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Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

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STORY of HDG(第17話.01)

第17話・クラウディア・カルテッリエリとブリジット・ボードレール

**** 17-01 ****


 天神ヶ﨑高校に於(お)いては、一部で心配されていたエイリアン・ドローン襲撃の発生も無く、『秋天(しゅうてん)際』は其(そ)の全日程を無事に終了したのである。
 展示や発表等で参加する企画の無い兵器開発部の面々は、一般生徒として『秋天(しゅうてん)際』を楽しんだのであるが、唯一(ゆいいつ)ブリジットだけは、彼女が休部扱いとなっているバスケ部の出店(でみせ)運営に参加したのだった。それは、何(いず)れ訪(おとず)れるであろうブリジットのバスケ部復帰を見越した、その為の雰囲気作りを期待した田中部長の配慮である。実際、他の部員からもブリジットの復帰は期待されていたし、別に部員達と仲違(なかたがい)してのブリジットの休部と言う訳(わけ)でも無いので、ブリジットはブリジットで久し振りのバスケ部での、その役割を楽しんだのだ。
 『秋天(しゅうてん)際』開催前日の一日と、終了後の一日が、それぞれ準備と片付けの日程として授業は休止とされていたので、『秋天(しゅうてん)際』開催の二日間と合わせて都合四日間、ブリジットは一時的にバスケ部に復帰した形になったのだった。それは其(そ)の期間中に、兵器開発部の方が活動の一切を休止していたから、でもある。
 一方で其(そ)の四日間、ブリジット以外の部員達はどうしていたか、だが。全員が多かれ少なかれ、人手の足りない他の出し物の準備や片付けを手伝う等、それぞれが級友の要請に応えていたのだった。
 このお話の都合上、兵器開発部の活動ばかりを追い掛けていると言う事情は有るのだが、兵器開発部の面々も其其(それぞれ)のクラスに戻れば、級友達と普通に友人関係を保っており、兵器開発部のメンバー達が他の生徒達から乖離(かいり)した存在と言う訳(わけ)ではないのである。
 『秋天(しゅうてん)際』は11月2日、3日、つまり水曜日と木曜日の開催で、翌日の金曜日は終日が片付けであった。土曜日に授業が無い普通科の生徒に取っては、この週は『秋天(しゅうてん)際』開催準備の火曜日から学校は授業が無かった訳(わけ)だが、茜達、特別課程の生徒達には、土曜日の授業は普通に実施されたのだった。

 ほぼお祭り期間だった一週間が終わり、日曜日を挟(はさ)んで、翌週の月曜日が2072年11月7日である。
 この日は、例によって畑中等(ら)が試作装備の搬入の為、朝から来校していたのだ。この日、持ち込まれたのは、以前に試作工場へと持ち帰ったB号機用レールガンの改修機と、C号機用の『プローブ』と呼ばれる電波発信源位置特定用の拡張装備が五セット、計二十基である。

「何(なん)だか、毎週の様に来てない?貴方(あなた)達。」

 そう畑中に言って笑ったのは、第三格納庫への搬入に立ち会っていた立花先生である。対して畑中も、笑って応えるのだ。

「あはは、毎週って事はないですよ、流石に。前回来たのは二週間前だし、あ、でも。来るのなら先週、来たかったですよね。『秋天(しゅうてん)際』、先週だったんでしょう?」

「あら、良く知ってるわね。」

「そりゃ、これでもOBですから。それに、地上展示用の F-9 は、試作工場(うち)から出してますからね。」

「ああ、そうね。だったら、その F-9 の管理責任者とかの名目で、来れば良かったのに。」

「その役目、毎年、競争率高いんですよ、実は。 まあ、それ以前に、製作三課(うち)は今年、色々と忙しくって、それどころじゃなかったんですけどね。年末に向かって、此方(こちら)へ送り出す試作機を、並行して幾つも作業してますから。」

「そう言えば、そうよね。 あ、所で悪いんだけど。このあと、用事が有るから、ここは暫(しばら)くお任せするけど、いいかしら?」

「ああ、はい。大丈夫ですよ、伊達(だて)に回数、ここに来てる訳(わけ)じゃないので。」

「まあ、もしも何か有ったら、わたしか、前園先生にでも連絡して。」

「はい、了解です。」

「それじゃ、お願いね、畑中君。」

 そう言い残して立ち去って行く立花先生の背中を見送った畑中は振り返り、既にお馴染みとなった出張組の面々に指示を出すのだ。

「それじゃ、B号機飛行ユニットのレールガン搭載から始めようか~。軸線調整まで、午前中に終わらせよー。」


 それから昼休みを挟(はさ)んで、放課後である。
 月曜日は特課の生徒達にも七時限目の授業は無いので、午後三時を過ぎると兵器開発部のメンバー達が次々と第三格納庫へとやって来るのだ。彼女等(ら)は勿論、この日が試作装備の搬入予定日である事は事前に把握しているし、緒美や茜に至っては昼休みに第三格納庫を訪(おとず)れており、その様子を確認済みだったのである。

