WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

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STORY of HDG(第15話.13)

第15話・ブリジット・ボードレールと天野 茜(アマノ アカネ)

**** 15-13 ****


 茜は AMF に装備された前方監視カメラの最大望遠で、エイリアン・ドローン編隊の様子を監視してる。V字型編隊を組み直したエイリアン・ドローン編隊は、高度は下がったものの元のコースを直進しているのだ。
 間も無く、それは画面上での機影は小さいのだが、V字型編隊の先頭を飛ぶエイリアン・ドローンが、斜め前方から飛来した弾体の直撃を受けて弾(はじ)ける様に横転する様子が、AMF の前方監視カメラに因って捉えられていた。そして破片を撒き散らし乍(なが)ら、直撃を受けたエイリアン・ドローンは画面の下へと消えて行く。
 その他の機体は先程と同様に、先頭の機体が被弾するのとほぼ同時に、上下左右へと編隊を解いて散らばって行ったのである。

「レールガン弾体の命中を確認。HDG01、射撃を開始します。」

 茜は、そう宣言すると Ruby に指示を出した。

Ruby、手近な目標からロックオン。レーザー砲で、連続射撃するわよ。」

「分かりました。射撃管制モード、最短距離の敵機をロックオンします。」

 指示された通り、AMF に対して一番近いエイリアン・ドローンを捕捉した Ruby は、その機体に照準追跡を固定する。茜は射撃管制画面上の十字シンボルへ向かって機体の向きを微調整するが、先程よりも反応がいい事に気が付く。先程の射撃時の経験を元に、Ruby の操縦補正が、より最適化されているのだと、茜は直ぐに気が付いた。そして数秒も掛からず、十字シンボルは射線軸を表す四角シンボルの中央に収まるのだった。

「照射時間五秒、発射!」

 茜の音声コマンドでレーザー砲は発射され、AMF の機内ではレーザー照射中を知らせる「ビー」と言う電子音が、五秒間鳴り響く。正面の射撃管制画面にオーバーラップして表示されている前方監視カメラの最大望遠画像では、画面中央に捉えられているエイリアン・ドローンがレーザー攻撃を受けて煙を引いて落下を始める。

Ruby、次の目標を選択。」

「最短距離の敵機を選択します。」

「ロックオン。」

 茜の指示で照準追跡を固定すると、もう殆(ほとん)ど自動で次の標的をレーザー砲の射線軸へと、Ruby が機体を操縦していく。あとは茜が『発射の指示(キュー)』を出すだけ、となっていた。

「発射!」

 AMF の前方監視カメラが捉えているエイリアン・ドローンの小さな機影が、再(ふたた)びレーザーに焼かれて火を噴くのが見て取れる。勿論、最大望遠でも細部、詳細な様子は解らない。画面上では 13 ~ 18 ピクセル程の、陰の様な、染みの様な機影から、機体の破片であろう 1 ピクセル程度の点が飛び散ったり、細長い煙であろうラインを引いたり、或いは機体と同じか、それ以上の大きさの光点が点滅したり、時には機体が不規則に回転したりするのが、観測されるのである。その様子は、毎回が違った様相を呈するのだった。

Ruby、次の目標を選択。」

「最短距離の敵機を選択します。」

「ロックオン。」

 傍目(はため)からは AMF は殆(ほとん)ど姿勢を変えてない様に見えるが、実際は上下左右に機首を微妙に振って、約百五十キロメートル先を飛び回るエイリアン・ドローンにレーザー砲の射撃軸線を合わせているのだ。

