WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

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STORY of HDG(第18話.10)

第18話・新島 直美(ニイジマ ナオミ)

**** 18-10 ****


 ミサイルが目標に到達すると、それは直(ただ)ちに起爆する。三発のミサイルは其(そ)の全てが起爆したが、それに因って撃墜が果たされたのは今度も一機だけだったのだ。

「残り二機か。」

 戦術情報の表示で状況を確認して、加納は呟(つぶや)くのだ。
 通信からは緒美の声が聞こえて来た。

「HDG03、もう一回、必要?」

「お願いします。」

 即答するクラウディアの声を聞いて、緒美は沢渡を呼び出すのだ。

「AHI01 より、ECM02。其方(そちら)から、ECM01 を追跡している『トライアングル』を攻撃してください。」

 加納の機体、ECM01 が搭載している中射程空対空ミサイルは、残りが一発なのである。短射程空対空ミサイルは、まだ四発が残っているが、それを使用出来る距離まで接近するのは、勿論、ECM01 側に高リスクなのだ。
 緒美の指示から間を置かず、沢渡は返信する。

「ECM02、了解。中射程空対空ミサイル、発射。 ECM01、方位(ベクター)0 へ離脱してください。」

 沢渡は緒美の指示が来る前から、見当を付けて準備していたのである。そして直ぐに主翼下の中射程空対空ミサイル二発を放つと、加納には離脱方向を指示したのだ。『方位(ベクター)0』とは、要するに『磁北』である。

「此方(こちら) ECM01、了解。離脱する。」

 ECM01 は沢渡の指示通り、南西に向かっていた針路を、左旋回で北へと向けるのだ。しかし当然、『トライアングル』二機は ECM01 を追跡する事を止めない。ECM01 を追って、それぞれに針路を変えるのだ。
 大きなアンテナを背負う F-9 改は、それでも最高速度では『トライアングル』を凌(しの)ぐのだが、問題なのは加速力である。通常の F-9 戦闘機でも加速力では『トライアングル』の謎な推進力には敵(かな)わないのだから、通常の F-9 戦闘機に比して抵抗が増加している F-9 改では猶更(なおさら)なのだ。F-9 戦闘機が、無闇にエイリアン・ドローンに近付いてはいけない理由が、これなのである。
 加納は、自機が最高速度に達する迄(まで)の間、『トライアングル』がグングンと距離を詰めて来るのに、内心、冷や冷やとしていたが、程無く ECM02 が放った中射程空対空ミサイルが目標へと到達し、ECM01 の後方で起爆したのだ。
 その後方の様子を、後席で身体を捻(ねじ)って直美は確認を試みるのだ。

「ミサイル、爆発…したのかな? 流石に遠くて見えない。」

「戦術情報の表示だと、約二十キロ後方、二機とも生きてます。流石に、しぶといですな。」

 そう告げた後、加納は左旋回を開始するのだ。その儘(まま)、直進を続けるとエイリアン・ドローンを ECM02 の方向へ連れて行ってしまうのである。

「少し揺れますよ、新島さん。しっかり、掴まって居てください。」

「お任せしまーす。」

 直美は右手で正面計器盤上のハンドルを、左手で操縦席側壁のハンドルを、それぞれ握って両脚を踏ん張り、シートに背中を押し付けたのだ。
 そこに、クラウディアからの報告が入るのだった。