「あ、レールガンが付いてる。」

 茜と共に第三格納庫へと降りて来た、ブリジットの第一声である。
 階段を降りて、B号機用の飛行ユニットへと歩み寄って来るブリジットと茜に、畑中が声を返すのだ。

「おーう。お待たせしたね、調整もバッチリ終わってるよ。」

 メンテナンス・リグに吊り下げられた飛行ユニットの前に到着すると、茜が畑中に尋(たず)ねる。

「トラブルの原因は、解ったんですか?畑中先輩。」

「ああ、色々とデータが揃(そろ)ってたからね。本体が特定の角度の時に、特定の方向に加速度が加わると、装弾異常が発生するのが解ってね。設計の想定が間違ってたらしくて、送弾経路の部品形状を変更したんだ。これは対策済みのだから、もう心配は要らないよ。」

 続いて、ブリジットが問い掛けるのだ。

「テストも、済んでるんですか?」

「勿論。前回も本体の取り付け角度を何パターンか変更して、連続装弾試験はやってたんだけど。今回はロボット・アームの先端に本体を取り付けて、ブンブン振り回し乍(なが)ら、連続装弾試験をやったからね。問題の組合せ以外にも、色んなパターンで検証済みさ。」

 その回答を聞いて、苦笑いをしつつ、茜が感想を漏らす。

「それは又、大変そうですね。試験の手間が。」

「あはは、まあ、振り回すのも、連続で装弾掛けるのも、プログラムしておけば勝手にやって呉れるから手間は無いんだけど。大変なのは、排出された弾体を拾い集めるのと、弾倉(マガジン)に弾体を再装填するのが、もう、ね。」

「あははは~そこは人手でやるしかないんですね。」

 ブリジットも苦笑いで、同意するのだった。
 そして畑中が言うのだ。

「ま、土曜日の飛行で、試射する予定だろ? その試験には立ち会う予定だから、楽しみにしてるよ。」

「はい。」

 ブリジットと茜は、声を揃(そろ)えて返事をしたのだ。
 丁度(ちょうど)そのタイミングで、背後の階段側から樹里の声が聞こえて来るのである。

「済みませ~ん。ちょっと、遅れました。」

 その場に居た三名、つまり茜とブリジット、畑中が声の方へと視線を向けると、階段を降りて来たのは樹里と維月、そしてインナー・スーツに着替え済みのクラウディアの三名だった。彼女達はC号機と、その飛行ユニットが置かれた方向へと向かって歩いて行く。其方(そちら)側では、緒美や瑠菜達が、飛行ユニットの前で倉森から説明を受けている様子である。
 畑中も、C号機の方へと向かい乍(なが)ら、樹里達へ声を掛ける。

「早速で悪いんだけど、C号機を飛行ユニットとドッキングさせたいんだ。搭載したプローブの機能確認、始めたいから。」

「了解してま~す。」

 畑中の呼び掛けには、先頭を歩く樹里が代表して応えたのだ。
 そこからクラウディアは駆け足でC号機の前へと向かうと、ステップラダーを駆け上がり、自身をC号機へと接続する。瑠菜と佳奈は、その作業を補助したり、メンテナンス・リグの操作をしたりしている。
 間も無く、C号機はメンテナンス・リグから離れ、その儘(まま)、歩行で飛行ユニットの前へ到達すると、瑠菜に誘導されつつ、今度は後ろ向きに進んでC号機が飛行ユニットにドッキングするのだ。
 飛行ユニットの主翼下には、左右に二基ずつの『プローブ』が、既に専用のパイロンを介して取り付けられている。
 『プローブ』は、長さが凡(およ)そ三メートル程の、ミサイル等よりは胴体が一回り程太い、少し扁平な六角形断面の飛翔体である。それは攻撃用の兵装ではなく、C号機の電波受信能力を拡張する為の装備なのだ。
 この日の予定は、C号機用の飛行ユニットへの『プローブ』の物理的な搭載確認と、信号の通信確認、及び、各種制御器機の機能確認である。機能確認は『プローブ』側と、取り付けられる飛行ユニット側、そして統合して制御するC号機と Sapphire、それぞれのレベルに於(お)いて必要で、確認項目を一つずつ消化していくと、それなりに時間が必要になるのだ。
 午後六時頃まで掛けて、予定されていた全ての確認が終わると、兵器開発部の活動は二組に別れる事となる。
 一方は格納庫フロアで、『プローブ』の搭載や取り外し作業の、作業実習や技術的な注意事項のレクチャーである。そしてもう一方の組は、翌日の飛行確認の打ち合わせを行うのだ。
 飛行確認とは言っても、『プローブ』を空中で切り離したり、発射はしない。先(ま)ずは、C号機飛行ユニットに装備した状態での、C号機自体の飛行能力や操縦性に関する影響についての確認である。或いは、搭載された状態での『プローブ』自体の振動や、機能不全が無いかを確認し、投射するまでの手順を確認する予定なのだ。又、『プローブ』を使用しないで搭載した儘(まま)で帰還するケースも当然考えられるので、『プローブ』搭載状態でのC号機飛行ユニットの着陸操作に就いても、悪影響や不具合が無いかを実際に確認しておかなければならない。
 そんな具合で、何か一つ、装備が追加される度(たび)、膨大な項目の確認作業が発生するのである。それを彼女達は、協力し、分担し乍(なが)ら、時間を掛けて一つずつ、淡々と消化していくのだ。