「発射!」

 こうして、三機目の射撃を実施し、無事に目標の撃破を確認した所で、緒美が時間切れを告げるのである。

「HDG01、もういいわ。そろそろ、帰る時間よ。」

 続いて、Ruby が茜に報告する。

「連続発射の影響でしょうか、バレルの温度が、更に 80℃上昇しました。発射用キャパシタが、六つ全て空です。充電に、暫(しばら)く時間が必要です。」

「了解、Ruby。 レーザー砲の連射は三回までって、仕様通りですよね?部長。」

 茜の呼び掛けに、緒美が答える。

「そうね。 防衛軍側に帰投の報告、しておくから。ちょっとの間、皆(みんな)、余計な事、言わないでね。城ノ内さん、お願い。」

 そうして緒美が、樹里に通信設定を依頼すると、そのタイミングで桜井一佐の方(ほう)から呼び掛けて来るのである。

「此方(こちら)、統合作戦指揮管制、桜井です。TGZ01、応答願います。」

 声のトーンが、少し慌てている様子にも聞こえたので、緒美は敢えて平静に声を返すのだ。

「TGZ01、鬼塚です。どうかされましたか?桜井さん。」

「さっきから、エイリアン・ドローンの反応が三機、四機と続けて消失したんだけど、其方(そちら)で何かやったの? 此方(こちら)で、ちょっと騒ぎになってるのよ。」

 思わず緒美と飯田部長が顔を見合わせ、そして緒美はくすりと笑い、飯田部長は小さく失笑したのである。

「え~と、信じて頂かなくても結構ですけど、御依頼の通り此方(こちら)で射撃試験の標的にした結果ですので、御心配無く。」

「七機全部?」

 そう聞き返して来た桜井一佐の声は、笑いを堪(こら)えている様だった。

「はい。何分(なにぶん)、標的までの距離が遠いもので少々不鮮明ですが、画像も残っていますので。後日、飯田部長の方(ほう)から報告書が提出されると思いますが…。」

 そう言い乍(なが)ら、緒美が飯田部長の方へ目を遣ると、苦笑いしつつ飯田部長が頷(うなず)いているのだった。緒美は言葉を続ける。

「…それで、宜しいでしょうか?」

「了解しました。報告書、楽しみにしておりますわ。飯田さん、聞いてらっしゃるのでしょ?」

 桜井一佐に呼び掛けられ、漸(ようや)く飯田部長が声を出す。

「あー、はい、はい。後日、ですね。成(な)る可(べ)く、火急(かきゅう)に提出出来るよう努力致します。」

「お願いします。 あ、一つだけ先に教えて頂けます? レーザーとレールガンの、撃墜数(スコア)の内訳。」

 緒美は、慌てて聞き返すのだ。

「この通信で、話しても大丈夫なんでしょうか?」

 桜井一切の返答は、明快だった。

「大丈夫ですよ。今、この回線の此方(こちら)からの通信先設定は其方(そちら)だけですし、其方(そちら)の通信先設定は此方(こちら)だけでしょ? 今、この管制室に居る者(もの)は、皆(みな)、信用出来る者(もの)ばかりですから、御心配無く。」

 緒美が飯田部長へ視線を送ると、飯田部長は再(ふたた)び頷(うなず)いて見せるのだった。
 それを確認して、緒美は発言する。

「そう言う事でしたら。 七機撃墜の内訳は、レールガンが二機、レーザーが五機です。但し、レールガンは送弾系でメカ的なトラブルが発生したので、その時点で試射を中止しました。」

「そう。分かったわ、ありがとう。何(なん)にしても、助かったわ。 此方(こちら)も漸(ようや)く編成の都合が付いて、さっき迎撃が上がった所なの。えー、現時点で、敵機は引き返す積もりみたいね。間に合えば、残りは此方(こちら)で処分する事になると思うわ。」

「そうですか。此方(こちら)は、そろそろ燃料が心許(こころもと)無いので、ベースへ帰投します。」

「そうね、ご苦労様。帰り道、気を付けてね。」

「ありがとうございます。以上、通信終了します。」

「了解。通信終了。」

 桜井一佐の返事を聞いて、緒美は右手を樹里の左肩へ置いた。それが、統合作戦指揮管制への通信設定解除の合図である。樹里は無言でパネルを操作し、設定を変更した。

「はい、防衛軍管制への通信設定、解除しました。」

「ありがとう、城ノ内さん。」

 続けて緒美は、茜に呼び掛けるのだ。

「HDG01、天野さん。さっき桜井さんが、エイリアン・ドローン編隊が引き返してるって言ってたけど。戦術情報で確認してちょうだい。」

 茜の返事は、直ぐに返って来た。

「はい、HDG01 です。先程からチェックしてますけど、高度を上げ乍(なが)ら、方位(ベクター) 330 へ。元来(もとき)た方向へ、針路を変えてます。」

「そう。 アウト・レンジからの狙撃は、意外と効果が有ったのかもね。 兎も角、全機、帰投するわよ。 沢渡さん、お願いします。」

 緒美が呼び掛けに応じて、操縦席の機長、沢渡が声を上げる。

「了解。針路、方位(ベクター) 183 へ、高度は少し上げて千八百メートルへ、速度(スピード)は 10.0 にセットします。HDG01 及び、HDG02、続いてください。」

「此方(こちら) HDG01、マスターアーム、オフ。レーザー砲を格納して、TGZ01 を追います。」

「HDG02、了解。TGZ01 を追います。」

 そこで飯田部長が、通信に乗っている事を承知で、緒美に尋(たず)ねるのだ。

「しかし、鬼塚君。蓋を開けてみれば、レーザーもレールガンも全弾命中。驚異的な命中率の様に見えるが、どう思う?」

 緒美は一瞬、飯田部長の表情を確認し、そのニヤリと笑っている表情が期待していそうな答えを、敢えて言うのだ。

「当たる様に撃ったから、当たっただけですよ。勿論、HDG 搭載 AI の火器管制が優秀だからこそ、ですが。」

 緒美の見解は彼の期待通りだったのか、飯田部長は大きく頷(うなず)いていた。そして緒美は、発言を続ける。

「海防の艦艇搭載型に比べて、航空機搭載型の方が、そもそも素性がいいとは思いますよ。艦艇搭載だと、どうしても波の不規則な動きが、照準に影響を与えますから。偶然とは言え、今日ぐらい気流が安定していて呉れたら、航空機搭載の方が精度は求め易いと言えます。一方で航空機搭載のデメリットは、艦艇程の電源が得られない事と、それに加えてレールガンの場合は弾体の搭載量が少なくなる事ですね。」

