WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

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STORY of HDG(第13話.14)

第13話・鬼塚 緒美(オニヅカ オミ)とブリジット・ボードレール

**** 13-14 ****


 茜は、再び通信先の設定に防衛軍の指揮管制を加え、それからもう一度、声を作って応答をする。勿論、そんなに極端に声が変わる訳(わけ)ではない。

「はい、此方(こちら) HDG01 です。」

「画面上で其方(そちら)の位置と、エイリアン・ドローンの位置が重なっていたが、無事か? HDG02 も。」

 今迄(いままで)の経験的に、戦術情報画面上でエイリアン・ドローンの表示と戦闘機との表示が同高度で重なると言う事は、戦闘機側が被害を受ける事を意味していた。だから指揮管制官は、茜達の安否を心配して、連絡して来たのである。対して茜は、敢えてぶっきらぼうに、言葉を返した。

「うちの部長が『御心配は不要です』と、申し上げた筈(はず)ですが。」

「いや、無事ならいいのだが。 エイリアン・ドローンの反応が降下して行った様子なんだが、その付近に着陸したのか? 状況を教えて呉れ。」

 少し考えて、茜は答える。

「あ、いえ。攻撃して来たので、反撃し、当方で撃墜しました。」

「何?…。」

 暫(しばら)く沈黙した後、指揮管制官が聞き直して来る。

「…スマン、撃墜した、と云ったか?」

「はい。」

「四機全て?」

「わたし、HDG01 が二機、HDG02 が二機、ですね。」

「重ねて訊(き)くが、其方(そちら)に損害は無いか?」

「ありませんよ。HDG02 も無事です。HDG02、声を聞かせてあげて。」

 茜はブリジットに、そう呼び掛けて見る。ブリジットは、一寸(ちょっと)の間、考えて言った。

「えー、どうも、HDG02 です。御心配無く。」

 そこに、緒美からの通信が割り込んで来るのだ。

「TGZ02 より、HDG01、HDG02。そろそろ燃料が心配だわ。直(ただ)ちに帰投して。」

 すると慌てて、指揮管制官が声を上げる。

「あー、申し訳無いが、ちょっと待って呉れないか…。」

 その声に被(かぶ)る様に、緒美が発言するのだ。

「先程も申し上げましたが、私共(わたくしども)から開示出来得る情報はありません。其方(そちら)の所管責任者か、弊社の事業統括部へお問い合わせください。」

 緒美が言い終えるのを待って、茜が声を上げる。

「あの、防衛軍の方で、現在の HDG01、HDG02 の位置はマークされてるでしょうか? 大凡(おおよそ)その位置の下周辺に、エイリアン・ドローンの残骸が落下している筈(はず)ですので、後始末の方(ほう)は、宜しくお願いします。」

「えっ、あー…。」

 防衛軍側は何かを言いたそうだったが、それには構わず緒美が強制的に通信を終わりへと導くのだ。

「では、以上で通信を終わります。以降、呼んで頂いても、お応えは出来兼ねますのでご了承ください。」

 その緒美の通信が終わると、茜はフェイス・シールドの下で苦笑いを浮かべ乍(なが)ら、防衛軍の指揮管制を再度、通信先の設定から解除したのだった。
 そして、茜は言った。

「部長、防衛軍への通信、選択解除しました。」

「天野さん、ボードレールさん、ご苦労様。日が暮れるから、早く戻ってらっしゃい。」

 緒美が言う通り、既に太陽は半分程が沈みつつあり、東側の空は、もう薄暗くなっている。

「はい。HDG01、今より帰投します。ブリジット、帰りましょ。」

「了~解。」

 ホバリングを続けていた茜とブリジットは、それぞれの武装をジョイントに戻すと、学校へと向かって飛行を再開する。ブリジットは、もう一度、主翼を展開し、飛行制御を『揚力モード』へと戻した。ホバリングの出来る『推力モード』は、燃費が悪いのである。
 帰路に就き、ふと疑問に思った茜が、緒美に尋ねてみる。