 翌日、2072年11月8日、火曜日の昼休みである。この日は兵器開発部のメンバーが次々と、十二時半頃に部室へと駆け込んで来るのだった。
 天神ヶ﨑高校の四時限目が終了するのが十二時二十分である。それから午後一時十分迄(まで)の五十分間が、昼休みの時間なのだ。その昼休み中に、前日に搭載したC号機用の『プローブ』、その飛行確認作業を実施しなければならないのである。と言うのも、火曜日から水曜日の三日間は、特別課程の生徒達には七時限目の授業がカリキュラムに組まれており、その終了を待っていると午後四時を過ぎてしまうのだった。それから飛行の準備を行うと、どう頑張っても離陸は午後四時半頃となり、十一月も半ばになろうかと言う此(こ)の時期には、辺りは直ぐに薄暗くなってしまうのである。
 勿論、HDG は夜間でも行動や飛行が可能な能力は持っているのだが、装備の飛行確認を態態(わざわざ)、暗闇の中で行うのも妙な話で、映像を記録するにしても明るい日中の方が望ましいのは言う迄(まで)もないだろう。そこで、昼休みの時間を使って、確認飛行を実施する事になったのだ。
 とは言え、特にドライバーの三名には昼食抜きで部活を強要する訳(わけ)にもいかず、一時間程で実施の予定だった確認飛行を二十分間ずつの三日に分けて、火曜日から木曜日の昼休み時間中に実施すると言う運びとなったのである。

 先(ま)ず、茜とブリジット、クラウディアには校舎の出口に自転車を用意しておき、四時限目の授業終了と同時に三人は校舎を出て、自転車で第三格納庫へと移動する計画なのだ。
 茜とブリジットは計画通りに授業が終了すると直ぐに教室を飛び出し、学食や学内の売店へと向かう他の生徒達を擦り抜け乍(なが)ら、自転車が準備されている校舎の出口へと向かったのだ。

「こらー、天野。廊下を走るなー。」

 通り掛かった教師の『お約束』の様な言葉に、茜が「すいませーん。社用でーす。」と応えつつ、茜とブリジットは校舎裏の通用口へと到着する。共有自転車のロック解除を携帯端末で行うと、二人は第三格納庫へと向かって、自転車を走らせるのだ。
 学校の敷地内を南北に走る舗装路が、南へと向かって下りの傾斜となっているのは、その敷地が山腹の斜面を造成しているからである。この事は、茜達が滑走路の方向へ自転車で向かうのには好都合で、それ程の急勾配という訳でもない坂道ではあったが、それでもスピード超過に気を付けねばならないのだった。
 そんな訳(わけ)も有って、徒歩でなら十五分程度掛かる第三格納庫への道のりも、自転車でなら三分程度で到着出来たのだ。
 部室へと上る外階段の下に乗って来た自転車を止めると、茜は視界の端に、近付いて来る別の自転車に気付いた。良く見ると其(そ)の自転車を運転しているのは維月で、彼女の背中にはクラウディアが、しがみ付いているのだった。クラウディアの体格では女子寮の共有自転車に乗るのは難しく、だから維月がクラウディアを運んで来たのだ。勿論、校内でも自転車の二人乗りは禁止である。
 茜は近付いて来る二人に、右手を挙げて振ってみせるのだが、ブリジットは茜の傍(かたわ)らを抜けて階段へ向かい、茜に声を掛けて来るのだ。

