WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第17話.02)

第17話・クラウディア・カルテッリエリとブリジット・ボードレール

**** 17-02 ****


 ドライバー三人と維月が格納庫フロアへ降りて行くと、三機の HDG は既に起動準備状態で待機している。
 発進時間を短縮する為、昨日の内に各機が其其(それぞれ)の飛行ユニットに接続した状態で、更に機首を大扉の方向へと揃(そろ)えてあるのだ。その上で畑中達が、AMF とC号機飛行ユニットはエンジン始動までを終わらせているのだった。これは AMF は Ruby が、C号機飛行ユニットに就いては Sapphire が、それぞれ制御しているから可能な事である。
 茜は手際良く自身を HDG へ接続するのに続いて AMF の機首部を閉鎖し、恵と直美が押し開けた大扉の方へ向かって、機体の前進を開始する。その儘(まま)、庫外に出ると駐機エリアを横切って滑走路への誘導路に侵入し、行き足を緩(ゆる)める事無く滑走路の東端へ向かって、滑らかに AMF を移動させて行く。それにクラウディアのC号機も、機体三機分程の間隔で追従して行くのだった。
 ブリジットのB号機は、飛行ユニットのメンテナンス・リグに吊られた状態で飛行用メイン・エンジンを起動する所からのスタートだったが、滑走路へと向かう誘導路上の移動や、離陸滑走が不要である特性を活かし、エンジンが起動して機体がメンテナンス・リグから解放されると、直ぐに格納庫内からホバー移動で駐機エリアへと出て、その儘(まま)、上昇を開始する。
 それとほぼ同時に AMF が離陸滑走を開始すると、あっと言う間に離陸を終え、C号機も其(そ)れに続くのだった。

「何だか、空防の緊急発進(スクランブル)訓練みたいだなー。」

 畑中が上昇して行く三機を見送り乍(なが)ら、そんな所感を漏らすと、微笑んで緒美が言うのだ。

「まあ、やってる事は同じですよね。十二時三十八分、まあ、上出来かしら?」

 時刻を確認する緒美に、大扉の方から戻って来た直美が声を掛ける。

「授業終了から、十八分って事でしょ? あと三分は、短縮したいよね。」

「明日(あした)の課題、かしら?」

 恵が苦笑いで直美に応じる一方で、緒美はデバッグ用コンソールを操作している樹里に確認する。

「城ノ内さん、プローブの振動計、データは取れてる?」

「大丈夫です、四基とも正常に稼働してます。今の所、異常値は来てませんね。」

 緒美が言う『振動計』とは『プローブ』に標準装備されているセンサーではなく、今回の確認の為に取り付けられた物である。センサーが計測したデータは、パイロンを介して飛行ユニット側で取り込み、HDG のデータ・リンクに乗せて送られて来るのだ。
 三機の HDG を送り出し終えて一息吐(つ)いた瑠菜は、制服のポケットから先刻の御握(おにぎり)を取り出しつつ、畑中に問い掛けるのだ。

「畑中先輩、あのプローブ一式、試作工場の方でも、F-9 に搭載して試験はやってるんですよね? こっちでも同じ試験、やる必要が有るんですか?」

 そう訊(き)いて瑠菜は、包装を解いた御握(おにぎり)を一囓(ひとかじ)りする。

「C号機の飛行ユニットと F-9 は、主翼は同じ物だけどさ、機首形状が全く違うからね。気流の影響は、実機で確認しないと安心出来なのさ。勿論、問題は無いように設計はされてる筈(はず)だけど、『問題は無い』って事を確認はしないとね。」

