WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第12話.05)

第12話・天野 茜(アマノ アカネ)とRuby(ルビィ)

**** 12-05 ****


 すると、Ruby が樹里に問い掛ける。

「樹里、シミュレーター・ソフトのインストール作業の為に、『ゼットちゃん』は学校へ来る予定なのでしょうか?」

「ああ、安藤さん? 残念だけど、インストールの操作は本社からネット経由で出来るそうだから、本人はいらっしゃらないって。あとで、スケジュールの連絡とか、Ruby の方にも有ると思うけど。」

「そうですか。分かりました。」

 そこで、佳奈が何やら楽し気(げ)に言うのである。

Ruby は相変わらず、安藤さんの事は『ゼットちゃん』なのね~。」

「ハイ、『ゼットちゃん』に関しては、そう呼ぶようにプロテクトが掛かっていますので、わたしには変更する事が出来ません。」

 Ruby の答えを聞いて、恵が維月に尋(たず)ねる。

「でも、何(なん)だって、そんな意味の分からないプロテクトが掛かっているのかしら? 井上さんのお姉さんが、仕掛けたのよね?それ。」

「それは、わたしに訊(き)かれましても。企業秘密らしいですから、わたしは理由、知りませんよ。」

 苦笑いで、維月は答えた。すると、意外な発言を Ruby がするのである。

「わたしも麻里からは、その意図を知らされてはいませんが、わたしの疑似人格が、設定された段階にまで成長すると、このプロテクトは自動的に解除されるそうです。」

「あはは、それは秘密じゃないんだ。」

 今度は明るく笑って維月が言うと、緒美が Ruby に尋(たず)ねる。

「段階、って? その具体的な条件とかは、分かるの?Ruby。」

「イイエ。条件等(など)、詳しい事は知りません。その判定プログラムはシステムの基底部分で動作しているそうなので、わたしの疑似意識からは不可視なのです。それに、わたしには自分の疑似人格が成長しているのか、そもそも定量的な測定が出来ません。 わたしは、成長しているでしょうか?緒美。」

 緒美はくすりと笑って、答えた。

「そうね、随分と成長したとは思うわ。具体的には説明が難しいけど。ねぇ、森村ちゃん。」

「うん、最初にお話しした時は、難しい言葉を知ってる小学生みたいだったもの、Ruby。」

「今は中学生位(ぐらい)には、なったでしょうか?恵。」

「いやいや、もう十分、わたし達と同じレベルになったと思うわよ。安心していいわ、Ruby。」

「そうですか。では、安心します。」

 Ruby の返事を聞いて、瑠菜と佳奈が笑って言うのである。

「あはは、Ruby のそう言うとこ、わたしは好きよ。」

「わたしも~。」

 そんな話をしている折(おり)である。部室の入り口ドアが開き、入って来たのは直美と、ブリジットの二人だった。

「ただいま~。」

「ああ、ご苦労様、新島ちゃん。話は付いた?バスケ部。」

 緒美に問い掛けられ、直美は少し不器用に笑顔を作って答える。

「うん、仕方が無いから、田中には HDG の事とかちょっと詳しく説明して、あ、勿論、秘密保持の件は了承済みよ。それで、ブリジットは暫(しばら)く、バスケ部は休部って事で、身柄を引き取って来たわ。」

 直美は説明し乍(なが)ら、部室の奥へと進み、瑠菜や茜の後ろを通って、恵の向かい側の席に座った。バスケ部での練習用にジャージ姿の儘(まま)のブリジットは、入り口ドアを背に、黙って立っていたが、直美が席に着くのを見計らって、小さく頭を下げ、言った。

「お騒がせして、すみません。」

 それには、先(ま)ず緒美が言葉を返す。

「別に、こっちの方は大して騒いでないから、心配は要らないけど…。」

 緒美は、ちらりと茜の表情を窺(うかが)う。すると、少し困惑した表情で、茜は緒美に訊(き)くのだった。

「何か有ったんですか?部長。」

 茜の問い掛けには答えず、緒美はブリジットに向かって言う。

「天野さんには、言ってなかったの?」

「はい、あとで話そうかと…。」

 ブリジットが気まずそうに答えると、今度は、茜はブリジットに問い掛ける。

「何(なん)の話?ブリジット。」

 その返事を、ブリジットが躊躇(ちゅうちょ)していると、直美が声を上げるのだった。

「天野の力(ちから)になりたくて、バスケ部を辞めるってね。そう言う話だから、怒らないであげてね、天野。」

「別に、怒りはしませんけど…。」

 直美に向かって、そう茜は言うと、一息吐(つ)いてから、ブリジットに向かって言う。

「あなたが勘違いしてたらいけないから、念の為に言うけど。わたしは、この部活は好きで、楽しんでやってるのよ? そりゃ、昨日みたいな事も有ったけど、それだって正義感とか義務感とかで、無理してやってる訳(わけ)じゃないし。そう言う事も含めて、やりたくてやってるの。 だから、あなたもやりたい事を、やっていいのよ、ブリジット。 わたしに、無理して付き合う必要は無いの。」