「いやあ、流石の慧眼(けいがん)振りだね。」

 上機嫌そうに飯田部長が言うので、緒美は少し困惑気味に尋(たず)ねるのだ。

「それで飯田部長は、わたしにそんな推察を言わせて、どうされるお積もりですか?」

「いやあ、先程の『大戦果』を見て、何か勘違いをする者(もの)が居たらいけないから、釘を刺して貰おうかと思ってね。防衛軍の連中にも、聞かせてやりたい位だったよ。」

 その飯田部長の答えを聞いて、緒美は溜息を一つ、吐(つ)いたのだ。
 そこに、ブリジットが問い掛けて来る。

「HDG02 ですけど、あのー、今の、お二人のお話は、どう言う意味なんでしょうか? 『勘違い』って言うのは…。」

 ブリジットが言い終わらない内に、茜が口を挟(はさ)む。

「HDG の性能がいいとは言っても、どんな状況で撃っても百発百中じゃない、って事ですよね、部長。」

 茜のコメントを聞いて微笑んだ緒美は、言うのである。

「そうね。要するに、天野さんとボードレールさんが、HDG を上手に使ったから当たった、って話よ。特にボードレールさん、命中させるのはレールガンの方が格段に難しいんだから、当たらない条件で無駄弾を撃たずに、当たる条件の時だけ発射したのは、判断が的確だったわ。」

「あはは、何だ~褒(ほ)めて呉れてるのなら、そんな風(ふう)にストレートに言ってくださいよ~。」

 笑ってブリジットが、そう言うので、緒美も笑顔で言葉を返すのだ。

「そうね、これからは、そう心掛けるわね。」

「いやあ、正直、今日も茜に比べると、イマイチだったなーって、ちょっと、がっかりしてたんですよ。」

 緒美に続いてブリジットが、そんな事を言い出すので、透(す)かさず茜が声を上げる。

「ちょっと、ブリジット、何言ってるのよ?」

「そうだよ、がっかりなのは、こっちだよ!」

 茜に続いて通信から聞こえてきた声は、直美である。金子も、それに続くのだ。

「全(まった)くね、途中で帰されるしさ。帰り道はそっちの邪魔はしたくないから、黙って、黙々と飛んでるだけだもんな。」

「ブリジットは、正面(まとも)に出番が有っただけ優(まし)なんだからね。」

 金子と直美に続けて、そう言われると、流石にブリジットも申し訳無い気がして来るのである。

「それは何だか、申し訳無いです。」

 ブリジットが謝辞を述べると、今度は緒美が言うのだ。

「別に、ボードレールさんが謝る事じゃないでしょう? 金子ちゃん、今、どの辺り?」

「えーと、学校まで、あと十分位。」

「了解。 天野さん、戦術情報、何か変化は無い?」

「あ、はい。学校迄(まで)の空域はクリアーです。因(ちな)みに、撤退中のエイリアン・ドローン編隊ですが、防衛軍の戦闘機が、関東と北海道から追撃に向かってるみたいですね。」

 茜の報告に、緒美が問い返す。

「追い付けそう?防衛軍。」

「どうでしょう? 超音速巡航(スパークルーズ)で、文字通り『飛んで行って』ますけど、目標が防空識別圏を出る迄(まで)にミサイルの射程に入るか、ギリギリの所ですね。」

 そこで飯田部長が、見解を述べるのだった。

「まあ、最終的に撃墜は出来なくてもね。エイリアン・ドローン編隊が引き返して、再度、こっちに来なければ、それでいいのさ。 それよりも問題なのは、防衛軍の防空態勢が、この半年で西向きにシフトし過ぎた事だな。」

 飯田部長に、緒美が尋(たず)ねる。

「そこを衝かれた感じでしょうか? でも、その割には、差し向けてきた機数が、中途半端な気もしますし。まあ、その御陰で、今回、此方(こちら)側は助かりましたけど。」

「全(まった)く、連中の考える事は、良く解らないよ。」

 苦笑いで、そう言う飯田部長に、真面目な顔で緒美は言うのだ。

「寧(むし)ろ、エイリアンの考える事が理解出来るって言う方(ほう)が、どうかしてるとは思いますけどね。」

 その緒美の言葉に対して飯田部長は、唯(ただ)、渋い顔をして見せるのみだったのである。

 

- to be continued …-

 

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