「そう言えば、部長は今、何方(どちら)に?」

「ああ、もう着陸してるわよ、学校の飛行場。金子ちゃん達も、ね。 此方(こちら)は何とか、日が暮れる前に着陸出来て、良かったわ。」

「そうですか。わたし達は、あと五分位(くらい)で戻れます。」

「分かった、気を付けてね。 あ、戻って来る迄(まで)、通信はモニターしてるから。何か有ったら、呼び掛けてね。ボードレールさんも。」

「HDG01、了解。」

「HDG02 も、了解です。」

 それからは暫(しばら)く順調に飛行が続き、そんな中、ブリジットが茜に話し掛ける。

「さっきさ、茜…。」

「何?ブリジット。」

「…う~ん、茜みたいに出来るかと思ったんだけど。矢っ張り、付け焼き刃じゃダメみたいよねぇ。」

「ああ、見てたよ。ちょうど、こっちの方が片付いたあとだったから。 見事に、空振りだったわよね。」

「あはは、矢っ張りまだ、距離感、間合い?って謂うのが、イマイチ、身に付いてないのよね。」

「まあ、一週間や二週間で身に付く物でもないから、無理も無いわ。大体、相手のサイズが人間とは違うんだし。距離感は掴(つか)み難いかもね。」

「ああ、そうか~。意識してはなかったけど、それも有りそうかな。」

 それから茜は、少し間を置いて、言った。

「まあ、こんな事が本業じゃない訳(わけ)だし、敢えて慣れる必要も無いんじゃない? 取り敢えず、今回は撃退出来たんだから、それでオッケーって事で。」

「う~ん、それはそうだけど。何(なん)か癪(しゃく)だから、又、稽古(けいこ)を付けてね。」

「それは構わないけど。でも、槍とか薙刀なぎなた)は、わたしも専門じゃないからなぁ。」

「あははは、そうね~。当面は、自己流で頑張るしかないか~。」

 と、そんな会話をし乍(なが)ら、二人は学校へと帰還したのだった。

 茜とブリジットが第三格納庫前の駐機エリアに着陸した際には、二人を関係者達が出迎えて居た訳(わけ)だが、そこに天野理事長の姿は無かったのである。その事に就いて茜が尋(たず)ねると、立花先生が「防衛軍との折衝中だ」と、教えて呉れたのだった。
 防衛軍の作戦行動に介入した事に就いて、早速『事実確認』と称した苦情(クレーム)が天野重工本社へと届いていたのである。天野理事長は、その辺りの事態に対応するべく、飯田部長や桜井一佐と連絡を取っていたのだ。
 一方で、機体を地上要員(グラウンド・クルー)の飛行機部部員達へ渡した金子が、同じくレプリカ零式戦を飛行機部部員へと渡し一人で格納庫へと向かっていた緒美の元へ駆け寄って来て、話し掛けるのである。
 金子は、緒美の背後から右腕を回し、男性っぽく肩を組んで訊(き)いた。

「鬼塚は始終、落ち着いていた様だけど。矢っ張り、自分達が作ったあの装備に自信が有った訳(わけ)?」

 緒美は視線だけを隣の金子へ向けて、何時(いつ)も通りの落ち着いた口調で答える。

「いいえ、信じていたのは装備の性能じゃなくて、天野さんの能力の方よ。それから、ボードレールさんは、絶対に天野さんを裏切らないって事。 あの装備は、まだ、性能を発揮するのに、個人の能力に負う部分が大きいから。」

「ふうん…裏切らない、ね。確かに、ブリジットの天野さんに対する態度は、実は、ちょっと引っ掛かる所が有ったのよね。最初は、貴方(あなた)と森村さんの関係と、同じ様に思ってたんだけど。『類友(るいとも)』ってヤツ?そんな感じで。」

「そう? わたしと森村ちゃんが、どんな関係に見えてるのかは知らないけど。あの二人のは、普通に『友達』って言うよりは、共に困難を乗り越えた『戦友』って感じよね。」

「何か有ったの?」

「中学時代にね…詳しい話は、本人達に聞いて。わたしが話す事じゃないから。」

 そう言って、金子の方へ顔を向け、緒美はニッコリと笑ってみせる。
 金子は視線を逸(そ)らして、組んでいた右腕を解(ほど)き小さく息を吐いた。すると、遠くから武東が呼んでいる事に気付き、金子は緒美に言った。