「目標の位置を特定。HDG02、データ、行ってるわね?」

 透(す)かさずブリジットの声が、返って来る。

「待ち草臥(くたび)れたわー。AHI01、直ちに狙撃しますが、宜しいですか?」

「此方(こちら)AHI01、やってちょうだい、HDG02。 それから、コマツ01、HDG02 へ接近中の『来客』二機、其方(そちら)の対応、お願いします。」

コマツ01、了解。任せて呉れ。」

「レールガン、発射。」

 それぞれの通信が飛び交う中、ECM01 は追跡して来る『トライアングル』二機の前方を五キロメートル程の距離を取って南向きに通過するのだ。その瞬間、ECM01 は右側面のウェポン・ベイを開き、短射程空対空ミサイルを空中に放出する。
 短射程空対空ミサイルは放出後にロケット・モーターが点火され、大きな弧を描き乍(なが)ら発射母機である ECM01 の進行方向とは逆向きに飛翔して行く。そしてもう一発、短射程空対空ミサイルを放出した後、ECM01 は東へと機首を向けるのだった。
 防衛軍が装備している短射程空対空ミサイルは中間から終末の誘導を赤外線画像認識で行うが、最初期段階は戦術情報の座標データで誘導が実行されるのだ。これは短射程空対空ミサイル自体がウェポン・ベイ内に格納されている為に、発射前にミサイル搭載のセンサーでの赤外線画像が取得出来ないからである。一方で、発射前に搭載センサーに赤外線画像を取得させる必要が無いと言う事は、発射時にどこを向いていても構わないと言う事であり、つまり側方や後方の目標に対しても発射・誘導が可能だと言う事である。
 従来、『ロックオン』とは『自機が搭載するレーダーの向きやスキャンを、目標に固定する』と言う意味だったのだが、ここでは少し意味が変化している。戦闘空域に存在する敵や味方の位置情報をリアルタイムで監視・追跡する『戦術情報システム』が導入された事により、『戦術情報』上の目標に選択を固定する行為を、ここでは『ロックオン』と呼ぶのである。それはつまり防衛軍のデータ・リンクに参加さえ出来れば、自機にレーダーが搭載されていなくても BVR(Beyond Visual Range:視界以遠)目標への照準や、誘導兵器の運用が可能だと言う事なのだ。
 この機能を利用して、F-9 戦闘機は自機のレーダーが向いていない方向の目標に対しても『ロックオン』が可能だし、短射程空対空ミサイルは放出後に自力(じりき)で指定された目標へと向かい、赤外線画像認識での中間、終末誘導が可能となるのである。又、レーダーを搭載していない HDG 各機が、『戦術情報』上の目標を『ロックオン』出来るのも同様のなのだ。
 短射程空対空ミサイルは射程距離が短い分、着弾迄(まで)の時間も短い。ECM01 が発射した短射程空対空ミサイルは二発は、二機の『トライアングル』の内、一機に向かって側方から突入し次々と起爆したのだ。最初の爆発は回避したものの、その瞬間に突入して来た二発目のミサイルに因り、『トライアングル』の一機は撃墜されたのである。
 一機の目標に対して二発のミサイルが誘導されたのは、目標指定や誘導のミスではない。加納は意図的に一機に対して二発のミサイルを、僅(わず)かに時間差を付けて送り込んだのである。高速で突入して来るミサイルを、連続して回避するのは難しいだろう、と言うのが加納の読みであり、それは見事に的中したのだ。
 そしてミサイルの爆発を回避する為、もう一機の『トライアングル』は一旦(いったん)、離れて行ったのだ。

「よし、残り一機。」

「流石ですね、加納さん。この調子で、もう一機、行きましょう。」

 後席では直美が楽観的なコメントを言うのだが、加納は苦笑いで応えるのだ。

「残念乍(なが)ら、そう、上手くは行かない様です。」

 戦術情報画面に目を遣(や)ると、離脱したかに見えた『トライアングル』の残存一機が、ECM01 の前方へ回り込むコースを取っているのが加納には分かったのだ。

「ミサイル、残りは?」

 後席から直美が尋(たず)ねるので、加納は素直に答える。

「この距離で使えるのは、あと二発。」

「さっきみたいには、出来ないんですか?」

「正対(ヘッド・オン)で発射しても、躱(かわ)されたらお仕舞いですから。何(なん)とか、角度(アングル)を取らないと。」

 加納は機体を右へ傾け、旋回を始めるのだ。
 そして、直美に指示をする。

「新島さん、アンテナの投棄準備をしておいてください。タイミングは指示します。」

 ACM(空中戦機動)をするには、F-9 改背部の巨大なアンテナは邪魔なのだ。それは非常時には接続支柱を爆破して、アンテナ本体を排除出来る仕掛けが組み込んであり、それは後席からしか操作出来ない仕様なのである。
 直美はニヤリと笑い、加納に尋(たず)ねる。

「いいんですか?これって高価(たか)い部品(パーツ)なんでしょ。」

「多分、わたしの給料じゃ、残りの勤続年数では弁償し切れないでしょうけど。 でも、それをケチって生徒さんを死なせる様な事にでもなったら、わたしが理事長に顔向け出来ませんので。それに、わたしなんかと心中するのは嫌でしょう?」

 そう言って加納は笑うので、直美も一笑(ひとわら)いしてから答えたのである。

「まあ、生還はしたいですよね。」

「そう言う事です。」

 加納は機体を右へ左へと旋回させ、短射程空対空ミサイルを有効に発射出来る角度を探すのだ。しかし、対する『トライアングル』は ECM01 の前方へと回り込む様な機動を繰り返すのである。
 最初は米粒程の大きさにしか見えていなかった『トライアングル』が、四回目の旋回の後には其(そ)の形状が、はっきりと視認出来る程の大きさに見えていた。この時点で ECM01 と『トライアングル』の距離は三百メートルを割っていたのである。