 顔を上げ、一息を吸い込んで、ブリジットも言うのだった。

「それは、分かってる。…でも、昨日みたいな事が有って、わたしは呑気にバスケをやってられる気分に、なれなくなったの。勿論、バスケ部の皆(みんな)は、本気で大会を目指しているけど。でも、わたしはそうは、なれなくなったから…。」

 そこに直美が、補足説明を付け加える。

「それに、次の大会に向けて、レギュラーに選ばれそうになった、てね。」

「それが、プレッシャー?」

 茜の質問に、ブリジットは首を横に振る。

「でも、わたしは他の人の半分も、練習に出られてないから。」

 緒美は溜息を吐(つ)き、直美に視線を送って問い掛ける。

「運動部って、そう言う所、有るわよね。本来、実力だけが問題でしょ?」

「わたしに言わないでよ。 とは言え、ろくに練習にも参加しないのにレギュラーなんて、ってやっかむ人が居るのも、まぁ、有り勝ちな話だけどね。それが下級生なら、上級生の中には面白くない者も居るでしょうし。」

 恵も深い息を吐(は)き、目を伏せて言った。

「厄介よねぇ…。」

「まぁ、それで。 うちの方もこんな状況が、何時(いつ)迄(まで)も続く訳(わけ)じゃないだろうし、バスケ部の方も、特に部長の田中はブリジットには期待してるし、で、取り敢えずは休部って事で。ブリジットの気持ちが変われば、何時(いつ)でも復帰して呉れて構わないってさ。」

 直美の説明に対し、ブリジットが問い掛ける。

「でも、そんな身勝手と言うか、虫の好い話で、良かったんでしょうか?」

 その問いには、恵が先に答える。

「いいんじゃない?先方が、それでいいって言ってるんでしょ。」

「そう言う事~。」

 直美はニヤリと笑って、恵に応じる。一方で、茜はブリジットに向かって、問い質(ただ)すのである。

「ブリジット、あなたはそれで、本当に良かったの?」

「いいの。わたしは茜と一緒の活動が出来る方が、今は楽しいし。」

「そう。なら、わたしが兎や角、言う事じゃないわ。 何時(いつ)迄(まで)もそこに立ってないで、こっち、いらっしゃい。」

 茜は微笑んで、手招きをしてみせる。ブリジットは茜の方へと進み、茜の隣の席に腰を下ろした。その時、もう一度、小さな声で言ったのだった。

「ごめんね。」

 茜は微笑んで、言葉を返す。

「あなたが、あなたの事を、自分で決めたんだから、わたしに謝る必要は無いでしょ。ブリジットが無理をしてるんじゃないのなら、わたしには何(なん)の文句も無いし。」

「うん。」

「それに。わたしも、あなたと一緒に、何か出来るのは嬉しいわ、ブリジット。」

「うん。」

 そして、硬かったブリジットの表情が、漸(ようや)く緩(ゆる)んだのである。
 一方で、緒美が直美に向かって言うのだった。

「でも、結果的に田中さんには、悪い事しちゃったかしらね。」

「まぁ、端(はた)から見たら、バスケ部の部員を一人、引き抜いたみたいに見えるもんね。」

 その直美の意見に対して、恵が見解を示す。

「仕方無いでしょ、本人がやる気を無くしちゃったんだから。それに、集中を欠いた人が居てもチームにはいい影響は無いだろうし、第一、それって事故や怪我の元でしょ。」

「あはは、違い無い。」

 笑って直美が同意すると、立花先生が真面目な顔で言うのだった。

「冗談抜きで、今、恵ちゃんの言った事は、スポーツに限った話じゃ無いから、皆(みんな)も頭に入れておいてね。」

 緒美はくすりと笑って正面に向き直り、背筋を伸ばす様にして声を上げた。

「さて、皆(みんな)が揃(そろ)った所で、当面の予定に就いて、ちょっと話しておきたいと思います。」

 一同が、緒美に注目する。緒美は一呼吸置いて、話を続けた。

「当面の大きな動きとしては、夏休みが明けた頃に HDG の B号機が搬入される予定だけれど、今の所、最終的な日程はまだ、未確定です。それ迄(まで)の間、LMF の格闘戦シミュレーションを行いますが、これは、昨日の打ち合わせの通り。それで、八月の二週目辺りから二週間程、部活の方は、お休みにしようかと思います。8月12日、金曜日から25日、木曜日迄(まで)、でどうかな? 部活の方で休止期間を決めた方が、皆(みんな)も帰省の予定とか、立て易いと思うし。」

 緒美の発言が終わるのを待って、茜が肩口程の高さに右手を挙げ、発言の機会を求めるのだった。

「どうぞ、天野さん。」

「はい、部長。その、お休みの件は決定ですか?それとも提案、でしょうか?」

「わたしとしては決定の積もりで話しているけど、何か不都合が有るかしら?」

「わたしは、又、エイリアン・ドローンの襲撃が有るんじゃないかと、それが心配です。」

 すると透(す)かさず、立花先生が口を挟(はさ)む。

「その心配は、あなた達がする事じゃ無いのよ。対処は、防衛軍に任せるべきで…。」

 立花先生の発言に重ねる様に、緒美も言うのだった。

 

- to be continued …-

 

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