「それじゃ、また後でね。」

 緒美は頷(うなず)いて、右手を肩程の高さに上げて応える。

「お疲れ様。」

 金子も右手を上げて応えると、武東の方へと駆けて行ったのである。

 格納庫の中では、茜とブリジットが装備を降ろすと、HDG-A01 と HDG-B01 の両機については、直ぐに点検が開始された。その作業は、畑中達が中心となり、それを瑠菜と佳奈、樹里とクラウディア、そして維月、直美、恵がサポートすると言う態勢である。
 インナー・スーツから制服へと着替えた茜とブリジットの二人は、緒美と立花先生と共に理事長室へと向かい、それから一時間程を掛けて、天野理事長への詳細な状況報告を行ったのだ。
 その報告から解放された緒美、茜、ブリジットの三名は、一旦(いったん)、第三格納庫へと戻り、他の部員達と合流して後片付けに参加した。理事長室に残った立花先生は、例によって校長を交(まじ)えての打ち合わせである。
 格納庫では、午後八時前には粗方(あらかた)の作業が終わり、それを見届けた実松課長と日比野の二名は予定通り、天野理事長と共に社用機にて、本社の在る東京へと飛び立ったのである。天野理事長には、緒美達から聞き取った内容を元に飯田部長達が製作した、防衛軍へ提出する報告書の確認作業が、本社到着後に待ち受けていたのだった。
 試作部から来校の畑中と大塚の二名は、午後八時を少し過ぎた頃、宿泊所である学校敷地内の男子寮へと引き上げたのだった。この二人は翌朝の出発で、工具や計測機材等をトランスポーターに積み込んで、試作工場の在る山梨へと陸路を移動するのである。
 兵器開発部のメンバーも、畑中達と同時刻に第三格納庫を後(あと)にし、女子寮へと帰ったのだった。
 緒美達は寮に戻ると、先ずは夕食となったのだが、茜とブリジットの二人は夕食よりも入浴を希望していたので別行動を取ったのである。そんな訳(わけ)で、茜とブリジットの二人は、午後九時を過ぎて寮の食堂へと入ったのである。
 天神ヶ﨑高校の女子寮は、学生のみでなく単身の女性教職員も生活している都合も有り、寮の食堂では午後十時迄(まで)は食事が可能なのだ。食堂自体にも寮生の全員が同時に食事が出来る程の広さは無く、自(おの)ずと寮生達は時間を区切って、入れ替わりで食事を取る事が前提となっている。夕食に関して言えば、部活などで夕食の遅くなる者も多いので、大した問題は無く、強いて言えば、時間が遅くなるとメニューの選択の幅が狭くなる事と、教職員と同席しなければいけなくなるのが、寮生達に取ってリスクであると言えば、そうだった。
 問題は、寮での朝食なのである。登校直前の時間帯が一番、食堂が混むので、下手(へた)をすると朝食を食べ損ねる事になるのだ。その為、余裕を持って朝食を食べたい者は、早起きが必然となる。朝に弱い者は、最初から食堂の利用は諦(あきら)めて校内のコンビニでパン等を購入するか、学校の学食を利用する者もいたが、これらの方法は寮の食堂とは違って、料金の支払いが必要なのだった。

