WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

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STORY of HDG(第12話.01)

第12話・天野 茜(アマノ アカネ)とRuby(ルビィ)

**** 12-01 ****


 2072年7月23日・土曜日。

「おはようございま~す。」

 そう声を掛け乍(なが)ら、兵器開発部の部室に入って来たのは、瑠菜と佳奈の二人である。
 時刻は午前十時二十分、部室内に居た直美と恵が「おはよう。」と声を返すと、続いて Ruby も合成音声で挨拶を返すのだった。

「おはようございます、瑠菜、佳奈。」

「はい、Ruby も、おはよう。調子はどう?」

 瑠菜が室内中央の長机へと進みつつ、そう問い掛けるので、Ruby も答える。

「ハイ、問題はありません。」

「そう、それは何よりね~。」

 瑠菜が、恵の向かい側の席に、佳奈がその左隣に腰を下ろすと、恵が声を掛けるのだった。

「随分と早いわね。昨日、遅かったんだから、今日は昼からでいいって言ってたのに。」

 前日の、模擬戦での一件のあと、天野重工のスタッフが機材を学校に持ち帰ったのが、午後三時を回った頃だった。それから HDG や LMF をトランスポーターから降ろし、畑中達は HDG と LMF の点検作業を行ったのである。それは実戦を行ったから実施された訳(わけ)ではなく、模擬戦での負荷の影響を確認する為に、元元、予定されていた作業だった。
 点検は主に目視にて行われたのだが、パーツに因っては取り外して計測したりもされたので、結果、作業が終わった頃には、午後十一時を過ぎていたのである。直美と瑠菜、そして佳奈の三人は、その点検作業に最後まで参加していたのだった。
 一方で、緒美や茜達、他のメンバーはと言うと、Ruby に LMF の『腕を使った格闘戦』を如何(いか)に教示するか、その方法について、打ち合わせをしていたのである。
 因(ちな)みに、天野重工のスタッフ達は前日に続いて、昨夜も学校内の寮に宿泊し、翌朝、八時過ぎには学校を出発していた。

「まぁ、大した理由は無いんですけど、ね。」

 そう瑠菜は恵に答えて、佳奈の方に視線を送ると、続いて佳奈が答えた。

「うん。部屋で、のんびりしてる気分にもなれなかったので~。」

「そう。」

「所で恵先輩、部長は?」

 部室に緒美が不在なのが気に掛かり、瑠菜は尋(たず)ねた。緒美が居て、恵か直美が居ないのなら不思議に思わなかったのだろうが、緒美だけが不在なのには、瑠菜は違和感を覚えずにはいられなかったのだ。
 恵は、事も無げに答えた。

「ああ、部長と天野さんはね、お呼びが掛かって理事長室。立花先生と一緒にね。」

「昨日の件で、二人だけ?」

「部長と茜ン、叱られてるんですか?」

 瑠菜と佳奈は相次いで、心配気(しんぱいげ)な声を上げる。恵は二人を安心させるように、微笑んで言った。

「今回は現場に立花先生も、飯田部長も居たから、二人には事実確認をしたいだけ、って先生は言ってたけどね~まぁ、心配は要らないでしょう。」

「そう、ですか。理事長って、昨日は学校(こっち)に居なかったんですよね? 何時(いつ)こっちへ?」

 その瑠菜の質問には、直美が答える。

「今朝、七時頃に到着したみたいよ、社用機で。寮でも、飛行機の音が聞こえてたと思うけど。」

「その時間は良く寝てたみたいですね、わたしは。佳奈は知ってた?」

「ううん、気が付かなかった。」

「そう、まぁ、どんな話だったのかは、部長達が戻ったら聞いてみましょう。ねぇ、副部長。」

「だね。」

「樹里達、ソフト部隊は…。」

 そう瑠菜が途中まで言った所で、再び直美が答える。

「昨日、出てた話の通り。通信会議室で本社の安藤さん達と LMF の教示に使う、シミュレーション・ソフトの打ち合わせ。井上とクラウディアも、そっちに行ってるわ。」

「…ですか。あと、ボードレールは…バスケ部へ?」

 その問いには、恵が微笑んで答えた。

「そうよ~。」

「ブリリンは、掛け持ちだから、大変だよね~。」

 ブリジットを『ブリリン』と呼ぶのは、言う迄(まで)もないが、佳奈である。
 その佳奈の発言を受けて、直美が言うのだった。

「そうだね~。この間(あいだ)、田中が、冬の大会の予選から、ブリジットをレギュラーで使いたいって言ってたからなぁ、秋の予選に向けて、これから練習が大変になるんじゃないかな。」

