WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

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STORY of HDG(第12話.06)

第12話・天野 茜(アマノ アカネ)とRuby(ルビィ)

**** 12-06 ****


「まぁ、天野さんは、そう言う心配をすると思ってたわ。正直言って、わたしもその心配には、同感。昨日は明らかに HDG を探していたし、彼方(あちら)の目的が HDG の脅威度判定なら、先(ま)ず間違いなく、もう一度来るでしょう。寧(むし)ろ、来ない理由の方が思い付かない位(くらい)だわ。」

「ちょっと、緒美ちゃん。」

 眉を顰(ひそ)めて抗議の声を上げる立花先生に、右の掌(てのひら)を向けてそれを制し、緒美は続ける。

「まぁ立花先生、最後まで聞いてください。 それで、皆(みんな)にも、覚悟はしておいて貰いたいんだけど。襲撃が有るとしたら、来月7日の前後三日位(くらい)になると思うの。」

 その日付を聞いて、樹里と維月が揃(そろ)って「えっ?」と声を上げ、二人共が視線を瑠菜の方へ向ける。当の瑠菜は、怪訝(けげん)な顔付きで、樹里と維月を順に見返し、訊(き)いた。

「何?どうしたの?」

「あ、いや。ごめん。」

 そう言って維月は反射的に視線を外し、樹里は笑顔を作って言うのだった。

「何でも無い、無い。あ、部長、続けてください。すみません。」

 瑠菜も視線を緒美に戻して、問い掛ける。

「部長、どうして来月の7日って、日付が特定出来るんですか?」

「ああ、それはね。今迄(いままで)の傾向から言って、エイリアン・ドローンが同じ地域を連続して襲撃するのは、可成り希(まれ)なのよ。理由は解らないけど、同じ地域に繰り返して襲撃を仕掛ける場合は、ほぼ等間隔でやって来る事が殆(ほとん)どなの。」

 その説明を聞いて、直美が問う。

「前回が7月6日で、昨日が22日。間が十五日だから、次は8月7日って事?」

「単純計算だとね。あとは天候の具合とかで、三日位(ぐらい)は前後するだろうって予想。」

 そこで、ブリジットが茜と同じ様に右手を挙げ、緒美に問い掛けた。

「それじゃ部長、もしもその期間を過ぎても襲撃が無かったら、もう、暫(しばら)くは、来ないだろうって事になりますか?」

 緒美は、微笑んで答える。

「そうね。昨日の襲撃で脅威判定に必要なデータが、エイリアン側に揃(そろ)っていれば、暫(しばら)くは HDG を狙って来る事は無くなる、その可能性は有るでしょうね。」

「どちらにしても、二週間後以降なら安心して休めるって事かあ…。」

 苦笑いしつつ、恵が独り言の様にそう言うと、茜がもう一度、緒美に問い掛けた。

「でも、二週間後に又、襲撃が有ったとして、その二週後にも又、襲撃が有るんじゃ…。」

「勿論、その可能性も有るわ。どの位(くらい)データを取ったら満足するのか、それはエイリアンの都合次第だから、ね。ともあれ、余り先の事ばかり気にしていても仕方が無いから、取り敢えずは、この二週間後辺りを注意して過ごしましょう。差し当たって、これからの二週間は HDG も LMF も表には出さないで、作業を進めたいと思うの。」

 その提案には、早速、樹里が賛同する。

「そうですね、予定通りに LMF のシミュレーター・ソフトが使える様になれば、LMF 本体を起動しなくても Ruby が経験値を稼げる筈(はず)ですし。」

「それじゃ、そう言う方向で。さっきは覚悟してって言ったけど、向こうがこっちに気が付かず、素通りする様な状況なら、わたし達は手を出さない方針だから、それは覚えておいてね、天野さん。」

 緒美は、茜を名指しして、微笑んで見せる。茜も微笑みを返して、言った。

「別に、何(なに)が何(なん)でも戦いたい訳(わけ)じゃ有りませんから、わたしだって。」

「そう、良かった。」

 そして、緒美は立花先生へ視線を移し、尋(たず)ねる。

「と言う事で、いいでしょうか?先生。」

「うん、そうね。 一つ、付け加えさせて貰うと~折角の夏休みなんだから、皆(みんな)、ちゃんと帰省しなさいね。親御さんも、心配してるだろうから。 あ、但し、HDG 絡みの事は、御家族であっても社外秘の事は、喋(しゃべ)っちゃ駄目よ。特に、天野さん、実戦とかの事は、御家族には、当面は内緒にしておいてね。」