 畑中が瑠菜の質問に答えると、その背後で樹里が声を上げるのだ。

「A号機とB号機から、映像来ました。記録、開始しま~す。」

 それを聞いて、直美が緒美に微笑んで言うのである。

「A、B号機が随伴(チェイス)機をやって呉れるなら、わたし達は、もう御役御免(おやくごめん)かな?」

「ケース・バイ・ケースでしょ? 又、必要になる事も有るかもよ。」

 直美と緒美は顔を見合わせると、互いに「ふふふ。」と笑ったのである。
 余談ではあるが、次の日曜日には、緒美と直美に定例の飛行訓練が予定されていた。

 それから暫(しばら)くは、C号機は各種姿勢での飛行や機動を繰り返し、主翼下に懸下(けんか)された『プローブ』に異常が見られないかを、只管(ひたすら)に確認したのだ。そして十五分程が経過した時点で、この日の飛行を切り上げて、帰投の指示が出されるのである。
 この日の飛行は学校の上空付近からは大きく離れなかったので、AMF とC号機は五分程で、相次いで着陸を終えて、第三格納庫へと戻って来る。一番最初に格納庫内に戻って来たのは、当然、着陸滑走が必要でないブリジットのB号機で、第三格納庫前の駐機エリアに降り立つと、その儘(まま)、格納庫内へとホバー移動で戻って来たのだ。
 ブリジットが機体を飛行ユニット用のメンテナンス・リグに接続している間に、クラウディアのC号機が格納庫の中まで自力移動で入って来て停止し、最後に茜の AMF が格納庫内で停止したのである。
 ドライバーの三名は大慌てで HDG と自身との接続を解除すると各機から飛び降り、部室の在る二階通路への階段へと駆け足で向かうのだ。

「三人共、五分で着替えて来て!」

 そんな緒美の声を聞き乍(なが)ら階段を駆け上がると、二階廊下を通って部室を通過し、部室隣の更衣室へと飛び込む。その室内には瑠菜と佳奈と維月が待機していて、彼女達は茜達三人がインナー・スーツを脱ぐのを補助するのだ。
 インナー・スーツを脱ぐには、先(ま)ずは背部のパワー・ユニットを外す必要が有り、続いて腰部と背部のプロテクト・フレームを外さなければならない。このユニットやフレームの着脱作業が独りでは不可能なので、インナー・スーツの脱ぎ着には必ず作業補助の人員が必要なのだ。そして背部のプロテクト・フレームを除去するとスーツ背部が大きく開くので、補助を行う人員がスーツの上半身を前方に向かって引っ張る事で、両側の袖からドライバーの腕を引き抜くのである。インナー・スーツを脱ぐには、この方法が最も手早いのだ。
 ドライバーはインナー・スーツの下に、専用のアンダー・ウェアを着用しているので、インナー・スーツが肌に張り付く事は無い。アンダー・ウェアに因ってドライバーの汗や皮脂が直接、インナー・スーツの内側に付着するのを防止しているのだが、それは生地(きじ)の内部に各種センサーや体温維持システムを組み込んだインナー・スーツが、丸洗いが不可能だからだ。とは言えアンダー・ウェアを着用しても、インナー・スーツ内側への汗や皮脂の付着を完全に防止出来るものではない。肌に触れるアンダー・ウェアには通気性が必要で、そうである以上、アンダー・ウェアが吸収した汗や皮脂は、或る程度は外側へ染みてしまうのである。そんな訳(わけ)でインナー・スーツを着用したあとは、専用の洗浄液を使用して内側を拭き掃除する等のメンテナンスが必要なのだが、流石に今回はそんな時間的な余裕は無い。メンテナンスは後回しである。

上着(ジャケット)とソックスは、あとにしなさい!」

 そう瑠菜に言われて、ドライバー三人が制服のスカートにブラウスを着用した時点で、六人は更衣室を出るのだ。茜とブリジット、そしてクラウディアは、制服上着(ジャケット)のポケットに丸めたソックスを押し込み、裸足で靴を履いて、維月達の後を追って再び階段を駆け下りるのだった。

「こっちよー。」

 階段を降りると其(そ)の下から奥側、格納庫フロア東側の出入り口から、恵の呼ぶ声が聞こえる。茜達六名は呼ばれる儘(まま)に出入り口を通過して格納庫の外へと出ると、そこには学校所有のマイクロバスが待っているのだ。