「田中…先輩って、バスケ部のキャプテンの?」

 直美に聞き返したのは、瑠菜である。

「そう、部長の。」

「三年生で、部長でキャプテンって、天神ヶ崎(うち)だからこそですよね。普通の高校なら、三年生は大学受験とかで大変なのに。」

「うちの学校でも、普通科の三年生は大変みたいだよ。」

 直美は苦笑いで、そう言うのだった。それに、恵が付言するのである。

「特課のわたし達は、よっぽど成績が悪くない限り、天野重工行きが決まってるからね~頑張って特課に合格した甲斐が有った、ってものだわ。」

 すると、佳奈が思い付いた様に、不穏な仮定の話をするのだった。

「もしも、先輩達に『秋で引退します』とか言われたら、わたし達じゃ、この部活、回せないよね~。」

「ちょっと佳奈、恐い事、言わないで~。」

「あはは、大丈夫よ。わたし達は、引退なんてしないから~。」

 恵は明るく笑って、そう言うのだが、直美は真面目な顔で、先行きに就いて、示唆しておくのだった。

「それでも、来年になったら卒業はするからね。そのあとの事は、二年生で考えておいてよ。三役の分担とか。」

「うわぁ、やだな~卒業しないでくださいよ、先輩方(がた)~。」

 瑠菜は長机に突っ伏す様にして、若干、甘えた声で、そう言った。正面に座る恵は、微笑んで言葉を返す。

「あはは~そう言う訳(わけ)にはいきませ~ん。」

 その時、誰かの携帯端末から、着信のメロディが流れ始める。間も無く、直美が自分だと気付き、着用していたワンピース型の夏用制服のポケットから、携帯端末を取り出す。ディスプレイを確認すると、先程、話題に出ていたバスケ部の田中部長からの通話要請だった。正(まさ)に『噂をすれば影』だなと思いつつ、直美は通話を受ける操作をする。

「あ~もしもし、どうしたの?…。」

 直美が一言、そう訊(き)くと、田中部長は聊(いささ)か興奮している様子で、一方的に喋(しゃべ)り始めた。しかし、直美には相手が言わんとしている内容が、今一つ把握出来なかった。

「…何よ、話が違うって…え?…退部?…ちょっ…だから、解る様に、落ち着いて話して。…うん…うん?ブリジットが?…あ~…ああ~うん、ちょっと…うん、だから、ちょっと待って。今から、そっち行くから…うん、バスケ部の部室ね?知ってるから…うん、じゃ行くから、待ってて。…うん、じゃ。」

 直美は通話を終えると、深く息を吐(は)いた。その様子を見て、恵が問い掛ける。

「どうしたの?ボードレールさんに何か有った?」

「いやぁ、バスケ部の田中なんだけどね。ブリジットが急に退部したいって言ってるって、ちょっとパニクってた。」

「あらま。」

 直美が立ち上がると、瑠菜が顔を上げて訊(き)く。

「何でまた、急に?」

「理由を聞いても『言えません』の一点張りだそうで、それで余計に田中が…ね。」

 恵は特に驚くでもなく、さらりと言う。

「まぁ、解らないでもないかな、ボードレールさんの性格だと。」

「うん。取り敢えず、バスケ部へ行って来る。 二人は寮から、自転車で来てる?」

 直美は、瑠菜と佳奈に尋(たず)ねる。北端側に位置する学生寮から、南端側となる滑走路や格納庫へは、学校の敷地内で端から端への移動となるので、瑠菜と佳奈は良く自転車を利用していたのだ。因(ちな)みにその自転車は、電動アシスト付きの共有自転車で、女子寮には三十台が用意されている。

「あ、はい。使ってください。」

「じゃ、鍵、解除しなきゃだから、下まで一緒に行きますね~。」

 瑠菜よりも先に、佳奈がスッと立ち上がり、そう言った。共用自転車のロックを解除するのには、借受時に登録した携帯端末が必要なのだ。

「悪いね~。じゃ、行って来ま~す。」

「ちょっと、出て来るね~瑠菜リン。」

 直美と佳奈は連れ立って、部室を出て行く。二人が外階段を降りて行く、その足音を聞き乍(なが)ら、部室に残った瑠菜は恵に問い掛けた。

「恵先輩、ボードレールの理由が解るって、何です?」

「ああ…。」

 恵は、微笑んで答える。

「…昨日みたいな事が有るとね。ほら、ボードレールさんは、天野さんの事が大好きでしょ。」

 瑠菜は苦笑いしつつ、言った。

「その言い方には、語弊(ごへい)が有ると思うんですけど、まぁ、仰(おっしゃ)る意味は解ります。」

「でしょ?」

 恵が「うふふ」と笑っていると、不意に Ruby が声を掛けて来るのだった。

「恵、ブリジットが茜を好きだと言う表現に、何故、語弊(ごへい)が有るのですか? 或いは、ブリジットは茜が好きだと言う認識は、間違っていますか?」

 Ruby の質問を聞いて、恵は思わず吹き出し、そして声を抑えて笑っていた。

「わたしの質問は、何か間違っていたでしょうか?」

 落ち着いた合成音で、Ruby は重ねて問い掛けて来るが、恵は相変わらず、声を抑えて肩を震わせていた。仕方が無いので、取り敢えず、瑠菜が Ruby に対して答える。

Ruby、あなたの認識は間違ってないよ。安心して。」

「そうですか、瑠菜。安心しました。」

 恵は一度、大きく息を吐(は)いて呼吸を整え、Ruby に話し始める。

 

- to be continued …-

 

※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。
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