「そう言えば、おじい…理事長の方(ほう)から、両親には説明をって、前に言われてましたけど。あれ、どうなったのかしら? 先生、何か聞いてますか?」

「その件はね、理事長が大変お困りの様子でしたから。 天野さんには、御家族にはお話にならない旨、釘を刺しておいてと、先程に、仰(おお)せ付かって参りました。」

「ああ、そうでしたか、矢っ張り。」

 立花先生が敢えて大仰な言葉遣いをするので、茜は呆気(あっけ)に取られて、そう返すのが精一杯だった。緒美達、三年生はクスクスと笑っている。樹里達、二年生と維月は、苦笑いの様な複雑な表情だったが、佳奈だけは普段通りのぼんやりとした微笑みである。茜以外の一年生、ブリジットとクラウディアの二人は、単純に困惑の表情を浮かべていた。
 そんな空気の中、恵が思い付いた様に、クラウディアに問い掛けるのだ。

「ああ、そう言えば。わたし達はそれぞれ帰省するにしても、カルテッリエリさんは、どうする?」

 それに、クラウディアは、落ち着いた表情で答える。

「ああ…そうですね。」

 そして、少し考えてから、立花先生に尋(たず)ねるのだった。

「その間、寮に残っていても、構わないですよね?わたし。」

「そうね、別に、寮が閉鎖される訳(わけ)じゃないから、大丈夫よ、残ってても。」

 事情は解っているので、「あなたは帰国しないの?」と無神経な返しはしない立花先生である。
 すると、樹里と維月が同じタイミングで「それなら…」と、声を揃(そろ)えて言い出し、瞬間、二人は視線を合わせる。その一瞬の、視線だけの遣り取りで、発言の順番を譲り合った結果、先(ま)ず、樹里がクラウディアに提案をするのだった。