「ああ、流石に間合いが詰まり過ぎだ。」

 加納が呟(つぶや)く様に然(そ)う言った直後、後席で直美が声を上げる。

「来ます!」

 『トライアングル』が右前方から猛スピードで突っ込んで来るのが、ECM01 の操縦席から見えていた。そして三角形の飛行形態から、昆虫の様な格闘戦形態へと一気に変形し、右腕の鎌状ブレードを振り上げて迫って来るのだ。
 加納は目測であるが接触の十秒前と思われるタイミングで機体を横転(ロール)させ、同時に閃光弾(フレア)を発射する。横転(ロール)し乍(なが)らなので、閃光弾(フレア)は機体の周囲にばら撒(ま)かれる様に飛散し、続いて ECM01 は背面状態から落下して行く閃光弾(フレア)の下へ潜り込む様に急降下を行うのだ。
 『トライアングル』も閃光弾(フレア)が落下して行くエリアの中へと突入するが、北へと向かう ECM01 を見失ったのか、閃光弾(フレア)が落下して行くエリアを通り抜けて東方向へと直進して行く。
 そこで突然、茜の声が通信から聞こえるのだ。

「ナイスです!ECM01。後は任せて。」

 茜の AMF は緩(ゆる)い降下で『トライアングル』の斜め後方から接近すると、失速覚悟の引き起こしで急減速し、格納してあったロボット・アームを展開するのだ。

Ruby、ロボット・アーム緊急展開。ビーム・エッジ・ブレード、オーバー・ドライブ。」

 格闘戦形態の『トライアングル』は、飛行速度が可成り遅い。AMF が其(そ)れに追い付くのは、容易なのだ。
 AMF は展開したロボット・アームを横へと広げ、その先端からはオーバー・ドライブ状態の荷電粒子の刃(やいば)が伸びている。その状態で機体を『トライアングル』へと一気に寄せると、茜は AMF を一回転、横転(ロール)させたのだった。
 AMF のロボット・アームは機体の上下に二対、つまり四本の腕を有し、それぞれにビーム・エッジ・ブレードが装備されているので、『トライアングル』は AMF の一横転で四回の斬撃を連続して受けたのである。為(な)す術(すべ)無く切り刻まれた『トライアングル』は、その分割された機体を海上に落下させる以外、取り得る道は無かったのだった。
 茜は、大きく息を吐(は)き、独り言った。

「ふー。ギリギリ、間に合った。 あ、Ruby、ビーム・エッジ・ブレード、オフ。ロボット・アーム、格納。」

「ハイ、ロボット・アームを格納します。」

 AMF は緩(ゆる)い降下状態だった機体の機首を引き上げて、高度を元のレベルに戻すのだ。すると、左手側から ECM01 が接近して来るのである。そして ECM01 は、AMF の左側に三十メートル程の距離で並んだ。
 茜が ECM01 の方を見ると、操縦席では加納と直美の二人が、AMF に向かって手を振っているのが見える。茜は AMF の機首ブロックを解放し、手を振り返して見せるのだ。
 すると、加納が呼び掛けて来るのだった。

「HGD01、さっきの機動(マニューバ)は、何時(いつ)から仕込んでたんです?」

「ロボット・アームの使い道を考えてて、シミュレーターで何度か実験してたんですよ。加…ECM01 こそ、さっきの閃光弾(フレア)は?」

「ああ、あれは以前、米軍のレポートで、閃光弾(フレア)が『目眩(めくら)まし』に使える、みたいなのを読んだ記憶が有って。咄嗟(とっさ)に試してみたんですが、上手く填(は)まって呉れたみたいで助かりました。」

 加納の発言に続いて、直美が冗談の様に言うのだ。

「御陰で、アンテナを捨てなくて済んだわ。」

「あはははー、それは大変でしたね。」

 そう言葉を返して、茜は思い出した様に緒美に呼び掛ける。

「ああ、そう言えば。AHI01、『ペンタゴン』の方はどうなりました? 此方(こちら)で着弾観測が出来ませんでしたが。」

 その茜の問い掛けには、緒美よりも先に桜井一佐が回答するのである。

 

- to be continued …-

 

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