「早く乗って。」

 今度はマイロバスの乗降ドア内から、恵が声を掛けて来るので、六人は、相次いでマイクロバスの車内へと駆け込む。

「それじゃ、出すよー。」

 運転席から声を掛けて来たのは、倉森である。倉森は兵器開発部のメンバー達全員が乗車したのを確認して、マイクロバスを校舎の方へと走らせるのだった。校舎の前に到着する迄(まで)の数分間には、マイクロバス車内では立花先生が購入したパンや御握(おにぎり)の残りを、テスト・ドライバーの三名や他の希望者で分配したのだ。幾ら女子だとは言え、育ち盛りの若者に昼食としてのパンや御握(おにぎり)が一個だけでは、流石に足りないのである。勿論、五時限目の前に其(そ)れを食べている時間はもう無いので、五時限目と六時限目の間の休み時間にでも、と言う事になるのだが。
 こうして、兵器開発部のメンバー達は午後からの授業に、ギリギリ、間に合ったのである。

 一方で、兵器開発部のメンバー達が午後の授業へと向かったあとの第三格納庫であるが、此方(こちら)は此方(こちら)で、直ぐに暇になる訳(わけ)ではない。
 帰還した三機の HDG、それぞれの停止、終了作業が行われると、直ぐに三機分の整備と点検作業が始まるのである。
 その上で、飛行確認で得られたデータを吸い上げ、整理して、兵器開発部のメンバー達との夕方の打ち合わせ迄(まで)に、明日の昼に実施する飛行(フライト)で確認するべき項目や、飛行プランの素案を作らなければならない。
 畑中達、本社試作工場からの出張組の作業も、なかなかに大変なのである。


 そして翌日、2072年11月9日、水曜日の、お昼時である。
 茜とブリジットが所属する一年A組の四時限目は、数学の授業である。数学担当の大須先生は、授業のペース配分には定評の有る先生で、授業時間終了三分前には其(そ)の授業の締めを開始し、チャイムと同時に必ず、決まり文句を言うのだ。

「よし、今日はここ迄(まで)。授業、終わり~。」

 その何時(いつ)もの宣言を聞いて、茜とブリジットは同時に席から立つのである。
 天神ヶ﨑高校の授業では開始や終了の挨拶、所謂(いわゆる)学級委員に依る「起立。礼。」の様な号令は、行われない。小、中学校で其(そ)の様な習慣が染みついていた一年生達は当初、戸惑ったり違和感を感じたりしたものだが、流石に今では其(そ)れが当たり前になっている。

「天野とボードレール、社用だってのは聞いてるけど、廊下は走るんじゃないぞ。」

 そう声を掛けられて、茜は微笑んで一礼し「はい、お先に失礼します。」と声を返すと、ブリジットと共に駆け足で教室を後にしたのだ。そして、他の生徒達も銘銘(めいめい)に席を立って昼食へと動き始める。
 段々と賑やかになる教室の前方に位置する教卓では、大須先生が持ち帰る資料を纏(まと)め乍(なが)ら苦笑いしつつ呟(つぶや)くのだった。

