょっとお手洗いに行って来ます。」

 そう言って、瑠菜がバスに向かう列から離れ、管理棟へと向かうのだった。

「あ~瑠菜リン、わたしも~。」

 そうして佳奈が瑠菜の後を追うと、樹里はクラウディアに尋(たず)ねるのだった。

「カルテッリエリさんは大丈夫?お手洗い。」

「はい。大丈夫です。」

「あぁ、じゃ、これ、バスまで持って行っておいて呉れるかな? わたしも、ちょっと行って来る。」

 樹里は手に持っていた愛用のモバイル PC を、クラウディアに託すのだった。

「分かりました。お預かりします。」

 そして、樹里は佳奈のあとを、追って行ったのである。一方で、立花先生は携帯端末で、時刻を確認して声を上げる。

「ああ、もう十二時半か~みんな、お昼はどうする?」

 その声に反応したのは、恵である。

「そもそも、HDG の模擬戦のあと、お昼休みを挟(はさ)んで、LMF の模擬戦の予定でしたよね、先生。」

「そう。食事、お弁当の用意は、してあったんだけど。帰りの、バスの中で食べる?緒美ちゃん。」

「学校に戻ってから、部室なり食堂なりで、落ち着いて食べた方が良くありません?」

「それもそうね…。」

 そこで、恵が昼食に就いて気付くのだった。

「あれ?お弁当って、畑中先輩達の分も一緒になってませんでしたっけ?先生。」

「あぁ、そうだったわ。飯田部長と蒲田さんと、お客さん達の分も含めて八食、帰る前に渡しておかないと。」

 今度は直美が、立花先生に問い掛ける。

「バスの運転は、誰がするんです?」

「新田さんか大塚さんか…多分、新田さんじゃないかしら。」

 そんな話をしていると、一同はマイクロバスの前に到着するのだった。そして恵が、鍵を開け乍(なが)ら、立花先生に問い掛ける。

「あれ? 八食分、お弁当をこっちに置いて行ったら、運転手さんの分、足りなくなりません?」

「足りなくても、学校に戻れば、食べる事は、どうにでも出来るし。あ、念の為の予備として、多目(おおめ)に発注してあった筈(はず)だから、大丈夫よ。こっちには、一食ぐらい余っても、何とでもなるでしょう。」

 恵がドアを開けると、暖められた空気が車内から流れ出して来るのだった。その中へ、最初に乗り込んだ恵は、左右の窓を開け乍(なが)ら、奥へと進んで行く。そして茜とブリジットが、恵に続いて乗り込んで行った。

「恵さ~ん、それじゃ、お弁当、格納庫の方へ届けて来ます。」

「あ、悪いね~天野さん。奥のシート下の箱、分かる?向かって右側の。」

「はい、白い箱が四つ。」

 一番奥の四列シートの足元、後方に向かって右手側に、白い断熱材製の箱が二段積みで置かれている。因(ちな)みに、左手側には茜とブリジットが着ている、インナー・スーツが収納されていた箱が積んであった。

「一箱に五食分入ってる筈(はず)だから、一食分、別の箱に移して、一箱四食で二箱、八食分届けて来て呉れるかな。」

「は~い。ブリジット、手伝って。」

「はいよ~。」

 茜とブリジットの二人は、恵の指示通りに、箱内の収納数を調整した。幸い、箱の大きさに余裕が有ったので、一箱に六食入りとなった残される箱の方も、保冷剤の入れ方を工夫する事で、蓋が閉められたのである。

「それじゃ、行ってきます。」

「はい、お願いね~。」

 茜とブリジットは、それぞれが弁当の入った箱を両手で前側に抱え、バス前方の昇降口へと向かった。立花先生と緒美、直美とクラウディアは、ドアの外で茜とブリジットが出て来るのを待っていた。
 そして、出て来た茜とブリジットに、立花先生が声を掛ける。

「じゃあ悪いけど、お願いね。茜ちゃん、ブリジットちゃん。」

 ブリジットが、微笑んで応える。

「一っ走り、行ってきます。」

 それに、直美が笑って言うのだった。

「転んだりしたら事だから、走らなくてもいいよ~ブリジット。」

「は~い。」

 くすりと笑って、茜が声を掛ける。

「行こう、ブリジット。」

「うん。」

 茜とブリジットは少し早足で、格納庫の方へと歩き出す。そんな二人を少しの間、見送ってから、立花先生は言った。

「さ、クラウディアちゃんも、乗って。」

「あ、はい。」

 クラウディアは自分のと樹里のモバイル PC を胸元に抱え、マイクロバスに乗り込むと、その中央付近の席へと進んだ。続いて、立花先生も乗り込み、緒美と直美も、そのあとに続いたのである。

 

- to be continued …-

 

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