 話を戻そう。
 寮の食堂の一角、壁際の席で向かい合って、茜とブリジットは食事を取っていた。この日のその時間は、食堂には人影は疎(まば)らで、閑散としている。食堂に備え付けられてるテレビは、今日のエイリアン・ドローン襲撃に対する防衛戦に就いて、何時(いつ)も通りの当たり障りの無い発表を繰り返していた。因(ちな)みに、食堂のテレビは、ニュース専門チャンネルに固定されていて、他のチャンネルに変えられる事は無い。
 談話室や娯楽室にもテレビは設置されており、其方(そちら)は利用者が自由に放送を選ぶ事が出来たのだが、そもそも、この学校の寮生達は、それ程、テレビ番組は観ないのだった。専用のサービスと契約すれば携帯端末で個々人が好きな番組や動画作品を観られる、と言う環境の所為(せい)も有るが、それよりも下らないバラエティ番組で貴重な時間を無駄にしない、そんな意識の方が、この学校の寮生の間では主流だったのだ。
 勿論、ドラマや歌謡番組が特に好きなグループも一定数は居て、そう言った人達はそれぞれに集まって、放送される番組を楽しんではいた。要するに、各人各様である。
 茜とブリジットは、と言うと、一般に放送されている当たり障りの無いテレビ番組には余り興味は無く、食堂で流されているニュースに時折、目を留める程度である。その為、同級生達と比べると、流行のドラマや芸能人などに就いては、二人共に疎(うと)い方だったのだ。但し、茜に就いて言えば、ロボットやパワード・スーツが登場する SF 物の映画やアニメに関しては、考察の参考資料として、膨大な数の作品を観ていたのである。
 そして茜が、この日の夕食の傍(かたわ)ら、携帯端末で『薙刀なぎなた)』や『槍』に関連する動画を検索し、練習の参考になるかもとブリジットに見せていたのだった。そんな夕食を終えようかとしていた頃、二人に声を掛けてきたのが、同級生であり友人である、村上 敦実(アツミ)と、九堂 要(カナメ)の二人だった。
 茜は、声を掛けてきた二人の様子を見て、尋(たず)ねる。

「二人は、今、お風呂上がり?」

 その問いには、村上が答え、聞き返して来る。

「うん、茜ちゃん達は?」

 すると、ブリジットが答える。

「わたし達も、済ませたわ。食事の前に。」

 そして九堂が、ニヤリと笑って言うのだ。

「聞いたよ~今日も、やっつけたんだって?エイリアン。」

「エイリアンじゃなくて、エイリアンのドローン、ね。」

 茜は苦笑いで、九堂の発言を訂正する。

「あはは、どっちでも同じ様なモンでしょ。」

 笑顔で細かい事は気にしない風(ふう)の九堂に、茜は確認する。

「それ、敦(あっ)ちゃんに聞いたの?」

「そうよ。」

 あっけらかんと答える、九堂である。そして茜は、村上に問い掛ける。

「敦(あっ)ちゃんは、金子さんから聞いたの?」

「うん。飛行機部も関わっちゃったから、一応、今日居た部員には経緯の説明が有ったの。色々と面倒臭い事になるから、他の生徒には言っちゃダメだ、とは言われてたけどね。」

 そう説明する村上に、ブリジットが突っ込む。

「だったら、要に話しちゃダメじゃん。」

 すると、九堂がブリジットに抗議するのだ。

「え~、わたしだけ仲間外れにしないでよ。 大体、こんな話、事情を知らない生徒が聞いても、信じて呉れないでしょ。」

「だよね~。」

 と、無邪気に村上が同意するのだった。そして、言葉を続ける。

「わたし的には、もっと茜ちゃんやブリジットの、お手伝いが出来たら嬉しいんだけどね。今は、間接的にしか協力出来ないのが、何だか歯痒(はがゆ)いのよね。」

「敦実は間接的にでも、手伝いが出来るならいいじゃない。わたしにも出来る事、何か無いかしら。」

 聊(いささ)か不満気(げ)に、そう言って溜息を吐(つ)く九堂である。
 それに対して茜は、少し困った様に言う。

「此方(こちら)としては飛行機部を巻き込んじゃって、それだけでも申し訳無いのに…。」

 すると、再び無邪気な口調で村上が言うのだ。

「それは、別に気にしなくてもいいんじゃない? 部長同士が、仲良しなんだし。 飛行機部の部員達も、本社の技術の人と交流したいって思ってる人は、案外、多いのよ。その点で、兵器開発部が羨(うらや)ましいのよね~。」

「そんな物かしら…。」

 茜が少し呆(あき)れた様に言うと、テーブル上に有った茜の携帯端末に関心を持った九堂が尋(たず)ねる。

「所で、それ、何を見てたの?」

 

- to be continued …-

 

※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。
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