「だから、走るなって言ったんだけどなあ。」

 そんな様子の教室の一方では、ブリジットと同じバスケ部所属の西本が、学食へ向かおうとする九堂と村上に、教室後方の出入り口手前で声を掛けるのだ。

「九堂さん、村上さん。今日はブリジット達の手伝いは、いいの?」

 九堂と村上の二人が、兵器開発部の活動に協力している事は、西本はブリジットから聞いて知っているのだ。

「うん。本社の方(ほう)から、人が来てるからね~。」

「わたし達の出る幕じゃ無いよね。」

 九堂に続いて、村上も微笑んで言葉を返すのだった。
 西本は、折角呼び止めたのだからと、思い切って訊(き)いてみるのだ。

「二人は、ブリジットと天野さんがやってる事、知ってるんでしょう?」

 九堂と村上は一瞬、顔を見合わせ、そして村上が左手で眼鏡の位置を少し直してから、西本に答えるのだ。

「それは知ってるけど。ごめんなさいね、社外秘の事も絡むから、無闇に話せないの。」

 その返答を聞いて、少し表情が曇る西本に、九堂が説明を補足する。

「同じ特課の生徒でも、秘密関連の事柄は、聞かされる方が迷惑する位(くらい)だからさ。悪く思わないでね。」

「そうそう。わたし達は、うっかり口を滑らして、それが会社にばれたら『これ』だもの。」

 村上は笑って、右手で自分の首を切るジェスチャーをして見せるのだ。
 苦笑いを返して、西本は村上に言う。

「大変なのね。」

「まあ、そう言う立場、って言うか、契約だからね。」

 村上に続いて、九堂が微笑んで言うのだ。

「大変だけど、色々と面白い経験も出来るし。それに特課の生徒でいれば、将来は安泰(あんたい)だし?」

「あはは、西本さん達、普通の皆(みんな)は何(いず)れ大学受験でしょ? そっちの方が大変だよね。」

 その村上の言葉に、西本は言葉を返さず、唯(ただ)、微笑んで見せるのだ。そこで、窓際の席から西本の名前を呼ぶ声が聞こえて来る。

「明理(アカリ)ー。」

 声を掛けて来たのは、教室での昼食に持参したお弁当を広げている二人の女子生徒である。その二人は、西本と同じく、普通課程の生徒だ。
 西本は、其方(そちら)の友人達に右手を挙げて合図をした後で、村上と九堂に言うのだ。

「貴方(あなた)達は、お昼は学食だったよね。呼び止めて、ごめんなさいね。」

「ううん、いいよー気にしないで。」

「じゃあねー。」

 そうして村上と九堂は、教室を出て学食の在る管理棟へと向かったのだ。
 天野重工の準社員待遇である特別課程の生徒と、会社とは無関係である普通課程の生徒との間に、普段から心理的な溝や壁が存在している訳(わけ)ではないのだが、この様に会社の絡む話題が有る時、その立場の違いを互いが意識してしまう事は避けようが無い。特別課程と普通課程、それは『何方(どちら)が上』と言った類(たぐい)の話ではなく、単に『立場が違う』以上の意味は無いのだ。その事を特別課程の生徒達は天神ヶ﨑高校での三年間を通して、学んでいくのである。そして、その経験は天野重工に本採用になった後で、『天神ヶ﨑卒』と『一般卒』と言う社員としての新たな立場の違いを乗り越えるのに役立つのだった。

 さて、この日の飛行確認を実施している茜達であるが、其方(そちら)は昨日と同じ様にバタバタと状況が進み、しかし昨日より幾分かはスムーズに、飛行の予定を終えたのである。
 そして放課後には前日と同様に、昼休み時間に実施した飛行確認で使用した器材の片付けや、翌日の準備、更に昼間のデータを元にした打ち合わせが行われ、この日の活動も全日程が無事に終了したのだった。


 そして更に翌日、2072年11月10日、木曜日の昼休みである。
 この日も前日迄(まで)と同じ様に、四時限目の終了と共に兵器開発部のメンバー達は教室を飛び出し、部室の在る第三格納庫へと向かうのだ。昼休み時間に飛行確認を実施するのは此(こ)の日が最後の予定なのだが、流石に三日目ともなれば色々な事に慣れて来るもので、授業終了から茜達の離陸が完了する迄(まで)、所要時間は十五分を切って見せたのである。
 この日の確認内容は『プローブ』の発射手順の確認で、発射に必要な諸元の入力や、それらに対する『プローブ』からのリターン値を記録して、各機器が正常に機能しているのを確認したのだ。これは発射の最終段階で中断(アボート)が正常に出来る事の確認でもあり、クラウディアは『プローブ』を発射する事無く、無事に飛行確認を終えて学校へと帰投したのだった。

 

- to be continued …-

 

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