「だったら、観光も兼ねて、家(うち)に来ない?カルテッリエリさん。」

 続いて、維月も提案する。

「あはは、考える事は同じだね。わたしも家(うち)に誘おうかと思ってた。」

 クラウディアは、少し身体を引く様な仕草で、問い返す。

「そんな、迷惑じゃない?」

 樹里は透(す)かさず、答えるのだった。

「大丈夫、大丈夫。家(うち)の両親は、お客さん大歓迎の人だから。」

 続いて、維月。

「家(うち)は一家揃(そろ)ってソフト屋だからね、話は合うと思うんだ、クラウディアと。」

「あ、だったら、一週間ずつ、でどう?順番はどっちからでもいいけど。わたしも、維月ちゃんち、行ってみたいし。」

「あ~、おいで、おいで。家(うち)の両親も、樹里ちゃんとは会ってみたいって言ってたし、ちょうどいい機会よね。」

 そこに、佳奈が参戦する。

「わたしも樹里リンち、久し振りに行きたい~。」

「ああ、そう言えば。あなた達、中学が同じだったのよね?」

 瑠菜が、隣の席から少し呆(あき)れ気味に、そう確認すると、佳奈が満面の笑みで言葉を返して来るのである。

「うん、樹里リンの妹ちゃんが可愛いんだ~。瑠菜リンもおいでよ。」

「おいでよって、あなたの家(うち)じゃないでしょ。」

 苦笑いで佳奈へ言葉を返す瑠菜を、樹里は微笑んで誘うのである。

「瑠菜ちゃん、静岡でしょ。近いんだから、おいでよ。維月ちゃん含めて、二年生組で集合するのも、面白そうだし。」

「ええ~近いかなぁ。まぁ、二日位(ぐらい)なら都合が付くと思うから、お邪魔してもいいかな。」

「じゃ、そう言う事で、皆(みんな)、あとで日程の調整とかしましょう。カルテッリエリさんも、いいよね?」

 樹里が向ける笑顔の圧力に、クラウディアは困惑しつつも首を縦に振る。

「え…と、城ノ内先輩とイツキの御家族に、迷惑でなければ。」

 勿論、内心は嫌ではなく、先輩達の厚意が嬉しいクラウディアだった。

「迷惑だとか、心配要らないから。遊びにおいで~クラウディア。」

 維月はクラウディアの頭の上に乗せようとしていた右手を、思い直して肩へと置いた。樹里は、立花先生に了承を取り付ける。

「そんな訳(わけ)で、宜しいでしょうか?先生。」

「まぁ、いいんじゃない? カルテッリエリさんの事は、樹里ちゃんと井上さんに任せるわ。あ、但し、皆(みんな)そうだけど、帰省する前に寮の外泊届とか、手続きを忘れないで済ませておいてね。」

 一同が声を揃(そろ)えて「はい」と答えると、一呼吸置いて緒美が口を開く。

「それじゃ、お昼には少し早いけど、午前中はここ迄(まで)にしましょうか。城ノ内さんの方は、午後からの作業予定は決まってる?」

「あ、はい。LMF のシミュレーター・ソフトの件、こちらで準備しておく作業を、依頼されてますので。」

「そう、じゃあ、其方(そちら)の方は、任せるわね。」

「はい、部長。」

「メカの方は~考えておくわね。取り敢えず、天野さんとボードレールさんは、さっき言ってた通り、で。」

 緒美から話を振られて、茜は「はい」と答えるが、その時に不在だったブリジットには、それが何の話かが解らなかったので、茜に尋(たず)ねるのである。

「さっきのって、何?」

「ああ、LMF の格闘戦動作教示の前に、ブリジットには接近戦の感覚を掴(つか)んで貰おうと思って。わたしが教えられるのは剣道しか無いから、竹刀(しない)を持って来たのよ。 あ、別に、剣道の技を覚える必要は無いから。攻防の切り替えのタイミングとか、間合いの取り方とか、そんな感じがイメージ出来るようになれば。」

「イメージ…ねぇ。いいわ、取り敢えず、やってみましょう。どうせ、身体を動かさないと分からない類(たぐい)の事なんでしょ?」

「そうね。まぁ、ブリジットは運動神経がいいんだから、大丈夫よ。バスケに通じる部分も、きっと有ると思うし。」

 そこで、直美が声を上げるのである。

「その教習、わたしも混ざっていい?天野。」

「それは、構いませんけど…。」

 不審気(げ)に茜が声を返すと、恵が微笑んで言うのだった。

「去年、体育の授業で、一応、わたし達も剣道やったのよ。副部長はその時、結構、強かったのよね。」

「まぁ、剣道部の人には敵わなかったけどね。あ、二年生は十一月頃に、授業で剣道が有るから、楽しみにしてるといいよ~。まぁ、言っても、授業でやるのは基礎だけ、なんだけどね。」

 そう直美が、何やら楽し気(げ)に言うと、苦笑いで瑠菜が言葉を返す。

「ええ、噂は聞いてますよ。防具の匂(にお)いが凄いだとか、色々。」

 それに対しては、茜が所見を述べるのだった。

「匂(にお)い何(なん)て、今は、いい消臭剤が色々と有るのに。」

「それが、消臭剤は使わせて貰えないんだって。」

 そう樹里が言うので、再び茜が発言する。

「家庭用のを持って来るから、じゃないですか? 成分によっては、防具を傷めるから、家庭用のは駄目ですよ。専用のじゃないと。」

「ああ、そうなんだ。流石、経験者だね、天野。」

 感心気(げ)に瑠菜が言うので、直美が昨年の経験談を語るのだった。

「そうそう、剣道部の人がさ、その専用の消臭スプレー持って来ててさ。正(まさ)に、救世主って感じだったわ~あれは。」

「あはは、ともあれ、副部長にも多少、心得が有るのでしたら、ご一緒するのは構いませんよ。」

 笑顔で茜が了承するので、直美は緒美にも確認を求める。

「いいでしょ、鬼塚。天野の方に、参加しても。」

「まぁ、いいでしょう。余り、燥(はしゃ)ぎ過ぎないでね、新島ちゃん。」

 緒美はくすりと笑って、そう答えたのだ。

 

- to be continued …-

 

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