「急ぎましょ、茜。」

「うん。」

 そう答えて、茜はブリジットを追って外階段を駆け上がる。
 そして部室のドアを開けると、昼食用の御握(おにぎり)やパンを大量に準備して、立花先生が待機しているのだった。

「御握(おにぎり)でもパンでも、好きなの取って行って。」

「すいません、先生。それじゃ、遠慮無く。」

「いただきま~す。」

 茜は小振りなクロワッサンが二つ入った袋を、ブリジットが鮭の御握(おにぎり)の包みを取ると、二人はインナー・スーツに着替える為、更衣室へと向かったのだ。茜とブリジットが部室奥のドアから出るのとほぼ同時に、維月とクラウディアが少し荒い息遣(いきづか)いで部室へと入って来るのだった。
 ほぼ同じ運動量だった筈(はず)なのに、維月やクラウディアに対して茜とブリジットが平然としていたのは、勿論、二人が其(そ)れなりに身体を鍛えていたから、である。下り道とは言えクラウディアを乗せて自転車を走らせていた維月は未(ま)だしも、クラウディアに至っては外階段を駆け上がっただけなのだから、茜達との体力差が如何程(いかほど)なのかが如実(にょじつ)に表れた瞬間だったと言えよう。

「貴方(あなた)達も、好きなのを取って行ってね。」

「あ、すいません。いただきます。」

「わたしはこれ、いただいて行きます。」

 維月は『ヤキソバパン』を、クラウディアはマヨツナ入りの御握(おにぎり)を、それぞれが手に取ると、茜達と同様に更衣室へと向かったのだ。
 それから少し間を置いて、緒美と恵、直美の三人が部室に到着し、続いて二年生の三人が外階段を駆け上がって来るのだが、皆(みな)、それぞれに息が荒い。それぞれが校舎から、全力疾走ではないにしても、駆け足で第三格納庫へと駆け付けたのだ。
 部室に入った緒美は少し呼吸を整えてから、立花先生に尋(たず)ねる。

「先生、天野さん達は?」

「今、着替え中よ。 貴方(あなた)達も、好きなのを取って行きなさい。早い者勝ちよ。」

「それじゃ、いただきます。」

 緒美はメロンパンと紙パックのコーヒー飲料を取ると、格納庫フロアへと降りる為、そそくさと二階通路へと出て行くのだ。

「あ、待って~。」

 恵はサンドイッチの包みと、紙パックのレモンティーを取って、緒美を追い掛ける。直美は鮭の御握(おにぎり)と緑茶の紙パックを取り、恵を追うのだった。

「先生、チョコ味のパン、有ります?」

 そう訊(き)いて来たのは佳奈である。

「これ、どうかしら?佳奈ちゃん。」

 そう言って立花先生が差し出したのは、楕円形のパンの上面がチョコレートでコーティングされた一品である。中には、クリームも入っているらしい事が、パッケージに表記されている。

「うっわ、甘そー。」

 それは立花先生が提示した品を横から見ていた瑠菜の率直な感想だったが、佳奈は満面の笑みで礼を述べ差し出されたパンを受け取ると、飲み物としてはコーヒー飲料の紙パックを選んだのだ。
 瑠菜と樹里は、共に正統派(オーソドックス)な梅干し入りの御握(おにぎり)を選択し、飲み物は瑠菜が緑茶を、樹里はミルクティーを選ぶのだった。

「それ、合うの?」

 瑠菜に問い掛けられて、樹里は微笑んで答えるのだ。

「気にしないで。お薦めはしないけどね。」

 そして二年生組三人も、準備作業の為に格納庫フロアへと降りて行くのだ。
 その後、インナー・スーツに着替えた三人と、クラウディアの着替えを補助していた維月が、南側のドアから部室内へと戻って来ると、立花先生は茜達に声を掛けるのだ。

「貴方(あなた)達、さっき、飲み物持って行かなかったけど、要らない?」

「わたしは、帰って来てから、いただきます。」

 茜が即答する一方で、ブリジットは中央の長机へと向かうのだ。

「わたしは、お茶を一口だけ。」

 ブリジットは緑茶の紙パックを手に取るとストローを挿し、一口を飲み込んで、その紙パックを机の上に置いたのだ。

「残りは、帰ってから飲みますから。」

「じゃ、取って置くわね。 クラウディアちゃんは? 井上さんも。」

 立花先生に呼び掛けられて、クラウディアは答える。

「わたしも、帰って来てから、いただきます。」

「そう。それじゃ、気を付けて行ってらっしゃい。」

 その送り出しの言葉に、三人は意図せず声を揃(そろ)えて「行ってきます。」と、答えたのだった。

 

- to be continued …-

 

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